- ナレッジ・ノウハウ
- 頼富 穰
顧客ニーズを理解するためのテキストマイニングツール活用方法
>>オーリーズが分かる資料セット(サービス資料・事例集)をダウンロードする
目次
「テキストマイニング」とは
「テキストマイニング」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。
簡単に説明すると、大量のテキストデータを自然言語処理(NLP)の技術を使って解析し、有益な情報を見える化するAI技術のことを「テキストマイニング」と言います。
テキストマイニングでは、顧客の口コミやアンケート、SNS投稿、メール、カスタマーサポートでの記録などのテキストデータが解析対象となります。
テキストマイニングを活用することで、文章を細かく解析しながら顧客インサイトを掴むことができるため、顧客ニーズを分析する目的で、マーケティングの現場で広く利用されています。
「テキストマイニング」最大の利点は、効率性
顧客の口コミを分析する場合など、大量の定性データを分析するケースでは、目視でデータを分析するには膨大な労力がかかってしまい、かつ情報の取りこぼしが発生するリスクも大きく、分析する人によって精度に差が出やすいというデメリットがあります。
一方、今回ご紹介するテキストマイニングの手法を活用すれば、大量のテキストデータを短時間で処理でき、取りこぼしも少なく、バイアスを排除して客観的にデータ分析が行えるため、人間が目視で分析するよりもより正確な分析を行うことが可能です。
顧客ニーズの正確な理解は、マーケティングの基本です。
顧客のニーズに合ったやサービスを提供することで、顧客満足度の向上、売上増加やリピート率の向上が期待できます。
また、顧客ニーズの変化に素早く対応できるかどうかで、競合他社との差別化や、市場での優位性を強化することにもつなげられるため、マーケティング業務において、テキストマイニングを活用する意義は非常に大きいと言えます。
そこで本記事では、テキストマイニングをマーケティング分析に活用する方法論の一例として、広告配信のデータ(検索語句)をテキストマイニングにかけることで、顧客ニーズを詳細に分析し、広告アカウントの成果改善に活かす具体的な手順についてご紹介します。
顧客ニーズを把握する手段
テキストマイニングの具体的な手順をご説明する前に、そもそも、顧客ニーズを把握する手段にはどのようなものがあるのか、おさらいしておきましょう。
顧客ニーズを把握する代表的な手段として以下の4つが挙げられます。
1.アンケート調査
アンケート調査は、調査項目に対して事前に仮説設計を行い、収集したい情報を明確にすることが重要です。知りたい情報に対し、どのような質問をすれば効果的に情報収集ができるかを事前に考える必要があるため、自社にアンケート調査のノウハウが少ない場合は、外部の調査会社に依頼をかけるケースもあります。
手軽に大量のアンケート回答を集めたい場合には、Googleフォーム等のアンケート作成ツールを活用するのも良いでしょう。
2.インタビュー調査
インタビュー調査にはいくつかの代表的な方法があります。
例えば、複数の同質の対象者に対して、一度にまとめてインタビューを行うグループインタビュー、対象者1名に対してインタビュアーがヒアリングを行うデプスインタビュー、Web会議ツールや電話などオンラインコミュニケーションで情報収集を行うオンラインインタビューなどがあります。
3.行動観察調査(エスノグラフィー)
調査対象者の自宅に訪問したり、外出先での行動の様子を観察するなどして、対象者の行動の裏にある潜在的な欲求やインサイトを発掘する調査方法が「行動観察調査」です。
対象者の言葉だけでなく行動観察を行うことができるため、言葉に表れない示唆的な情報から新たな気づきを得ることができるのが特徴です。
4.ソーシャルリスニング
SNS上で不特定多数の対象者に声をかけ、特定の企業やプロダクトに対する消費者の印象や評価に関する情報収集を行う調査手法です。
