広告運用代行を依頼するべきか自社で運用を続けるべきか、運用体制を判断する際に悩みを抱える方は少なくありません。

そこで本記事では、広告運用代行の役割やメリット・デメリットなどを整理し、自社で運用代行を活用すべきか判断するための材料を提供します。

広告運用代行の基本を理解し、自社の状況に最適な選択肢を見極めるための一歩が踏み出せる一助となれば幸いです。

広告運用代行とは？5分で全体像を理解

広告運用代行とは、Google広告やYahoo!広告、SNS広告などのWeb広告の配信業務を、外部の専門家に委託できるサービスです。

ここでは、具体的にどのような業務を任せられるのか、費用の相場はどれくらいかなど、広告運用代行の概要を5分で理解できるように整理しました。

何を支援してもらえる？

広告運用代行では、以下のような業務を一括して対応してくれるケースが一般的です。

広告運用代行という名前の通り、プロの運用者がアカウントの分析や入札調整などの運用改善業務を代行し、委託先によっては、広告戦略の策定やクリエイティブ改善などの周辺業務も踏み込んで支援してくれることがあります。

運用代行にはどんなものがある？

広告運用代行には、大きく分けて「誰が支援を行うか」と「どの範囲を支援するか」の2つの軸で分類ができます。

まず、提供主体の違いとしては、主に「代理店」と「個人（フリーランス）」があります。

次に、支援タイプの違いとしては、「総合支援型」と「媒体特化型」に分類されます。

どのような委託先が最適かは、自社の予算・目標・社内体制などによって異なります。依頼前にあらかじめ整理しておくと、選定の失敗を防ぎやすくなります。

費用はどれぐらい？

広告運用代行にかかる費用は、「広告費の20％前後の手数料を支払う料率型」が最も一般的です。たとえば広告費が100万円であれば、手数料は約20万円となります。

料率型は、広告主と代理店の利益が連動するため、運用改善のインセンティブが働きやすい仕組みでもあります。

一方、広告費が少額になると代理店の採算が確保できないことも多いため、固定報酬型（月額◯万円）での対応や、そもそも受託を断られるケースもあります。

このような背景から、月間広告費が100万円未満程度の場合は、代理店に依頼しても費用対効果が見合いにくい可能性があります。

その場合は、フリーランスへの個人委託や、インハウス支援を受けながら自社で運用するほうが、コストパフォーマンスを合わせやすい傾向にあります。

運用代行4つの活用ケース

株式会社イルグルムの調査では、73%の企業が広告代理店を含む外部パートナーを活用していると報告されています。

出典：【調査報告】Web広告運用に関する広告代理店の利用状況、ビジネスマッチング利用状況などを調査（ADHOOP）

この章では、なぜ多くの広告主が広告運用代行を活用するのか、その背景にある「4つの課題」についてお伝えします。

ケース1｜リソース不足を解消したい

広告運用代行を検討するきっかけの1つはリソース不足です。

社内に広告運用の専門人材がいなかったり、採用を試みても適切な人材が見つからないといった課題から、運用代行を検討するケースです。

また、仮に運用担当者がいたとしても、他業務と兼務しているために広告アカウントの細かな調整や分析、改善活動に時間が割けず、広告効果を向上させることが難しい、といったリソース観点の課題から運用代行を探すケースも多いです。

ケース2｜広告運用の成果を改善したい

同様に自社で運用している場合でリソース面ではなく、自社が抱える課題の解決や、より高い広告効果といった広告効果の観点から運用代行を検討することもあります。

具体的には、
「CPAの悪化やROASの低下が見られるが、自社では解決方法がわからない」
「競合他社と比較して成果が出ず、自社運用に限界を感じている」
「広告の効果を正しく計測できる体制が設計できておらず、PDCAサイクルが機能しない」などの課題です。

