相談してもらえない上司は「雑談不足」が原因かもしれない

相談してもらえない上司は「雑談不足」が原因かもしれない

私のチームではミーティングの前後、よく雑談をしています。社内でも「よく話してて明るい雰囲気だよね」と言われているくらいです。

私はもともと、効率も大切だけど、仕事の話だけを重視して雑談を軽視する考え方には違和感を持っていました。

そんな私が、雑談を大切にするなかで気づいたことがあります。それは、チーム内で「これ、相談してもいいのかな」という遠慮が自然となくなるということです。

小さな遠慮が問題を大きくする

効率だけを追い求める職場では、無意識のうちに「仕事に関係あることだけ話すべき」という空気が生まれがちです。

このような空気は、メンバーに「これは相談する価値があるのか」を自分で判断させるプレッシャーを与えます。

「これは大した問題じゃないかも」「まだ自分で何とかできるはず」「忙しそうだから後にしよう」

こうした小さな遠慮が、問題の芽を摘む機会を奪ってしまう。メンバー本人も、早めに相談できていれば楽だったのに、一人で抱え込んで苦しくなってしまう。

そして、問題が大きくなってから発覚するため、解決に時間がかかり、チーム全体の動きも遅くなってしまうんです。

雑談は「仕事の相談もしやすい空気」をつくる

だからこそ私は、意識的に雑談の習慣を大切にしていました。些細なことでも話していいんだ、という空気を作りたかったんです。

正直なところ、最初はそれがチームにどんな影響を与えるのか、見えていない部分もありました。でも、続けていくうちに、徐々にメンバーの行動に変化が表れました。

「そういえば、ちょっと気になることがあって」という感じで、メンバーが自然に話しかけてきてくれるようになったんです。

最初は本当に些細な相談や、仕事以外の話から。でも、そうした小さなやり取りの積み重ねが、仕事の相談もしやすい関係性を作っていきました。

マネージャー視点での「雑談の価値」

また、マネージャーの立場から振り返ると、雑談には予想していなかった価値がありました。それは、チームの状況が自然と見えてくるということ。これは狙ってできることではありません。

あるとき、雑談の中でメンバーの表情が曇っているのに気づきました。話を聞いてみると、「実は、この件で少し詰まってて…」という話から始まって、早めにチームでサポートすることができたんです。

本人も「あのとき相談できて本当に良かった」と言ってくれて、これは雑談をしていたからこそ生まれた瞬間だな、と感じました。

効率だけを追求して業務報告をするだけの関係性だったら、問題が表面化するまで気づけなかったかもしれません。

もちろん、情報収集を目的に雑談をしているわけではないのですが、お互いに話しやすい関係があることで、問題の芽を早めに見つけられる。この価値は、メンバーにとっても、チーム全体にとってもプラスになっています。

「安心して相談できる環境」の重要性

実は、私が大切にしていた雑談には、理論的な裏付けがありました。

以前、ある会議でマネージャーの川島さんから『トリニティ組織:人が幸せになり、生産性が上がる「三角形の法則」』¹という書籍を紹介されたんです。

そこには、「効率を追求しすぎると人間関係が取引的になり、従業員の孤立や離職につながる」という話がありました。そしてその対抗策として、お互いに支え合う関係を築くことの重要性が書かれていました。

効率を突き詰めると「タスクに関係ない会話は非効率」となる。でも実は、それこそが「人間関係への投資」として機能するのだと。

この内容に触れたとき、「やっぱりそうだったのか」と納得しました。これまで感覚的に「雑談は大事だよな」と感じていたことが、まさにこの本の中で言語化されていたんです。

また、これはGoogleの『効果的なチームを可能にする条件は何か²という研究で提唱されている考え方とも繋がります。

Googleの研究では、「効果的なチーム」に影響する因子のなかで、最も重要なのは「心理的安全性」と示していました。

つまり、チームの生産性を高めるには、メンバーが安心して相談できる環境が必要なんです。雑談は、心理的安全性を培う日常行動の一つだと思います。

雑談は「チームを前進させる力」になる

効率だけを追求すると、メンバーとの関係は用事だけの関係になってしまいます。でも実際には、一見非効率に見える雑談こそが、チーム全体の効率を上げてくれるんです。

メンバーが遠慮なく相談できる環境があれば、問題は早期に解決できる。メンバー自身の負担も減るし、チーム全体もスムーズに動く。結果的に、みんなにとってプラスになります。

雑談は決して非効率なものではなく、メンバーとの信頼関係を築き、チーム全体を前に進める力になるんです。


¹トリニティ組織:人が幸せになり、生産性が上がる「三角形の法則」
長年のデータ分析に基づき、人と人の三角形の関係が多い「トリニティ組織」ほど生産性と幸福度が上がることを解明した書籍。孤立を防ぎ、相互扶助的な関係を築くことが、理想的な組織形成の鍵になると解説している。

²「効果的なチームを可能にする条件は何か」という研究
GoogleのPeople Analyticsチームが実施した、チームの効果性に関する大規模リサーチ。誰がチームにいるかよりも、チームがどのように協力しているかが重要であり、チームの効果性に影響する因子のなかで「心理的安全性」「相互信頼」「構造と明確さ」「仕事の意味」「インパクト」の順に重要度が高いと示した研究。

この記事を書いた人

株式会社オーリーズ

アシスタント・マネージャー

室伏 翔太

新卒で大手輸送機器メーカーに入社し、営業職としてキャリアをスタート。国内販売会社における販売店への卸営業の経験を経て、海外営業として海外子会社に対する事業管理、需給調整、製品輸出に従事。 データを活用するアジャイルマーケティングに魅力を感じ、専門性を身に付け、事業を深く理解して価値提供ができる人材になりたいという想いからオーリーズへの入社を決意。

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