リアルタイムに消費者の「生の声」を収集できるため、季節や世代間ごとのトレンドを押さえた商品開発をおこなう場面や、企業ブランディングの実態調査などで活用されます。
これら4つの代表的な手法はすべてテキストマイニングを使うことができますが、特にソーシャルリスニングのように、1日のデータ収集量が数万件など膨大になる場合は、分析効率の観点からテキストマイニングを活用することをおすすめします。
代表的な「テキストマイニングツール」
テキストマイニングを行う際は、「テキストマイニングツール」を利用します。代表的なところでは以下のようなものがあります。
見える化エンジン
国内シェアNo.1のSaaS型テキストマイニングツール。SNSをはじめ、クチコミやアンケート、音声認識データなど、さまざまな顧客の声を取り込み・分析し、レポートの一本化までスピーディーにおこなうことができる。初期費用(60万円~)、基本利用料(15万円~)。
TextVoice
テキストマイニングツールとしての基本機能を搭載。言葉の意味をより詳細に捉えることができる「組み合わせ表現機能」や「類義語辞典の自動生成機能」を持ち、単語同士のつながりをマップやネットワーク、ランキングなどさまざまな方法で可視化できるのが特徴。初期費用(20万円)、月額利用料(10万円~)。
AIテキストマイニング
無料で行えるテキストマイニングツール。初期設定は不要。ソフトのインストールをしなくてもブラウザから使える手軽さが特徴。分析したいテキストをコピペ、もしくはファイルをアップロードするだけで使用できるため、テキストマイニングを始めてみたいという初心者におすすめ。
テキストマイニングツールで検索語句を分析する手順
ここからは実際に、ユーザーローカル社が提供する『AIテキストマイニング』を使って、検索広告における傾向の把握から、ユーザーニーズの仮説立てまでを行ってみましょう。今回は、ユーザーが実際に検索していることから、ニーズが現れやすいと考えられる「検索語句」をもとに分析をします。
今回はサンプルデータとして、広告の検索語句の代わりにスポーツ用品メーカーのECサイトの流入キーワード約2万語をローデータとし、テキストマイニングツールにインポートした結果をご紹介します。
【今回使用したサンプルデータ】
- スポーツ用品メーカーのECサイトへの流入キーワード
- 2023年2月~4月に検索された約2万語
以下の図は、検索したキーワードが品詞単位で分解され、出現頻度別に大きさが分けられています。青色が名詞、赤色が動詞、緑色が形容詞を表しています。
テキストマイニングツールは、2万語を超える検索語句をすべてチェックし、出現頻度や品詞単位のグルーピングを行うという多大な作業を、数秒程度でアウトプットできます。
ほかにも、以下の図のように、単語同士の関連性を分析して関係が近いものをマッピングしたり、膨大な文章を要約する機能もあります。
分析結果から仮説を立てる
次に、前章の結果を材料に、ユーザーニーズの仮説を立てていきましょう。この際、分析結果をそのまま流用するのではなく、必要に応じて品詞別で再成形し直すなどして「分析しやすい形」に成型する工夫も重要です。
今回はあくまで仮想問題ですので仮説の精度は緩いですが、テキストマイニングの分析結果とその他データを組み合わせると、例えば、以下のような着想が得られます。
仮説例(2023年2月~4月の検索語句の分析結果を参照)
- 2月~4月にバスケットシューズ、ゴルフシューズの新作発売に合わせて競合他社がディスプレイ・SNS広告の露出を増やしており、該当商品の検索量自体が増加している。これらの影響で検索需要が増加したことによって、サイト流入数の増加に繋がっているのではないか?
- Paidyを利用できる他社オンラインサイトが増加しており、後払い決済という選択肢が一般化しつつあるため、これまでは予算が足りず購入をあきらめていたユーザーの流入が増えているのではないか?
- 気候が温かくなり、ユーザーの年齢を問わず体を動かすことの需要が高まっている。特に学生は2月~3月のタイミングで部活動のウェアや運動靴を買い替える動きが強まった可能性があるのではないか?