さまざまな要因から広告効果を自社だけでこれ以上改善が難しいと考えた際にも、運用代行を依頼するきっかけとなります。

ケース3｜事業変化に伴うニーズに対応したい

新規事業や新商品を立ち上げたり、新しいターゲット層を開拓する際にも、広告運用代行を利用するケースがあります。

特に事業規模が拡大し、広告予算の増額や複数の広告媒体（Google、Yahoo!、SNS等）を統合して運用管理する必要が生じると、専門的な知識と体制が必要となります。

これまでSEOやSNS、紹介をメインとしていた企業が、広告からの集客を強化したい、オフライン集客からオンライン集客へ本格的にシフトしたいと考えた際にも、広告運用代行が選ばれます。

ケース4｜既存代理店に対する不満がある

既に広告代理店に依頼している企業でも、委託先の成果が期待に満たない、コミュニケーションが円滑でない、レポートが数値報告だけで具体的な改善提案がないといった不満を抱えることがあります。

また、自社のビジネスや業界への理解不足や担当者の頻繁な交代、高い手数料に対する費用対効果の不満から、より条件の良い代行会社への乗り換えを検討する企業も少なくありません。

WACUL社が実際に行った調査でも広告代理店に対して不満に感じるポイントとして、「明確な改善提案がない」、「成果が出ていない」「レポートの内容がわかりにくい」などの不満が上げられています。

引用：インハウスか広告代理店か。Web広告で成果を上げる運用体制とは｜Web広告の運用実態調査Ⅱ

広告運用代行を依頼するメリット・デメリット

広告運用の体制には、自社で運用するなどの選択肢もある中で、運用代行に依頼するメリット・デメリットはどのような点にあるのでしょうか？

ここでは、広告運用代行を依頼するメリット・デメリットそれぞれについて見ていきます。

3つのメリット

広告運用代行を依頼する代表的なメリットは以下の3つです。

1.成功確率を高めやすい

1つ目のメリットは、プロに委託することで、最初から最適な方法で広告を始められるため、ムダなく最短距離で成果へと繋げられることです。

自社に広告運用の経験者がいる場合は、自社で運用をするのも良い方法の一つですが、インハウス運用が成功するケースはそう多くありません。

初めて広告を掲載する場合や、自社に経験者がいない場合は、担当者の知識・経験不足によって誤った運用をおこなってしまい、思ったような成果を得られないケースも見受けられます。

そのため、早期に結果につなげたい、目標達成のスピードを上げたいと考えている場合は、専門スキルを持った人材を抱えている運用代行会社に委託するほうが良いでしょう。

2.PDCAサイクルを短縮できる

2つ目のメリットは、経験豊富なプロが必要な施策の取捨選択と実行を担うため、実行スピードを早めることが可能です。

以下は広告運用でよく発生する施策の一例を並べたものですが、広告効果を最大化するためには、これらの施策がどんな課題に効くものなのか正しく理解した上で、適切なタイミングで実行することが重要です。

運用工数はアカウントの予算規模などで変動するため一概には言えませんが、たとえば月100～500万円規模のアカウントであれば、運用経験者でも月次で40～80時間程度の工数が必要になります。

十分なリソースを確保できない場合は、運用代行を利用することで、自社のマーケティング担当者が使える工数を確保でき、施策の実行スピード向上につながります。

3.最新情報を入手しやすい

3つ目のメリットは、最新情報のキャッチアップです。

運用代行会社は広告専任のチームを持ち、媒体アップデートや新機能などの情報を日々収集しています。Web広告は変化が激しく、自社だけで最新情報を網羅するには多くの工数がかかります。

また、複数の案件を担当するなかで得た成功・失敗事例や競合の動きも踏まえた提案が可能で、媒体社との連携が深い代理店であれば、新機能などの情報を早期に入手できることもあります。

専門知見を豊富に抱えている代行会社と繋がっておくことで、広告に関する情報収集や取捨選択がしやすくなり、変化に迅速に対応しながら広告運用の質を高めることができます。

