Google検索画面にSGE実装-SEO・検索広告への影響は?

Google検索画面にSGE実装-SEO・検索広告への影響は?

2023年8月末にGoogleがリリースしたGoogle検索の生成AI機能「SGE(Search Generative Experience)」。Googleは以前から生成AIの開発に注力しており、2023年3月にはAIチャットボット「Bard」の提供を開始しましたが、生成AIの導入によって、ユーザーの検索行動やSEOにはどのような影響が起こるのでしょうか。

今回は、生成AIが検索エンジンに導入されることで起こりうる影響についての考察です。

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生成AIとは

生成AIとは、学習済のデータを活用して様々なコンテンツを生み出すAIの一種です。

従来のAIは、画像識別やトレンド予測など、与えられたデータ・条件の中から適切な回答を提示するのが役割でしたが、生成AIは、ディープラーニングにより自律的に学習を行って、0→1でクリエイティブコンテンツを生成できます

主な生成物(アウトプット)としては、文章・画像・動画・楽曲・プログラムコードなど、従来主に人間が時間をかけて制作していたものも含まれています。現在は、アウトプットの質を磨き上げたり、一部の作業を効率化させたりする目的で活用されています。

続々とリリースされる生成AI

生成AIの元となるプログラムは1980年代から開発されていましたが、生成AIへの投資が本格的となったのは2020年代初頭、OpenAIが開発した「ChatGPT」がきっかけでした。

「ChatGPT」はリリース直後から、過去に類を見ない速度で利用者を増やしていき、公開からわずか2か月でアクティブユーザー数が1億人を突破。

こうした動きを受けて、米マイクロソフトはOpenAIに数十億ドル規模の投資を行い、「Microsoft Office」と検索エンジンの「Bing」にOpen AIの技術を活用。対して検索エンジン市場でトップシェアを持つGoogleは、自社独自の技術を用いたAIチャットボット「Bard」の開発を急ピッチで進めました。
参考:マイクロソフトとOpenAIがパートナーシップを拡大(マイクロソフト リリース)

検索エンジン・アプリケーションへの実装

生成AIを組み込んだ検索エンジンには、OpenAI開発のGPT-4モデルを用いた「Bing AI」、Google検索に実装された「SGE(Search Generative Experience)」があります。(2023年10月時点)

Bing AI

「Bing AI」は2023年2月に米Microsoft社から発表された、生成AI機能を備えた検索エンジンです。GPT-4がモデルとして活用されており、EdgeブラウザでBingにアクセスすれば誰でも無料で使える機能です。

Teams、Word、PowerPoint、Outlookなど同社の主力製品であるMicrosoft Officeに生成AIの技術を組み込み、「Microsoft 365 Copilot(コパイロット)」としてリリースしています。「Microsoft 365」にも生成AIを搭載しており、WordやExcelなど、同社のアプリケーションを利用する際にテキスト生成やデータ解析の恩恵を受けることができます。
(Microsoft 365 Copilotを利用するには1ユーザーにつき月額30ドルの費用がかかります。)

SGE(Search Generative Experience)

「SGE」はGoogleが2023年5月に発表した、生成AIを搭載した検索エンジンの新機能です。
日本での試験運用は2023年8月末に公開され、Googleアカウントを「Search Labs」に登録すると、デスクトップ・スマートフォンいずれのデバイスでも無料で利用ができます。

2023年10月時点では、全ての検索語句で生成AIの回答が表示されるわけではなく、質問に対する情報ソースが少ない場合や、回答が適切でないと判断される場合は回答が表示されない仕様のようです。

検索エンジンへの導入による、検索広告・SEOへの影響

生成AIが検索エンジンに導入されることで、どのような影響が考えられるでしょうか?あくまで現時点での推測ですが、影響が出そうな範囲をピックアップしました。

1.検索広告への影響

検索広告では、次のような影響が生じる可能性があります。

⑴広告のCTRが低下する

Googleの発表で使用されていた下記の画像では検索広告が生成AIの回答の上部に掲載されていますが、いくつかの検索キーワードで調査したところ、検索キーワードによっては広告が生成AIの回答の下部に記載される場合もありました。
(ショッピング広告も同様に下部に掲載されるケースが見受けられます)

出典:生成 AI による検索体験 (SGE) のご紹介

出典:seo Clarity「CTR Research Study」

2021年にseoClarityが公開したデータによれば、検索順位とクリック率の関係は以下のようになっています。
検索エンジンへ生成AIが実装されることで、広告がより下部に表示されるようになり、クリック率の減少→広告流入が伸び悩む可能性は考えられます。

💡 検索順位とクリック率の関係
  1位:13.94%
  2位:7.52%
  3位:4.68%
  4位:3.91%
  5位:2.98%
  6位:2.42%
  7位:2.06%
  8位:1.78%
  9位:1.46%
  10位:1.32%

⑵インフォメーショナルクエリの広告流入が伸び悩む

「化粧水 価格 相場」「ノートパソコン 選び方」など、情報収集を目的として検索行動を行っているユーザーは、生成AIの回答で満足し、その後の検索行動を辞めてしまう可能性があります。

