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【寄稿】自分の人生を生きてほしい-創業以来6期連続200%成長を遂げるオーリーズの組織論-
※本投稿は、2018年5月7日に働き方ファーム様のブログに寄稿した記事を転載しています※
初めまして。株式会社オーリーズの鈴木多聞と申します。
今回、ご縁あって働き方ファームの石倉さんから「ぜひオーリーズの働き方や考え方について働き方ファームのブログで紹介したい」とご依頼頂き筆をとる運びとなりました。
日頃より、石倉さんがブログに書かれている内容にすごく共感する部分がありまして、これを機に弊社なりの「働き方」についてお伝えしたいと思います。
目次
プロフィール紹介
株式会社オーリーズ 代表取締役社長 鈴木 多聞(すずき たもん)
20歳の時、人生をかけて世の中の想いを形にできるような、インパクトのあることを成し遂げたいと考え、ビジネスコンテストに参加した後、キャリア支援事業と地域共創事業(NPO法人)を立ち上げる。その後、経営コンサルティングファームに入社。情報通信と小売産業にて事業再建、M&Aや資金調達業務に従事した後、株式会社オーリーズを設立する。事業理念に「最高のバディ・運命共同体・いきいきと、はたらく」を掲げ、2014年に運用型広告を通じて課題解決をする広告代理店として、広告運用支援とインハウス支援事業を開始、現在に至る。
組織ミッション「いきいきと、はたらく」策定の背景
オーリーズでは、「クライアントにとって最高のバディに」というマーケットに向けたものと、「いきいきと、はたらく」という一緒に働くメンバーに向けたものと、2つのミッションを掲げています。
今回は、後者の「いきいきと、はたらく」に焦点を当ててお伝えしますが、この「いきいきと、はたらく」とは、私からメンバーに向けた「みんなに自分の人生を生きて欲しい」という願いであり、約束です。
なぜそのようなミッションを掲げるにいたったのか、まずはいきさつからお話します。
私たちが運用型広告の事業をはじめたのは2014年で、ネット広告市場が1兆円を超える、テレビの市場規模を抜く、といったニュースで溢れかえっていた時期です。
私たちも、当時、運用型広告の運用代行サービスを中心に支援形態、取引形態、報酬形態に変革をもたらすエージェンシーとして、顧客の課題解決に東奔西走していましたが、別事業の撤退直後ということもあって、資金繰りはとにかく厳しい状況で、「なんとか生き残らなければ」という思いでした。
そのころは、理念や大儀を雲に隠したまま、朝起きて出社して、毎日30分刻みの営業訪問を行って、帰社後はたくさんのアカウントを運用して、また翌日の準備のためにレポートを作成し深夜に眠る。そんな日々を無機質に繰り返したように思います。
※本インタビュー上のミッション「クライアントにとって最高のバディに」と「いきいきと、はたらく」は、2018年7月時点にて「あなたを、叶える。」に統合いたしました。
たどり着いたのは、「みんな自分の人生を生きて欲しい」という想い
マーケットの成長とともに、私たちの売上も堅調に拡大し、また仲間も増えていくのですが、売上が大きくなっていっても、何か違うな、という違和感がありました。むしろ売上に比例する形で、虚無感が大きくなっていきました。
放っておいても大きくなるマーケットに身を置いて、それに合わせて自分たちも大きくなっているだけのような、マーケットに生かされているだけのような、そんな虚しさがありました。私たちらしさはどこにあるのだろう、という考えが、ぐるぐるとめぐっていました。
端的に言うと「働く意味、生きる意味ってなんだろう」という、根源的な問いです。理性ではなく、感性の思考ですね。
それから、「自分たちのユニークな価値ってなんだろう」「会社は個人にとってどういう場所であるべきなんだろう」ということが、経営会議の中心的なアジェンダになっていきました。
そしてたどり着いたのが、「みんな自分の人生を生きて欲しい」という想いです。
これまでの会社経営を通じていちばん辛いと感じたシーンは、「自分たちの存在意義や価値に自信が持てないとき」でした。なぜこれをやっているのだろう、これは自分でなければできないことなのだろうか、という疑問を抱いてしまうときですね。月並みなことですが、納得感のある人生を生きるうえで、この疑問に向き合うことはとても大切なことです。