3つのデメリット

広告運用代行を依頼する代表的なデメリットは以下の3つです。

1.自社ノウハウが蓄積しづらい

広告運用代行を依頼するデメリットの一つとして、自社の運用ノウハウが蓄積しづらい点が挙げられます。代行を依頼する場合、実際に運用設定や調整を自社で行わないため、成功体験や失敗体験を踏まえたノウハウの蓄積が難しくなることがあるからです。

広告運用において、経験者が実際に手を動かすことで得られる教訓や感覚的な理解は非常に重要です。しかし、外部に依頼することでその部分が欠けてしまうため、長期的に自社の広告運用のスキルや知識を深めることが難しくなります。

この点が気になる場合、自社で一定の運用を行いながら代行を活用するという方法も考えられます。

2.開始直後はコミュニケーションコストがかかる

もう一つのデメリットは、コミュニケーションにかかるコストです。広告運用代行を依頼する場合、自社のチームと外部の代行担当者との間で、事業やプロダクトの詳細、これまでの戦略や調整内容などを認識合わせる必要が出てきます。

特に、自社で長年マーケティングに携わっていない代行会社の担当者に対しては、自社の背景情報を伝え、共通の理解を得るための時間と労力が必要です。

初期段階ではこのコミュニケーションが円滑に進まないことがあり、連携を取りながら成果を改善していくために、一定のコストと手間がかかることを考慮する必要があります。

3.追加の費用がかかる

運用代行に依頼する際に発生する追加の費用（代理店に支払う手数料）自体は、必ずしもデメリットではありません。

しかし、かけた追加費用に対して成果向上が見込めない場合、投資対効果（ROI）が悪化するリスクがある点には注意が必要です。

広告運用の目的は、投入した予算に見合った成果を出すことです。もし代行を依頼しても期待する成果が上がらない場合、その投資が無駄になってしまいます。

そのため、運用代行を依頼する際には、しっかりと成果につなげてくれる代理店を選ぶこと、支援開始後も密に連携し、共に成果改善を目指していく動きが重要です。

運用代行を利用すべき判断基準

ここまでの情報を踏まえ、自社で広告運用代行を活用するか迷っている方に向けて、運用代行を活用すべきケースと自社で運用したほう良いケースをご紹介します。

運用代行を活用すべきケース5つ

1. 広告運用のリソースが不足している

広告運用は専門的な知識や経験が求められるため、社内にノウハウがない場合、成果を出すことが難しいのが現状です。

人材採用も容易ではなく、育成には時間とコストがかかります。運用代行を利用することで、即戦力となる専門家の知識や経験を活用し、早期に成果を上げることが期待できます。

また、自社でノウハウを蓄積するまでの間、一時的に運用を任せるという選択肢も考えられます。

2. 自社で運用しているが成果が振るわず、改善の兆しが見えない

自社で広告運用を行っているものの、目標とする成果が出ず、改善策も見当たらない場合は、広告運用代行の活用によって成果向上が見込める可能性があります。

このような状況では、外部の専門家の視点を取り入れることで、現状の課題を明確にし、具体的な改善策を見つけることができる可能性があります。

運用代行会社は、さまざまな業界や規模の広告運用を経験しており、豊富なデータとノウハウを持っています。

3. 外部ノウハウを取り入れて広告運用を最適化したい

自社だけで運用していると、どうしても視野が狭くなりがちです。外部の客観的な視点を取り入れることで、新たな戦略や改善点が見つかることがあります。

運用代行会社は、常に最新の広告運用トレンドやノウハウを把握しており、客観的なデータに基づいた分析と提案を行ってくれます。

これにより、自社の広告運用を最適化し、より高い成果を目指すことが可能です。

4. 無駄なく最短距離で目標達成につなげたい

広告運用は、試行錯誤を繰り返しながら最適解を探していくプロセスが必要です。しかし、時間や予算には限りがあるため、できる限り無駄なく、最短距離で目標達成につなげたいと考えるのは当然です。

