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- 頼富 穰
リスティング広告5つの成功事例|成果実現の裏側と再現のポイント

リスティング広告の事例を調べてみたものの、「結局、何をどう活かせばいいのか分からない…」と感じた経験がある方も少なくありません。
実際に、以下のような悩みを抱える方も散見されます。
- 他社の成功事例を読んでも、自社との違いが大きく参考にしづらい
- どの施策が成果に直結したのか、因果関係が曖昧で理解しづらい
- 自社に応用しようにも、何から着手すべきか判断できない
そこで本記事では、リスティング広告の事例を単なる「読み物」で終わらせず、成果につながる“再現のヒント”をどう抽出するかを解説します。
自社の状況にあわせて事例を読み解き、「転用」するための視点を身につけることで、事例の価値を何倍にも引き上げられるはずです。
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目次
リスティング広告5つの改善事例
本章で紹介する5つの事例は、すべて弊社が実際に広告運用を支援した企業様の取り組みに基づいています。
成果数値だけでなく、配信の背景や業界特性、施策を行った意図まで含めて、できる限り丁寧にお伝えしていきます。
とはいえ、事例は「読むこと」自体が目的ではありません。
重要なのは、「なぜその施策がうまくいったのか?」「自社でも同じことが再現できるのか?」といった観点で、前提条件や背景文脈、成果に影響した変数を読み解いていくことが重要です。
「自社でも再現できそうか?」という視点を持ちながら、ぜひ自社の状況と照らし合わせながらご覧ください。
人材業A社「アカウント構成見直しでCV数が約1.5倍に増加」
とある総合人材会社のダイレクトスカウトサービスにおいて、非指名キャンペーンのアカウント構成を再設計し、CV数の増加とCPAの改善を同時に実現した事例をご紹介します。
当初の課題と仮説
当初はクライアント指定の構成で配信を行っており、広告グループごとのターゲティングが曖昧かつ重複していたため、CVデータの偏りや機械学習の最適化が進まない状態にありました。
RSA(レスポンシブ検索広告)も各広告グループで同じアセットを使用しており、ユーザーコミュニケーションを前提とした訴求の出し分けが弱い点を課題に感じていました。
行った施策と結果
まずはユーザーニーズに対する解像度を高めるため、直近3ヶ月の検索語句データを分析のうえ、顧客インタビューを実施。
得られた示唆をもとに以下3つの施策を実施したところ、
- 広告グループをユーザーニーズ別に再編(認知/ライト/準顕在)
- KW設計を見直し、各広告グループで学習が進みやすいよう調整
- RSAアセットもニーズごとに語句を変更し、訴求の出し分けを強化
施策導入前後でCPAは30%ポイント減少し、CV数は約1.5倍に増加しました。
事例から読み取れる学び
アカウント構成の最適解は自社の目標や予算、ターゲットなどの諸々の変数によって変わるため、どのような構成が最適か初心者の方には判断が難しいケースもあると思います。
その際は、まずは以下の2つの観点でアカウントの見直しをはかることをおすすめします。
- 自社のアカウント構成はユーザーコミュニケーションを前提としたときに訴求のズレが発生していないか?
- そのうえで機械学習の最適化がはたらくような構成になっているか?
