- ナレッジ・ノウハウ
- 頼富 穰
アカウント構成見直しによって、検索広告の成果を改善させた事例
検索広告において、機械学習を活用することがますます重要になっています。特に自動入札を使用する場合、アカウント構成も機械学習に最適な形にすることが成果を伸ばす上では欠かせません。また、ユーザーニーズに応じて、適切に広告グループを分けることも重要です。この記事では、アカウント構成を見直す際に意識すべきポイントや注意点について詳しく解説していきます。
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施策の概要
実施アカウントの情報
- 業種:総合人材会社
- 対象キャンペーン:ダイレクトスカウトサービスの非指名キャンペーン
- CVポイント:対象サービスの会員登録
- 入札戦略:コンバージョン数の最大化(任意の目標CPAを設定)
実施前の課題
本アカウントでは新規サービスの広告配信を行っており、クライアント指定のアカウント構成でトライアル運用を行っていました。配信から3か月が経過し、実績の振り返りを行ったところアカウント構成に大きく改善余地があると考えられたため、アカウント構成の再構築を提案し、構成の見直しを行いました。
実施概要
ユーザーニーズのバリエーションに合わせて広告グループと入稿KWを再編成。
同時にRSAのアセットの差し替えを行い、①機械学習が進みやすいシンプルなアカウント構成②ユーザーの興味喚起をしやすい広告訴求となるようにしました。
- 従来
- 非指名キャンペーン内に複数の広告グループが存在しているが、各広告グループで拾っている検索語句(ターゲティング)に一部重複が見られた
- ボリュームキーワードを入稿している広告グループにCVデータが集中しており、他の広告グループで機械学習の最適化が上手くはたらいていない可能性が考えられた
- 各広告グループで共通のRSAアセットを使用している部分もあり、よりユーザーニーズに沿った広告訴求の出し分けを行えば成果向上を見込めると考えられた
- 導入後
- 過去3か月の配信データとユーザーインタビューの情報を基に、広告グループを①認知層向け②ライトユーザー向け③準顕在層向けの3つに再編成
- ユーザーニーズごとの主要KWボリュームを調査し各広告グループで機械学習の最適化がスムーズに進むように編成
- ユーザーニーズの分類に沿って、各ユーザーの興味関心が高いと考えられる語句をRSAアセットに追加し、各広告グループごとで訴求の出し分けの緩急を強めた
ユーザーニーズの分類の際は、過去3か月間の検索語句をテキストマイニングにかけて語句同士の関連性や出現頻度の分析を実施。ある程度ニーズの分類について仮説立てを行ったうえでデプスインタビューを実施し、仮説の精度を高めていきました。
(テキストマイニングを活用して顧客ニーズを分析する具体的な手順について知りたい方は以下の記事もあわせてご覧ください。)
結果
実施前後比較
導入前と導入後の「学習期間終了後の1か月」の数値で日当たり実績を比較
施策実施後の初動の調子が良かったため配信金額は増加するも、それを上回るCV増加を実現することが出来、CPAを下げながら獲得量を大幅増加させることが出来ました。
ユーザーニーズに応じて広告グループを再編成のうえ、広告文のアセットにユーザーの関心事に紐づく語句を入れたことでクリック率が上昇しCVRも向上しました。
考察
以下、検索広告にて①アカウント構成見直しを行う際のポイント②アカウント構成の見直しを行うべきタイミングの2点について考察します。
媒体推奨のアカウント構成
検索広告における媒体推奨のアカウント構成というものは存在しますが、同じ商材でもターゲットや予算、獲得目標の違いなどにより最適なアカウント構成が変わるため、一律にこれがよいというものはありません。
アカウント構成の際に重視すべき項目としては、主に以下の3点が挙げられます。
ターゲティングに合わせてキャンペーン、広告グループを分類する
自社の広告が実際にどのような検索語句に対して掲載されるかはアカウント内に入稿するKWによって変化しますが、自社の商材を訴求する対象になるユーザーのニーズは一つではありません。
アカウント構成の際には、自社の広告で呼び込む対象となるユーザー群を定義し、ユーザーニーズのバリエーションに沿って広告グループを分類するという方法がおすすめです。
