【広告運用研究会】リード獲得後のデータで施策を横並びにしたら、判断が変わった3社の事例 ── 現場の一次情報をオープンに

【広告運用研究会】リード獲得後のデータで施策を横並びにしたら、判断が変わった3社の事例 ── 現場の一次情報をオープンに

オーリーズでは、コンサルタントが現場の知見を持ち寄る「広告運用研究会」という取り組みをおこなっています。

今回は、リード獲得後のデータで施策を横並びにした結果、打ち手が変わった3社の事例をシェアします。

広告運用研究会について

オーリーズでは、各案件のコンサルタントが特定のテーマについて運用事例をディスカッションする「広告運用研究会」という取り組みをおこなっています。

AIの進化で、広告運用の知識やベストプラクティスは以前よりずっと手に入りやすくなりました。一方で、特定の状況下で誰が何を判断し、その結果どうなったかという一次情報は、なかなか表に出てきません。

この記事では、研究会で議論した内容を公開することで、現場の一次情報を比較できる場を作れればと考えています。

今回は、BtoB企業の広告運用で、リード獲得後のデータで施策を横並びにした結果、打ち手が変わった3社の事例をシェアします。

ケースA|有効リード率で各キャンペーンを評価し、予算配分を変えた

項目概要
ビジネス形態BtoB製造業(媒体CV:資料請求)
問題意識リード獲得単価で施策を評価していたが、リードの質および商談に繋がっているかまでは見えていなかった
打ち手有効リード率・商談単価を可視化し、キャンペーン間の予算配分を変更

このケースでは、各キャンペーンの評価をリード単価のみで行っていました。

当時の基準では、指名検索に次いでMeta広告(ブロード配信)の効率が良く、広告予算全体の約25%を投下していました。

以下はある期間の実際の広告配信データです。

広告種別リードコストリード単価
検索 指名153¥1,377,000¥9,000
検索 一般315¥10,710,000¥34,000
リタゲ66¥2,904,000¥44,000
Meta181¥4,887,000¥27,000
総計715¥19,878,000¥27,800

有効リード率で施策を評価

獲得したリードを、ターゲット企業(規模や業種)かどうかの基準で「有効リード」と「無効リード」に分類し、施策別に有効リード率を出しました。

広告種別リード有効リード有効率有効リード単価
検索 指名15312582%¥11,000
検索 一般31526885%¥40,000
リタゲ663959%¥74,000
Meta1819251%¥53,000
総計71552473%¥38,000

リード単価¥27,000で指名に次ぐ効率に見えていたMeta広告のブロード配信が、有効リード率では51%と半分近くが対象外。有効リード単価は¥53,000となり、検索一般(¥40,000)を上回りました。

さらに、有効リードが多くても、そこから商談に繋がるかは別の話です。

そこで有効リード率に加えて、後続の商談データと突合し、商談化率・商談単価まで施策別に可視化し、商談に繋がりやすい施策に予算を寄せていきました。

予算13%削減で商談単価20%改善

分析とアロケーション開始の前後4ヶ月で比較した結果、広告予算を13%削減しながら、商談単価は20%以上改善しました。

期間コストリード商談商談単価
分析前4ヶ月¥9,792,0002,87488¥111,000
分析後4ヶ月¥8,450,0002,58498¥86,000
差分-13.7%-10.1%+11.4%-22.5%

リード単価だけで評価していたときには見えなかった施策間の差が、有効リード率・商談単価で可視化したことで見えるようになった。

より深い指標で見ることで、予算を寄せるべきキャンペーンが入れ替わったケースです。

ケースB|コンテンツ別の商談化率を可視化し、潜在層への架電をやめた

項目概要
ビジネス形態BtoB SaaS事業(媒体CV:資料DL)
問題意識複数のホワイトペーパーでリードを獲得していたが、コンテンツごとの商談化率が見えておらず、ISは全リードに同じアプローチを取っていた
打ち手コンテンツ別の商談化率を可視化し、商談に繋がりにくいコンテンツのリードへの架電を停止

このケースでは、BtoB SaaS製品のリード獲得を目的にGoogle検索広告を運用していました。

CVポイントは資料ダウンロード。広告の遷移先となるホワイトペーパーは、市場動向レポート、導入事例集、製品資料など、複数のコンテンツを用意していました。

ただ、どのコンテンツ経由のリードが実際に商談に繋がっているかまでは可視化できておらず、インサイドセールス(IS)は全リードに対して一律で架電をしていました。

支援の中で見えてきた課題は、リード数は増えているのにISの商談獲得が伸び悩んでいること。架電しても「まだ情報収集しているだけ」「具体的に検討していない」と返されるケースが目立ち、獲得した反響に対して成果が出ない状態が続いていました。

コンテンツ別に商談化率を可視化した

広告データとSalesforceの商談データを連携し、コンテンツ単位で「リード数」「有効リード数」「商談数」「商談化率」を可視化するダッシュボードを構築しました。

