オーリーズの支援チーム 12の行動指針 ~フィーチャーチームの約束~

オーリーズの支援チーム 12の行動指針 ~フィーチャーチームの約束~

オーリーズでは「フィーチャーチームの組織づくり」をしています 。(フィーチャーチームについてはこちら

フィーチャーチームでは、自分の仕事が「領域」にあるのではなく「成果」にあると理解し、「目的にフォーカスし、成果重視の行動を取る」という行動原則を持ちます。任された業務の上位目的に目を向け、クライアントの合理性に対して最適なアプローチを検討し、提案することができます。

しかし、フィーチャーチームの実現には多くの課題があります。例えば、こんな課題。

  • 役割を固定しないため、ナレッジ・ノウハウが分散しやすい
  • 状況に応じて役割を横断するため、分からないことに出会ったり、効率の悪いことをしてしまうリスクが高い
  • 特定領域での情報蓄積や品質向上に取り組みづらい

などなど。

これらの課題を乗り越えるために、私たちは「フィーチャーチームを実現するための12の行動指針」を持っています。言い換えれば、フィーチャーチームのプロトコル。このプロトコルがあることで初めて、フィーチャーチームが駆動します。

この記事では、その行動指針をご紹介します。 フィーチャーチームの組織運営の参考になれば幸いです。 ※ 各指針の冒頭に「流通しやすい言葉」が用意されているところもポイントです。

【帽子の被り分け】明確な役割を持ちながら、役割を越えて行動する

フィーチャーチームのメンバーは、個人の生産性ではなく、チームの生産性が最も高くなる選択を取ります。各個人が明確な「メインの役割」を持つと同時に、状況に応じて、メインの役割以外の仕事も担当します。このT型人材による柔軟なリソース調整が、フィーチャーチームの強みです。

フィーチャーチームのカルチャーでは、役割を横断することは、もはや「親切心」ではなく、必要不可欠な「ファンクション」だと考えています。

【道しるべ】学んだことを形式知化する

フィーチャーチームでは、個人が仕事の役割を横断します。役割を限定しないため(あくまでも限定しないだけで、メインとなる役割はある)、その分、分からないことに出会ったり効率の悪いことをしてしまうリスクがあります。だから、どんな些細なことでも、これからその問題にぶつかる人に向けて情報を残し、共有します。

フィーチャーチームの組織運営では、中央管理的に「レールを敷く」のではなく、一人ひとりのメンバーが「道しるべを立てる」ことで、メンバー全員でお互いの業務を支援します。

【全員デリバリー】各自の役割において、デリバリーから最終責任までを負う

フィーチャーチームの強みの一つに、自律した意思決定と行動による「迅速なデリバリー」があります。早い/速いことは、それだけで価値があります。

サイロ化された組織のように、顧客とやりとりする窓口を限定してしまうことで、デリバリーのスピードを落としてはいけません

ただし、教条主義的になってはいけません。独立したデリバリーが能力や状況に見合わないときは、チームで相談をしながら最適な行動を考えます。

【Whyの言語化】仕事や業務の目的を伝える、求める

フィーチャーチームのメンバーは、「与えられた役割を遂行する」ことを目的として行動するのではなく、「アウトプット(成果物)とアウトプットカム(成果)を生み出す」 ことに重きを置きます。

そのためには、それぞれが担う仕事や業務について 「なぜ、それをやるのか?」を理解する必要があります。課題を正面から受け入れるのではなく、課題から距離を取って眺めるイメージです。目的の理解があれば、他のT型スペシャリストの力を借りて、もっとアイディアが思いつくかもしれません。

そして何より「目的不明」×「指示された仕事」ほどつらい仕事はありません。仕事が楽しくなくなってしまいます。目的を理解し、主体的に行動を計画することは、「働く喜び」を感じるためにとても大切なことです。

【高フリークエンシー】漸進的で反復的なコミュニケーション機会をつくる

フィーチャーチームでは、メンバーが帽子の被り分けます。また、メインの役割もチームによって変わることが多いです。ゆえに、分からないことや無駄なことに出会うリスクも高いです。だからこそ、一人で考えすぎないようにします。その問題は、チームのメンバーがすでに解決しているかもしれません。

