Meta広告の「クリエイティブがターゲティングになる」は、管理画面の数字にどう表れるか

Meta広告の「クリエイティブがターゲティングになる」は、管理画面の数字にどう表れるか

Meta広告の運用で、成果の出たクリエイティブの訴求はそのままに、コピーの言い回しやレイアウト、写真のカットなどをわずかに変えて次を作る。

いわゆる「勝ちクリエイティブの横展開」ですが、私たちも長くこのやり方を続けてきました。

横展開に期待してきたことは、例えばこんなことです。

  • 磨き込み:言い回しやレイアウトに手を入れて、当たった層への反応を少しずつ上げる
  • 延命:疲弊してきた勝ちクリエイティブを、差し替えでリフレッシュする
  • 機会の拡大:本数を増やして、配信の候補に選ばれる機会を増やす

ただ、このアプローチが機能しにくくなっている実感があります。

この変化の背景としてよく語られるのが、「Andromeda」です。私たちも、この半年でさまざまな解説や考察に触れながら、運用の考え方を見直してきました。

テーマとしては新しい話ではありませんが、具体的な配信データと一緒に語られることは、まだそれほど多くない気がしています。

今回は、その一例になればと思い、クリエイティブを変えると配信先がどう動くのかを、実際のアカウントの数字を用いながら紹介してみます。(事例の性質上、クライアント名や商材の詳細は伏せています。数字はすべて実際のものです)

マイナーチェンジだけだと、「同じクリエイティブ」扱いかもしれない

仕組みの丁寧な解説は他の方々の記事に譲り、ここでは要点にだけ触れておきます。

Andromedaは、広告が表示されるたびに、数千万本の広告の中から「ユーザーに見せる候補」を数千本まで絞り込む、配信の入り口を担うエンジンです(最終的にどの広告を表示するかは、その先のランキングとオークションが決める)。

そしてMetaは「多様なクリエイティブをアップロードするほど、Andromedaが適切なクリエイティブを選べるようになる」と公式に説明しています。逆に、コピーの言い回しやレイアウトを変えた程度の類似クリエイティブは、Metaからは「同じ広告」として扱われます。

2025年12月の公式記事には、見た目や印象の似た広告は「同じクリエイティブのバリエーション」としてまとめて扱われ、学習も配信の最適化も、広告1本ずつではなくクリエイティブ単位で共有される、と書かれています。業界で「エンティティ」と呼ばれているのは、この扱いのことです(その言葉自体は、Metaの公式資料には出てきません)。

となると、横展開に期待してきたことの多くは、いまの仕組みでは成り立ちません。

10本作っても1本と数えられるなら、選ばれる機会は増えず、「機会の拡大」は起きない。差し替えても「同じもの」の続きなら、新しい広告としてのリフレッシュ、つまり「延命」も起きない。

残るのは「磨き込み」だけですが、それは当たった層への最適化であって、新しい層に届く手段にはなりません。

同じ層への偏りや疲弊など、横展開偏重の運用で起きていたことを思い返しても、腹落ちする説明です。

そこで、自分たちのアカウントの数字を追ってみることにしました。

具体的には、コンセプト、つまり「誰の、何のための商品として見せるか」という訴求の軸から変えたクリエイティブなら、新しい層に届くようになるのか。もしそうなら、広告セットではなく、クリエイティブ単位の配信データに違いが出るはずです。

※なお、下記のどちらの事例も、検証のために設計した実験ではなく、実際の運用の中で得られたデータです。厳密な検証というより、試行錯誤の中で起きたことを、後から解釈して整理したものです。

事例1:同じターゲティング設定でも、届く年齢が動いた

まず、あるサービスの支援で、コンセプトの違うクリエイティブを投入しました。

新しいクリエイティブに配信機会を確保するため、ターゲティング設定を揃えた複数の広告セットに分けて並走させる設計です(この設計の話は、以前の記事「新規クリエイティブの配信機会を作るMeta広告のアカウント設計」に書いています)。

比較の前提はこうです。

項目内容
対象あるサービスのMeta広告(獲得目的)
設計ターゲティング設定が同一の広告セットを同時配信。違いは中のクリエイティブだけ
比較既存コンセプトのセット vs 新コンセプトのセット
クリエイティブ静止画(バナー・カルーセル)
期間・規模同時配信の2週間、2セット合計で約600万円

同じ設定・同じ期間で走った2つの広告セットを並べると、結果はこうなりました。

指標既存コンセプト新コンセプト
配信金額3,347,816円2,678,246円
リーチ約19.4万人約22.7万人
CPM4,974円3,472円
フリークエンシー3.423.43
CPA(媒体計測)22,359円15,175円

フリークエンシーがほぼ同じなので、「同じ人への表示回数」は、2つのセットで変わりません。その条件で、CPMには3割の差が出ました。

ただ、オークションでは、基本的には反応の見込みが高い広告ほど安く配信できるので、CPMの差だけなら「新しいクリエイティブの反応が良く、同じような相手に安く配信できた」とも読めます。

その読みでは説明がつきにくいのが、リーチの年齢構成でした。

年齢既存コンセプト新コンセプト届いた人数の増減
18〜24歳9.9%12.1%+43%
25〜34歳31.7%40.8%+51%
35〜44歳25.2%25.1%+17%
45〜54歳19.7%13.8%-18%
55〜64歳11.0%6.6%-29%
65歳以上2.6%1.6%-29%
既存・新コンセプトの列はリーチの年齢構成比。届いた人数の増減の列は、年齢別リーチの実数から計算

新コンセプトのセットは、リーチの4割が25〜34歳に寄り、45〜64歳は10ポイント減りました。届いた人数で見ても、新コンセプトのセットは既存より多くの人に届いているのに、55歳以上に届いた人数は3割少なくなっています。