分析した結果は以下の通りです。

コンテンツリード数有効リード数商談数商談化率
市場動向資料2004052.5%
事例集3302005015.2%
製品資料2801405218.6%

ISはこの3種類すべてのリードに一律で架電していました。しかし上記の通り、「市場動向資料」のリードに架電しても、商談に繋がるのは40件中5件。

ISの架電工数の大部分が、商談化率の低いリードに費やされていたことになります。

「架電しない」という判断

結果を受けて、検討段階の深いコンテンツ経由のリードには従来通り速やかにアポイントを打診する一方、検討段階の浅いコンテンツのリードには架電しない運用に変更。

市場動向資料は、すぐに商談には繋がりにくいものの、長期的なナーチャリングを経て商談に至るケースもあるため、広告配信自体は継続しつつ、ISの対応のみを変更しました。

市場動向資料をダウンロードしたリードには、メルマガでの情報提供を主体とするコミュニケーションに切り替えています。

コンテンツ別に商談化率を可視化したことで、限られたISのリソースを商談に繋がりやすいリードに集中させられるようになったケースです。

ケースC|施策横断で商談単価を比較し、BDRに予算を寄せた

項目概要
ビジネス形態BtoB不動産事業(媒体CV:資料請求)
問題意識広告に予算を集中していたが、施策横断で商談獲得効率を比較できていなかった
打ち手施策を商談単価で横並び比較し、商談獲得効率の良いBDR施策に一般キャンペーンの予算の一部を再配分

このケースでは、SDR中心の体制(広告でリードを獲得しISが商談につなげる)で運用していました。

その他にも、商談獲得の施策としてBDR(新規開拓を目的としたアウトバウンド型のコール)も行っていましたが、IS担当者が他業務と兼任で限定的に稼働している状態でした。

広告の管理画面データとSalesforceの商談データは分断されており、施策を横断で比較できないまま、広告中心の予算配分が続いていました。

商談単価で施策を横並びにした

翌期のマーケティング予算策定のタイミングで、施策横断の評価に踏み切りました。

広告媒体のデータとSalesforceの商談データを統合し、広告やBDRも含めたすべての販促施策を商談単価で横並びに比較できるレポートを構築。

以下は広告の指名キャンペーン・一般キャンペーン・BDRの3施策を比較した結果(※1)です。

施策コスト商談数商談単価
広告(指名CP)約37万円10.3件約3.6万円
広告(一般CP)約229万円7.8件約29万円
BDR約30万円(※2)1.8件約17万円

※1. 月平均。商談数の小数点は期間平均のため
※2. BDRのコストはIS担当者の「稼働時間按分の人件費」と「施策運用にかかわる実費」を合算したもの

指名キャンペーンは、商談単価約3.6万円と最も効率が良かったが、すでにサービスを認知しているユーザーが対象のため、新規商談を大きく伸ばす手段としてはスケールしにくい。

一般キャンペーンの商談単価は約29万円。BDRは約17万円。商談単価ベースではBDRのほうが効率が良いことが、横並びにした分析で初めて見えました。

予算の再配分

この結果を受けて、翌期の予算計画で一般キャンペーンの予算の一部をBDR施策に再配分しました。

リード単価やリード数だけで見ていれば、広告に予算を寄せ続ける判断は変わらなかったはずです。

商談単価という指標で、広告に限らない全ての施策を横串に比較したことで、予算配分の選択肢が広がった事例です。

3社の判断を並べてみる

ケースA(製造業)ケースB(SaaS)ケースC(不動産)
比較指標有効リード率・商談単価コンテンツ別の商談化率施策横断の商談単価
見えたことMeta広告のブロード施策は有効リード率が低い検討段階の浅いコンテンツは商談に繋がりにくいBDRの商談単価が広告より低い
打ち手キャンペーン間の予算配分を変更潜在層リードへの架電を停止一般キャンペーンの予算をBDRに再配分

3社とも、リード獲得より後工程のデータで施策を評価した結果、それまでとは異なる判断に至っています。

ケースAではキャンペーン間の予算配分が変わり、ケースBではISの架電方針が変わり、ケースCではマーケティング施策の予算配分が変わった。

3社に共通しているのは、可視化する前はそもそも施策を同じ物差しで比較できる状態になかったという点です。

広告と他施策のデータが分断されている、コンテンツ単位の商談化率を追っていない、施策をまたいで商談単価を並べる仕組みがない。

状況は異なりますが、比較の土台がなかったという構造は共通しています。

リード獲得を担うチームと商談化を担うチームが分かれている場合、それぞれが自部門のKPI(リード数・商談数)を追う中で、施策を横串で評価する視点が抜け落ちやすい。

リード数をKPIにしている以上、「リードが多く取れるキャンペーンの予算を減らす」「リード数の多いコンテンツ経由の架電をやめる」といった判断は、自部門の成果指標を下げる方向に働きます。

今回の3社で起きた判断の変更は、いずれもある部門の指標を一時的に下げてでも、全体の商談効率を上げるという性質のものでした。

これは一つのチームだけでは実行できません。部門間のKPIや評価力学をケアしながら合意形成を進める必要があり、商談データの横串での可視化は、その合意形成の共通言語になる。

可視化によって施策を同じ物差しで比較できるようになったことで、それまで当たり前だった予算配分や運用ルールが見直され、3社とも打ち手が変わっています。

今回の内容が、BtoB広告の評価指標を見直すきっかけになれば嬉しいです。

広告運用研究会では、今後もこうした現場のディスカッションを共有していきます。