ユーザーニーズを分析するうえでは、まずは無料で使えるテキストマイニングツールなどを活用して検索語句データの分析をして仮説を立てた上で、デプスインタビューなどの定性調査を行うと解像度を高めやすいです。
通信業B社「インテントマッチ導入でCPA20%減少」
一般消費者向けの通信商材のアカウントにて、インテントマッチの導入によって、CPAが20%低下し、CV数が1.2倍に増加した事例を紹介します。
当初の課題と仮説
当時のキーワード構成は、完全一致やフレーズ一致を中心とした設計になっており、成果は一定水準で安定していたものの、配信ボリュームが頭打ちの状態にありました。
より多くの新規ユーザーへリーチし、獲得数をさらに伸ばすためには、キーワードの拡張余地を検討する必要がある状況でした。
その中で選択肢として浮上したのが、インテントマッチ(旧:部分一致)の導入です。
ただし、部分一致は検索語句の文脈理解をベースに多様なクエリへ配信が広がる性質があるため、意図しないユーザーへの配信によって費用対効果が悪化するリスクも懸念されていました。
行った施策と結果
上記のような懸念があったため、インテントマッチの導入は一気に切り替えるのではなく、段階的に実施しました。
特に、アカウントの学習フェーズでは意図しない検索クエリへの配信が拡張されやすい特性があるため、運用者が検索語句を定期チェックし、除外キーワードをこまめに設定することで、配信精度を担保しました。
その結果、すべてのキャンペーンでCTR(クリック率)が上昇し、CPC(クリック単価)は低下。
また、インテントマッチの導入によってCVR(コンバージョン率)はやや低下したものの、CPC低下の効果がそれを上回り、最終的にはCPA(獲得単価)も改善するという成果が得られました。
事例から読み取れる学び
今回の事例から得られた示唆として特に重要なのは、Web広告の自動化が進んだ現在では、従来の完全一致やフレーズ一致だけに頼った運用ではリーチや最適化に限界があるという点です。
Google広告では、AIによる意図理解の精度が年々向上しており、インテントマッチを活用することが成果拡大の鍵となるケースが増えています。
インテントマッチは、単に語句が似ているだけでなく、ランディングページ(LP)の内容や広告文、過去のユーザー行動など複数のシグナルをもとに、コンバージョンの可能性が高い検索語句に対して優先的に配信を行うという特徴を持っています。
実際にこの事例においても、インテントマッチで拡張された配信の中で、検索語句が「完全一致」としてマッチしていたケースは特にCVR(コンバージョン率)が高いという結果が確認されました。
これは、Googleのインテントマッチがシグナルをもとに有望な検索語句へ的確に配信を寄せていることの裏付けとも言えます。
このように、人間が制御しきれない最適化判断をAIに委ねつつも、戦略設計や除外設定といった人の介在が活きる設計にすることで、より高いパフォーマンスを実現できることがこの事例の大きな示唆です。
製造業C社「RSAのアセット改善でCTR×CVRが改善」
とある製造業のアカウントにて、RSA(レスポンシブ検索広告)のアセットを改善することで、CTRが20%以上上昇し、CPCも低下。結果としてCPAが改善された事例をご紹介します。
当初の課題と仮説
RSAはGoogle広告において標準となっている広告フォーマットであり、複数の見出しと説明文の中から自動的に組み合わせが表示される仕組みです。
当時のアカウントでは、過去の検証からサイト名を含む指名アセット2つの表示回数が多く、他の見出しと比べてクリック率が高いことが分かっていました。
一方で、このアカウントでは上記の指名アセットが2つとも表示されたケースが全体の45%を占めており、同内容の訴求が重複していることで、本来別の訴求で行動喚起できたユーザーを取りこぼしている可能性が考えられました。
行った施策と結果
サイト名を含む見出しが重複表示されないようにすることで、クリック率とコンバージョン率の双方を改善できるのではないか?という仮説をもとに、今回は①見出しの固定機能と②片方のアセットを削除する方法の2パターンで配信実績がどう変化するか検証しました。
検証の結果、いずれのパターンにおいてもクリック率とコンバージョン率が改善しました。
サイト名などのクリックされやすいアセットが同時に表示されないようにすることで、訴求のバリエーションが増え、結果としてこれまで広告流入につながっていなかったユーザーの獲得が進んだと考えられます。
事例から読み取れる学び
この事例から得られた示唆は、RSAが“自動最適化される広告”とはいえ、自動最適がうまく進んでいない状況では人間が手動でチューニングを行うことが重要であるという点です。
Googleの自動化は非常に高度に進化していますが、AIは過去の配信実績によって「よりクリックやコンバージョンが取れるアセット」の配信比率を高める傾向にあります。
