退職メンバーが贈る。「成長過程の壁」を乗り越えるために大切なこととは?

退職メンバーが贈る。「成長過程の壁」を乗り越えるために大切なこととは?

先日、オーリーズを退職したメンバーが素敵な知見をシェアをしてくれました。本記事では、退職メンバーが何を残してくれたのか。根底にある文化とともに当日の重厚なコンテンツも一部ご紹介します。

新たなステージに旅立っても「仲間」であることに変わりはない

オーリーズの文化の中でも特徴的なのが「退職メンバーとの関係性」です。新たなステージに旅立つことになっても切磋琢磨した仲間同士。退職後も継続的に交流を図っています。

▼オーリーズブログにも退職メンバーがたびたび登場!

▼オーリーズに「戻ってきた」メンバーのインタビュー

退職メンバーが贈ってくれた「重厚な」コンテンツ

オーリーズでは「アセット志向」というバリューに基づいて、会社にナレッジを残す文化が根付いています。そして、オーリーズで「アセット志向」を体現し続けてきたメンバーの一人が小西伸弥さんです。そんな小西さんが退職前ラストの社内勉強会のテーマに選んだのが「成長過程の壁」。コンテンツ作成にあたっては、実際にオーリーズで働く社歴半年〜2年未満の若手社員8名のインタビューを自ら行い、若手時代特有の悩みを分析してくれました。

退職メンバーが時間と労力をかけて「オーリーズのみんなの成長のために」と提供してくれたコンテンツはまさに「重厚」。そのボリュームからも熱量が伝わってきました。

次の章では小西さんが実際に発表した内容を一部抜粋し、文字起こし形式でお届けします。

【当日の発表】成長の過程の壁をみんなで考えよう

<発表者>

小西 伸弥:外資系製薬会社のMRとして入社2年でトップパフォーマンスを発揮した後、フリーランスとしてWEBコンテンツ企画・コンサルティング・コミュニティビジネスを展開。「顧客にとって真に価値があることを追求する」ためにオーリーズに入社。さまざまなプロジェクトで実績を残したのちに2024年5月に退職し、新たなステージへ。


<若手時代にありがちな悩み>
・チームメンバーとの関係性
 L 一歩踏み込んだ会話、タスクの受け渡し、施策の深さへの影響
・抽象度の高いコミュニケーション能力
 L 責任者レイヤーとの折衷、中長期戦略の会話
・扱う課題の抽象度が上がった際の適応への不安
 L 新規施策やサービス設計など、思考の深さが求められる答えのない取り組み
・思い描く自己成長のスピードとのギャップ
 L 基本スキル未成熟の自覚、フィードバックの量が減らない、同期の成長への焦燥

若手社員にインタビューしたところ「若手時代にありがちな悩み」は大きく4つに分類できることが分かりました。これらの「若手時代にありがちな悩み」と「過去の私自身に起きた出来事」を照らし合わせ、そのときの感情について振り返っていきたいと思います。今回はイメージしてもらいやすいようにグラフを用意しました。縦軸は「自己納得度」を表現しています。

<初めての成功体験期>

入社直後は、A社の支援メンバーとしてスタート。当時のアウトプットの質には課題があったものの、自分なりに丁寧な仕事を心がけていた時期でした。この時期一つの転機となったのが、B社の案件でPM(Project Manager)を任せてもらったこと。当時は不安半分嬉しさ半分という心境だったと記憶しています。

本案件はアタラ合同会社と協業して「Amazonの売り上げを最大化する」というミッションを持って進めていました。最初のフェーズでは「担当者の信頼を勝ち取ろう」と先方担当者の仕事を巻き取ったり、ネット広告の知識不足を補うために1日中レクチャーを受けたり。とにかくがむしゃらに動いていた期間だったように感じています。

そうしているうちに「やりたかったことができて助かっている」「他の領域も任せたい」とお声をかけていただいて、最終的に当初の広告予算から最大5倍まで拡張できました。これは「一番最初の成功体験」です。行動量やレスの速さ、そして「この人なら形にしてくれそう」というイメージを持ってもらえたことがプラスに働いたのかなと振り返ります。社内では新人賞も受賞し、一定の自信がつき始めていました。

<スキル研鑽と殻の克服期/楽しいが消化不良期>

成功体験を得られた1年目を抜けると、次のステージに突入していきます。

クライアントや毎日フィードバックをくれる上長、そしてチームメンバーの期待になんとか応えようと必死にもがいていましたが、思うように結果が出ずに「やるせなさ」も感じていた期間でした。

そんな中、タスクを抱え込みすぎてチームや全体の動きを滞らせていた私に後輩から真剣な面持ちで「今のままでは困る」「もっとチームを信頼してほしい」と言われてしまったんです。

