顕在層の獲得をやり切るために、「品質スコア」に向き合ってみた話

顕在層の獲得をやり切るために、「品質スコア」に向き合ってみた話

鍵の紛失や、水まわりの修理のように、ある日突然、必要に迫られて検索される商材があります。

こうしたカテゴリーは、日常的に検討されることがないぶん、検索された瞬間に目の前にいられるかどうかが生命線になります。

今回ご支援していた商材もこのタイプでした。(事例の性質上、クライアント名やカテゴリーは伏せています。数字はすべて実際のものです)

いま発生している検索需要を獲得し切るには、ど真ん中のキーワードだけでは足りません。解決する手段を名指しで探す人もいれば、困っている状態をそのまま打ち込む人もいます。

この支援では、こうしたキーワードまで含めて、「最上部の表示シェア」を8〜9割に保つ水準で入札を強めていました。

今回は、この運用のなかで「品質スコア」に向き合った話を書いてみます。

鍵を失くした人が、「鍵開け 業者」と検索するとは限らない

例えば、鍵を失くした人が全員「鍵開け 業者」と検索するわけではありません。「ドア 開かない」「鍵 自分で開ける」など、自分なりの言葉で別の手段を探す人もいます。

こうした言葉までキーワードとして登録し、それらに対して鍵開けサービスの広告を出すと、いわゆる「広告の関連性」(検索語句と広告文の合致度など)がどうしても弱くなる。品質スコアが低く出るのは、ある意味自然なことです。

今回の商材も同じで、ど真ん中のキーワードはもちろんスコアが高く、シェアも取れていました。一方で、「別の手段を探す人」のキーワードは、スコア5以下が多数を占めていました。

入札をAIに任せたいま、運用者が向き合うのは品質の側

広告ランクは、入札単価と広告の品質を中心に決まります。

自動入札が常識になったいま、入札の業務はAIに任せられるようになりました。なので、私たち運用者が特に向き合うべきは「品質の側」で、その手がかりになるのが品質スコアです。

ただ、品質スコアの数字を上げること自体を目的にすべきではありません。また、KPIにするようなものでもありません。

これは、Googleの公式ヘルプでも説明されていることで、管理画面の品質スコアは、オークションごとに評価される「広告の品質」そのものではなく、あくまでも、その実績をまとめた成績表的なものだからです。

数字だけを上げても、それで直接、広告の品質が高まって広告ランクが上がるわけではない。

低い品質スコアは、「検索した人の言葉に、返している広告文やLPが噛み合っていない」というシグナルだと言えます。私たち運用者はこういったシグナルを手がかりに、検索者の言葉や意図と、広告コミュニケーション内容との噛み合わせを強くしていきます。

検索語句と、広告文の噛み合わせを直す

例えば、「鍵 自分で開ける」と検索する人は、潜在層ではありません。いま鍵が開かなくて困っていて、自分で無理ならすぐに誰かに頼む人です。「鍵開け 業者」と検索する人と、困っていることは変わりません

ただ、こういうキーワードは品質スコアが低くなりがちです。自分で解決したい人に業者の広告を出すので、訴求がズレやすくなる。

でも、期待できるコンバージョン率は、ど真ん中のキーワードと大きくは変わりません。検索需要を獲得し切りたいビジネスなので、ここで接点を減らすわけにはいきませんでした。