運用代行会社は、豊富な経験とノウハウに基づき、初期段階から効果的な戦略を立案し、実行してくれます。これにより、時間や予算を無駄にすることなく、効率的に目標達成を目指せます。

5. 複数の広告媒体を運用する必要が出てきた

広告予算が増えたり、複数の広告媒体を運用する必要が出てきたりすると、運用が複雑化し、自社だけでは対応しきれなくなることがあります。

このような場合、運用代行会社に委託することで、各媒体の特性に合わせた最適な運用を行ってもらうことができます。

また、複数の媒体を統合的に管理し、効果測定や分析を行うことで、より効率的な広告運用が可能になります。

自社で運用すべきケース3つ

以下はあくまで代表例ですが、運用代行を活用せずに自社で運用したほうが良いケースもあります。

1．まずは少額予算でテスト配信したい場合

たとえば、月間予算が数万円〜数十万円などの規模感でテスト的に広告を配信する場合、代理店に運用を委託しても費用対効果が合いにくいケースが多いです。

代理店に委託すると、初期設計やレポーティングの手間も含めて一定の固定費が発生するため、テスト段階ではコストが相対的に重く感じられることがあります。

まずは自社で広告の反応を見てから、改善の余地や成果の伸びしろを判断するのがよいでしょう。

2．社内に広告運用の経験者がいて、十分なリソースがある場合

Web広告の経験者が在籍しており、十分なリソースを確保できる状態であれば、自社内でPDCAを回すことで柔軟かつスピーディな対応が可能です。

たとえば、日々の数値変動に応じて即時に入札やクリエイティブを調整したり、ちょっとした検証を気軽に試したりできる点は、内製化の大きなメリットです。

自社のビジネス理解が深い担当者であれば、打ち手の判断もズレにくくなります。

3.広告の役割が限定的で、マーケティング施策における優先順位が低い場合

広告が全体戦略の中でサブ的な位置づけであれば、必要最小限の設定・管理で十分なことも多く、その場合は無理に外部委託する必要はありません。

たとえば、SEOやSNS経由での流入がメインで、広告は一部のターゲット向けに補完的に活用している程度であれば、広告に高いパフォーマンスを求めるより、運用コストを抑えることのほうが優先されやすくなります。

運用代行の費用相場

広告運用代行の費用相場は、おおむね広告予算の20％前後を手数料とするケースが一般的です。たとえば、月500万円の広告予算であれば、500×20％＝100万円が代理店に支払う手数料となります。

手数料の計算方式は内掛け・外掛けの2種類があり、どちらの方式で計算するかによって追加費用の有無が変わります。

たとえば内掛けの場合、広告費が100万円で手数料20%であれば100万円×0.2=20万円が代理店の手数料となり、残りの80万円が広告費となります。

一方外掛けの場合は、広告費100万円に別途手数料20万円を追加するため、広告主の総支払い費用は120万円となります。

上記の手数料率型の費用体系の他にも、毎月固定の費用で契約する「固定報酬型」、支援にかかる時間・工数で計算する「時間単価型」、成果に応じて費用が変動する「成果報酬型」などの契約形態があります。

どのような手数料体系で契約できるかは代理店によって変わりますので、契約段階で認識総意がないようにしっかりすりあわせておきましょう。

よくある質問｜初心者が抱える疑問に回答

最後に、広告運用代行について初心者の方が抱える疑問に対して回答をまとめました。

まとめ｜広告運用代行を活用して成果につなげよう

広告運用代行は、自社の状況やニーズに合わせて活用することで、広告効果の最大化、業務効率化、そして最終的な事業成長に大きく貢献します。

この記事で解説した5つの判断ポイントを参考に、自社にとって広告運用代行が最適な選択肢かどうかを検討してみてください。

もし、少しでも「当てはまる」と感じる項目があれば、まずは複数の広告運用代行会社に相談し、見積もりや提案を受けてみることをおすすめします。