とはいえ、インフォメーショナルクエリを中心に入札しているアカウントでなければ広告成果に対する影響は少ないかもしれません。

💡 用語解説
 「インフォメーショナルクエリ」
  何か知りたい、疑問を解消したいといった情報収集を目的とした検索キーワードのこと
  例:「Windows アップデート やり方」「タイ 観光スポット」「積み立てNISA とは」

⑶一時的に検索ユーザーが増加する

今後ユーザーへの認知度が高まってくれば、イノベーターやアーリーアダプターだけでなく、マジョリティ層にも浸透し、一時的に検索流入が増加する可能性は考えられます。

一方で、株式会社フルスピードの調査によれば、生成AI導入後のBingに関しては検索流入数に大きな伸びは見られず、むしろ減少しているとのデータもあります。

先端技術に関心の深い先駆者層だけでなく、今後どの程度まで利用者層が広がるかが分かれ目になると思いますが、検索流入が増加したとしても一時的なものであり、著しく成果の向上を期待できるものではないかもしれません。

2.SEOへの影響

SEOの観点では、以下のような影響が考えられます。特にキュレーションメディアなどは、生成AIが検索画面に実装されることで影響が出やすいと考えられます。

⑴一部の検索キーワードで流入が伸び悩む可能性

2023年9月時点では、生成AIの回答が表示されるのは一部のクエリに限定されているようですが、広告と同様に、生成AIの回答が最上部に表示されることによりWebサイトへのトラフィックは減少する可能性があります。

一方、「日本の人口は?」のように誰にとっても共通の答えがある質問は生成AIで事足りるとしても、人によって回答が分かれる質問や、回答にあたって高い専門性が求められる質問(法律、金融、医療などのYMYLジャンルなど)は、生成AIの回答では満足できない・解決しないユーザーもいるでしょう。

検索流入への影響はWebサイトの属性やキーワードによっても変わってきそうですが、Webサイトのトラフィックを維持・拡大する対策としては以下が考えられます。

💡 対策例
 ・トラフィック源を自然検索に依存せずマルチチャネル化する(ex.X(旧Twitter)、Instagram、YouTubeなど)
 ・Google Discoverで表示される記事を作る
 ・noteなど検索に依存しないメディアに寄稿して読者を集める

⑵記事品質の重要性がさらに増す可能性

Googleは従来から、検索結果の評価指標としてE-E-A-Tを唱えてきました。
E-E-A-Tとは「Experience(経験)」「Expertise(専門性)」「Authoritativeness(権威性)」「Trustworthiness(信頼性)」の略語ですが、生成AIが検索画面に実装されることにより、今後はさらにこれらの項目がSEOで重要視される可能性が考えられます。

これまで通り自分のWebサイトを検索結果画面に上位表示させたい場合は、実体験を含めた独自の情報や、高い専門性がなければ書けないような正確かつ詳細な記述など、コンテンツの質を今まで以上に高める努力が必要といえます。

また、生成AIの回答にあわせて並列で表示される関連コンテンツはアイキャッチ画像も表示されるため、ユーザーのアテンションを引くような画像制作や、競合他社に目劣りしないクオリティに仕上げることが重要になりそうです。

⑶ゼロクリックサーチのユーザーが増加する

これまでの検索エンジンは、ユーザーが知りたい情報にあわせて検索キーワードを入力し、検索結果に出てきた候補の中から情報を取捨選択していました。

これに対して、生成AI実装後の検索エンジンでは、生成AIで知りたい情報の概要を把握し、より詳細な情報や体験談などを知りたいユーザーは検索結果から意中のWebページを閲覧する、という検索行動がベースとなっていく可能性があります。
また、人によっては生成AIの回答で満足し、その後の検索行動を辞めてしまうゼロクリックサーチのユーザーが増加する可能性も考えられるでしょう。

(現に、モバイルでは生成AIの回答でファーストビューが埋まる場合もあるため、デスクトップと比較してゼロクリックサーチが発生しやすい可能性があります)

まとめ

Google SGEに関してはいまだ試験運用の段階のため、今後新しい機能の追加やUIの変更が発生する可能性は充分にありますが、検索広告、特にSEOに関しては影響が大きいものと考えられます。

Googleが「新しい検索体験」と謳っているように、大袈裟に言えば、ユーザーの検索の概念がまったく新しいものとなる可能性もあります。広告主や運用者、メディアの運営者などは検索チャネルに対する戦略・戦術を練り直す必要も出てくるかもしれません。

生成AIを巡る検索エンジンの動向に関しては、私も引き続き動向を観察していこうと思います。
(下記の記事で、広告運用の領域で生成AIを活用したナレッジをまとめていますので、あわせてチェックしてみてくださいね。)

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この記事を書いた人

株式会社オーリーズ

アドオペレーションズ・ストラテジスト

頼富 穣

新卒でパーソルキャリア株式会社に入社。社内ベンチャーとして立ち上がった顧問紹介サービスのコンサルタントに従事。 IT・メディア関連企業の経営層に対して顧問活用の提案を行う中で、データリテラシーを高め、経営・事業・組織を根幹から変えていくことの重要性を認識。 枠に縛られず顧客の事業成長に伴走する姿勢、アジャイルに物事を推進していくオーリーズのスタイルに共感し入社を決意。

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