- ナレッジ・ノウハウ
- 川島 崇志
ダイナミック広告「タグとデータフィードの不一致」対策 YES/NOチャート
ユーザーの行動履歴をもとに、最適な広告クリエイティブを配信するダイナミック広告は、広告運用の現場では必要不可欠なメニューのひとつになっています。
そのダイナミック広告の運用には、「タグとデータフィードの一致率」という重要な指標があります。
「タグとデータフィードの一致率」とは、WEBサイトに掲載している商品やサービスが、連携するデータフィードに正しく反映されているかを確認するための指標であり、「タグから送信される商品IDと一致する、データフィード上の商品IDの数」として定義されます。
例えば、
① 商品詳細ページタグのヒット数 : 100
② ①と一致するデータフィード上の商品ID数 : 80
③ 商品詳細ページタグとデータフィードの一致率 : 80%
といった具合です。
ダイナミック広告のレコメンドエンジンは、タグ発火した(≒ユーザーが閲覧した)商品情報とデータフィードの商品情報とを突合し、価格やカテゴリなどのデータフィードに含まれる多様な情報をもとに学習をして、広告クリエイティブに反映させます。そのため、一致率を高めることは、機械学習を促進して広告パフォーマンスを向上させるために重要です。
そこで今回は、ダイナミック広告における「タグとデータフィードの不一致」対策をYes/Noチャート形式でご紹介します。
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目次
Yes/Noチャート
前提として、一致率は高ければ高いほど良いですが、必ずしも100%である必要はなく、一定の不一致率が発生している状態でも主なダイナミック広告プラットフォームは十分に機能します。
参考として、CriteoやRTB House等の仕様では、不一致率が「30%」を超えると広告配信の開始・再開が不可となりますので、これを「最低ライン」の基準と捉えてよいでしょう。(20年10月時点情報)
ここからは、不一致の原因を特定する方法について、Yes/Noチャートを用いながらご説明します。
下図は、「タグとデータフィードの一致率が0%か?」の質問を起点としてYesとNoに分け、さらに、想定される不一致の原因を「データフィード」と「タグ」に分けて整理したものです。
タグとデータフィードの一致率が0%である(=まったく一致していない)
タグとデータフィードの一致率が0%ということは、基本的な設定ミスや漏れが発生しています。まず、データフィードの観点から想定される原因を探っていきます。
必須情報の記載
Q:ID、商品名、商品説明など必須情報をデータフィードに入力しているか?
広告プラットフォームによって細かな仕様は異なりますが、必須となる情報は基本的には同じです。対象となるプラットフォームの仕様に従い、必須情報に抜け漏れがないか確認をしましょう。
参考 : レスポンシブ広告のデータフィードを作成する(Google)
参考 : 動的ディスプレイ広告のサイトリターゲティング設定(Yahoo)
参考 : Criteoカタログ仕様(小売)(Criteo)
参考 : ダイナミック広告に必要なFacebookピクセルイベントとパラメーター(Facebook)
商品IDの定義
Q:タグから送信された商品IDの値と同じIDの値がデータフィードに存在しているか?
このケースは、「タグ側ではIDをアイテムレベルで取得する設定をしているのに対し、データフィード側ではSKUレベルで設定をしている」などの原因が想定されます。タグとデータフィードでIDの定義が一致しているか確認しましょう。
※タグで取得しているIDの値を確認する方法は後述します
必須タグの実装
Q:商品詳細ページタグなどの「必須タグ」が実装されているか?
多くのダイナミック広告プラットフォームでは、タグは「必須」と「推奨」の2つに分けられます。必須タグが正しく実装されていないと広告を配信することができませんので、まずはこれを確認しましょう。
必須タグだけでも広告配信は可能ですが、なるべく多くの情報をレコメンドエンジンにインプットさせ、機械学習を促進するために、推奨タグも含めたすべてのタグを実装することが理想的です。
タグ設定の内容
Q:必要な情報が広告プラットフォームのサーバーに送信されているか?
ダイナミック広告のタグは、ページごとに取得するパラメーターを変更したり、タグの種類を出し分けたりするなど、一般的なリターゲティングタグと比べて複雑な設定を必要とします。
よって、タグを埋設するだけでなく、期待どおりの条件でタグが動作しているか、期待したデータを取得したうえでサーバーと通信ができているか、などの状況を確認する必要があります。
以下は、Google Chromeのデベロッパーツールを利用して、タグが正常に作動し、かつ必要な情報が正しく広告プラットフォームのサーバーに送信されているかを確認する手順です。(Criteoのケースです)
対象ページでデベロッパーツールを起動(キーボードの「F12」を押下)
↓
「Network」画面で該当のリクエストを検索(FilterでアカウントIDや「sslwidget」などで検索)
↓
「Status」が「200」になっているか確認(「200」であれば通信が正常に行われている証拠)
↓
「Query String Parameters」から通信内容を確認
主に確認するポイントは以下です。
a:広告アカウントIDは正しいか?
p1: e:適切なページ階層になっているか?