💡 テキストマイニングで分析をする際の注意点
ここで、テキストマイニングツールを利用した分析での注意点をお伝えします。
1. 品詞ごとの出現頻度
普段みなさんがキーワード検索をする場合をイメージしてもらえるとわかりやすいのですが、掛け合わせキーワードでは名詞が主軸語句になることがほとんどです。そのため、検索語句をテキストマイニングにかけると、名詞の頻出度が高く出ます。
動詞や形容詞は名詞の修飾表現として使用されることが多く、名詞と比べると検索語句内の頻出度も高くないため、「どの単語がよく使われているのか?」を分析する際は、品詞ごとの頻出度を分析する方が良いでしょう。
2. 広告におけるインプレッションが考慮されていない
上記のように検索語句をコピペして分析素材にする場合、その検索語句でのインプレッションはテキストマイニングの結果に反映されません。対象とした検索語句の中から分解された単語単位での出現頻度しか分析できないのです。
テキストマイニングはあくまで膨大なテキストを品詞単位に分割したうえで、「それぞれの語句がどの程度頻出するのか?」「それらの単語はどの程度関連性を持っているのか?」を分析するツールです。
テキストマイニングにおいて頻出とされているキーワード=インプレッションが多い検索語句に多く含まれるとは限らないということを念頭におき、媒体の管理画面でインプレッションをあわせてチェックするようにしましょう。
テキストマイニングを広告アカウントの成果向上に活用する3つの方法
1. ターゲティングに活かす
広告配信を始めて日が浅く、配信成果が安定していないアカウントであればあるほど、ターゲティングの見直しは重要です。
アカウントの構築段階で精緻なターゲティングができていることが理想ですが、実際は、始めから細かなニーズまで把握しきれないケースがほとんどです。多くは、仮説をもとにターゲティングを行い、配信成果をもとに徐々に精度を上げていくという運用スタイルになるでしょう。
検索語句のデータをテキストマイニングにかけることで、見込み顧客が実際にどのような語句で情報収集をしているか推し量ることで「どのようなユーザーが自社の広告を見ているか」の仮説立てができ、より精緻なターゲティングに繋げることができます。
2. 広告文に活かす
検索語句の分析は、広告文の訴求を考える際のヒントにもなります。
テキストマイニングでは、実際にユーザーがどのような語句で検索行動をおこなっているか、分析しやすい形で可視化できるため、目視で検索語句の分析をおこなう場合と比較して、現状の広告文の訴求とユーザーニーズのズレに気づきやすくなります。
また、広告の品質の向上を図ることで、CPC(クリック単価)を抑制し、効率的に広告のインプレッションを拡張することができます。検索語句の分析から現状の広告文のテコ入れ要素を探ることは、広告の配信成果を向上させる上でも重要な観点です。
3. LPの導線設計に活かす
ユーザーがLPにどのような検索語句で流入しているかを分析すれば、オンライン上での顧客の検索意図やインサイトを推測することに役立ちます。
リアル店舗で得られる定性情報や顧客インタビュー等の情報と組み合わせれば、顧客インサイトに合わせて訴求の出し分けをおこなったり、より効果的な商品・サービス訴求の導線改修のヒントを得ることができます。
また、LPに流入したユーザーの離脱防止を図ることで、CVR(コンバージョン率)の向上にも繋がる可能性があるため、検索語句の分析を行う際には、テキストマイニングの活用を積極的に検討することをおすすめします。
(以下の事例ではテキストマイニングを活用して顧客ニーズを分析し、アカウント構成の見直しに活かしたことで、検索広告の成果改善につなげた事例をご紹介していますので、あわせてご覧ください。)
おわりに
今回は、テキストマイニングを活用して顧客ニーズの分析に役立てる方法についてご紹介しました。テキストマイニングは、広告媒体の管理画面上で観測できる各種データや、店舗の販売実績等のオフラインデータなど、複数の切り口から分析を行うことで、仮説の精度を高めることができます。
テキストマイニングの特長を理解して、ぜひ活用していただければと思います。
CONTACT
運用型広告の戦略策定・成果改善で
お悩みの場合は、オーリーズにご相談ください。
オーリーズは、「代理店はマーケティング戦略の立案から実行までを一貫して担うことで、はじめて価値を発揮できる」と考えています。
そのため、オーリーズでは非分業の支援体制をとっており、運用者1人あたりの担当社数を4社までに制限することで、 運用者が作業のみに追われるのではなく、よりマーケティング戦略の立案を行える仕組みを取っています。
また、広告運用という手段に縛られずにクライアントの目的を実現するため、クリエイティブ制作ブティックのQeticやインハウス支援に強いアタラ、 BtoB向けインサイドセールス支援を得意とするセールスリクエストなど、豊富なグループアセットも抱えています。
広告運用の代行やインハウス体制の整備、自社サイトやLPの制作・運用などの課題感は、お気軽にオーリーズにご相談ください。
オーリーズのサービス資料をダウンロードする(無料)
オーリーズのコーポレートサイト
支援事例(クライアントの声)
オーリーズブログ