今回の事例のように、類似した訴求が同時で表示されているケースなどは、見出しの固定機能やアセット削除などをおこない、重複表示とならないようにコントロールする必要があります。
自動化も決して万能では無いため、RSAを配信する際は、「どの見出しが」「どの程度」表示されているのか定期的に確認して調整することを推奨します。
BtoB業D社「Microsoft広告に予算アロケし大手企業のリードが増加」
とあるBtoB向けSaaS商材において、Microsoft広告への予算アロケーションを行うことで、社員数1,000名以上の大手企業からのリード獲得数を約1.2倍に増加させた事例をご紹介します。
当初の課題と仮説
本アカウントでは、売上拡大を見据えた重点施策としてエンタープライズ企業からの新規リード獲得数の向上が求められていました。
しかし、広告運用において特定の企業規模だけを狙うことは難しく、媒体やターゲティングの選定には限界がある状況でした。
そこで過去の配信実績を精査したところ、Microsoft広告経由で獲得したリードのうち、エンタープライズ企業の比率が他媒体と比べて高い傾向が見られたため、Microsoft広告への予算配分を段階的に強化していく方針を立てました。

行った施策と結果
まず、エンタープライズとの親和性が高いと判断されたMicrosoft広告への予算アロケーションを段階的に実施。
加えて、CVポイントも見直しを実施。従来の「問い合わせ」や「資料請求」などの顕在層向け訴求から、ホワイトペーパーDLをCVポイントに変更しました。
上記の施策により、エンタープライズからのリード数は1.2倍に増加。CPAも従来比で20%改善する結果となりました。
また、検索キーワードに応じてホワイトペーパーを複数用意することで、配信対象キーワードの拡張とCV数増加にもつながりました。
事例から読み取れる学び
エンタープライズ企業のSaaS導入においては、多様な関係者を巻き込んで意思決定する必要があるため、導入までの期間が長期化する傾向にありますが、将来的なLTVを考えるとコアターゲットとして狙う価値は十分にあります。
一方で、一般的なBtoB広告では問い合わせやサービス資料DLをCVのポイントとして設定することが多いですが、顕在層のみに限定してしまうとボリュームが取れないばかりか、いたずらにCPAを悪化させてしまう恐れがあります。
そのため今回の事例では、エンタープライズ企業の対象顧客が興味を持ちそうなトピックをコンテンツ化し、ホワイトペーパーDLをCVポイントとすることで、セールス活動の起点となる接点構築を目的としました。
「とはいえ潜在層向けのホワイトペーパーだと商談や受注には繋がりづらいのでは?」という懸念を抱える方もいらっしゃると思いますが、本事例ではホワイトペーパーの性質に応じてインサイドセールスのトークを最適化するなどして対策を図った結果、一定の商談件数を担保することができました。
また、Microsoft広告はBtoB領域において他媒体よりもエンタープライズ層との親和性が高く、弊社運用アカウントにおいても、他媒体と比べてROIが良いケースが多いです。
BtoB商材であれば積極的な活用をおすすめできます。
店舗業E社「自動入札の導入で来院数が約1.2倍に増加」
とある医療クリニックのアカウントにて、自動入札の導入によって、クリニックの新規来院数が約1.2倍に増加した事例をご紹介します。
当初の課題と仮説
当クリニックではWeb予約なしに直接来院するユーザーが全体の8割程度を占めており、全体の約8割ほどのCVデータが計測できていない状況でした。
そのため、自動入札を導入してAIによる最適化をはかるよりも、運用者の経験をもとに入札価格の調整をおこなうほうが成果につながりやすいと判断し、かねてから手動入札で運用をしていました。
綿密な手動入札調整によって目標以上の成果は出せていたものの、今後さらに広告の成果を拡大していくうえで、アカウントの設計や運用方法について見直しを進める必要がありました。
これまでのクライアントとの議論やデータ解析の結果から、
- 衝動性の低い商材であり長年の広告配信の実績がありWeb上での行動履歴は多く蓄積している
- 歩留まりはあれど、Web上で事前予約するユーザーと予約なしで直接来院するユーザーの属性やWeb行動に大きな差分は無い
- 同じユーザーでもWeb上で予約して来院するケースもあれば、しないケースもあるため同一ユーザーでもCV地点が異なる
ことが分かったため、Web上でコンバージョンするユーザーとそうでないユーザーの間にデモグラフィック的な属性の違いやユーザー行動の違いは少ないのではないか?と仮説を立てました。
行った施策と結果
自動入札の導入にあたり、学習の最適化を促進するために、それまで店舗ごとでキャンペーンを分割していた構成から都道府県別のキャンペーン構成に統合しました。
また、地域ごとで成果比較をおこない自動入札の効果をはかるため、東京や神奈川などの首都圏エリアのみ自動入札を適用し、それ以外の地域は従来通り手動入札を継続しました。
