【ミドルファネル研究会】「お客様と出会う広告」を過小評価していないか?2社のアトリビューション分析の事例
今回は、「新しくお客様と接点を持つ施策をどう評価するか」というテーマで、社内の勉強会で議論した内容を記事にします。
目次
ミドルファネル研究会について
「今すぐ買いたい人」だけでなく、その手前にいる人にどう働きかけるか。オーリーズではこのテーマに「ミドルファネル研究会」として取り組み、現場の知見を発信しています。
ミドルファネル施策の重要性は多くの広告運用者が感じているものの、その効果を社内に説明しきれず、継続投資や予算拡大に踏み切れないケースが少なくありません。
その背景として、お客様と新しく出会い、カテゴリーやブランドの関心・理解を高めていくミドルファネル施策の貢献は、数字として見えにくい。特に「第三者計測×ラストクリック評価」では、こうした施策は過小評価されやすいです。
今回は、業種が異なる2社でアトリビューション分析を行い、ラストクリック評価で隠れていたミドルファネル施策の貢献の大きさと、それが実際の投資判断をどう変えたかをご紹介します。
ミドルファネル施策はラストクリックと相性が悪い
ミドルファネル施策(以下、ミドル施策)は、ジャーニーの比較的前半でユーザーと接点を持ちます。そのため、
- 自然検索やダイレクトに貢献が流れやすい
- 広告のなかでも最終接点の施策(指名広告・リターゲティング・アフィリエイトなど)に貢献を奪われやすい
- 検討の過程でクロスデバイス・クロスブラウザが起きやすく、接点が切れやすい
などの特徴があり、「第三者計測×ラストクリック」の評価方法と相性があまりよくありません。
これは中長期で事業成長の天井を生み出しかねない、悩ましいテーマです。ボトム施策が効率よく見えるのは、その手前でミドル施策が新規の入口を作ってくれているから。入口を絞れば、いずれ全体の数字は悪化していきます。
では実際、ラストクリック評価ではどれくらいの貢献が隠れているのか。業種の違う2社の検証ケースを見ていきます。
ケースA|ミドル施策の貢献は「二重に」隠れていた
| 項目 | 概要 |
|---|---|
| ビジネス形態 | BtoC/CV:申し込み |
| 検証ツール | Adobe Analytics、AD EBiS |
| 問題意識 | 新規リーチ目的のSNS広告において、ラストクリックCVが少なく、ミドル施策の継続投資の合理性が説明できない |
このケースでは、広告予算の約8割をボトム施策(指名検索やリターゲティング)が占め、残りの2割で新規リーチ目的のミドル施策(非指名検索やSNS広告など)を配信していました。
Adobe Analyticsのラストクリックで評価していたため、ボトム施策が高く評価される一方で、ミドル施策にはなかなかCVがつかない。特にSNS広告のCVは少なく、「止めるべきでは」という圧力がかかっていました。
しかし、媒体の管理画面側ではある程度のCVが確認できていたことから、ミドル施策も間接的に貢献しているはずだ、と考えていました。
そこでまず、大局的にCV経路を分析してみたところ、
- 「2つ以上の接点があるCV」のうち約6割(66%)が「初回接触が広告 → 最終接触は非広告」
であることが分かりました。その逆はわずか14%でした。
つまり、広告が新規のお客様を連れてきているのに、最後の接点である自然検索やダイレクトに手柄が移っている、という構造が見えてきました。
物差しを3段階に分けて貢献を評価する
この構造を施策単位で詳しく見るため、広告効果測定ツール「AD EBiS」を使って、施策の貢献を3段階に分けて評価しました。
以降、それぞれの評価方法を「レベル①〜③」と呼びます。
| レベル | 名称 | 定義 |
|---|---|---|
| ① | 全流入ラストクリック | 広告だけでなく自然検索やダイレクトも含めた全流入のうち、CV直前の最終接点1つにCVを計上 |
| ② | 広告ラストクリック | 広告接点のみを対象に、最終接点1つにCVを計上 |
| ③ | 広告再配分 | レベル②に加えて、広告経由の初回・中間接触にも貢献度を按分 |
レベル①→③に進むほど、ミドル施策の貢献を拾える範囲が広がっていきます。
①→②では非広告(自然検索・ダイレクト)に流れていた分が広告に戻り、②→③では広告のなかでも最終接点に集中していた分が初回・中間にも按分されます。