比較的自社の商品に関心の高い顧客層や顕在層であれば、自社の商品・サービス名(または関連語句)で検索行動を行っている可能性が高いため、それらに対応するKWと広告を顕在層向けの広告グループに入稿したほうが効果が高まります。
一方潜在層に関しては、潜在的に自社の商材によって解決できる課題や欲求を抱えているものの、直接的に自社の商品やサービス名を検索することは考えられないため、より抽象度の高いボリュームワードをKWとして広告グループに入稿する必要があります。
アカウント構成を行う際には、アカウント内の上流の階層から下流の階層までチェックをし①ユーザーニーズを適切に分類できているか(キャンペーン、広告グループ、KW)②分類したニーズに対して効果的な訴求を打ち出せているか(広告文)の2点について推敲のうえ、一貫性のあるアカウント設計を目指しましょう。
機械学習の最適化が進みやすいアカウント設計にする
機械学習の最適化とは、ユーザーに関する様々なシグナルを学習素材とすることで、機械が広告の配信成果を最大化するための一連の挙動のことを指します。
さきほど広告グループはユーザーのニーズに応じて分類すべきという話を挙げましたが、ニーズを細分化しすぎて過度に広告グループを分類した場合、アカウントによっては一つの広告グループ内に蓄積する学習データが不足し、機械学習が回らない可能性があります。
広告グループの理想数はアカウントによって様々ですので一律の推奨数はないのですが、広告グループの作成をする際は、ターゲティングだけでなく機械学習の最適化に十分な学習データを確保できるか?という観点も忘れないようにしましょう。
また、特定の広告グループにCVが集中しており他の広告グループではほとんどCVが発生していない場合なども注意が必要です。
入稿しているKWに問題が無いのであれば、CVが発生していない広告グループはそもそもユーザーの検索量が少ない≒需要が小さい可能性があるため、別のターゲットに対する訴求点を見つけて広告グループを差し替えたほうが効果的な場合もあります。
(なお、広告運用における機械学習の基本的な仕組みについては以下の記事をご覧ください。)
日予算設定のバランスを調整する
各キャンペーンの日予算金額の配分に関しては、実際に広告を配信してみてどれくらいの比率になるか検証してみないと未知数の部分もありますが、さきほどのマーケティングファネルの図のように、一般的には指名検索よりも汎用ワードで検索する潜在層ユーザーのほうが多いため、指名・非指名キャンペーンで分類する場合は非指名キャンペーンに多めに日予算を配分するという方法もあります。
一方で広告の配信金額は必ずしも日予算に近い金額で配信されるわけではないため、日によっては2倍近くまで配信金額が伸びることも考えられます。
各キャンペーンの日予算配分を誤ると、確保していた予算に余剰が生まれ本来であれば獲得に繋がっていた可能性のあるユーザーを逃してしまう可能性があるため、予算配分の勘所がつかめない場合はキャンペーンの共有予算の設定を使用することを推奨します。
大きな変更を加えた直後の機械学習の挙動、注意点
ここでは、広告グループの構成や入札戦略の変更など、アカウントに対して比較的影響度の大きい変更を加えた直後の挙動について説明します。
配信金額が増加する可能性がある
アカウントに対して大きな変更を加えた直後は、一定期間配信金額が増加する可能性があります。これは、機械学習が学習の最適化に必要なデータを集めるために入札を強めた結果、CPCが上昇する可能性があるためです。
もちろん全てのケースで上記の挙動が発生するわけではありませんが、予算に対してシビアに管理をしなければならない場合は日予算キャップをかけるなどして配信金額をコントロールする必要が出てきます。
CPAが安定しない可能性がある
アカウントに対して大きな変更を加えた直後は、CV獲得数が安定せずCPAが乱高下する可能性もあります。学習期間中は文字通り機械学習が与えられた設定上で成果が最大化するポイントを見極めている期間ですので、うまくCV獲得が進む日もあれば失敗する日もあります。
機械学習は上手くいったケースだけでなく失敗したケースも学習データとして活用していますので、数日間CPAが上昇傾向にあるからといって、入札戦略や単価の変更を頻繁に加えるのはおすすめできません。
学習期間中は過度な変更を控え、機械学習の学習を見守るようにしましょう。
成果が悪化する可能性がある