その結果、クリニックの新規来院数は約1.2倍に増加しました。施策を開始した7月はこれまでの傾向として来院数が低下する傾向があったのですが、それを踏まえると自動入札の導入によってポジティブな影響があったことが見てとれました。
事例から読み取れる学び
今回の事例において、自動入札の導入がうまくいったポイントは①自動入札がはたらきやすいアカウント構成に変更したこと②WebCVユーザーとオフラインユーザーの差分が少なかったことの2点だと考えています。
自動入札の最適化に必要なCVデータはアカウントによって差があるため一概には断言できませんが、Google広告は1ヶ月以上の長い期間で30〜50件以上のCV数を担保することを推奨しています。
従来の店舗別のキャンペーン構成では一部のキャンペーンで学習最適が進んでいない可能性があったため、都道府県別でキャンペーンを統合して運用したことが功を奏したと考えています。
また、今回はWeb予約ありで来院するユーザーとそうでないユーザー間にはデモグラフィック的な特徴やユーザー行動にも大きな差分はないだろうとの仮説をもとに施策に踏み切りましたが、オフラインCVを学習させずに運用した中で新規来院数の増加につながっているため、事前の読みはある程度妥当だったと考えています。
成果につながる戦略設計の考え方
ここからは、これからリスティング広告を始める方に向けて、具体的にどのようなポイントを押さえて運用すべきなのか、「媒体選定」「予算策定」「アカウント設計」のポイントをご紹介します。
すでにリスティング広告を配信している方は、運用方針の見直しにも使える考え方を記載していますので、アカウントの見直しにご活用ください。
媒体選定
リスティング広告をはじめて運用する際、多くの方が最初につまずくのが「まずはどの媒体から始めるべきか?」という点ではないでしょうか。
Google、Yahoo!、Microsoft。似たように見えて、それぞれに特徴や得意領域があります。媒体選定を誤ると、貴重な広告予算が無駄になってしまうことも。
だからこそ、自社に合った媒体を見極めることが、成果に直結する第一歩になります。
ここでは、主要3媒体の特徴と選び方を整理しながら、戦略的な媒体選定のポイントを解説します。
まずは押さえたい3媒体の特徴
以下はリスティング広告を配信できる3媒体(Google/Yahoo!/Microsoft)の基本的な特徴をお伝えします。
はじめてWeb広告を配信する場合は、ユーザー数が多く機能が豊富なGoogle広告から配信し、よりリーチを広げたい場合はYahoo!、Microsoft広告の配信にチャレンジするのが良いでしょう。
媒体 | 特徴 | 向いているケース |
---|---|---|
Google広告 | 圧倒的なシェア、機械学習の精度が高い、自動化が充実 | 幅広い層にリーチしたい、BtoC商材、初めての運用 |
Yahoo!広告 | 日本国内向けに強い、ミドル〜シニア層への訴求に強み | 国内ユーザーに絞りたい、40代以上がターゲット |
Microsoft広告 | CPCが安い、Bing経由のPCユーザーにリーチ可能 | BtoBやエンタープライズ企業を狙いたい、低CPCで試したい |
媒体選定は「誰に届けたいか」起点で考える
媒体選定の基本は「ユーザーの特性」と「自社商材の相性」です。以下に当てはまる条件が多ければ、その媒体から始めるのがおすすめです。
✅ Google広告がおすすめなケース
- 20〜40代の幅広いユーザー層にアプローチしたい
- BtoC商材を展開しており、短期で成果を出したい
- 広告運用を自動化しつつ効率的に改善したい
✅ Yahoo!広告がおすすめなケース
- ターゲットが40代以上のミドル〜シニア層
- 国内市場に特化して広告展開したい
- Googleほどの競合が少ない市場を狙いたい
✅ Microsoft広告がおすすめなケース
- 法人向け、特にPCユーザーを狙いたい
- Bing検索を使う業種・職種(BtoB、官公庁、シニア層)向け商材
- CPCを抑えてテスト運用したい
複数媒体を同時に配信すべきか?
よくある質問に「複数媒体を同時に出すべきか?」というものがあります。答えは、「リソースと予算次第で段階的に拡張」が基本です。
まずはGoogle広告でボリュームと勝ち筋を確認し、次にYahoo!広告で国内シェアの取りこぼしをカバー。
さらに、BtoB商材やエンタープライズ狙いであれば、Microsoft広告を追加するという流れが、無理なくパフォーマンスを伸ばしていくセオリーです。
特にMicrosoft広告は「CV数は少ないけれど質が良い」ケースも多く、営業やインサイドセールスと連携する体制がある企業では、良質なリード獲得のチャネルとして注目されています。
予算策定
Web広告の成果を最大化するには、「どの媒体を使うか」だけでなく、「いくら投資するか」も重要なポイントです。ですが、
- 初めての配信で、どれくらいの予算をかければいいのかわからない
- 予算に根拠を持たせたいけど、どうシミュレーションすればいい?
