AI Maxの効果は「拡張元」の検索語句にも表れる|既存の検索語句のCPCが4割下がったケース

AI Maxの効果は「拡張元」の検索語句にも表れる|既存の検索語句のCPCが4割下がったケース

AI Max for Search(以下AI Max)は、登録したキーワード以外の検索語句にも配信を広げ、検索意図に合わせて広告文や遷移先を出し分ける機能です。そのため、効果は「新しい検索語句からCV数が増やせたか」で見ることが多いと思います。

今回、あるお客様の検索キャンペーンでは、AI Maxで配信を広げてもCV数はほぼ横ばいでしたが、CPAは約3割下がりました。CPAが下がった要因を調べると、以前から配信が出ていた検索語句で、CPCが4割低下していました。

新しい検索語句に配信を広げるAI Maxが、既存の検索語句のCPCにも影響していました。その理由を、確かめられる数字の範囲で考えてみます。(事例の性質上、クライアント名や商材は伏せていますが、数値は実際のものです)

CV数は横ばいだったが、CPAは3割下がった

AI Maxには、配信する検索語句を広げる「検索語句のマッチング」、広告文を出し分ける「テキストのカスタマイズ」、遷移先を出し分ける「最終ページURLの拡張」の3つの機能があります¹。

今回のキャンペーンでは、当初テキストのカスタマイズだけをONにして配信していましたが、残りの2機能(検索語句のマッチング/最終ページURLの拡張)もONにしました。

この変更前後それぞれ2週間の実績は、次のとおりです。(※数値は端数を丸めています)

指標変更前変更後
クリック数1万7,100回2万8,800回
CPC660円300円
広告費1,138万円868万円
CV数900件980件
CVR5.2%3.4%
CPA12,700円8,900円

配信する検索語句が広がり、クリック数は約1.7倍に増えました。ただ、広がった先は情報収集段階の語句が中心でCVRが低く、CV数は1割弱の増加にとどまり、期待したほどは増えませんでした。

一方、キャンペーン全体のCPAは約3割下がっていました。下がった要因はCPCです。660円→300円と、変更前の半分以下になっていました。(※変更前後で日予算は変えていません。広告費の減少は、CPC低下によるものです)

当初考えたのは、AI Maxで配信が広がった先に、CPCの安い検索語句が多かったからではないか、ということでした。CPCが安い検索語句のクリック割合が増えれば、キャンペーン全体のCPCは下がるはずです。

そこで、変更前後の配信実績を、①変更後に新たに配信されるようになった検索語句(以下、新規語句)と、②変更前から配信が出ていた検索語句(以下、既存語句)に分けて見てみました。

主な要因は、既存語句のCPC低下だった

変更後2週間の実績を、新規語句と既存語句に分けたものが次の表です。

指標変更前(全体)変更後(新規語句)変更後(既存語句)
クリックシェア―29%71%
CPC640円90円390円
CVR5.2%0.8%4.6%
CPA12,400円11,000円8,300円
※検索語句レポートの集計値。「その他の検索語句」にまとめられた分を含まないため、先ほどの表とは数字が一致しません

新規語句は確かにCPCが安く、キャンペーン全体のCPCを押し下げていました。ただ、CVRも低いため、CPAは変更前から大きくは下がっていません。

むしろ、CPAが大きく下がっていたのは既存語句のほうでした。CPCが4割下がり、CPAは3割改善しています。

ただし、既存語句も、変更前後で配信される検索語句の顔ぶれは多少入れ替わります。その影響を除くため、変更前後でキーワード・マッチタイプを揃えた約7,000組の検索語句に絞って、CPCを比べました。

変更前変更後変化
既存語句(約9,200語句)640円390円−39%
条件が一致する語句(約7,000組)650円420円−36%

条件を揃えても、既存語句のCPCは同じように大きく下がっていました。キャンペーン全体のCPA改善は、安い新規語句のクリックが増えたことだけによるものではなく、既存語句のCPC低下が主な要因だと判断しました。

既存語句のCPCは、変更の翌日から下がっていた

既存語句のCPCが大きく下がったのは、変更の翌日からでした。

先ほどの、キーワード・マッチタイプを揃えた約7,000組の検索語句について、日別のCPCの推移をグラフにしたものが次の図です。

変更の直前にもCPCはやや下がり気味でしたが、変更の翌日には、CPCが約3割下がりました。その後も、変更前の水準を下回ったまま推移しています。

同じ期間、AI Maxを入れていない別の一般キャンペーンでは、こうしたCPCの低下は見られませんでした。季節性など、市場全体の変化によるものでもなさそうです。

キャンペーン前の2週間後の2週間変化
今回のキャンペーン650円420円−36%
AI Maxを入れていないキャンペーン210円280円+33%
※どちらも、キーワード・マッチタイプを揃えた検索語句のCPC。今回の設定変更の前後2週間を基準に、同じ期間で比較