当時の心境を言語化すると「いよいよここまできてしまったか」。後輩にも心配させてしまっている情けなさやリーダーとしての不甲斐なさという感情が溢れかえりました。一方で、この出来事をきっかけにある種「吹っ切れた」感覚もあったんです。

その頃の私は「自分だけが心地よい状態で仕事をしていた」のだと思います。それでは「いいチームや支援は生まれない」と学ぶことができました。この私の体験は、若手時代の悩みの一つである「チームメンバーとの関係性」にあたります。これに対する私なりのアンサーは「衝突を恐れない」ということです。

当時の自分を思い返すと、不必要に相手や場の空気を読みすぎたのだと思っています。新しい課題の議論やタスク割り振りの際に、一人で実行する場合とメンバーに伝達する場合を比較すると、後者の方が「IQが下がる」感覚があったんです。

それは「この発言によって相手はどう感じるだろう」といった不安のようなものに脳内のリソースを奪われているイメージからくるものでした。そんなことを考えていたので、踏み込んだ判断も議論もできない。そもそも任せることもできないという負のループに陥ってしまったんです。チームを強くするためには、すでに気づいている論点にフォーカスした議論が必要だったのですが、当時はなかなか言葉にできませんでした。

ここで「強いチームをつくる」ためのプロセスを説明したタックマンモデルを紹介したいと思います。本モデルは組織のあり方を「誕生から解散までの発展段階」に分けて考える概念であり、チームビルディングに役立つ考え方の一つです。

図表は左から「形成・混乱・統一・機能」の4つのステージに分かれています。ここで重要なのは「混乱期を避ける動き」をとるのではなく、しっかりと意見をぶつけ合って、いかに「混乱期を早く通過」するかということ。しなやかで強いチームを生み出すためには「ぶつかり合う」ことも必要かつ健全な活動であるという教訓になりました。

そして、オーリーズには「しなやかで強い」を体現するチームがあります。せっかくなので、チームのスタンディングMTGから得たチーム運営のヒントをまとめました。

・言葉の定義や、お互いの認識を正しく持つための確認が都度ある
・PMからだけでなくメンバーからも積極的に意見があり、支援上で障壁となりうる意見が自然とでてくる
・感じた違和感や問題は先送りにせず発言がある。ネクストアクションはその場で決める
・目先の課題やタスクだけでなく、会話の論点が今後起こりうる重要課題にもある・参加メンバーに合わせてアジェンダや話題の粒度の調整がされている

ハレーションを恐れずにお互いに意見をぶつけ合い、常に広い視点で先を見るという姿勢をメンバー全員が持っており、さらに参加メンバーに合わせて「アジェンダや話題の粒度」が美しく調整されているところも特質すべき点です。たとえば、冒頭で重要課題に触れ、そのあとの参加者はテーマごとにPMが参加不要と判断すれば順に抜けていく。粒度が細かくなる場合は、分科会に回すといったオペレーションをしています。この運用はぜひ参考にしていただきたいです。

さて、話は私のキャリア変遷に戻りますが、続いてPMとして「初めてのBtoB支援」にチャレンジしました。前任の担当者やチームメンバーの力を借りながらではありましたが、一通りの業務をうまく回せている感覚。既存プロジェクトでの追加受注などもあり、事業責任者からの信頼も勝ち取っている手応えも感じていたと記憶しています。

そんな中でも思い描く自己成長のスピードとのギャップ」を感じる瞬間はありましたが、今の自分であれば「自信喪失は成長の証」「行動量は上げていくべき」とアドバイスができると思います。

科学的にも「人が一番自信を喪失するのは、序盤ではなく知識や経験が増えたタイミングである」と言われています。それは自分の無知を知り、世界と自分の能力の距離感を正しく認識した証です。

ともすれば、知識や能力は増えていることになるので、むしろ自信喪失は「健全な状態」であると割り切って、足を止めないことが重要であると自覚してほしいと思います。

<自己内省とアレンジ期>

ここからはオーリーズでのキャリア後半戦。PMとしてE社の支援を開始しました。お客様側は全体で数十名の組織。マーケティング担当者はおらず、役員レイヤーの方が直接旗を振っている状況でした。

支援開始直後は、正直に言えば「うまくやっていけるのか」と考えていました。2回3回とMTGを重ねても「話が噛み合っている気がしない」「思考や打ち手の手順としては客観的に間違ってはなさそうだが手応えがない」そんな不安を抱えていました。

まさしく「抽象度の高いコミュニケーション能力」に対する不安です。議論がずれていく感覚があるときには「自分の正義やセオリーに固執しすぎていないか」「相手が最重要視している論点はなんなのか」を考えることが大切になってきます。

当時の私は、終始「コンバージョンの測定環境を整えましょう」などの提案をし、テキストベースでロジックを詰め切ったコミュニケーションをとっていました。セオリー通りの対応とはいえ、相手はテック領域に詳しいわけではない。その前提を汲み取っていなかったために「相手の興味関心領域と接続しない」という状態を生み出していました。