- 代理店に言われるがまま予算を出してるけど本当に妥当なのか?
といった疑問や不安を感じたことがある方も多いのではないでしょうか。
ここでは、広告予算の基本的な考え方から、シミュレーション方法、配信後の運用で意識したいポイントまでを、実務目線でわかりやすくご紹介します。
予算設計は「逆算思考」が基本
広告予算を決めるうえでは、「目標から逆算して決める」のが基本です。
たとえば「月間50件のCVを獲得したい」という目標があるとき、以下のような数値を仮置きして予算を逆算します。
項目 | 計算式 | サンプル値 |
---|---|---|
CPA(獲得単価) | 単価×(1-利益率) | 10,000円×(1-0.3)=7,000円 |
必要予算 | CPA×目標CV数 | 7,000円×50件=350,000円 |
ただし、この数値はあくまで「利益を損なわない範囲の予算上限」にすぎません。実際にこの金額で成果が出るかは、広告運用の精度次第です。
また、はじめて広告を出す場合は、少額テストで費用対効果を見たうえで、徐々に予算を拡大していくのが基本です。
- 配信後は成果の良いキャンペーンに予算を寄せる
- CPAだけでなく、有効CV率や商談化率もチェック
- 「予算による制限」など配信機会ロスが起きていないか確認
運用の精度と柔軟性を保つことが、広告パフォーマンスを最大化する近道です。
より具体的な予算感を出すには?
さらに精度の高いシミュレーションをしたい場合は、以下の2ステップで進めるのが一般的です。
1. CPCとCVRを仮置きする
- CPC(クリック単価):Google広告なら100~300円前後が多い
- CVR(コンバージョン率):3~5%前後(商材やLPによって差あり)
たとえば「CPC100円/CVR5%」なら、1件のCVを獲得するために20クリック=2,000円かかる計算になります。
2. 仮置き数値から予算を逆算する
上記で仮置きした数値をもとに、以下の計算式に当てはめて広告予算をシミュレーションします。
- 広告予算=目標CV数÷CVR×CPC
「CV単価から逆算した金額」と「CPC・CVRを使って逆算した金額」の2軸で比較しておくと、現実的な着地予算を見極めやすくなります。
広告配信の実績がある場合は?
過去の実績があるなら、Excelの「対数近似」機能を使うことで、実データにもとづいた予算シミュレーションが可能です。
💡対数近似を使った広告予算シミュレーション
・日別の広告費とCV数をもとに散布図グラフを作成
・「近似曲線」→「対数近似」を選択
・数式と決定係数(R²値)から、最適な費用対効果の傾向を予測
この方法を使えば、たとえば「日予算を2万円から3万円に増やしたとき、追加で獲得できるCVは?」といった増分効果まで定量的に見える化できます。
アカウント設計
媒体選定や予算設計が決まったら、次は広告配信の土台となるアカウント設計です。
アカウント構造は、広告成果の出やすさに直結する「設計図」のようなもの。ここを曖昧にしたまま配信を始めると、思ったように成果が出なかったり、改善の方向性が見えづらくなってしまいます。
そこでこの章では、成果に直結しやすい設計要素として特に重要な以下の4点を紹介します。
- 入札戦略
- キーワード選定
- 広告アセット(見出し・説明文など)
- ランディングページ(LP)
それぞれの要素について、初心者〜中級者の方が実務で押さえておきたいポイントを簡潔にまとめていきます。
入札戦略
Google広告における入札戦略は、配信成果を大きく左右する重要な設計項目です。
結論から言えば、現在のGoogle広告運用では「自動入札」を基本とするのが主流かつ推奨されるスタンスです。
自動入札は、Googleの機械学習がユーザーの行動や文脈をリアルタイムで読み取り、最適な入札額を自動調整してくれる仕組みです。
デバイス、時間帯、地域などの複数のシグナルを活用することで、手動では難しい緻密な調整が可能になり、高い費用対効果が期待できます。
ただし、成果を最大化するためには「自社の目標に合った入札戦略を選ぶ」ことが前提です。たとえば以下のような考え方が目安になります。
- 件数を増やしたい(CV重視) → 「コンバージョン数の最大化」+必要に応じて「目標CPA」
- 売上や利益を重視したい(価値重視) → 「コンバージョン値の最大化」+必要に応じて「目標ROAS」
- ブランド名など特定キーワードで必ず表示させたい(露出重視) → 「目標インプレッションシェア」