だから私は経営者として、メンバーにはそういう思いをさせたくない、そういう経営は絶対にしないと心に誓いました。そして生まれたのが、「いきいきと、はたらく」というミッションです。
「いきいきと、はたらく」は、和やかに楽しく働くことではない
昨今、「働き”方”改革」と叫ばれていますが、大事なのは「働く”意義”改革」だと思っています。仕組みの話ではなくて、まずはそれを支える目的の話です。
私たちの掲げる「いきいきと、はたらく」とは、ワークライフバランスという言葉から想起される、プライベートを充実させることのできる職場のことでもければ、出勤時間が柔軟で融通の効く働き方ができることでもありません。また、衝突の少ない和やかな雰囲気で、ストレフリーに働くことでもありません。
また、特に若い会社で働いている人に多いと思うのですが、「成長」という曖昧な言葉を拠り所に、いつ訪れるかも分からない機会に対する準備だ、修行だとして、長時間労働に耐えて、社会や会社ために身を捧げることでも、もちろんありません。
「いきいきと、はたらく」ということは「自ら考えて、決めて、納得して、前に進んでいく」ということです。それがすなわち「自分の人生を生きること」だと。
大事なことは、時間や場所、給与といった物理的な制約から開放することではなく、心にかかる制約から開放することだと、私は思っています。目の前にある仕事に対して、「自分の人生や価値観に照らして考える機会」をつくることが、社会における会社組織の重要な役割なのではないかと考えています。
だから、オーリーズでは、それぞれの人生史における「働く」という時間を通じて、一人ひとりが「自分の人生を生きる」という意義を最大限に追求できるような、仕組みと文化を創り続けたいと思っています。
あくまで「いきいきと、はたらく」というミッションは、温情を施すことで不満を抑え、会社と個人の関係を平穏に維持していこうとする考え方ではありません。メンバーと会社との合理的な約束です。
「いきいきと、はたらく」3つの状態定義
「いきいきと、はたらく」状態を実現するために、「いきいきと、はたらく」とはどういうことなのかを定義し、社内のいたるところに掲示して社員に共有しています。
以下の文章が、実際に社内に掲示しているものです。
「いきいきと、はたらく」
私たちはメンバーに、オーリーズで過ごした時間がかけがえのないものであったと信じてもらえる、そんな会社になることを目指し、一人一人がいきいきと働くことのできる仕組みと文化を作り続けることを約束します。
「はたらく」の定義は人それぞれです。人の役に立つこと、お金を稼ぐこと、好奇心に従うこと、追求すること、人と関わり合うこと、挑戦すること、そんな自分の中にある「はたらく」の定義に従い、納得し、社会や会社のためだけに働くのではなく、自分の人生のために「いきいき」と働いてください。
そして私たちはメンバーに、あらゆる判断と行動が、クライアントのバディになるために実行され、それを達成するための努力を惜しまず、オーリーズの企業価値向上に貢献することを期待します。
ここに、『自分の中にある「はたらく」の定義に従い、納得し、社会や会社のためだけに働くのではなく、自分の人生のために「いきいき」と働いてください』とありますが、これを実現するためには、会社組織として、「3つの状態」に向き合う必要があると考えました。
(1)個人の働く目的と会社の目的が「整合」している状態
(理念・ビジョン・ミッション / 事業ドメイン / 提供サービス など)
(2)個人のやりたい業務と取り組む業務が「合致」している状態
(セールス / コンサル / クリエイティブ / 検索広告運用 / ソーシャル広告運用 など)
(3)個人が取り組む業務の目的を「理解」できている状態
(目的・目標の設定プロセスへの関与 / 背景や動機の共有 など)
(1)は、個人の価値観や生き方に迫るものです。会社の方向性と個人の方向性が交差する点をお互いに認識し合うことが重要で、ここが整合していれば、個人と組織はとても良い関係にあると言えます。
(2)は、主に個人の能力やスキルによって選択されていきますが、重要なことは、組織形態にある程度の柔軟性を持たせることと、個々の「やりたいこと」と「できること」とのギャップをしっかりとフィードバックして、擦り合わせていくことだと思います。
