CPAの達成で満足しない。「許容CPA」を1.5倍に広げるためにやったこと
デジタル広告の多くはオークション形式で、獲得1件により多くの広告費を払える企業ほど、表示機会を取りやすくなります。
つまり許容CPAの高さが、そのまま競争力になります。
私たち広告代理店にまず問われるのは、目標CPAを守りながら、獲得数を伸ばすことです。
ただ、オークションである以上、効率をどれだけ高めても、獲得数の上限は目標CPAの高さで決まります。
だから、効率を磨くことに加えて、目標CPAそのものを上げることにも取り組む。クライアントの事業成長に貢献するには、この両方が必要だと考えています。
今回は、申込後の歩留まりを改善して、許容CPAを約1.5倍に広げた取り組みをご紹介します。
目次
申込CPAは達成。でも入会数は伸び悩んでいた
今回ご支援したのは、あるスクール事業のクライアントです。
広告で体験レッスンの申込を集め、体験に参加してもらい、入会につなげる。この流れで顧客を獲得されています。
申込CPAは目標を達成していました。広告代理店として期待される役割は果たせていたと思います。広告の数字だけを見れば順調。
ただ、申込者の約半数が体験に来ていない、という事実がありました。
この参加率が水準として高いのか低いのか、比べられる基準があったわけではありませんが、半数が来ていないという状況には、改善の余地を感じました。
体験への参加率が上がれば、申込から入会までの歩留まりが上がり、申込1件に払える広告費、つまり許容CPAも広がる。そうすれば、オークションの勝率が上がり、事業成長につなげられます。
離脱の原因は、申込後の日程調整
では、なぜ半数も体験に来ないのか。離脱の場所を追ってみると、申込の前ではなく、後に集中していることが分かりました。
従来の申し込み導線では、フォームでまず連絡先だけを受け取り、申込後にメールで体験日程を調整していました。
この形にしていた理由は、入力のハードルです。顧客の多くは多忙なビジネスパーソンなので、フォームで求めるのは連絡先だけにして、申込の手間を最小限にする。日程は連絡がついたあとに、相手の都合へ合わせて調整する。その方が申込しやすく、顧客にとっても親切なはずだ、という考えでした。
ただ、離脱が集中していたのは、その申込の後でした。
メールを確認して、返信して、日程をすり合わせる。このやり取り自体が、思っていた以上の負担になっているのかもしれない。あるいは負担かどうかとは別に、やりとりの往復のあいだに熱が冷めてしまうのかもしれない。
そう見立てて、申込と同時に空き枠から日程を確定する形式への変更をご提案しました。
もっとも、申込時に日程の確定まで求めると、希望の枠がない人は申込を完了できません。入口の申込数が減って、申込CPAが上がるかもしれない。
それでも、入口で減りうる分より、いま申込の後で失っている半数の方が大きいはず。そう考えて、リスクを見込んだうえで提案を前に進めました。
「持ち場のあいだをつなぐ役」を買って出た
進めてみると、決めるべきことがどんどん出てきました。
申込を受け止められるだけの予約枠はあるのか。導線を変えたあと、申込後のオペレーションや予約情報の管理はどうなるのか。フォームと予約管理ツールの連携はどう組むのか。広告の計測はどこまで残せるのか。
「フォームに予約機能を足すだけ」に見えて、この手の導線変更は、クライアントの業務にも、制作会社の実装にも、広告の計測にもまたがります。予約枠を増やせるのはクライアントで、フォームや予約管理を作り変えられるのは制作会社。私たちが直接手を動かせる部分は、多くはありません。
ただ、物事を進めるには、手を動かす仕事のほかに、持ち場と持ち場のあいだをつなぐ仕事も同じくらい重要です。なぜやるのか、何がどれだけ良くなるのかを定義する。見通しを立てて、スケジュールを引く。
進める中で出てくる問題を引き受けて、都度、関係者に説明する。ときには手を動かす仕事以上に、ここが成否を握ります。
今回で言えば、予約枠の議論はこちらから働きかけて、運営状況のヒアリングと論点の整理から、検討の場づくりまでを進めました。導線まわりは、影響する業務を洗い出し、フォームと予約管理ツールの連携要件を実装に渡る形にまとめました。クライアントと制作会社には、判断と実装に集中していただく。
私たちは、このプロジェクトマネジメントの役割に徹しました。
結果、予約枠は講師リソースを増やせるタイミングとも重なって確保できることになり、フォームは空き枠の確認から予約確定までを一度で終えられる形に落ち着きました。
申込数もCPAも変わらず、体験参加率は50%から80%へ
結果は、期待以上でした。
まず、いちばんの懸念だった申込数の減少は起きませんでした。予約枠を広げられたこともあり、申込数も申込CPAもほぼ横ばい。悪化は見られません。
一方で、プラスは大きく出ました。申込後の日程調整がなくなり、体験参加率は約50%から80%に上昇。歩留まりが上がったぶん、申込1件に払える広告費も上がり、許容CPAは約1.5倍に拡大しました。
このご支援では、申込CPAが許容内に収まる限り予算を増やす方針だったので、広がった許容CPAは、広告投資の増加に直結しました。
許容CPAの高さが、そのまま事業成長につながりました。
目標CPAを上げる努力も、私たちの仕事
振り返ると、特別なことはしていません。数字を見て、申込の後に改善の余地を見つけて、提案して、段取りを引き受けた。予約枠を増やしたのはクライアントで、フォームや予約システムの実装を担ったのは制作会社です。
私たちは、その実現の障害を取り除くことに集中しました。広告の中の仕事かどうかより、目標の達成に必要かどうかで動く。
派手な仕事ではありませんが、目標CPAを守ることと同じくらい、目標CPAを上げる努力も私たちの仕事だと思っています。これからも、その両方をやっていきます。