注意すべきは、自動入札が十分に機能するためには、ある程度のコンバージョンデータ(目安として月30〜50件以上)が必要になるという点です。
そのため、アカウント設計の段階から、必要なデータ量を確保できるようにキャンペーン設計や予算配分を行うことが重要です。
また、自動入札を導入する際には以下の点にも留意が必要です。
- 学習期間中(1〜2週間程度)は頻繁な変更を控える
- 実態に合ったCPA/ROAS目標を設定する(乖離が大きいと配信されない)
- 自動入札中は基本的に手動の入札単価調整は無効になる
これらを理解した上で、成果目標・予算・アカウントの成熟度に応じて最適な入札戦略を選定することで、広告パフォーマンスを最大化しやすくなります。
キーワード
リスティング広告におけるキーワード選定は、どのような掲載機会に対して広告を掲載するかを決定する役割を持っており、広告のクリック率やコンバージョン率に影響を与える重要な項目です。
キーワード選定は、大きく分けて以下の4ステップで進めていきます。
- メインキーワードの選定:広告の主軸となるキーワードを決定します。
- 掛け合わせキーワードの設定:関連する語句を組み合わせて、より具体的なユーザーの検索意図に対応します。
- マッチタイプの設定:ユーザーの検索語句とキーワードの一致範囲を指定します。
- 除外キーワードの設定:広告を表示したくない検索語句を除外設定し、無駄なクリックを防ぎます。
キーワードの候補を選定する際は、キーワードプランナーやラッコキーワードなどのツールを活用するのがおすすめです。
また、マッチタイプにはインテントマッチ・フレーズ一致・完全一致の3種類がありますが、AIによる自動化が一般化した近年のWeb広告ではインテントマッチの活用が推奨されています。
- 完全一致:登録したキーワードと完全に一致する検索語句にのみ広告が表示されます。
- フレーズ一致:登録したキーワードの語順を含む検索語句に広告が表示されます。
- インテントマッチ(旧:部分一致):登録したキーワードと関連性の高い検索語句に広告が表示されます。
インテントマッチ(旧:部分一致)では、他のマッチタイプでは活用できない独自のシグナルを考慮してターゲティングを最適化でき、キーワードには含まれていない語句にも配信拡張するため、効率的にリーチを広げていくことが可能です。
ただし、いかなるケースでもインテントマッチが有効というわけではなく、以下のようなケースでは別のマッチタイプを使ったほうが良い場合もあります。
- 指名検索キーワード:自社商品やサービス名に関連する検索語句に対しては、より精度の高いマッチタイプが適しています。
- 予算が限られている場合:無駄なクリックを減らすため、より厳密なマッチタイプの設定が効果的です。
- 明確なニーズがある商材:特定のニッチな商材に対しては、関連性の低い検索語句への広告表示を避けるため、完全一致やフレーズ一致が適しています。
広告アセット
リスティング広告においては現在、レスポンシブ検索広告(RSA)が標準の広告フォーマットとなっています。
RSAは、見出しと説明文を複数パターン登録することで、機械学習が最適な組み合わせを自動的に表示・最適化してくれる仕組みです。
一方で、RSAはただアセット(見出し・説明文)を設定するだけでは成果が出にくく、「アセットの設計・改善」が成果を大きく左右するポイントとなります。
ここでは、RSAの改善における5つの基本ポイントと、補足的に押さえておきたい広告表示オプションの活用について解説します。
💡RSA改善5つのポイント
1.見出しは最低10個、説明文は最低3個(理想は最大数)
2.訴求パターンは「4P」フレームワークで設計
3.広告カスタマイザーを活用してCTRを強化
4.データ量が少ない場合はRSAは1つ、多くても2つまで
5.定期的にアセットを入れ替え、成果の低いものは削除
RSAは、AIによる自動化を前提とした広告のため、アセットの本数やバリエーションを用意して学習を促進することが重要です。
また、広告グループ内にRSAを大量に設定してしまうと学習データが分散して学習の最適化が進みづらくなるので、データ量が少ない場合は多くても2つまでにしましょう。
なお、リスティング広告では広告表示オプション(アセット)という機能があり、広告文に追加情報を加えることができます。
広告表示オプションは、追加情報の提示によって広告のクリック率向上が期待できるだけでなく、オークションの勝率に関わる広告ランクの向上にもつながる要素であるため、ビジネスモデル上相性が悪い者以外は網羅的に設定することを推奨します。