この2つが満たされることは、理想ではあるけれども、なかなか簡単なことではないというのが現実かなと思います。働く目的とは、実は本人にもなかなか言語化できないことだったり、中長期で変わっていくものだったり、やってみないとわからないことだったりします。最初から完璧にバシッとハマるケースはなかなかない。試行錯誤するものです。
私は組織としてそれに向き合いたい。人生の膨大な時間を投じる「働く」という営みを、そんなに決めてかかるものじゃない。だから、組織が個人に対してしっかりとフィードバックしながら、試行錯誤しながらしっかりと考える機会を作ることが、会社の重要な役目だと思っています。
しかし(3)については、上2つとは次元が違います。「なぜ、この業務や目標をやらないといけないの?」とか「誰にとって価値あることなの?」というような疑問を抱いた状態で働くことは組織として避けなければいけない、意義目的が不明なことをやるのは、大変苦痛なものです。でも世の中には、会社組織の様々な事情によって「意義目的が不明」な状態で仕事をしている人が多いような気がします。
メンバーの”働く”という営みを、組織の目的達成の手段にしない
ミッションを掲げるだけでは実現することができないので、具体的なルールをいくつか設けています。発展途上ですが、いま実施しているルールをいくつか挙げてみます。
- プロジェクトリーダーは4社以上支援しない。
- 効率性を優先した分業化はしない。
- プロジェクトアサインは本人の意思を最優先とする。
- 個人単位で売上目標を設定しない。
- クライアントの選定基準を尊敬・信頼・成長とする。
- クライアントと直接コミュニケーションを取れない支援はしない。
- 業者扱いや、過度なコミットを求めるお客様の支援はしない。
- 広告施策に強制性があり、キャンペーン設計をご提案できない支援はしない。
- 合理性の欠いたディスカウントを要求するお客さまの支援はしない。
- 人事評価制度という言葉を使わない。
- 能力開発を目的とした面談を毎週30分実行する。
- 週に1度社内勉強会を実施する。
これらの仕組みに共通する考えは、「メンバーの”働く”という営みを、組織の目的達成のための手段にしない」ということです。
会社経営には目的があり、その目的達成のために集まった人たちによって組織が作られます。このことから、理論的にも、また現実でも、従業員の生産活動は、会社の目的達成のための手段として位置づけらます。それ自体は否定されるべきことはありませんし、組織とはそういうものです。多くの営利企業においては、目的から手段への効率的な落とし込みこそが競争力だったりもします。
でもちょっと、世の中の会社を見渡すと、従業員の「働く」という営みを手段として捉える度合いが強いんじゃないかな、と思うことがあります。少なくとも私の価値観の上では。
本当は、ひとつひとつの仕事に対して、なぜそれをやるのか、それをやると(クライアントや自分にとって)何がいいのか、誰が笑顔になるのか、また誰が悲しむのか、それによって自分はどこに向かうのか、という様々な「意義や目的に対する問い」、つまり、「自分の人生や価値観に照らして考える機会」があるはずです。
その考える機会を、会社の目的達成の効率性を優先することで排除してしまうのは、できる限り減らしたいなと思うのです。目的達成の効率性と、メンバーの考える機会を尊重すること、このバランスを取りながら進んでいきたい。それが「いきいきと、はたらく」を掲げる目的です。
特に徹底している3つの仕組み
ここで挙げたルールの中で、特に徹底しているのは以下の3つです。
- 人事評価制度という言葉を撤廃して「能力開発制度」とし、能力開発面談を毎週30分実行する。
- クライアントの選定基準を「尊敬・信頼・成長」とする。
- 案件アサインは本人の意思を最優先とし、立候補形式にて行う。
1.については、組織が大きくなるにつれて評価制度の導入も検討しましたが、どうも「人事評価」という言葉がしっくりこなかった。あるべき言葉としては、「評価される仕組み」ではなく、「能力開発制度」として「成長を促進する仕組み」だろうと考えました。
当社では、設計している能力テーブルをビジネスIQとして、BQと呼んでいます。このBQを高めることが能力開発であるとして、いかにそのBQを向上させていくかについて、毎週マネージャー陣がメンバーと30分、1対1で話す場を設けています。
重要なポイントは、なぜ能力開発を行うのか、なぜ成長したいのかです。この時間は、「自分の人生、働く目的について考える時間」であり、「一緒にそれを探す時間」であり、そして「自分の働く目的と、会社の目的を整合させる時間」である、ということです。
