【広告運用研究会】指名CPC上昇にどう向き合うか?3社の判断と結果

【広告運用研究会】指名CPC上昇にどう向き合うか?3社の判断と結果

指名検索のCPC上昇は、悩ましい問題です。

対策にはいくつかの選択肢がありますが、どの打ち手を選ぶべきかは、CPC上昇の原因によって変わります。

本記事では、指名CPC上昇で獲得効率が低下した3つのケースを取り上げ、それぞれの現場がどう判断し、どこに手を入れ、どのような結果になったのかを紹介します。

広告運用研究会について

オーリーズでは、コンサルタントが特定のテーマについて運用事例をディスカッションする「広告運用研究会」という取り組みをおこなっています。

AIの進化で、広告運用の知識やベストプラクティスは以前より手に入りやすくなりました。一方で、特定の状況下で誰が何を判断し、その結果どうなったかという一次情報は、なかなか表に出てきません。

この記事では、研究会で議論した内容を公開することで、現場の一次情報を比較できる場を作れればと考えています。

指名検索のCPC上昇が厄介な理由

検索広告のCPCには、年々上昇圧力がかかっています。

広告主の増加に加え、自動入札・インテントマッチ・P-MAXなどのAIプロダクトの普及により、明示的に指定していない検索語句や配信機会にも広告が広がりやすくなりました。結果、オークション競合が増えやすくなっています。

ただ、CPC上昇は必ずしも成果の悪化に直結するわけではありません。AIプロダクトにはCVしやすい新しいクエリやユーザー(購入確率の高いターゲットや機会)を発見する力があり、CPCが上がっても、その分CVRが改善すれば獲得効率は保てます。

一般検索では、この仕組みが効きやすいです。検索意図もクエリの幅も広く、AIが拾える新規のCV機会が多く残っているからです。

一方で指名検索は、検索意図もクエリの幅も限定的なため、AIが新たなCV機会を広げる余地も、CVR改善でCPC上昇を吸収する余地も小さくなります。さらに、高い予測CVRにより、高いCPCが許容されやすくもなります。

つまり指名検索は、CPCに上昇圧力がかかりやすいうえに、CVR改善で吸収する余地も限定的

そのような性質があるため、「CPCをどう下げるか」という一面的な視点だけでは不十分です。

獲得機会やCV数・CPA・ROASのうち何を守るのか、そのためにキャンペーン構成・広告・入札・オークション環境のどこに手を入れるのか、などの視点が欠かせません。

3つのケースの概要

今回紹介する3ケースは、いずれも指名CPC上昇で獲得効率が低下した事例です。ただし、見ていた観点と打ち手はそれぞれ異なります。

ビジネス形態問題意識打ち手
ケースABtoB/媒体CV:リード指名CPCが2年で約3.8倍に上昇上限CPC付きポートフォリオ入札へ移行
ケースBEC/媒体CV:購入指名CPCが半年間で約1.37倍に上昇純指名と掛け合わせを分割
ケースCEC/媒体CV:購入指名CPCが半年間で約2倍に上昇指名ワード除外依頼を運用化

同じ「指名CPC上昇」でも、打ち手は一律ではありません。各ケースで何を見て、どう判断したかを見ていきます。

ケースA|IMPシェアを守りつつ、CPCの上振れだけを抑える

項目内容
ビジネス形態BtoB/媒体CV:リード
問題意識指名CPCが2年で約3.8倍に上昇
打ち手上限CPC付きポートフォリオ入札へ移行
判断の背景CPC抑制と獲得機会維持の両立が必要だった

このケースでは、指名の検索ボリュームに大きな変化はないものの、平均CPCが年々上昇していました。

主要な指名キーワードのCPCは、前年対比155%(754円→1,166円)、一昨年対比381%(306円→1,166円)まで上がっています。

本ケースには、2つの特性があります。

  1. 指名ワードの多くが、一般名詞に近い製品名であること
  2. 製品ごとにキャンペーンを分ける必要があり、指名キャンペーンが多数存在すること

「一般名詞に近い製品名」とは、ブランド固有の名称でありながら、カテゴリ名や製品ジャンル名としても検索されやすいワードです。

競合が意図的に指名買いをしていなくても、カテゴリワード配信やAIプロダクトの拡張で同じオークションに参加しやすい状態。指名クエリのCPCが一般クエリを上回る逆転現象も発生していました。

