- ナレッジ・ノウハウ
- 川島 崇志
YouTubeブランドセーフティの新指標「VVR」 ~動画消費の増加に伴い求められる安全性~
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動画市場におけるブランドリスクの懸念の高まり
YouTubeでは、毎分500時間以上の動画コンテンツがアップロードされていると言われており、Think with Googleによると月間アクティブユーザー数は日本国内で6,500万人以上(2020年9月時点)、Youtube Official Blogによるとグローバルで20億人にのぼります。
2021年1月、デジタル広告検証のグローバルリーダーであるIntegral Ad Science(以下IAS)が発表した、日本のインターネット広告関係者の意識調査レポートによると、2021年に注目するメディアのトップ3は「ソーシャルメディア」「デジタル動画とOTT」「モバイルウェブ」となっており、優先度の高いソーシャルメディアとして、Facebookに続きYouTubeが挙げられています。
また、2021年4月14日に発表された同社による1,000人以上の米国のCTVユーザーを対象にした調査レポートによると、CTVで視聴する広告付きのストリーミングサービスの中で最も好まれているのはYouTubeとなっています。
しかし、メディア品質の透明性が不十分なため、支出が調整される可能性の高いプラットフォームとしてもYouTubeはトップとなっています。テクノロジーの発展に伴い動画コンテンツ制作が高速化され、マーケティングの手段としての期待が高まる一方で、動画広告におけるブランドリスクに対する懸念は根強く、ブランドの安全性がより一層求められています。
2021年4月18日にIASが公開したメディアクオリティ レポート(MQR) 2020年下半期版では、 コロナウィルスの感染拡大がデジタルエコシステムに与えた影響のひとつとして、動画広告におけるブランドリスクの世界的な上昇を定量データで示しています。
外出自粛による動画コンテンツ消費の拡大が、動画広告におけるブランドリスクの増加と相関関係が見られたとのことで、中でもデスクトップ動画広告はブランドリスクの増大幅が最も大きく、グローバル平均では前年同期比1.4ポイント増の7.7%となっています。
※本レポートにおけるブランドリスクの算出定義
IASが判定するブランドイメージ低下やブランド毀損に繋がるページコンテンツで発生するインプレッションが全体に占める割合
ブランドセーフティは以前から関心が高まっているテーマですが、近年の社会情勢を背景にさらに重点が置かれています。ディスプレイ広告に対してテキストがない動画広告は、意図しない広告露出を回避するための技術ハードルが高く、世界的にブランドリスクが高い傾向にあるとされています。
YouTubeは違反動画の視聴率を推定する指標「VVR」を発表
2021年4月6日、YouTubeは違反コンテンツ視聴の割合であるVVR (Violative View Rate)という指標を公開することを発表しました。
最新のVVRは0.16~0.18%で、これはYouTubeの1万回の再生のうち、16~18回が違反コンテンツによるものであることを意味しています。
2020年と2017年の同四半期を比較するとVVRは70%以上減少しており、YouTubeによると、これは違反コンテンツの取り締まりのために機械学習に大規模投資をしてきた結果によるものだとしています 。
また、2018年からYouTubeは視聴者を保護するための取り組みの透明化および理解を得るために、コミュニティガイドラインの適用に関するレポートを公開しており、ポリシー違反によって削除された動画やチャンネルの数、違反コンテンツの検出元、削除理由など、最新のデータを誰でも確認することができるようになっています。
YouTubeのTrust and Safety部門ディレクターであるJennifer O’Connor氏は、「VVR は、有害なコンテンツからユーザーを守る取り組みの進捗を把握するのに役立つだけでなく、YouTube コミュニティ全体の透明化を果たす指標でもあります。」と述べており、今回の発表は注目の高まるブランドセーフティへの取り組みとその成果を対外的にアピールする意図が伺えます。
YouTubeはメディアリテラシー広告を配信する実験を開始
2021年4月12日、YouTubeは公式サポートページで米国の一部のユーザーに対し、「media literacy tips」と題した広告を配信する実験を開始したことを発表しました。
この実験では、動画コンテンツの開始前にスキップ可能な15秒程度の広告が表示され、その目的は、一般のYouTubeユーザーに批判的思考を促し、どのようにネット上の情報を取捨選択すべきかを学ぶための有益なヒントを提供することであるとしています。
現時点では小規模な実験とされていますが、その結果次第でYouTubeはこのプログラムをさらに拡大する可能性を検討するようです。近年の社会情勢の影響も相まって、急増する動画コンテンツに対するプラットフォームの安全性の期待の高まりが、このような一般ユーザーに向けた啓蒙活動に繋がっていると考えられます 。
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不適切な内容の動画コンテンツに広告が表示されたことをきっかけに、多くの広告主がYouTubeから撤退する事態となった2017年以降、YouTubeはブランドセーフティへの取り組みを精力的に行っており、VVRの結果がそのひとつの成果として表れていると言えます。
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