次に、「2.クライアントの選定基準を尊敬・信頼・成長とする。」ですが、私たちは特にここにこだわっています。定量面での利益水準ラインも設けていますが、それよりも、定性面として、そのクライアントと私たちが、お互いに「信頼、尊敬、成長」できるか?ということを自らに問います。メンバーの間で日常使いされるまでになっているキーワードです。
敢えて詳細な状態定義を定めることはせず、抽象度を高くすることで、個人の様々な状態(社歴、能力、スキル、私的な背景など)に適用して議論できるようにしています。これによって、プロジェクトへの個々の納得感が高まって、強いコミットメントが形成されます。またクライアント視点から見て、自分たちが尊敬・信頼・成長される存在であるのかを常に考えることにもなります。
クライアントの業態や規模は様々で、それこそスタートアップから上場企業、メディア、IoT、EC、BtoBサービスまで、年予算では数千万円から数億円、といったところです。
たまに、そんなやり方で安定的に利益が出せるんですか? というご質問をいただきますので、その点にも少し触れておきます。
当社は5つの報酬形態を設計しています。
タイムチャージベース(時間単価×稼働単価)の形態から、リスク&リワードやエクイティ(株式投資によるリターン)などの形態があります。エージェンシーの提供価値が質的に変化してきている昨今では、広告主の持つ課題に応じて、広告主とエージェンシーの利害が一致するような報酬形態の設計が肝になってきます。
試行錯誤しながら、というところですが、実際にリスク&リワードやエクイティを活用した支援も実行するなどして、事実、生産性(一人あたりの付加価値)は年々向上しています。
最後の「3.支援アサインは本人の意思を最優先とし、立候補形式にて行う」ですが、当社の組織形態は分業制ではなくチーム制で、また、会社から命令的にアサインすることは、ほとんどありません。案件への参加を募り、手を挙げる人がいなければ、その案件をセールスプロセスから降ろしてしまうことも何度かありました。
ただし一方で、必ずしもプロジェクトの立候補が通るという訳ではありません。動機の観点、スキルの観点、リソースの観点でしっかりとバランスを見てマネージャーがアサイン可否を行います。そういう意味では、見方を変えれば実力主義です。
「いきいきと、はたらく」ために、数値化できない価値を大切にしたい
私の前職の経験で、こんなシーンがありました。あるコンサルタントが受注獲得すると、広いオフィスで、ワッと拍手が起きます。あ、また大型の案件が決まったんだろうな、かっこいいな、自分も頑張ろう、とそう思います。
でもあるとき、ふと思いました。拍手をするのは、会社の定量指標に貢献したときしかないな、と。なぜか?それは、拍手をして褒めたたえる、という行為を共有するには、誰もが認める目に見えて数値化された価値に対してでしか、なかなか難しいからだと思ったりします。
でも実際、社会は計量できない価値で溢れかえっています。嬉しい、楽しい、美しい、安心、信頼、親しみ、驚き、などの感情を与えたことは、立派な価値だと思います。そういう感情が生まれるから、仕事や生きることが楽しいわけで。
いやいや、どんな価値であろうと、結果として定量的価値になって返ってくる。だから拍手は結果に対してなのだ、と言えばそうなのかもしれませんが、それはクライアントから頂いた「ありがとう」に拍手をしない理由にはなりませんし、「ありがとう」の価値に目を向けないことにはなりません。
要するに、経営の健全性を、計量できる価値ばかりで評価することはやめようということです。もっといえば、計量できない価値を見つめ、それを最大化することで、計量できる価値も最大化するということです。そのために「いきいきと、はたらく」があります。
私たちは、決して売上や利益を追求していない訳ではありません。むしろ、この計量できない価値を見つめた結果として、売上や利益は伴うものであると考えています。
今回のブログを通して「自分自身はいきいきと働けているのか」「いきいきと働けているのはどんな状態だろうか」と、自分の働き方に対して改めて考えるきっかけになれば幸いです。
もし、オーリーズに興味を持っていただいた人がいれば、ぜひお気軽にご連絡ください。クライアントとマーケティング、そして自分の人生に向き合いたい、という人には、きっと人生にとって良い時間を過ごしてもらえると思います。