広告表示オプション(アセット) | 機能 | 詳細 | 主な対象ビジネス |
---|---|---|---|
住所アセット | 広告に住所を表示 | 地図へのリンクや営業時間なども表示できる | エリアが限定されたビジネス |
サイトリンクアセット | 広告の下に同じドメインのリンクを表示 | 複数の商品・サービスを取り扱う場合に効果的常に最新の情報を表示できる | 全て |
コールアウトアセット | 広告に短い追加情報を表示 | USPやキャンペーン情報などを訴求できる広告の訴求内容を常に最新の状態に保てる | 全て |
構造化スニペットアセット | 商品やサービスの詳細情報を表示 | サービスや設備、コースなどの詳細情報を表示できる | 商品・サービス販売 |
電話番号アセット | 広告に電話番号を表示 | 電話番号をタップで電話発信できる | 電話での問い合わせを重視するビジネス |
価格アセット | 広告に商品・サービスの価格を表示 | 価格訴求に効果的 | 価格が固定のビジネス |
プロモーションアセット | 広告に割引クーポンやセール情報などを表示 | 期間限定の割引情報などを訴求できる | キャンペーンを実施するビジネス |
画像アセット | 広告に画像を表示 | 視覚的に訴求し、クリック率向上に貢献 | 全て |
リードフォームアセット | 広告内にフォームを表示し、ユーザー情報を取得 | 電話やメールでの問い合わせよりもスムーズに情報収集できる | BtoBビジネス |
アプリアセット | アプリのリンクを表示 | アプリのダウンロードを促進できる | アプリ運営サービス |
ランディングページ(LP)
LP(ランディングページ)とは、広告をクリックした後に遷移させるWebページのことです。通常は商品・サービスを説明する縦長のWebページを設定することが一般的です。
予算や制作リソースに余裕が無い場合はHPのお問い合わせページや商品ページを設定するケースも見受けられますが、基本は商品やサービス別で個別のLPを設定することを推奨します。
広告用に個別のLPを設定したほうが良い理由としては、同じ商材でも、ユーザーによってニーズは多様であることが多いため、ユーザーニーズに応じて訴求やデザインを個別カスタマイズすることで、コンバージョン率の向上が期待できるためです。
なお、既に広告用のLPを用意している場合は、広告の配信データを参考にしながら、継続的にLPO(ランディングページ最適化)を図ることが重要です。
LPO(ランディングページ最適化)は以下の4ステップで進めていきます。
まずはGA4やヒートマップなどの効果計測ツールを活用してLP内のユーザー行動データを確認します。
その後ユーザーがLP内のどの地点で離脱しているのか分析し、離脱につながっているであろう要因について仮説を立てます。
課題のリストアップができたら、着手しやすさや成果インパクトを考慮した上で改善の優先順位を検討します。
改善施策を実施する際は、ABテストなどの検証手法を用いて定量的に施策の良し悪しを判断できるように検証設計をおこなうことが重要です。
配信後に守りたい3つのポイント
リスティング広告は配信して終わりではなく、配信後に媒体の管理画面データをモニタリングして「運用」によって改善していくことが重要です。
以下はリスティング広告の課題と解決策を簡易的に分類したロジックツリーですが、目標に対して下振れている指標を特定し、下振れが発生している要因にあわせて施策を選定していきます。
上述のように、近年のWeb広告では自動入札をベースとした運用が主流となっています。自動入札のパフォーマンスを最大化するうえでは、機械学習の効率を阻害しない運用が重要です。
1.学習期間後に広告のパフォーマンスを評価する
自動入札の裏側では、AIが広告配信を最適化する「機械学習」という仕組みが動いています。
AIも学習を繰り返しながら徐々に効率が上がっていく仕組みであるため、とくに学習データが少ない広告配信の初期ではパフォーマンスが安定しないことがあります。
これを広告運用の現場では「学習期間」と呼ぶのですが、学習期間はアカウントによって差があるものの、おおむね2〜3週間程度かかるケースが一般的です。
AIの学習期間が完了しないうちに広告のパフォーマンスを判断してしまうと、広告配信のポテンシャルを正しく評価できないばかりか、「リスティング広告は費用対効果が合わなそうだから配信を停止しよう」のような誤った意思決定につながる可能性もあります。
そのため、リスティング広告の効果を評価する際は、学習期間が完了した後の実績で評価するようにしましょう。
