指名検索広告を止めても、CV総数は減らなかった|CHEQで無駄な広告を洗い出した話
指名検索広告のCVには、広告がなくてもオーガニックで発生したはずのCVが含まれています。
ただ、広告がなくても発生したはずのCVがどの程度含まれているかは、広告を止めて、前後でCV数を比較しないと分かりません。また、仮にその割合が分かったとしても、媒体の管理画面では「広告がなくてもCVするユーザーだけ、広告を止める」という設定はできません。
今回、あるお客様で、CHEQというアドベリフィケーションツールを使って、広告がなくてもCVするユーザーを洗い出し、そのユーザーだけ広告を止めてみました。
結果、指名検索広告のCVは減りましたが、オーガニックのCVが増え、合計のCV数は減りませんでした。
広告がなくてもCVするユーザーをどうやって洗い出したのか。なぜ合計CV数が減らずに済んだのか。その経緯を書きます。(事例の性質上、クライアント名や商材は伏せていますが、数値は実際のものです)
目次
広告経由で、頻繁にサイトに来るユーザーがいた
このお客様では、CHEQというアドベリフィケーションツールを導入していました。CHEQは不正クリックを検知するために、サイトに設置したタグで広告経由のアクセスを計測し、IPアドレスやデバイス情報などから同一ユーザーを識別しています。
計測するのが媒体側ではなくサイト側なので、この計測データを使えば、不正クリックに限らず、同じユーザーの広告クリック回数を媒体横断で把握できます。
このお客様のデータを見ると、頻繁に広告をクリックしているユーザーが一定数いて、多い人では14日間で合計20回以上クリックしていました。実際、そうしたユーザーの広告クリックがどの程度の規模なのかをCHEQ社に試算してもらうと、年間10万クリックほどの規模でした。
また、頻繁に広告をクリックしているユーザーは、広告だけでなく、社名で検索してオーガニックの検索結果からサイトに来るケースが多いことも分かっていました。
つまり、頻繁に広告をクリックしているユーザーは、このお客様のことをすでに知っていて、広告以外の接点からも繰り返しサイトに来てくれる人です。
このお客様をすでに知っていて、他の接点からも来る人であれば、広告がなくてもサイトに来てくれるのではないか。 そう考えて、頻繁に広告をクリックしているユーザーにだけ、広告を止めてみることにしました。
クリック回数を基準に、広告を止めてみた
ただし、「広告を頻繁にクリックする人にだけ、媒体横断で広告を出さない」という設定は、各媒体の管理画面ではできません。そこで今回は、CHEQの「カスタムルール」という機能を使い、「14日間に20回以上広告をクリックしたユーザーには、広告を出さない(※)」という設定をしました。
※クリック回数は、CHEQが計測している全媒体の広告クリックの合算です。媒体をまたいで数える方式も、14日間という集計期間も、CHEQの仕様です。
クリック回数の基準を決める際は、CHEQ社から提供された、クリック回数別のCVユーザーの分布データを参考にしました。CVしたユーザーの大半はクリック回数が少なく、20回以上クリックしてCVしたユーザーは全体から見れば少数でした。そのため、この層への広告を止めても、指名検索広告のCVが大きく減ることはないと見込めました。
なお、最初から20回で始めたわけではなく、まずは40回以上で試し、CV数にネガティブな影響がないことを確かめてから、基準を20回に引き下げています。
指名検索広告のCVが減り、オーガニックのCVが増えた
結果は、指名検索広告のCVは減少しましたが、オーガニックのCVが増加したため、合計のCV数は減りませんでした。
なお比較は、季節性の影響を排除するため、広告を止めた後の2か月間と、前年の同じ2か月間の数字で行っています。また、オーガニックのCVは、広告と違ってユーザー単位では計測できないため、推計値を出しています。
指名検索からの流入はほぼトップページに着地するので、オーガニックCVのうちトップページに着地した分を指名検索経由とみなしました。
ただし、トップページには指名以外のクエリからの流入も含まれます。このお客様ではトップページ流入の約9割が指名検索クエリだったので、その分を掛けています。式にすると「オーガニック全体のCV数 × トップページに着地した割合 × 0.9」です。
| 指名検索広告CV | オーガニックCV | 合計CV | |
|---|---|---|---|
| 2025年4〜5月 | 2,792 | 531 | 3,323 |
| 2026年4〜5月 | 2,616 | 926 | 3,542 |
| 差 | -176 | +395 | +219 |
広告を止めても合計のCV数が減っていないことは確認できました。ただ、増えたオーガニックCV(+395)は、減った指名検索広告CV(-176)よりも大きく、置き換わりだけでは説明できません。
オーガニック自体の伸びなど、別の要因も含まれている可能性があります。増減のどこまでが広告停止によるものかは、この数字だけでは分かりません。
そこで、別の角度から確かめるため、Search Consoleでオーガニック指名クエリのクリック率を見ました。広告が出なくなったユーザーが、代わりにオーガニックの検索結果をクリックしているなら、クリック率は上がるはずです。
広告停止前の約1年間、オーガニック指名クエリの月次クリック率は16.5〜19.3%の範囲で推移しており、季節による大きな振れはありませんでした。
一方、広告停止後は2026年4月が23.0%、5月が27.8%と、どちらの月も停止前の変動範囲を大きく超えていました。
| クリック率 | 掲載順位 | 表示回数 | |
|---|---|---|---|
| 広告停止前 | 16.5〜19.3% | 1位 | 月3万回前後 |
| 広告停止後 | 23.0〜27.8% | 1位 | 月3.3万回前後 |
※Search Consoleのデータ保持期間の制約で前年4月分は取得できず、広告停止前の2025年5月〜2026年3月の数字が比較対象です。
この間、指名クエリの掲載順位も表示回数も大きく変わっていません。また、指名クエリのクリック率だけがこれほど上がるような施策は、オーガニック側には思い当たりませんでした。
あくまで推測の範囲を出ませんが、今回の広告停止によって、それまで指名検索広告からCVしていたユーザーの少なくとも一部は、広告停止後もオーガニックからサイトに来てCVしていた可能性がある、と見ています。
頻繁に来る人にとって、指名検索広告は「入口のひとつ」でしかなかった
広告を止めたユーザーは、それまでと同じように指名検索をして、サイトに来て、CVに至っていたと考えられます。変わったのは、広告から入るか、オーガニックの検索結果から入るか、という流入経路だけです。
頻繁にサイトに来ているユーザーにとって、指名検索広告はサイトを訪れる入口のひとつでしかなかった、ということです。オーガニックで受け止められる状態であれば、頻繁に来るユーザーにだけ広告を止めることで、無駄な配信を減らせます。
このお客様では、指名クエリのオーガニック順位が1位で、他社への除外依頼も定常的に行っていました。そのため、指名クエリに広告を出す他社は1社だけで、インプレッションシェアも10%未満でした。広告を止めても検索結果の一番上には自社サイトが出るので、ユーザーは広告がなくてもオーガニックから入ることができ、合計のCV数は減りませんでした。
一方、指名クエリに競合の広告が多く出ているアカウントもあります。その場合、広告を止めたユーザーが競合の広告をクリックする可能性があり、今回のようにオーガニックに移るとは限りません。
競合が多い場合は、最初はクリック回数の基準を高めに置いて止める範囲を小さくし、合計CVとオーガニック指名クエリのクリック率を見ながら、段階的に基準を下げるほうが安全です。
指名検索広告の配信対象を考える際の、参考のひとつになれば幸いです。