- vh:トップページ
- vl:商品一覧ページ
- vp:商品詳細ページ
- vb:カートページ
- vc:コンバージョンページ
p1: p:商品IDは正しいか?
- p=[i]:商品ID
- p=[pr]:価格
- p=[q]:点数
これらの情報から、データが正しく送信されているかを確認しましょう。
※上図でいう「p1」の商品情報の値がエンコードされている場合、そのままでは情報を読み取ることができないため、ツールなどを利用してデコードする必要があります。
ここまでが「タグとデータフィードの一致率が0%」、つまり「まったく一致していない場合」に想定される、根本的な原因についての説明でした。
タグとデータフィードの一致率が0%ではない(=部分的に不一致になっている)
繰り返しになりますが、必ずしもタグとデータフィードの一致率が100%である必要はありません。各種広告プラットフォームの仕様やWEBサイト運営の都合上、不一致を許容すべきケースも考えられます。
しかし、状況に応じて適切な判断を取ることができるようにするためにも、不一致となっている箇所とその原因を把握しておくことは大切です。
以下、「部分的に不一致が発生しているケース」について、その原因を探っていきます。
WEBサイト連動
Q:最新の情報がデータフィードに反映されているか?
例えば、データフィードの生成を手動で行っている場合、「新しい商品情報をWEBサイトに掲載したが、データフィードへの反映作業が漏れている」といったことが想定されます。
データフィードの更新漏れを起こさないためにも、商品数の多寡にかかわらず、データフィード管理ツールの導入をお勧めします。
参考ツール1 : df plus.io
参考ツール2 : DFO
Q:すべての商品がデータデータフィードに存在しているか?
ダイナミック広告を運用していると、例えば以下のような事情から、データフィードから商品情報を「削除」して対応してしまうことがあります。
- ROASをKPIとしているため、単価の低い商品は広告に出したくない
- CPA改善のためにCVRの低い商品は広告に出したくない
- キャンペーンの都合で一部のカテゴリしか広告に出したくない
このように「広告表示させたくない商品」がある場合、データフィードから商品情報を削除するのではなく、以下の対応が推奨されます。
Googleの場合
「excluded_destination」で非掲載先の設定を行う
参考 : excluded_destination [非掲載先]
Yahooの場合
「Display Settings」で配信オン/オフを設定する
参考 : 動的ディスプレイ
これらの機能を利用することで、不一致を起こすことなく指定の商品を広告表示から除外させることができます。
一方で、CriteoやRTB Houseでは、上記のような機能は存在しません(20年10月時点)。商品情報を削除する以外の対応方法としては、例えば小売りの場合、「Availability(在庫状況)」カラムを「out of stock(在庫なし)」に設定する方法がありますが、この機能を利用しても「不一致」として分類されてしまいます。これは媒体の仕様上避けられないことですが、商品情報を削除するよりかはレコメンドエンジンの機会学習の観点で有効とされていますので、この方法で対処するようにしましょう。
管理画面との連携
Q:最新のデータフィードが管理画面に反映されているか?
たとえデータフィードが適切な状態になっていたとしても、最新のデータがプラットフォームサーバーにアップロードされていなければ意味がありません。
各プラットフォームの仕様によりますが、基本的にはAPIなどで自動連携できる機能が搭載されているため、手動ではなく自動での連携を行い、更新漏れのリスクを回避しましょう。
商品(在庫)連動
Q:有効な商品ページでのみタグを発火させているか?
廃盤商品や有効期間が終了している期間限定商品などがWEBサイトに残っている場合、または長期間において在庫が補充されないと予め分かっている商品は、在庫なし扱いとなり一致率を下げる原因となります。
WEBサイトから商品を取り下げることが難しい場合、有効でない商品ページからタグを除去する、またはタグが発火しないように設定しましょう。
タグ発火タイミング
Q:適切なタイミングでタグが発火しているか?
例えば、GTMでデータレイヤー変数を利用して、価格情報などの可変する値を取得している場合、タグ発火のタイミングを「ページビュー」に設定していると、参照したい要素がブラウザに読み込まれる前に作動してしまい、値を正しく取得できないことがあります。
このようなケースにおいては、トリガーの設定を「ウィンドウの読み込み」や「DOM Ready」に設定し、変数の処理が行われた後で値を取得するようにしましょう。
以上、ダイナミック広告におけるタグとデータフィードの不一致の対策についてお伝えしました。
ダイナミック広告を運用する方の一助となれば幸いです。
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