2.ターゲティングはAIの自動最適化をベースとする
近年のWeb広告では、自動入札が主流となり、機械学習がユーザーの行動データをもとに成果を最適化しています。
このような運用においては、広告配信の初期フェーズで人がターゲティングを絞りすぎると、学習の幅を狭めてしまい、かえって成果の最大化を妨げる恐れがあります。
例えば「BtoB商材だから土日は配信しないだろう」と考え土日を配信対象から除外したものの、実際に配信してみると、実は土日のほうがCPAが安かったというケースもあります。
リスティング広告においては、年齢や性別、配信地域などのターゲティングを設定することが可能ですが、過度に配信対象を狭めてしまうと、本来コンバージョンするはずであった機会を逸してしまう可能性もあるため、明確に除外すべき理由が無い限りは制限しないようにしましょう。
3.除外キーワードを設定する
上述のように、自動化が一般化した近年のWeb広告では、マッチタイプをインテントマッチで設定する運用が主流となっています。
一方、インテントマッチでは意図しない検索語句に配信される可能性もあるため、とくに学習が安定しない配信初期の段階では、除外キーワードを設定するようにしましょう。
除外キーワードは、登録した語句を含むキーワードに対して広告を配信しないようにする機能で、管理画面から設定することができます。
優先的に除外すべきキーワードとしては、一定の費用が発生しているものの、商品やサービスとの関連性が低くコンバージョンが発生していないキーワードが代表的です。
なお、除外キーワードでもマッチタイプを設定する必要がありますが、通常のキーワード登録時のマッチタイプの拡張範囲と、除外時の拡張範囲は異なる点は注意が必要です。
リスティング広告の成果改善チェックリスト
すでにリスティング広告を配信している方向けに、リスティング広告の成果改善のチェックリストをまとめました。(画像をクリックするとスプレッドシートに飛びます)
アカウント設計から各階層の設定項目まで、運用のベストプラクティスと言われる推奨設定を網羅的に整理しています。(運用者が10人いれば8人以上が「そうしたほうが良い」と回答するレベルの一般解を記載しています)
なお、各推奨設定の詳細とそうすべき理由については以下の記事で解説していますので、リスティング広告の成果改善に頭を悩ませている方はあわせてご覧ください。
リソース・ノウハウ不足の場合は運用代行も有効
広告運用の選択肢には、自社で運用する「インハウス運用」と、専門会社に任せる「運用代行」があります。
特に「広告運用のノウハウが乏しい」「担当者が他業務と兼務で工数が取れない」といった状況では、運用代行の活用が成果への近道になることもあります。
運用代行では、専門知見を持つ人材が戦略設計から配信・改善までを担うため、運用の初動から精度高く立ち上げられる点がメリットです。
また、社内リソースを確保しつつ、スピード感のある施策実行も期待できます。
💡運用代行のメリット
1.プロの知見で成果まで最短距離で進める
広告運用の専門スキルを持った担当者が、初期設計から改善まで一貫して対応します。経験不足によるムダな試行錯誤を減らし、成果獲得までのスピードを高められます。
2.自社だけでは足りない実行リソースを補完できる
代理店が課題に応じた施策を選定し、実行まで担ってくれるため、社内リソースが限られていてもスピーディなPDCAを回すことが可能になります。
3.最新情報や事例をもとに戦略・戦術を最適化できる
代理店では媒体アップデートや他社事例などを日常的に収集しているため、自社だけでは得られない情報を活かしながら広告運用の精度を高められます。
費用の目安は、月の広告費の20%前後が相場です。極端に手数料が少ない場合は支援に充当できる工数が制限されるケースがあるため、代理店の選定時は「手数料の安さ」ではなく「価格に見合う支援内容か」で見極めることが重要です。
まとめ:改善を繰り返してリスティング広告の成果を拡大しよう
リスティング広告は、ただ事例を読むだけでは成果につながりません。重要なのは、背景や文脈を読み解き、自社に応用するための視点を持つことです。
本記事では、リスティング広告の5つの改善事例を通して、リスティング広告のパフォーマンスを改善するためのポイントをご紹介しました。
自社のみで目標達成が難しい場合は、必要に応じて運用代行を活用するなどして改善を図りましょう。
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