判断と打ち手

まず検討したのは手動入札への切り替えです。ただ、このケースでは指名ワードが一般名詞に近く、CPC相場も変動しやすい。

手動で抑えすぎれば競合への流出やCVの取りこぼしが大きくなる。複数キャンペーンでCPC相場に個別追従する運用負荷も無視できませんでした。

かといって自動入札に任せきると、CVRの高さからCPCが上振れする。避けたかったのは、CPCを下げることで獲得機会まで失うことでした。

そこで選んだのが、目標CPAに上限CPCを組み合わせるポートフォリオ入札戦略です。

複数の指名キャンペーンを束ねて学習データを集約し、共通の目標CPAで獲得効率を担保しながら、上限CPCで自動入札の上振れだけを人間側で抑える設計です。

結果

IMPシェアは維持したまま、コスト94%に対し平均CPCは74%、CPLも73%に改善しました。

指標7-8月9-10月変化率
CPC¥1,917¥1,41974%
CPL¥18,490¥13,42773%
IMPシェア92%95%103%

その後数ヶ月の推移を見ても、CPC・CPLともに大きく荒れることなく推移しています。

ケースB|純指名と掛け合わせを分けて、個別最適化する

項目内容
ビジネス形態EC/媒体CV:購入
問題意識指名CPCが半年間で約1.37倍に上昇
打ち手純指名と掛け合わせを分割
判断の背景同じ指名でも効率帯が異なっていた

このケースでも、検索ボリュームに大きな変化はないものの、指名検索の平均CPCが継続的に上昇(前半期比137%/27円→37円)し、ROASも悪化傾向にありました。

分析を進めると、指名キャンペーンの中でも、指名ワード単体(以下「純指名」)と指名ワードとの掛け合わせ(以下「掛け合わせ」)で、効率帯が異なることが見えてきました。

純指名はCVRが安定して高い。一方、掛け合わせは購入までにもう一段階の検討が入るので、クエリごとのCVR分布も幅広い。同じ「指名」でも、ユーザーの状態と効率帯は異なっていました。

判断と打ち手

当時は、純指名と掛け合わせを同一キャンペーンにまとめ、目標ROASで運用していました。

この構成だと、システムはキャンペーン全体で目標を達成しようと動きます。目標ROASでは、より売上につながりやすい純指名側で高いCPCが許容されやすく、本来もっと低いCPCで取れたはずの純指名クエリの入札が強まっていたのではないか、というのが立てた仮説です。

そこで、純指名と掛け合わせを別キャンペーンに分割。純指名は個別クリック単価でCPCの上振れを抑え、掛け合わせは目標ROASで獲得効率を取りに行く設計に切り替えました。

加えて、掛け合わせ側では広告カスタマイザの追加と、キーワード別LP出し分けも新たに実施。「ブランド名+商品カテゴリ名」のような検索語句には、そのカテゴリを訴求する広告文とLPを出し、検索意図と遷移先の整合性を高めました。

結果

指名全体のIMPシェアは同水準のまま、コスト103%に対し平均CPCは68%、ROASも206%に改善しました。

指標11月12月変化率
CPC¥30¥2068%
ROAS599%1,234%206%
IMP-S81%85%106%

純指名・掛け合わせそれぞれでも改善が見られています。

区分CPC変化ROAS変化IMP-S変化
純指名61%235%113%
掛け合わせ74%207%99%

本ケースでは、改善要因はキャンペーン分割だけに帰属させられません。広告カスタマイザの追加やLP出し分けも同時に行っているためです。それでも双方でCPC低下とROAS改善が見られ、IMPシェアもほとんど落ちていない。

CPCを下げた代わりに獲得機会を失ったのではなく、効率帯と検索意図に応じて運用を分けたことが改善に寄与した可能性が高いと見ています。

また、対象期間の季節要因の影響は排除していませんが、繁忙期後の1〜3月の推移でも平均CPC59%、ROAS160%と改善傾向が持続しています。

指標11月1〜3月変化率
CPC¥30¥1759%
ROAS599%958%160%
IMP-S81%74%92%

ケースC|アカウント内で解けず、オークション環境に働きかける

項目内容
ビジネス形態EC/媒体CV:購入
問題意識指名CPCが半年間で約2倍に上昇
打ち手指名ワード除外依頼を運用化
判断の背景競合の入札強化が顕著でアカウント内の調整では限界があった

このケースでは、指名検索の平均CPCが前半期比202%(82円→166円)まで上昇していました。

ブランド名にカテゴリワードが含まれる特性があり、検索語句にカテゴリに近い言葉が入ると、競合が意図的に指名買いをしていなくても同じオークションに参加しやすい状態でした。

当時、指名キャンペーンは拡張CPCで運用。ケースA・Bで紹介した「純指名と掛け合わせの分割」「ポートフォリオ入札戦略による上限CPCの設定」は過去すでに実施済みで、それでもCPCを押し下げきれない状況でした。

