Googleの推奨設定は本当に正しい?入札戦略とマッチタイプを変更してパフォーマンスを検証した事例

Googleの推奨設定は本当に正しい?入札戦略とマッチタイプを変更してパフォーマンスを検証した事例

はじめに

検索広告を運用していると一度は耳にするGoogleの推奨設定の代表的なものに、コンバージョン数を重視した入札戦略にすることと、キーワードマッチタイプに部分一致を採用することがあります。
Google広告でコンバージョン数を最も増やすためには、これら2つの設定が必須であると言われていますが、そこに疑いを持ったことはありませんか?なぜなら、いくら優秀なAIを搭載するGoogle広告であっても、世の中に数多ある事業のすべてに完璧に当てはまるとは考えにくく、少なからず例外はあると思うからです。
今回はその疑いをもとに、同じターゲットに向けた広告において複数パターンの入札戦略、キーワード構成で配信した事例を紹介します。

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Googleの推奨設定に関する検証に取り組んだ背景とは

今回、Googleの推奨設定に関する検証に取り組んだのはこのような背景からです。

①推奨設定では大幅な改善が見込めなかった

検索広告のパフォーマンス改善のために長期にわたり調整を続けており、些細な設定の変更では大幅な実績改善は見込めませんでした。そこで、入札戦略やアカウント構成自体を見直すことで抜本的な成果改善につながる可能性があるのではないかと考えました。

②商材特性を踏まえると、非推奨設定が適している可能性があった

今回紹介する事例は人材紹介業界の広告主を支援したものです。人材紹介事業では以下の理由から、非推奨設定のほうが効率が良くなる可能性があると考えました。

  • 上位掲載重視のほうが効率が良い可能性がある
    • 自社も競合も紹介する求人は同一のため、差別化が図りにくいサービスである。
      LPでも差がつきにくいため、自動入札で配信を行うよりも、掲載順位で上位表示することを重視した運用にするほうがCVRが高くなるのではないか。
  • 完全一致縛りのほうが効率が良い可能性がある
    • 5年間運用してきた過去の実績からCVが発生しやすい検索クエリは把握している。それらのクエリに絞って完全一致で配信したほうがCVRが上がるのではないか。

Google広告の推奨設定とは

ここで前提となるGoogle広告の推奨設定について簡単に振り返ります。

入札戦略について

入札戦略とは、Google広告においてその配信の目的に応じて選択できる配信戦略です。
設定する入札戦略に応じて、広告をいつ、誰に、どこで配信するのかが決まります。キャンペーンで重点的に獲得したい要素(クリック、インプレッション、コンバージョン、視聴回数)に応じて、適した入札戦略を設定することが成果を最大化する鍵です。

その中でもコンバージョンを重視する場合には、自動入札というGoogle広告のAIに入札を任せる手法が推奨されており、大きく以下の5つの入札戦略があります。

  1. コンバージョン数の最大化 : 特定のコンバージョン単価を目指すのではなく、コンバージョン数の獲得を重視したうえで指定した予算を使い切るように配信する
  2. 目標コンバージョン単価(CPA) : 指定したコンバージョン単価を目指しながらコンバージョン数を最大化できるように配信する
  3. コンバージョン値の最大化 : 特定の広告費用対効果を目指すのではなく、コンバージョン値の獲得を重視したうえで指定した予算を使い切るように配信する
  4. 目標広告費用対効果(ROAS) : 指定した目標広告費用対効果を目指しながら、コンバージョン値を最大限引き上げられるように配信する
  5. 拡張クリック単価(eCPC) : 個別に設定したクリック単価の配信を目指しながら、コンバージョン数を最大限に獲得できるように配信する

今回紹介する事例においてもコンバージョン数を最大化することを重視しているため、以前から目標コンバージョン単価(CPA)を使用していました。このあと紹介するのは、その入札戦略から変更した場合の検証です。

キーワードについて

キーワードとは、リスティング広告でユーザーが検索している語句と広告を一致させるために使用される単語やフレーズのことを指します。
キーワードがユーザーの検索語句と一致すれば広告がオークションの候補に入ります。その際にどの程度厳密な一致を求めるかを指定するのが、キーワードのマッチタイプです。
マッチタイプを効果的に使い分けると、広告のリーチと精度が最適化されるため、広告予算の有効利用ができます。マッチタイプは、キャンペーンの目的や戦略に応じて、組み合わせて使用することが一般的です。

マッチタイプの種類

キーワードには3種類のマッチタイプが存在します。おおまかにわかるよう図式化すると以下のイメージ図のようになります。

  • 完全一致

キーワードとまったく同じ意味または意図の検索が広告の表示対象です。
3つのキーワード マッチタイプの中で、完全一致は広告の表示対象を最も絞り込むことができるものですが、広告表示対象となる検索の数はフレーズ一致や部分一致よりも少なくなります。

  • フレーズ一致

キーワードと同じ意味の内容を含む検索が広告の表示対象です。文言に差があっても、同じ意味に解釈できる場合は一致と見なされます。また、キーワードよりも具体的な情報を追加した検索も一致します。