とはいえ、メンバーに協力を仰ぐにしても、経験の浅い業務については「分からないことが分からない」という状況になりがちです。だからこそ、「短いサイクルでコミュニケーションする機会」 を設けます。その機会が「分からないこと」を炙り出してくれます。

やり方は、チームや個人の状況に応じて都合の良いやり方を考えますが、以下に参考例を挙げます。

  • 毎朝「決まった時間」にスタンディングMtg
  • コンテンツは3つで、(1) 昨日やったこと (2) 今日やること (3) タスクを進めるうえでの障害、を確認
  • Mtgは長くても15分~20分程度
  • 障害を確認しても、そのMtgの場で解決せず、別の機会を設ける(全員の時間をロスしてしまうので)

【円を広げる】顧客の課題を認識した者が、責任を持って課題化する

ハンター・ハンターの世界では、体の周りを纏うオーラを円形に広げる 「円(エン)」 という技術があります。円内にあるモノの姿かたちを判別することができ、人によっては感情を読み取れたりします。熟練したハンターのみが有する高度な能力です。(ノブナガの「オレは太刀の間合い(半径4m)までで十分…!(つーかこれが限界)」は有名な一節ですね)

ここで「顧客の課題認識の範囲」を円に例えます。一般的な円の使い手は、体の周辺数ミリまでしかオーラをまとうことができません。これを「メインの役割範囲」としたならば、フィーチャーチームのメンバーは、その範囲を「顧客の課題」まで広げます

そして、円の拡大によって顧客の課題を認識したら、そのメンバーがその課題に責任を持ちます。「全員デリバリー」のポリシーからも、各自が課題を察知することはとても重要です。もちろん、一人で解決する必要はありません。チームに持ち返り「問題の第三者化(後述)」を行い、全員で解決方針を考えます。

【ハンロンの剃刀】悪意を見出さない

「ハンロンの剃刀」とは 「能力がないために起きていることを、悪意のせいにしてはいけない」 という状況判断の教えです。

人の行動は、多くの場合、その人の状況・能力・経験値でできる最大限のものであることがほとんどです。また、人はお互いの情報伝達が不完全でそれゆえ引き起こされた問題でも、その中に悪意を見出してしまいがちです。

だから、相手の行動に、悪意を見出す理由はありません。フィーチャーチームで成果を上げるには、高いレベルの協力関係が必要です。この教えを心に留めて、不要なコミュニケーションコストを生み出さないように心がけましょう。

【Iメッセージ】自分の思っていることを伝える

それぞれの役割の中で協力して物事を進めるとき、そこにはいつも情報の非対称性があります。それは、持っている情報の種類や質だけでなく感情も含まれます。

会話の主は、主語を「I=私は」に置いて会話をすることで、会話の受け手は、なぜそのような指摘をもらうのか、なぜそのような考えを必要とするのかを理解し、振舞いを主体的に変えていくことができます。同時に、お互いを攻撃するようなニュアンスが減り、お互いが問題の核心に向き合えるようになります。

書籍『エンジニアリング組織論への招待』の一節を引用します。

たとえば、「なんで、(あなたは)遅れたの?」と伝えたときに、言外に「なんで、説明もなく遅れてきたのか」と責めるようなニュアンスが伝わってしまうことがあります。これを、私を主語にした「Iメッセージ」に変えることで、ニュアンスを変えることができ、よりアクノリッジメント(承認)を伝えやすくなります。

先ほどの「なんで、(あなたは)遅れたの?」であれば、「連絡がなかったから、(私は)心配したよ」と伝えれば、責めるようなニュアンスは減り、存在を承認しているという明確なアクノリッジメントに変化させることができます。