つまり、ミドル施策のようなジャーニーの比較的早い段階で接点を持つ施策ほど、①→②→③のすべてでCV数が伸びていきます。逆に指名検索のように最終接点になりやすいボトム施策では、②→③の按分でCV数があまり動きません(初回・中間接点になることが少ないため)。
評価レベルを変えると、ボトムとミドルの動きが分かれた
結果は、ボトムとミドルで倍率の動きがはっきり分かれました。
以下は、レベル①(全流入ラストクリック)のCVを1としたときの倍率です。
| 施策 | ① 全流入ラストクリック | ② 広告ラストクリック | ③ 広告再配分 |
|---|---|---|---|
| ボトム施策 | 1 | 3.8 | 3.8 |
| ミドル施策 | 1 | 5.5 | 7.4 |
ミドル施策の貢献は、二段階で隠れていたことが分かります。
- ① → ②の伸び:自然検索やダイレクトなど、非広告チャネルにCVが流れていた(ボトム3.8倍、ミドル5.5倍)
- ② → ③の伸び:広告のなかでも、最終接点になりやすいボトム施策にCVが流れていた(ボトムは3.8倍のまま動かず、ミドルだけが5.5倍→7.4倍)
つまり、ミドル施策は新規のお客様を連れてくる「入口」としての役割を果たしていたにもかかわらず、その貢献は二段階で隠れ、過小評価されていたことが分かります。
実際、ミドル施策のCVは、レベル①では6件しかつかなかったものが、レベル③では約44件まで増えました。
どんなアクションにつながったか
この分析をきっかけに、このケースでは「レベル③」をミドル施策の評価指標として正式に採用しました。その結果、ミドル施策には広告予算の15%~20%ほどが継続的に配分されるようになりました。
ケースB|非指名検索の貢献は、存在感の大きなアフィリエイトに奪われていた
| 項目 | 概要 |
|---|---|
| ビジネス形態 | EC/CV:購入 |
| 検証ツール | GA4、AD EBiS |
| 問題意識 | GA4のラストクリック評価ではミドル施策の貢献が見えづらく、予算配分の妥当性を判断できない |
このケースでは、GA4のラストクリックで評価をしていたため、非指名検索やディスプレイといったミドル施策の貢献が見えにくく、投資を続ける合理性を社内で説明しづらい状況でした。
そこで、ケースAと同様にAD EBiSを導入し、レベル①〜③のフレームでアトリビューション分析を行いました。
非指名検索とアフィリエイトの数字が大きく動いた
各施策を評価レベルごとに並べると、特に動きが大きかったのが「非指名検索」と「アフィリエイト」でした。
以下の数値は、レベル①(全流入ラストクリック)のCVを1としたときの、レベル③(広告再配分)のCVの倍率です。
| 施策 | ①→③倍率 |
|---|---|
| 非指名検索 | 約3.94倍 |
| アフィリエイト | 約0.57倍 |
非指名検索は3.94倍と大きく増え、アフィリエイトは0.57倍と大きく減りました。
GA4のラストクリック評価でアフィリエイトに集約されていたCVの一部が、レベル③(広告再配分)では非指名検索などミドル施策に按分された、ということです。
この結果の背景には、このケースB(EC商材)ではアフィリエイトが最終接点になりやすかった、という事情があります。
EC商材では、検索結果の上位に比較・レビューサイトが並ぶことが多い。アフィリエイトサイトには購入動線が用意されているため、レビューを読んだ流れでそのまま購入されるケースが少なくありません。
その結果、非指名検索の「お客様と出会う貢献」が、ラストクリック評価では見えづらくなっていました。
加えて、アフィリエイトは成果報酬型なので、ラストクリックが多くつくほどASPでもGA4でも実績がよく見え、施策としての存在感が大きくなりやすい。その分アフィリエイトの実費も増え、非指名検索などの予算が削られていく構造になりがちです。
レベル③で評価し直したことで、この評価とコストの両方の歪みが数字として見えてきました。
どんなアクションにつながったか
レベル③の評価によって入口としての貢献が可視化されたことで、非指名検索への投資を拡大する方針となりました。
また、非指名検索と同様に新規向け施策として機能しうるディスプレイ広告施策を、レベル③の評価を前提に新たに開始しました。
レベル④|クロスデバイス分析の実例
もう一つ、ケースBで興味深い結果が得られたのでご紹介します。
ケースA・ケースBではレベル①〜③のフレームで分析をしましたが、この方法では「デバイスやブラウザをまたぐ接点」までは評価できていません。