  • 部分一致

キーワードに関連する内容の検索が広告の表示対象です。これには、キーワードの語句そのものは入っていない検索も含まれます。

例えば「パーソナル トレーニング ジム」というキーワードを設定した場合、マッチタイプによって表示される検索語句は以下のように変わります。

参考:キーワードのマッチタイプについて(公式ヘルプページ)

部分一致の特徴と、部分一致を推奨する理由

基本的なマッチタイプの違いは前述したとおりですが、部分一致では、フレーズ一致・完全一致と違い、「シグナル」といういわゆる「Googleが保有しているデータ」も使用した広告配信が可能です。
具体的には、以下のように使用できる”シグナル”の違いがあります。(以下のシグナルはGoogle広告の場合)

例えば部分一致では、「ランディングページの内容」も考慮されるため、キーワードに含まれていないフレーズでも、ランディングページに含まれている要素とマッチすると判断された検索語句には広告が表示されます。
またユーザーの過去の検索行動も考慮することで、自社サービスにマッチしたユーザーであるかの判断もできます。

参考:コンテキストに基づくさまざまなシグナル(公式ヘルプページ)

上記の”シグナル”の効果により、Google広告では部分一致キーワードの設定が推奨されています。
部分一致を推奨する理由についての詳しい解説はこちらをご覧ください。

検証内容

今回はこちらの2つの施策を、それぞれの仮説に基づいて実施しました。

①上位掲載重視

  • 仮説
    競合ごとにサービスの差はないため、掲載順位による差がCVRに与える影響が大きいのではないか?(掲載順位が上がれば、CVRも上がるのではないか?)
  • 実施内容
    過去実績においてCVRが高いキーワードに絞って、入札戦略を目標インプレッションシェアで配信する
    キーワードも、過去の配信結果においてCVRが高いキーワードの完全一致のみに設定する

※入札戦略:目標インプレッションシェアとは
Google 検索結果ページの最上部または上部に広告が表示されるように、自動的に入札単価が設定される入札戦略です。

②完全一致縛り

  • 仮説
    過去にコンバージョンが発生した検索クエリがわかっている場合は、そのクエリの完全一致で配信したほうがCVRが高いのではないか?
  • 実施内容
    キーワードを、過去に複数回コンバージョンが発生した検索クエリの完全一致のみに絞り込んで配信する
    入札戦略はコンバージョン数最大化を使用する

検証結果

①上位掲載重視

結果:推奨設定のほうがパフォーマンスが良い
意図していたとおり、広告を上位に掲載できたことで、CTRは上昇しました。
一方でCPCも上昇してしまったこと、CVRが思ったように上昇しなかったことで、CPAは推奨設定の2倍以上とという結果になりました。

考察
上位掲載を狙う配信手法では、たしかに上位掲載されることによる一定の効果はありました。しかし、CVRを意識しない配信になったことにより、コンバージョンしないユーザーにも上位掲載されてしまったのではないかと推測しています。
狙った検索クエリで上位掲載されたとしも、ユーザーがコンバージョンに至るタイミングか否かは別の話です。コンバージョン数重視の入札かつ部分一致キーワードでの配信であれば、Googleのシグナルがユーザーのコンバージョンする可能性も推測して配信してくれるため、コンバージョン数が増えるとわかりました。

②完全一致縛り

結果:推奨設定のほうがパフォーマンスが良い
キーワードを絞ったことによりCTRとCVRのスコアは上昇しました。
しかしCPCが推奨設定の5倍以上まで上昇してしまい、CPAも同様に上昇しました。

考察

完全一致は配信する対象の検索クエリが大幅に狭まってしまうため候補が少なく、今回のようなCPC上昇を招くことになりました。
部分一致で配信した際にはテールワードにも広く配信されてかつコンバージョンも発生するため、結果的にCPCが下がり、CVRも下がることなく配信ができるのだと改めて認識できました。(もちろん部分一致でも、コンバージョンが見込めない検索クエリやユーザーには配信が行われない仕組みになっています)
もしかすると配信金額が少額の場合にはCPCが低下し、CPAも推奨設定との差が小さくなる可能性はありますが、今回のような金額を配信する場合には推奨設定が望ましいといえるでしょう。

まとめ

今回検証した配信方法は、推奨設定以外でパフォーマンスの向上が期待できる内容でしたが、推奨設定のほうがパフォーマンスが良いという結果になりました。
今回の検証によって、Google広告における推奨設定の効果を改めて実感することができました。Google広告の運用を行っている方は、まずは推奨設定での運用を私からも推奨します。推奨設定を守ったうえで、別の観点で改善点がないかを探ってみてください。

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この記事を書いた人

株式会社オーリーズ

アドオペレーションズ・ストラテジスト/チーフ

深堀 智広

新卒で株式会社ジェーシービーに入社し、海外旅行者のJCBカード利用促進に寄与する施策の立案、およびそのWEBマーケティング業務に従事。 WEBマーケティングに関する専門性の高いスキルを身に着け、顧客の課題解決ができる人材へ成長したいという想いから転職を決意。 数ある広告代理店の中でも「マーケティング戦略の立案から実行までを一貫して担うことで、はじめて価値を発揮できる」という考えに共感し、オーリーズへ入社。

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