これにより、「心配させてしまったな」と考えるようになり、メンティは自分が承認されていると同時に、相手に心配をさせてしまったのだと捉えるようになります。

【問題の第三者化】問題を可視化し「問題 vs 私たち」の構図をつくる

フィーチャーチームでは、自分の役割だけをこなすこがを仕事とは考えず、顧客の課題を解決することが仕事だと考えます。

しかし、この仕事観は個人のスタンスだけでは実現できません。メンバーそれぞれが 「チームメンバーの問題は、チーム全体の問題」 という理解のもと行動し、チーム全体で課題を解決していく協力関係を築く必要があります。

それを実現するためのコツとして、各メンバーの抱える課題を、タスク管理ツールで管理したり、ホワイトボードに書き込むなどして可視化し、物理的に視線を変えて「問題 vs 私たち」という構図を作ります。それぞれのメンバーの抱える問題を第三者的に眺めることで、その問題はチームのものになります。

物理的に問題を客体化しチーム全員で操作可能なものにすることで、フィーチャーチームの力が引き出されます。

【悩まない】次のアクションを明確にすることで「悩み」を減らす

「悩む」ことと「考える」ことの違いはなんでしょうか。この2つはよく似ていますが、違います。まずは、その違いを理解し、現在の自分の状況に対して自覚的になる必要があります。

ここでも、 書籍『エンジニアリング組織論への招待』の一節を引用します。

「悩んでいる」というのは、頭の中に様々なことが去来し、ぐるぐると思考が巡り続け、もやもやがとれない状態だと考えています。これは非常に苦しい上、生産的ではないので、「頑張っている」ように感じるわりに結果が伴いません。

一方で、「考える」ときには、メモ帳やホワイトボードなどに課題を書き出し、分解したり、抽象化したり、具体化したりといったことや、次に進むために必要な情報を書き出して調査したり、様々な事例や論文を調べたり、数値分析をしたり、関連するアイデアをクリップしたり、本を探しに行ったりと、何かと忙しく行動をとっています。また、答えが出ていなくても次に何をしたらよいかは明確で、手が止まるというようなことはありません。

フィーチャーチームでは、この「悩む」という状態に陥いるリスクが高いです。なぜなら、自分にとって新しい課題に取り組む可能性が高いためです。どうしても、不確実性(先のことがよく分からない)高い状態にさらされがちです。

だからこそ、自身が悩まないこと、メンバーに悩ませないことが重要です。

その解決策は、いたってシンプルです。「次のアクションを説明する/確認する」 ことです。これは自分自身に対しても同様です。自分に「具体的なアクションが明確か?」と問うことで、悩んでいるのか考えているのかについて、自覚的になることができます。

メンバーがうまく行動できていないと感じるときは、次のアクションを具体的に示すことで、「考える」ことができる状態に移行させます。

【T型キャリア】強みの分野を見つけ、掘り下げる

フィーチャーチームでの組織運営では、コンポーネントチームのように、職能ごとに組織を分け(サイロ化し)、決められた役割を数年間こなし続ける、といったキャリアロードマップはありません。

ゆえに、フィーチャーチームで漫然と仕事をしていると、専門性を掘り下げることができず、器用貧乏になってしまう恐れもあります。だからこそ、フィーチャーチームで働くメンバーは、自身の強みと弱みを客観的に見つめ、ときには1on1を活用しながら自分の内なる声に耳を傾け、得意な分野を見つけます。

そして、掘り下げる努力を重ね、自らの手でT型スペシャリストのキャリアを創っていきます。

【F2F】お互いの本音をフェイス・トゥ・フェイスで汲み取る

高いレベルでの協力関係をつくるためには、お互いの本音を汲み取りながら対話をすることが欠かせません。

メンバーが伝え合う情報の中には、依頼の内容そのものだけではなく、希望や心配ごとなどの心理的な側面に根差した、言葉だけでは表現できないものも含まれます。

できるだけ、関係者が同じ空間に集まり、顔を合わせて対話をすることで、お互いの本音を汲み取りやすくなります。

必ずしも、いつもリアルで顔を合わす必要はありません。ビデオ会議でもいいでしょう。目的は、コミュニケーションの「文脈」を共有することです。時にはテクノロジーを駆使して、チームで文脈を共有します。