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- 室伏 翔太
動画広告の効果測定、KPI設定の方法を分かりやすく解説
インターネットユーザーの動画視聴時間の増加に伴い、動画広告市場は年々大きく拡大しています。テレビCMなどの従来の広告と比べて低予算で配信ができる上に、詳細なターゲティングも可能なことから動画広告の配信を検討している企業も多いのではないでしょうか。
この記事では、動画広告を配信する際のKPIの設定方法について解説していきます。
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目次
動画広告市場の拡大
動画広告市場は年々大きく拡大しており、株式会社サイバーエージェントおよび株式会社デジタルインファクトの調査によると、2022年の動画広告市場は5,601億円と2021年比で+33.2%の伸びとなっています。
また、動画広告市場の成長は今後も継続することが予想されており、2026年には2022年の2倍以上の規模になるとも想定されています。
動画広告市場の拡大は消費者の動画サービス利用拡大の影響が大きく、消費者の可処分時間の多くが動画視聴に割かれる状況のため、今まで以上に動画広告の重要性は増していくことでしょう。
出典:サイバーエージェント、2022年国内動画広告の市場調査を実施
KPIとは
KPIとは、Key Performance Indicator(主要業績評価指標)の略で、ビジネスやプロジェクトの成功を測るために用いられる定量的な指標です。KPIは、目標達成のための進捗状況を評価し、適切な戦略や施策の効果を可視化するために用いられます。
そのため、目的を達成するために適切な指標を選択することが重要であり、かつ目標値を適切に設定することが重要になります。
動画広告におけるKPIは、その目的に応じてさまざまな指標を用いることができ、再生回数、再生時間、クリック数、コンバージョン率などが挙げられます。
動画広告におけるKPI設定の手順
- 目的の明確化
まずは動画広告を配信する目的を明確にしましょう。どのような目的で配信するかによって、広告のメニューや、ターゲティング、動画の内容も変わってくるため、初めの段階で明確化することが重要です。 - KPIの設定
目的を明確化したら、目的に対して適切なKPIを設定します。購入促進の場合はCVR(Conversion Rate)、ブランド認知度向上の場合は視聴率やブランドリフトなどが該当します。また当然ではありますが、計測可能であるものを選択することも重要です。 - 目標値の決定
KPIを設定したら、達成すべき目標値を決定します。目標値は達成可能性が十分にありつつ、事業目標の達成に接続したものであることが好ましいです。
KPIは適切に設定されている場合、安易に変更すべきではないですが、どの程度の数値に設定すべきか検討もつかないといった場合はまずは業界平均値を採用するなどして、配信を開始し、その後は配信開始後の成果を踏まえてリバイスを行い、リーズナブルな数値を設定していくといった方法を取っても良いでしょう。
動画広告における目的別のKPI
動画広告を運用する際に設定するKPIは目的によって様々です。
動画広告の配信目的を大きく以下の3つに分けた場合のそれぞれの目的に合ったKPIを紹介します。
- 認知を高める
- 比較・検討段階の層に働きかける
- 購買を促す
認知を高める目的
認知を高める動画広告では、広告の露出を重視し、視聴者にブランドや商品を知ってもらうことが主な目的です。この場合、以下のようなKPIが用いられます。
- 広告表示回数(インプレッション)
- 広告が表示された回数を示し、露出度を測るために使用されます。TVCMなどの従来マス広告と比較する際に近しい条件(※)で比較できる指標です。
- ユニークユーザー数
- 動画広告が表示されたと推定されるユニークユーザーの数を示す指標です。インプレッション数は同一ユーザーへの複数回の配信を含みますが、ユニークユーザー数ではどれだけの人数にリーチできたかを確認することができます。
- 広告想起リフト
- 広告を見た後にブランドや製品の名前を覚えている人の割合を示す指標です。これにより、広告がどれだけ効果的に視聴者の記憶に残っているかが分かります。
- 認知リフト
- 広告を見た後のブランドや製品の認知度の向上率を示す指標です。広告によってブランドの認知がどれだけ向上したかを評価できます。
- サーチリフト
- 広告の配信によってどれだけサービス名や商品名などの指名検索数が増えたかを測定します。動画広告は視聴者から意識を向けられていないことも多いですが、サーチリフトでは広告の影響(広告を見た上で反応を示した人の数)を評価することができます。
👉 【GRP(Gross Rating Point:延べ視聴率)】
GRPは、広告効果測定の指標の1つで、Gross Rating Point(グロス・レーティング・ポイント)の略称です。GRPは、テレビCMの放送回数と視聴率を掛け合わせた数値で、広告の露出度合いを示します。動画広告におけるインプレッション数を疑似的に計算したものと言えるでしょう。
具体的な計算方法についてはここでは省きます。