年齢別のCPAも、55〜64歳を除くすべての年齢で下がり、25〜34歳では半分以下になりました。

つまり、同じ相手に安く配信できたのではなく、届いている年齢が、若い側に動いていました。設定は同じで、違うのは中のクリエイティブだけなので、配信先は広告セットの設定ではなく、クリエイティブで動いていたことになります。

ちなみに、この新コンセプトは、特定の年齢層を狙って作ったものではありません。人物の写真も使っていない、テキストとイラスト主体のバナーです。まだ届いていない層への探索として作ったもので、年齢構成がこのように動くことは配信結果を見るまで分かりませんでした。

プラットフォーム側も、年齢を見て配信先を変えているわけではないと思います。配信は人単位で決まっていて、年齢は、その違いを管理画面で確認できる切り口のひとつにすぎません。興味や行動など、レポートに出てこない次元でも届く人は変わっているはずで、年齢別のデータに現れたのは、その一部だと読んでいます。

なお、これが「クリエイティブの中身による、露出時点の振り分け」なのか、「反応を学習した結果、配信が寄っていった」のかは、管理画面のデータでは切り分けられません。

自動入札の配信は、以前から反応を学習して偏っていくものだからです。また、この動きがAndromedaによるものかどうかも、外からは特定できません。

ただ、いずれにしても、クリエイティブの違いだけで配信先に差が出たという事実は変わりません。よく言われる「クリエイティブがターゲティングになる」の、ひとつの例だと思います。

事例2:クリエイティブの世代交代で、獲得する年齢が変化した

もう一つは、より長い期間での評価です。あるクリニックのMeta広告で、幅広い年齢層に利用されるサービスです。

事例1は、同時並行で配信をした比較でした。こちらは、コンセプトの違うクリエイティブを時間を置いて投入していく半年間の運用で、同じような動きが出るかを見た事例です。

項目内容
対象あるクリニックのMeta広告(獲得目的)
期間半年間(月次で比較)
計測条件全期間で同一(アトリビューション設定・計測イベントの変更なし)
打ち手狙うターゲット像ごとに、訴求の軸から変えたクリエイティブを「世代」として投入
クリエイティブ静止画バナー中心

この支援では、勝ちクリエイティブの改良版ではなく、コンセプトから別物を「世代」として作り、数ヶ月おきに新しい広告セットで追加投入してきました。前の世代は止めずに残し、配信の結果を見ながら配分を変えていきます。

半年間で投入した世代は合計3つ。その推移です。

世代配信期間配信金額CVCPA
初代開始〜5ヶ月目約337万円125件26,968円
2代目3〜4ヶ月目約91万円39件23,280円
3代目4〜6ヶ月目約126万円60件21,065円

初代は、立ち上がりは好調でしたが、配信を伸ばすにつれて疲弊していきました。フリークエンシーは2.6から3.7に上がり、同じ人への表示が増えて、新しい人に届きにくくなっていく。横展開の先で起きる、典型的な動きだと思います。

2代目は、立ち上げ月こそ好調でしたが、翌月にCTRが3分の1ほどまで落ちて失速し、早々に停止しました。シンプルに、このコンセプトはユーザーに受け入れられなかったのだと理解しています。

当たったのは3代目でした。立ち上げ月から2万円を切るCPAが出て、翌月は配信を伸ばしながら17,000円台と、半年間でいちばん良い効率でした。

どの世代も「立ち上げ時がいちばん強く、時間とともに効率が落ちる」動きだったので、この支援では、勝っている世代を残したまま、コンセプトの違う新しい世代を切らさず足していくことで、効率を保っています。

初代と3代目を比べると、こうなります。

項目初代3代目
CPM5,164円3,513円(32%減)
CTR3.68%4.45%(21%改善)
CPA26,968円21,065円(22%改善)
CVに占める65歳以上24%8%
CVに占める35〜44歳13%25%

注目したいのは、効率よりもCVの年齢構成です。初代では4件に1件が65歳以上でしたが、3代目では1割を切りました。かわりに、35〜44歳が4件に1件になりました。同じアカウント、同じ商材のまま、コンセプトを変えただけで、獲得する年齢が変わっていました。

時期をずらした比較なので、同時に配信をした事例1ほどきれいな条件ではありません。CPAの差を語るにはCV数がやや心もとなく、CPMも、時期の影響で3代目が低く出ている可能性があります。

ただ、計測条件を半年間変えていないなかでのCTRの改善と、CVの年齢構成の変化は、偶然ではなさそうです。

コンセプトから変えて、広告単位で見る

管理画面で確認できるCPMや年齢構成などで、Andromedaの動きを評価することには、限界があります。

この記事で確かめられたのは、「コンセプトを変えたら、届く人が変わった」ことまでです。似たクリエイティブがまとめて扱われること自体は、対照になるデータを取っていないので、この記事のデータでは確かめられていません。

それでも、ターゲティング設定を変えずに、クリエイティブのコンセプトを変えるだけで、届く人も獲得する層も動いていました。

勝ちクリエイティブの横展開が悪いわけではありません。当たった訴求を磨き込んで獲得を積み上げることは、いまも変わらず大事な仕事です。ただ、横展開で作った類似クリエイティブは、プラットフォームからはひとまとめに扱われます。

なので私たちは、コンセプトから変えたクリエイティブの世代を投入しながら、広告セットではなく広告(クリエイティブ)単位で、できるだけ「誰に届いたか」を評価するようにしています。

Meta広告のクリエイティブとどう向き合うかを考えるうえで、参考になれば幸いです。