YouTube広告において指名検索行動への貢献性を可視化した事例

YouTube広告において指名検索行動への貢献性を可視化した事例

本記事では、YouTube広告の検索行動への貢献性の可視化に取り組んだ事例をご紹介します。

YouTube広告は認知・検討・購買などさまざまな目的で実施されますが、ユーザーに対して「自社ブランドの検索行動をしてもらうこと」を期待して実施するケースも多いのではないでしょうか。

今回は指名検索への貢献性の可視化を目的としたYouTube広告の取り組み事例の具体的な評価設計、得られた結果と示唆についてご紹介します。

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実施目的と評価指標の選定の背景

まず目的について、今回の事例では、

  • 目的①:動画広告は、どれほど自社ブランド検索数を増加させるか
  • 目的②:YouTube広告と他社動画広告プラットフォームは、どちらの方が広告効率が良いか?

という目的で、動画広告施策を実施しました。これらを目的としている背景は、動画広告施策を単独施策として捉えていないということです。

動画広告が非顕在層向けに認知・比較検討の促進などの意識変容を目的とする場合、運用型広告の中の数ある手法の中でも息の長い施策になるケースが少なくありません。よって、動画広告の配信を持続可能な取り組みとするために、広告効果と示唆を得ることを目的として検証設計にこだわりました。

次に評価指標の選定に関して、今回は後述する「Google広告の検索アカウントの自社ブランドIMP数」をメイン指標としました。さらに、サーチリフト調査などの複数のサブ指標を設けて評価をおこなっています。理由としては、複数指標で評価をすることでKPIに与える広告効果の信憑性を高め、複数の角度から示唆を得たいという考えです。

また、バイアスを排除して広告を評価するのであれば、たとえば統計調査Causal Impact(コーザルインパクト)などのオプションがありますが、

  • 複数のプラットフォーム間の効果の相対比較を行いたい
  • 広告配信開始までの時間・予算・人的リソースが限られている
  • 今回のKPI検証が検索アカウントの設計次第で大きな負担なく実施可能

など、複数の観点から最適と考えうる今回の手法を選択しました。参考程度に、今回用いた動画広告の評価指標の一覧は下記のとおりです。

モニタリング環境の設計ポイント

今回はGoogle検索広告で指名検索のIMP数を計測し、「動画広告の実施エリアと非実施エリア間で差が生まれるか」を検証分析をおこないました。広告配信とレポーティング・分析までの大きな流れは下記のとおりです。

<広告配信の準備>

  • (1)ある期間における動画広告の「配信エリア」と「未配信エリア」を選定する
  • (2)検証対象のブランドKWを入稿した検索広告キャンペーン・広告グループを作成する

<レポーティング~分析>

  • (3)検索広告アカウントのエリア別レポートを作成し、配信エリアと未配信エリアの動画広告の配信期間中のIMP数を集計する
  • (4)上記のIMPに関してt検定を用いて、配信・非配信エリアの2つのエリア間の平均値の差に有意な差があるか検証する

💡 t検定とは?
2つのグループの平均値の差が有意なものかどうかを判断することが出来る統計手法。
参考:t検定とは

上記を進める中で、モニタリング環境を整えるためにおこなった条件を3つほど紹介します。

条件①:動画配信のエリア間の人口規模を同一にする

検索広告のIMP数のエリア間比較をおこなうため、対象となるエリアの人口規模を可能な限り同一にする必要がありました。よって、非配信エリアの選定に関しても、人口規模のボリュームやこれまでのIMP動向をみつつ、できるだけ母集団に差がないように注意をおこないました。

さらに、今回の事例では今回は検証目的と同時に広告効果も狙っていたため、東京・首都圏など配信地域を一部指定した状態で選定をおこなっています。今回の扱ったサービスは全国展開されているため、その他エリアは前述の条件でランダムに選定しましたが、サービスによっては特定地域に偏りがでる可能性も念頭におく必要があると考えています。

条件②:検証対象の検索広告の広告グループのIMPシェアを100%に保つ

検索広告の表示回数の絶対数をKPIとしてるため、広告の表示機会を同一にする必要がありました。具体的には検索広告のIMPシェアを可能な限り100%に近づけて、さらに維持するということを目指しました。

特に検証対象のKW選定に関して、

  • インプレッションシェアが維持できるかどうか ※とくに汎用的なキーワードを含む場合
  • インプレッションシェアは100%に近づけることが可能であるが、獲得効率に大きく影響しないかどうか

