CV計測は、計測ではなく運用そのもの|広告へのクレームを成果として学習したP-MAXの事例
あるP-MAXのアカウントで、自動入札の大きな「誤学習」が起きていました。
広告が出続けていたのは、他社の指名クエリ。CVの中身は、見込み顧客からの問い合わせではなく、他社から届いた「除外依頼」でした。つまり自動入札は、広告へのクレームを成果として学習していたということです。
この件を通じて改めて、CV計測は、計測ではなく運用そのものだと再認識させられました。
今回は、その経緯と学びを共有します。(事例の性質上、クライアント名や商材は伏せていますが、掲載している数値は実際のデータです。)
目次
他社の指名クエリに、10倍のCPCで入札され続けていた
今回のケースは、あるB2B SaaSのアカウントです。
P-MAXのCPAがひと月で急に上昇し、要因を探っていくと、周辺カテゴリにあたる他社の指名クエリに、高いCPCで入札が続いていました。たとえるなら、「経費精算SaaSの広告が、経営管理SaaSや経理BPOの指名クエリに出ている」ようなイメージです。
このアカウントの平均CPCは2,000円台。対してこれらのクエリには、その10倍にあたる約2万円のCPCで入札され、多い月には費用全体の3割が流れていました。
では、なぜ商材違いのクエリに、10倍のCPCで入札され続けたのか。
原因は、これらのクエリのCVRが、それ以外の語句の20倍以上あったためです。
| ある月の実績 | クリック数 | CV | CVR |
|---|---|---|---|
| 他社の指名クエリ | 19回 | 10件 | 53% |
| それ以外の語句すべて | 442回 | 11件 | 2.5% |
19クリックでCV10件という異常な実績。気になるのは、この10件の中身です。
そこで、問い合わせの対応履歴と突き合わせると、ほぼすべてが、他社から届いた除外依頼だと分かりました。
原因は、問い合わせ種別でCVを分けていなかったこと
原因は単純で、CVポイントにしていた問い合わせフォームに種別の項目がなく、CVを出し分ける仕組みがなかったことです。
見込み顧客の問い合わせも除外依頼も、同じ1件の成果として媒体に渡り、自動入札はそれに忠実に最適化しました。渡す成果の定義が間違っていた、というのが今回の反省です。
さらにP-MAXには、成果の出たクエリと意味の近いクエリを探して、配信を広げる傾向があります。これが除外依頼と組み合わさると、次の繰り返しが起きます。
- 広告が他社の指名クエリに出る
- その会社の担当者が広告をクリックして、フォームから除外依頼を送ってくる
- 依頼は1件のCVとして計測され、P-MAXはそのクエリを成果の見込めるクエリとして学習する
- 意味の近い別の他社の指名クエリへ配信を広げ、その先でまた新しい除外依頼が生まれる
やっかいなのは、この繰り返しがクエリ除外では止まらないことです。¹
除外で止まるのは該当クエリへの配信だけで、過去のCVデータが学習から取り除かれるわけではありません。実際、このアカウントでも依頼を受けるたびに除外対応をしていましたが、配信は意味の近い別のクエリへ移っていくだけでした。
クエリ除外では止まらず、計測の修正で止まった
この整理を受けて、対策は配信側ではなく計測側に打ちました。
フォームに問い合わせ種別を設けてCVを出し分け、見込み顧客以外の送信は計測しない設定に変更。あわせて、すでに学習された分は、誤ったCVを含む期間を指定して、データ除外で学習の対象から外しました。²
対策後のひと月で、これらのクエリにCVはつかなくなり、新しいクエリへの拡張は止まりました。費用割合も約半分に下がりました(残った費用は、除外済みクエリの別表記についた単発のクリック分です)。
そして、管理画面の入札設定には全く触れず、渡す成果の定義を変えるだけで、キャンペーン平均のCPCは半分になりました。
採用応募や資料請求でも、同じことが起きる
今回のケースは極端な例です。ただ、CVの中身を区別せずに最適化するという点では、どのアカウントも変わりません。だから、これに近いことは、もっと地味な形で日常的に起きていると思います。
たとえば、フォームに届く採用応募や営業連絡がCVとして計測されていれば、自動入札はそれらが増える方向に配信を寄せていく可能性があります。
また、混ざるのは無効な問い合わせだけではありません。資料請求と商談申込のような、有効な問い合わせ同士でも同じです。増やしたいのが商談申込でも、分けずに計測すれば、配信は獲得しやすい資料請求の側に寄っていきます。
こちらは、今回のようにCPCが跳ね上がる形では現れません。CPAは合っているのに、商談化率がじわじわ下がっていく。気づきにくいのは、むしろこちらの方だと思います。
CV計測は、計測ではなく運用そのもの
CV計測は、タグを設定してCVポイントを決める、配信前の仕事として扱われることが多いように思います。ただ、自動入札では、配信が始まってからも渡されるCVデータが入札と配信先を決め続けます。
だとすれば、手を入れる場所は管理画面の中だけではありません。性質の違う問い合わせが1つのCVポイントに混ざっているなら、フォームに届いているものを洗い出して、学習させたい成果だけを渡す。管理画面の中の調整と同じように、フォームの設計にも手を入れていく。
CVを「成果を正しく測るためのもの」と捉えていると、こうした対応は計測まわりの裏方仕事に見えます。でも、自動入札が前提のいま、フォームの項目を直すことは、入札単価を調整することと変わりません。
CV計測は、計測ではなく運用そのものなのだと、今回の件で再認識させられました。
この記事が、広告運用に関わる方の参考になれば幸いです。
¹ 出典:Google広告ヘルプ「P-MAX キャンペーンに関するよくある質問」(「除外キーワードは類似パターンと一致しません」の記載)