GRPは、広告主や広告代理店が広告の露出度合いを把握するために使用されますが、あくまでテレビCMの露出度合いを示す数値であり、広告の効果を直接的に測定するものではありません。そのため、広告の効果を評価するには、GRPに加えて、消費者の反応調査やセールスの増減などのデータを総合的に分析する必要があります。
比較・検討を促す目的
比較・検討を促す目的の動画広告では、視聴者がブランドや商品、サービスについてより詳細に理解し、検討を始めることが目的です。この場合、以下のようなKPIが用いられます。
- 検討率リフト
- 検討率リフトは、広告やマーケティングキャンペーンによって、消費者が製品やサービスを検討する意向がどれだけ増加したかを表す指標です。つまり、消費者が商品やサービスに関心を持ち、検討する可能性が高まったかどうかを測定します。購買意向とは異なり、実際の購入につながるかどうかは考慮されていません。
- 好意度リフト
- 好意度リフトとは、ある広告やマーケティングキャンペーンが行われた後、消費者の製品やブランドに対する好感度がどれだけ変化したかを表す指標です。つまり、広告やキャンペーンが行われる前と後での消費者の製品やブランドに対する好感度の変化を測定し、その差分を示すものです。
- エンゲージメント
- 広告に対する視聴者の反応(いいね、シェア、コメントなど)を示し、視聴者が広告に対してどれだけ関心を持っているかを評価するために用いられます。
- 視聴率
- 広告の視聴回数を、広告が表示された回数で割った割合です。これにより、広告がどれだけ魅力的で視聴者に興味を引くかが分かります。
行動・購買を促す目的
購買を促す目的の動画広告では、視聴者が商品やサービスを購入することを目的としています。この場合、以下のようなKPIが用いられます。
- クリック数
- 広告をクリックした回数を示す指標です。クリック数が多いほど、広告が視聴者に具体的な行動を起こさせる効果があると言えます。ただし、クリックだけでなく、その後の行動も重要であるため、他のKPIと併せて評価することが望ましいです。
- コンバージョン数
- 広告を見た視聴者が、目的とされる行動(例えば購入や登録)を行った回数を示す指標です。コンバージョン数が多いほど、広告が効果的に視聴者の行動を変えていると言えます。
- CVR(コンバージョン率/Conversion Rate)
- コンバージョン数を広告のクリック数や表示回数で割った割合です。この指標は、広告がどれだけ効率的に目的の行動を促すことができるかを示します。高いコンバージョン率は、広告が行動変容目的に効果的であることを意味します。
- 購買意向リフト
- 購買意向リフトは、ある広告やマーケティングキャンペーンによって消費者の購買意向がどれだけ変化したかを表す指標で、消費者が商品やサービスを実際に購入する可能性が高まったかどうかを測定します。
- ROAS(Return On Advertising Spend)
- 広告費に対するリターンを示す指標で、広告投資がどれだけの利益をもたらしたかを評価するために用いられます。
- CPA(Cost Per Acquisition)
- 1件の購買が行われるためにかかった広告費を示し、広告の効率性を評価するために用いられます。
施策の評価と成果向上
PDCAサイクルを回す
KPIを定めて運用を開始した後は、一定期間ごとに以下のステップでPDCAサイクルを回しましょう。
- データ収集:定めたKPIに基づいて、定期的にデータを収集、もしくはモニタリングできる環境を構築しましょう。
- 分析:収集したデータを分析し、広告のパフォーマンスを評価します。KPIが達成されているかどうかを確認し、問題があれば原因を特定しましょう。
- 改善:分析の結果に基づいて、広告戦略の改善点を見つけ出しましょう。これには、ターゲット設定、広告クリエイティブの最適化、予算配分の見直しなどが含まれます。
- 実施:改善策を実施し、新たな広告戦略を運用します。これにより、パフォーマンスの向上が期待できます。
施策評価の際の注意点
YouTube広告の施策評価とPDCAサイクルを適切に行うにあたり、いくつかの点に注意が必要です。
まず、広告の配信設定と成果にある傾向を見出した際はそれが統計的に有意であるかに留意しましょう。さらに、外部環境、地域性や季節性などの影響がないかといった点にも注意が必要です。
これらの点に気を付けることで、効果的な広告戦略の評価と改善を進めることができます。
👉 【Causal Impact】
Causal Impactというツールを使うことで、広告による成果の純増効果を測定することができます。Causal ImpactはGoogleが開発した「キャンペーンが KPI にもたらす因果的影響を時系列から推定するための統計分析パッケージ」であり、GitHubでも公開されています。
Causal Impactで分析を行う際はキャンペーンの実施前に検証計画を立て、コントロール地域(非配信地域)とテスト地域(配信地域)を設定し、配信を行います。事前の検証設計が必要なため、すぐに分析ができるものではないですが、統計的に検証をする上では有用なツールの1つです。
参考:Think with Google|効果測定に潜むバイアスを避けるには? 広告を正しく評価するための 4 条件
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