という観点でアカウント設計を進めました。目的と状況に応じて、検証環境を整えることと広告効果のバランスをみつつ、過去の配信実績を参考にするなどしてKW選定を慎重におこなう必要があると考えています。

条件③:検索広告アカウントにおいて、検証したいエリア粒度のレポートが抽出できる媒体を選定をする

エリア別のIMP数を集計・検証するためには、検索アカウント側で同一粒度のエリアレポートの抽出ができることが必要です。施策の実施当時、Google広告においては広告グループ粒度でエリア別レポートが抽出できることが事前に確認できていたことから、検索広告アカウントはGoogle広告を選定しました。

広告配信と分析結果

今回の事例では、あるインターネット関連事業の2つのサービスブランドを対象に実施をしました。

  • Aブランド:創業当時から長年愛されている伝統的な主力サービス
  • Bブランド:直近2~3年以内リリースした新サービス

ブランド検索のリフト効果の検証結果

BブランドのYouTube広告の配信・非配信のIMPの検証結果は下記のとおりです。結論として、Bブランドに関しては、非配信エリアに対して、配信エリアが有意な差をもって良好な結果が得られました。(p値<5%、信頼度95%)

対非配信エリア:IMP比率146.7%
対未配信_t検定 p値0.01584

よってBブランドに関しては、YouTube広告の配信によってブランドKWの検索行動に寄与をするという結果が得られました。※Causal Impactで担保できるようなバイアス排除が課題と残されているため、あくまで実務上の解釈としています。

💡 p値とは?
得られたデータの希少性を示す数値のこと。p値が一定の値(一般的には0.05、つまり5%)よりも小さい場合は統計的に差があると認められる。
参考:p値(p-value, 危険率, 有意確率)の解釈とt検定の使いこなし

続いて、期間を区切ったエリア間の変化率です。

動画配信期間のどの期間をとっても、配信エリアは約110%以上を維持しています。一方で、配信期間の前半では変化率が大きく後半にかけて減少しています。理由としては、シーズナリティの他、検証を一定終えて配信エリア拡張をおこなったことで、リーチとフリークエンシーが低下してしまったことが主要因と考えています。

最後に下記は日ごとのIMP数をエリア別にグラフ化したものです。赤字点線で囲った期間が検証期間であり、ほとんどの期間で配信エリアが非配信エリアよりもIMP数が多くなっていることが見てとれます。

複数指標からみるブランドごとの動画広告効果の考察

最後に、Aブランド・Bブランドの複数軸の検証結果のサマリです。冒頭で触れた通り今回はメイン指標以外に、検索指名のCVRや動画アカウントのCV実績をKPIとして、動画広告の評価を行いました。

※○:有意差あり・良好な効果  △:良好な傾向がみれた x:差分がほぼなし

Bブランドに関しては前述の検索広告のIMP結果の他、すべての指標で良好な結果が得られましたが、その一方でAブランドに関してはブランド検索数に関してほぼ差分が見られませんでした。

仮説としては2つのブランド間ではサービスのブランドの市場認知度・成熟度が異なるため、検索行動を後押しする効果の閾値に差があることが影響していると考えています。

よって、Aブランドに関しては動画施策を認知度向上や検索数UPに目的をおくのではなく、たとえばブランド共通のサービス名をPRすることで購入意向促進を目的することが適しているのではないかと解釈し、次の方針策定の根拠のひとつとしました。

まとめ

今回のケースのようにYouTube広告などの動画施策で、広告媒体からの直接の獲得数を目的としない場合は、特にKPIとモニタリング環境設計が重要です。検証方法のアプローチの一例として、実務の参考になれば幸いです。

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この記事を書いた人

株式会社オーリーズ

アドオペレーションズ・ストラテジスト/チーフ

小西 伸弥

外資系製薬会社のMRとして入社2年でトップパフォーマンスを発揮した後、フリーランスとしてWEBコンテンツ企画・コンサルティング・コミュニティビジネスを展開。 自身のビジネスが拡大していく中で、デジタルマーケティングの影響力の大きさとその深さに魅了される。 ビジネス課題を起点として、キャリアを歩む中で最も大切としていた「顧客にとって真に価値があることを追求する」という信念から、オーリーズに入社を決意する。

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