月800回しか検索されないのに、月10万件の需要があった|キーワードでは狙えない層にP-MAXで届けた話

月800回しか検索されないのに、月10万件の需要があった|キーワードでは狙えない層にP-MAXで届けた話

新しいターゲット層に広告を出す価値があるかどうか。検索広告では、キーワードプランナーの検索ボリュームを参考にすることが多いです。

ただ、この数字と実際の需要が、大きくずれていることもあります。

ある支援で狙った層は、関連する検索キーワードをぜんぶ合わせても、「月800回」程度でした。一方で、統計から試算すると、この層には「月10万件」を超える需要がありました。

実際に配信してみると、獲得の柱になりうるキャンペーンに育ちました。

この層をどうやって見つけて、どう広告を届けたのか。今回はその話を書いてみます。(この事例は、クライアントの許可をいただいたうえで公開しています)

「店舗に行かなくていい」を、いちばん喜ぶのは誰か

支援していたのは、自宅にいながら車検を済ませられる出張型のサービスです。

広告の主戦場は「車検 予約」「車検 安い」のような検索キーワードでしたが、クリック単価は上がり続け、検索面の獲得だけでは件数の頭打ちが見えていました。

件数を伸ばすには、新しい層が必要でした。そこで、サービスの強みからターゲットを考えなおすことにしました。

最大の強みは「店舗に行かなくていいこと」。では、店舗に行かなくていいことを、いちばん喜ぶのは誰か。

仮説は「子育て世帯」でした。チャイルドシートを外し、子どもを連れて店舗に行き、待合室で数時間過ごす。出張型なら、この手間がぜんぶ要らなくなります。

この仮説のポテンシャルを、公的統計からも計算してみました。

子育て世帯(18歳未満の子がいる世帯)が毎月受けている車検は、1都3県でおよそ10.7万件ありました。

項目数値
1都3県の18歳未満の子がいる世帯数(2020年国勢調査)約366万世帯
世帯当たりの自家用乗用車保有台数(自動車検査登録情報協会、都県別)0.41〜0.93台
推計保有台数約256万台
年間の車検回数(2年周期)約128万件
月間の車検件数約10.7万件

別のルートの検算でも、月約12.4万件。どちらで計算しても、車検市場の2割強をこの層が占めます。ニーズが強いであろう乳幼児〜未就学児の世帯に絞っても、月およそ4万件です。

もちろん、この10万件が出張の車検を求めているわけではありません。ただ、10万件は毎月、必ずどこかで受けられている。そして、市場の2割強を占めるこの層が、自社の顧客では約9%。まだまだ伸びしろがあると考えました。

ところが、この層のキーワードは月800回しかない

次は、この層にどう広告を届けるかです。

まず、キーワードプランナーで調べたところ、子育てに関連する検索キーワードはかき集めても月におよそ800回しかありませんでした。

キーワード群月間検索ボリューム
汎用(車検 予約、車検 値段 など)約30万
価格重視約5万
車検切れ約1.2万
子育て関連約800

過去のコンバージョン率から見積もると、この800回から見込める成約は、多くて月に数件。キャンペーンとして成立しません。

といっても、公的統計から試算した月10万件がある以上、需要が小さいわけではなく、ニーズが検索キーワードとして表れていないだけのはずです。

車検が近づいた子育て世帯の人も、検索するキーワードの大半は「車検 予約」「車検 値段」です。「車検 子連れ」とは、ほとんどの人は検索しません。

キーワードでは、この層に届かない

では、どう届けるか。

子育てキーワードに入札しても、月800回では伸ばしようがありません。

かといって、「車検 予約」のようなビッグワードに、家族向けの広告文とLPを固定で載せるわけにもいかない。検索する人の大多数は子育て世帯ではありません。(実際に試しもしたのですが、獲得効率は合いませんでした)

キーワードを起点にした既存のキャンペーンでは、この層へのアプローチは難しいと考えました。

検索の言葉になっていないニーズは、P-MAXで狙いに行く

取れる手は、プラットフォームの機械学習やAIの力を借りて、その人へ届けてもらうことです。

Googleでこれができるのが、P-MAXです。

P-MAXには、通常の検索キャンペーンのようなキーワードの設定はなく、検索テーマという補助的なシグナルがある程度。どの面の、どの検索語句に出すかを、入稿したアセットとLPの中身をもとにAIが決めます。

これは、検索面への配信でも期待できます。

「車検」のようなビッグワードの検索結果でも、P-MAXはアセットとLPの中身から関連する検索語句を判断し、そのうえでオークションごとに、成約の見込みが高いと予測した相手に入札します。

この予測には、検索語句だけでなく、そのキャンペーンで実際に成約した人のデータや、どのクリエイティブを出すかも使われます。なので、(結果として)ビッグワードの検索者の中でも子育て世帯に寄せた配信になる可能性があります。

このために、専用のLPとバナーを作りました。

LPは、「子連れで車検に行くのは大変」という場面から始まる、子育て中の利用者の体験記という形式にしました。チャイルドシートを外さなくていいこと、家を空けなくていいことを、子育ての場面の言葉で伝えていきます。

これを家族向けのバナー12種とあわせて、専用のP-MAXキャンペーンとして配信しました。

「車検」ビッグワードから、成約が出た

結果は、想定以上でした。

多くて月に数件、という見立てだった層から、2ヶ月で約50件の成約が出ました。成約単価は目標を2割ほど下回り、獲得の柱だった既存キャンペーンと比べても、最も効率の良い部類です。

2ヶ月目の振り返りでは、全キャンペーンの中で、いちばん配信を伸ばしたい優良キャンペーンになりました。

また、成約は、次の3つの場所から発生していました。

  • 「車検」単体のようなビッグキーワード
  • 競合の指名キーワード
  • 検索の外の、YouTube・ディスプレイ面

どれも、既存のキャンペーンでも以前から配信していて、成約はほぼ出ていなかった場所です。

それが、広告とLPが家族向けに変わると、成約が出るようになりました。同じ場所でも、以前とは違う人が反応した、ということだと思います。

ただ、P-MAXがはじめから子育て世帯を選んで出していたのか、家族向けの広告に反応した人を学習するうちに寄っていったのか、管理画面から判断することは難しいです。

でも、どちらだとしても、クリエイティブとLPを子育て世帯向けに特化させたことが、成約につながりました。

検索ボリュームで、需要を見限らない

今回のケースから学べることは、大きく2つだと思います。

検索ボリュームは、必ずしも需要の大きさではない。ビッグキーワードの裏には、検索の言葉になっていないニーズが隠れています。その数字が小さいからといって、見限ってしまうのは早いかもしれません。

検索の言葉になっていないニーズは、クリエイティブとLPで狙う。P-MAXは、アセットとLPの中身をもとに、どの検索語句や面に出すかを決めます。なので、ターゲット層に特化したクリエイティブとLPを用意すれば、その層に寄せて届けてくれる可能性があります。実際に今回は、「車検」のようなビッグワードからも成約が出ました。

同じように、検索面の頭打ちに悩んでいる方の参考になれば幸いです。