だからこそ、効率を落とさずに接点を増やすために、検索語句と広告文の噛み合わせを直すことから始めました。

見直したのは、主に次の5つです。

  • 対象を絞る:「ど真ん中ではないキーワードの品質スコアが低い」という構造ははっきりしていたので、難しいことは考えず、「費用が大きくスコア5以下のキーワード」の改善だけに集中しました
  • 実際の検索語句から逆算する:広告文の言葉を想像や思い込みで書かず、検索語句レポートで費用の大きかった言葉をそのまま盛り込みました。カスタマイザーの文言も、困りごとの言葉で検索した人にはその言葉を受けて「◯◯できなかった方には、この方法があります」と応える形で、キーワード単位で出し分けています
  • 役割ごとに言葉を分ける:鍵の例えで言えば、「ドア 開かない」と探す人と、「鍵開け 業者」で比較する人では、噛み合う言葉が違います。「困りごとに応えるキャンペーン」には困りごとの言葉を厚くし、「比較する人向けのキャンペーン」からは、あえて減らしました。役割とズレた検索語句は、除外で仕分けました
  • AIに任せる:見出しの固定解除をしました。サービス名と価格訴求の見出しが固定され、検索語句に合う見出しをAIが自由に選べない状態だったので、固定は外しました
  • 一括でスケールさせる:カスタマイザーの一括入稿テンプレートを整えて、155キーワードに展開しました

どれも、特別な話ではありません。検索した人の言葉に、こちらの広告文を合わせ直す。シンプルにそれをやり切りました。

品質スコア1のキーワードが、6まで上がった

取り組みは、見出しと説明文の2回に分けて、およそ3ヶ月かけて行いました。数字はそれぞれ、変更前後1週間ほどの比較です。

※ちなみに「スコアが上がったからCPCが下がった」という因果の話ではありません。検索語句と広告文の噛み合わせを直したことでCTRやCPCが動き、品質スコアもあとから付いてきた、という理解をしています。

項目結果
品質スコア(見出し)スコアに変化があった28キーワードのうち19個(約67%)で上昇、9個は低下。スコア1だったキーワードも、6まで改善
品質スコア(説明文)同じことを説明文にも広げて、155キーワード中39個で上昇。17個は低下、99個は変化なし
CTRスコアが上がったキーワードで改善。大きいものでは2〜4割の改善
CPCスコアが上がったキーワードで、25.55%低下
スピード広告文の変更から1週間ほどで、スコアの変化を確認
シェア最上部の表示シェア8〜9割の水準を維持

結果、シェアを落としてCPCを下げるのではなく、シェアを維持しながら、より低いCPCで表示機会を獲得できるようになりました

一方で、CPAへの効果は評価できていません。検証期間が短くCV数も少ないうえ、ど真ん中ではないキーワードを狙いにいく以上、広告文だけでなくLP側の整合性も合わせていく必要があり、ここは課題として残っています。

ただ、品質の改善が効きやすいのはCTRとCPCで、その範囲では明確な改善が見られました。この取り組みは、効果があったと考えています。

※補足:
品質スコアには算出上のクセがあります。どのマッチタイプで登録していても、スコアの計算に使われるのは、検索語句がキーワードの文字列とそのまま一致した検索の実績だけです。

インテントマッチのキーワードは幅広い検索語句に配信されますが、その大部分はスコアの計算に入りません。つまり品質スコアは、そのキーワードの配信全体の品質を表す数字ではありません。

スコアが動いたかどうかと、改善が効いたかどうかは、必ずしも一致しない。だからスコアは目安に留めて、効果は配信全体を含むキーワード単位のCTRとCPCで確かめています。

地味だけど、大事な仕事

緊急性の高い商材は、需要が突然生まれて、数時間から数日で決まってしまいます。接点のチャンスは、実質、検索されたその一回きり。必要としている瞬間に届かなければ、あとから接点を持つ機会はほとんどありません。

だから、必要としている瞬間に接点を持つためには、成果につながりやすいど真ん中のキーワードだけを見ていては足りない。

困っている人が、その場でどんな言葉を使って探すのか。そこまで向き合うと、検索意図が完全には一致しないキーワードにも行き着きます。そこで待っていたのが、品質スコアの問題でした。

品質スコアそのものは、追いかけるべき数字ではありません。ただ、低いスコアが知らせてくれる噛み合わせのズレを直すことは、地味だけど、今も変わらず大事な仕事。同じようにCPCの高騰に悩んでいる方の参考になれば幸いです。