機械学習も万能ではありませんので、変更を加えた結果、従来より成果が悪化する可能性もあります。学習期間が終了してもしばらくの間成果が悪化傾向にある場合は、どの指標が変化したのか、変化が起きた背景を分析して「当初の狙いに対して目的は達成できたのか?」「次に取るべきアクションは何か?」ということを明確にするようにしましょう。
特に配信を開始してから間もないアカウントはいきなり成果が安定することは稀ですので、施策の検証サイクルを高速で回し、徐々に理想値に近づけていくというスタイルが運用型広告にはマッチします。
アカウント構成の見直しを行うタイミング
今回のように予算を増やしてより多くのCV獲得を狙う場合だけでなく、アカウント構成の見直しを行うべきタイミングは複数あります。
一例となりますが、以下のようなアカウントコンディションの場合は見直しを行う必要があるでしょう。
広告グループの分類がターゲティングとマッチしていない
上述のように、アカウント構成の見直しを行う際には「ターゲティングに応じたアカウント構成が出来ているか?」という観点でチェックをしましょう。
ターゲティングが異なる広告グループにも関わらず同じ広告文やLPで訴求を行っている場合、大枠のニーズは合致していても細かい点でユーザーの期待値と逸れている可能性も考えられるため、獲得機会の損失に繋がります。
広告グループ全体のCTRが低い、直帰率が高くCVRが低い等の課題が残存する場合は、一度アカウント構成の見直しを行いユーザーニーズと現状の広告グループやKW構成の仕方は合致しているのか再検討することをおすすめします。
特定の広告グループにCVが集中している
特定の広告グループのみにCVが集中しており、他の広告グループでほとんどCVが取れていない場合もアカウント構成の見直しを行ったほうがよいでしょう。
CTRやCVRが極端に低く、広告文やLPの差し替えによりCV数を増加させる見込みがある場合は別ですが、そもそも広告グループに入稿しているKWの検索量が少ない場合などはニーズが小さいターゲットである可能性があるため、他のターゲティングを検討して差し替えたほうが有効である可能性があります。
新規KW追加やマッチタイプ拡張の余地が薄い場合などは「そもそもこのターゲットに訴求をするべきか?他に有効なターゲットがいるのではないか?」と再考することを推奨します。
長期間アカウント構成の見直しを行っていない
アカウント構成の見直しに関しては、一律で「このタイミングで行うべき」というものはありませんが、長期間アカウント構成の見直しを行っていない場合は注意が必要です。
ユーザーのニーズは不変のものではありませんし、新たな競合プレイヤーの台頭など市場環境の変化によってユーザーの価値観や優先順位が変化することもあります。
目まぐるしく変化する外部環境に応じて随時アカウント構成を再構築していきながら、獲得機会の損失を防ぐようにしましょう。
まとめ
アカウント構成の見直しの際は、以下のポイントを参考にしてみてください。
- アカウント構成の見直しの際は、
①ユーザーニーズを適切に分類できているか(キャンペーン、広告グループ、KW)
②分類したニーズに対して効果的な訴求を打ち出せているか(広告文)
の2つの観点をチェックする - 広告グループの分類、KWの入稿の際は機械学習の最適化が進むように十分なコンバージョンを確保できるように配慮する
- アカウント構成の見直しを行った直後は配信金額の増加、CPAの乱高下なども考えられるため、
①日予算キャップをかける
②学習期間のCPA上昇は許容とし可能な範囲で入札戦略や単価の変更は行わない
③学習期間終了後2~3週間程度の挙動を見て当初の狙いを達成できたのか?をチェックする
ようにする - ターゲティングが異なる広告グループ間で同じ広告文やLPを使いまわしている場合や、特定の広告グループのみにCVが集中している場合などはアカウント構成の見直しの余地がある。外部環境の変化に応じてアカウント構成を再構築し続けることで、獲得機会の損失を防ぐことが出来る
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また、広告運用という手段に縛られずにクライアントの目的を実現するため、クリエイティブ制作ブティックのQeticやインハウス支援に強いアタラ、 BtoB向けインサイドセールス支援を得意とするセールスリクエストなど、豊富なグループアセットも抱えています。
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