入札戦略や目標CPAの単価設定も、この変更のあとは動かしていません。そのほかにも、既存語句のCPCをここまで下げ得るような変更は見当たりませんでした。

変更の翌日を境にCPCが大きく下がり、別のキャンペーンでは同じ動きが見られないことから、既存語句のCPC低下には、今回の変更が影響していると見ています。

自動入札の影響は、数字では切り分けられなかった

ここからは、新しい検索語句に配信を広げるAI Maxが、なぜ既存語句のCPCを下げたのかを、管理画面で確かめられる数字の範囲で考えます。

同じ検索語句のCPCが下がるのは、主に、①自社の入札が弱まったとき、②広告の品質が上がったとき、③競合の入札が弱まったときです²。

このうち③は、オークション分析で競合の顔ぶれや表示シェアに大きな変化は見られませんでした。(※ただ、競合の入札や個々のオークションの中身までは確認できないので、完全に影響がなかったとまでは言い切れません)

①②についても、管理画面のデータを手がかりに、どのような変化があったのか順に見ていきます。

自動入札は、キャンペーン全体のCPAが目標に収まるように、オークションごとの入札を調整します。今回のキャンペーンでは入札戦略に目標CPAを使っていて、AI Maxで広がった新規語句のCPAは約11,000円と、目標の9,000円を上回っていました。

新規語句で目標を超えた分、キャンペーン全体のCPAを目標に収めようとして、自動入札が既存語句でCPCの高いオークションへの入札を控えた可能性があります。

入札を控えた動きがあったかを確かめるため、約7,000組の検索語句について、表示回数と上位に表示された回数を変更前後の2週間で比べました。

変更前変更後変化
表示回数9.3万回10.2万回+9%
上部に表示された回数8.0万回8.6万回+8%
最上部に表示された回数3.8万回3.7万回−2%

最上部に表示された回数はわずかに減っており、特に高いオークションの一部を降りる動きはあったのかもしれません。ただ、表示回数も、上部に表示された回数も増えていて、配信を一律に絞った形ではありませんでした。

一方で、同じ検索語句でもデバイスや地域、時間帯が違えば参加するオークションは別なので、高いオークションへの入札を抑えつつ、安いオークションで配信を増やしていた可能性は残ります。この数字だけでは、自動入札の影響は切り分けられませんでした。

品質スコアは上がったが、CPC低下への影響は確かめられなかった

次に、広告の品質です。オークションごとに評価される品質そのものは管理画面では見られないので、手がかりとして、変更前後の品質スコアを比べました³。

品質スコア(表示回数で重みづけ)変更前2週間変更後2週目
品質スコア6.0〜6.57.3〜7.5
ランディングページの利便性が「平均より上」の割合5〜8%25〜31%

※「品質スコアが上がったからCPCが下がった」という因果の話ではありません。CPCが変更の翌日に下がったのに対し、品質スコアは約1週間かけて上がっており、広告の品質に変化があったとすれば、それがあとから品質スコアに反映されたものだと解釈しています。

品質スコアは変更後に上がっていて、中でも大きく動いたのは、ランディングページの利便性でした。今回ONにした最終ページURLの拡張は、検索意図に合わせて遷移先を出し分ける機能で、実際に表示された遷移先は、3種類から15種類に増えていました。遷移先を出し分けられるようになったことが、広告の品質の評価に影響したとみると説明がつきそうです。

ただ、新しい遷移先へのクリックは、変更後2週間で全体の約3%でした。ほとんどのクリックは変更前と同じ遷移先のままで、遷移先が変わっていないクリックでもCPCは下がっていたことになります。

品質スコアの上昇は、広告の品質に変化があった可能性を示す手がかりです。ただ、CPC低下にどこまで影響したかについては、慎重に見ています。

AI Maxの効果は、既存の検索語句にも表れていた

今回の数字で確かめられたのは、

  • 変更前後で、既存語句のCPCが大きく下がったこと
  • その低下は変更の翌日から起きており、AI Maxを入れていない別のキャンペーンでは同じ動きが見られないこと
  • 同じ時期に品質スコア、中でもランディングページの利便性が上がっていたこと

というところまでです。

なぜ既存語句のCPCが下がったのかは、はっきりとは分かりませんが、少なくとも、今回の変更の前後で、既存語句のCPCが大きく下がったという事実は確認できました。

AI Maxの効果は、新しい検索語句からCV数が増やせたかで見ることが多いと思いますが、今回のように既存語句に影響するケースもあります。導入する際は、既存語句の数字にも目を向けると良いかもしれません。

新規語句と既存語句に分けて、キーワード・マッチタイプを揃えたCPCを変更前後で比べると、違いが見えやすいと思います。

あくまで一つの例ですが、AI Maxの効果を考える際の参考になれば幸いです。


¹出典:Google広告ヘルプ「検索キャンペーン向け AI 最大化設定の仕組み」

²出典:Google広告ヘルプ「実際のクリック単価(CPC)」

³出典:Google広告ヘルプ「検索キャンペーンの品質スコアについて」