当然ながら、人は自分の興味関心のある領域に一番耳を傾けます。相手の性質を理解した上で「複数の切り口を用意する」ことが大切です。相手の役割、日常的に追っているKPI、マーケティング知識や実務経験の有無、思考の性質などによっても話すべき内容は変わってきます。「論点は人によって変わる」と言われていますので、その点を十分に頭に入れて他者との会話に臨むことが大切です。

そこに気づいてからは、私も資料にイラストを差し込んでより直感的に理解できるようにしたり、先方が関心のあるKPIを論点の主体にしたりしながら、クライアントに成功体験を積んでもらえるように努めました。
これによって私自身の意識改革があり、自分は「収益最大化のために、頭と手をバランスよく動かすことができる頼れる社外の相談役である」というスタンスを築けるようになったんです。そう考えてコミュニケーションをとるだけでも、ミーティングの温度感や議論の深まりは段違いになりました。

<自分ならやり遂げられる期>

さて、いよいよオーリーズでのキャリアの最終段階。F社の案件にPMとしてアサインされました。初期は少額での支援でしたが、支援開始から半年後に「支援要件拡大のためのコンペ」に参加することになったんです。

これも直近のターニングポイントとしては大きな出来事でした。コンペ当日まで2週間を切り、さまざまな思いが駆け巡りましたが「今の自分ならやり遂げることができるはず」という感覚もあったと記憶しています。

まさに、自己効力感が非常に高い状態でした。なぜ私は「自分ならやり遂げられる」という状態に到達できたのでしょうか?ここで、若手時代の悩みである「扱う課題の抽象度が上がった際の適応への不安」へのアンサーを科学的なアプローチを交えて説明してみたいと思います。

人が行動を促すモデルには「結果予期」と「効力予期」という2つの因子が存在しています。「結果予期」とは読んで字のごとく、行動がどのような結果に結びつくかとその大きさの程度を表すものです。たとえば「こう行動したら売り上げが倍になる!」といった話であり、それが期待できると行動量が加速します。しかし、これはセルフコントロールが難しい部分です。

一方で「効力予期」とは、自分の行動にフォーカスし「自分はうまく行動することができるんだ」という期待の話になります。自己効力感が高まるほど、その先の行動の速さ、量や質が良くなるという話です。

さらに、自己効力感を高めるには「4つの条件」とアプローチがあると言われています。それは、成功体験、代理体験、言語的説得、生理的情緒的状態です。

今回は、この中から「成功体験」と「言語的説得」をピックアップしてみます。

私の場合だと、先にお話ししたE社の話がまさしく「成功体験」です。ここで重要なのは、KPIの達成や広告予算のアップセルといった客観的指標ではなく「自分のできない・苦手を克服した経験」です。

私が担当したE社の支援において、KPIの大幅な達成・改善といった客観的な尺度があったわけではありません。それでも私の中では「あれをやり遂げたんだ」と、この5年間で経験した誇らしいことの一つになっています。他者から見れば些細なことでも苦手意識を最終的に克服することは「成功体験」と捉えることができると考えています。

もう一つの「言語的説得」は、平たく言うと周りからのサポートです。これはオーリーズにもともとあるフィードバックや称賛の文化から感じ取れることが大いにありました。

かなり以前の話ですが、マネージャーから「クライアントとのチャットのやり取り」に関する違和感を指摘してもらったことがあります。細かな違和感を見逃さずにフィードバックしてもらっただけでもありがたかったのですが、しばらくして別件のやり取りの中で「行動に変化があったね」と個別に連絡をくれたんです。

改善のアドバイスだけではなく、その後の「行動変化」に気づき、称賛をしてもらえる安心感を感じた出来事でした。これらのフィードバックを受けてからのアクションに気を配り「行動の変化に気づく」というスタンスを手本にしてもらえると自己効力感が上がっていきますし、これをチームで乗り越えられるとしたら「個人の枠を超えたチーム効力感」でさらに大きな逆境も乗り越えられることになると考えています。


オーリーズにはチーム効力感をつくる文化がある

ほんの一部でしたが、小西さんの実際の発表をご紹介しました。オーリーズには、発表内で小西さんが触れてくれた「チーム効力感」をつくる文化があります。社内に導入されている「まるちっぷ(Unipos)」はまさにチームをまたいで効力感をあげられる文化の一つ。日常的にフィードバックと称賛のサイクルを回すことで、チームや組織全体が強くなっています。メンバーそれぞれの成長を考えるきっかけになったことはもちろん、オーリーズの強みを再認識できる有意義な発表でした。

あらためて、オーリーズに素敵な「贈り物」を残してくれた小西さんにお礼と新しい環境での活躍を応援したいと思います!



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[文]神谷愛美子