判断と打ち手

時系列で指名キャンペーンのオークションインサイトを追ったところ、新規参加・入札強化してくる外部事業者が継続的に増えていました。同カテゴリ~周辺カテゴリの事業者などです。

タイミングと推移から、これらの入札圧力がCPC上昇の主因と判断しました。

管理画面内をどう調整しても、オークション環境そのものは変わりません。競合の入札強化で次順位の広告ランクが上がれば、自社の実CPCにも上昇圧力がかかります。

そこで、他社に対して相互に指名ワード除外設定を依頼する取り組みを、単発対応ではなく継続運用として徹底しました。

具体的には、週次でオークションインサイトやIMPシェアレポートを確認しながら、以下のサイクルを回しました。

  1. 新規参入を検知
  2. 除外依頼管理リストに追加
  3. キーワード除外を依頼
  4. 対応状況を観察
  5. 未対応・再掲出があれば再依頼

1年で依頼件数は100件以上にのぼり、現在も運用を続けています。

結果

指名ワード除外依頼の運用を本格化した前後で、IMPシェアは同水準のまま、コスト79%に対し平均CPCは65%、CPAは60%、ROASは160%に改善しています。

指標8-9月10-11月変化率
CPC¥161¥10565%
CPA¥2,380¥1,41760%
ROAS3,280%5,232%160%
IMP-S93%95%102%

この結果には、他施策の影響も含まれている可能性はあります。ただ、依頼後に一部の事業者で表示停止が確認でき、そのタイミングで特定キーワードのCPCが160円台から80円台へ低下するケースも複数ありました。

返信がないまま配信が止まるケースも、一定期間後に再開されるケースもあるため、対応社数や対応率を厳密に算出するのは困難です。

この施策は「依頼した社数のうち何%が対応したか」で評価するよりも、その後のCPC推移を追い続ける運用として位置づけています。

3つのケースから見える、指名CPC上昇時に点検すべき4観点

3つのケースでとった打ち手は、それぞれ異なります。

ここから言えるのは、指名CPC上昇への対策は、単に「CPCをどう下げるか」ではないということです。

要因が見えないまま入札だけを弱めれば、CPCは下がっても、IMPシェア・CV数・CPA・ROAS、そして事業上の獲得機会まで落としかねません。

指名CPCが上がったときに点検すべき観点は、次の4つです。

  1. キャンペーン構成:見ている範囲・粒度は適切か
  2. 広告品質:広告文・LP側に改善余地はないか
  3. 入札制御:CPCの上振れに歯止めはかかっているか
  4. オークション環境:競合の参入・入札強化が起きていないか

ケースAは入札制御、ケースBはキャンペーン構成と広告品質、ケースCはオークション環境が主な論点でした。

観点疑うべき問い起きている可能性主な打ち手
① キャンペーン構成効率帯の異なるクエリを、同じ入札ロジックで扱っていないか純指名と掛け合わせが混在し、一方に適さない入札がかかっている純指名/掛け合わせの分割、入札戦略の分離
② 広告品質CPC抑制の前に、自社の広告ランクや品質側に改善余地はないか推定CTR、広告関連性、LP体験の不足により、実CPCが下がりにくくなっている広告文改善、LP改善、検索意図に応じた訴求・遷移先の出し分け
③ 入札制御自動入札が高い予測CVRによってCPCを許容しすぎていないか予測CVRの高さにより、平均CPCが高止まりしている手動入札への切り替え、上限CPC付きポートフォリオ入札、目標値の調整
④ オークション環境競合の広告ランク上昇が、自社の実CPCに影響していないか競合の新規参入・入札強化により、次順位の広告ランクが上がっているオークションインサイト確認、指名ワード除外依頼

指名検索で守るべきは、CPCの低さだけではありません。IMPシェア・CV数・CPA・ROAS、そして事業上の獲得機会も同時に見る必要があります。

これらの観点で点検することで、CPCを下げるための施策ではなく、獲得機会を守りながら効率を戻すための判断がしやすくなります。

おわりに

指名検索のCPC上昇は、今後も続くテーマです。

上昇トレンドは変わらない可能性は高いですが、現場で動かせるレバーはあります。

指名CPCが上がったとき、向き合うべきは「どうCPCを下げるか」だけではありません。「何を守り、どこに手を入れるか」を問うことがまず大切です。

今回の内容が、指名キャンペーンを見直すきっかけになれば嬉しいです。広告運用研究会では、今後もこうした現場のディスカッションを共有していきます。