AD EBiSには「AI推定クロスデバイス機能」があります。クロスデバイス・クロスブラウザで分断された接点をAIで確率的に推定し、同一ユーザーとして紐づける機能です。
ケースBではこの機能を使って、クロスデバイスの影響も見てみました。これを「レベル④」としてみます。
※この機能は確率推定ベースのため、数値の信頼性については慎重に扱う必要があります。ここではあくまで参考情報として位置づけます。
Google、Yahoo!、Microsoftの3媒体について、検索広告の指名・非指名をクロスデバイス補完で見直しました。結果、各CV数は媒体ごとに大きく動きました。
以下の数値は、GA4のラストクリック評価のCV(GACV)を1としたときの、レベル④(クロスデバイス補完)のCVの倍率です。
| 媒体 | 指名:GACV → レベル④CV | 非指名:GACV → レベル④CV |
|---|---|---|
| 0.82 | 1.17 | |
| Yahoo! | 0.81 | 2.04 |
| Microsoft | 0.74 | 1.83 |
ここから、2つのファインディングスがありました。
非指名検索はクロスデバイスをまたいだ購買貢献が大きい
まず、非指名検索はいずれの媒体でもCVが増え、指名検索は逆に減少しました。
Cookie計測では別ユーザーとして繋がらず指名検索などに集約されていた非指名検索の貢献が、クロスデバイス補完で繋ぎ直されて非指名検索に戻ってきたためです。
新規接触を担う施策は、その先のユーザー行動が複雑になりやすいので、クロスデバイス補完で取り戻せる貢献の量も大きい、と考えられます。
Yahoo!・Microsoftの非指名検索は特に過小評価されやすい
次に、リフト幅についてGoogleは1.17倍と控えめな一方、Yahoo!とMicrosoftは2倍前後と大きく伸びています。
正直なところ、なぜGoogleだけリフトが小さいのか、はっきりと分かっているわけではありません。ただ、考えられる要因としてはいくつかありそうです。
ひとつは、Google広告経由の流入はChromeやAndroid環境が多く、Googleアカウントのログインを介してCookieやuserIDレベルでクロスデバイスがすでに同期されているケースがあること。そのため、ある程度クロスデバイス分が捕捉されている可能性があります。
もうひとつは、Yahoo!広告やMicrosoft広告(Edge/Bing)のユーザー層は、業務PCで広告に触れて、自宅PCやスマホで購入に至る、というふうにデバイスやブラウザを使い分けるケースが多い可能性があること。
そもそもクロスデバイスをまたいだ購買が発生する母数が大きく、GA4で取りこぼされる接点も多いのかもしれません。
AI推定なので数値は参考程度ですが、こうした気づきが得られるので、クロスデバイス分析は試してみる価値があると思います。
まとめ|2社の検証から言えること
2社の検証を通したまとめです。
ミドル施策は「第三者計測×ラストクリック評価」では高い確率で過小評価される
業種が違っても、ミドル施策は評価レベルを上げるとCV貢献が増えました。
- ケースA:ミドル施策(SNS動画広告)がレベル①→③で7.4倍
- ケースB:非指名検索がレベル①→③で3.94倍
冒頭で挙げた「ミドル施策は第三者計測×ラストクリックと相性が悪い」という構造が、業種をまたいで実データに現れた事例と言えます。
分析結果は「絶対値」ではなく「施策間の相対比較」で判断する
評価レベルを上げると、評価に含まれるCVの範囲が広がるため、施策によってCV数の動き方は変わります。特にミドル施策ではCV数が増えてCPAも下がりやすい。
これはアトリビューション分析の構造上当然のことで、「レベル③のCPAが安いから効率が良い」と語ることにはあまり意味はありません。
重要なのは、同じ評価基準で施策を横並びにしたときの、「相対的な差」がどう変わるかです。
レベル①で見ると「ミドル施策はCPAが高い → 止めよう」だった判断が、レベル③で見ると「差が縮まっている → 投資継続の余地がある」に変わる。
この「投資判断が変わるかどうか」が、実務でアトリビューション分析を行う意義だと考えています。
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今回の内容が、ミドルファネル施策の評価指標を見直すきっかけになれば嬉しいです。
ミドルファネル研究会では、今後もこうした現場のディスカッションを共有していきます。