【広告運用研究会】CPAが合わないデマジェン、評価方法を変えたら判断が変わった ── 現場の一次情報をオープンに

【広告運用研究会】CPAが合わないデマジェン、評価方法を変えたら判断が変わった ── 現場の一次情報をオープンに

オーリーズでは、各案件のコンサルタントが現場の知見を持ち寄る「広告運用研究会」という取り組みをおこなっています。

今回は「ラストクリックでは見えづらい、デマンドジェネレーションの貢献をどう測るか」について、各案件でどのように対処しているのか、議論した内容を記事にします。

広告運用研究会について

AIの進化で、広告運用の知識やベストプラクティスは以前よりずっと手に入りやすくなりました。一方で、特定の状況下で誰が何を判断し、その結果どうなったかという一次情報は、なかなか表に出てきません。

この記事では、社内研究会で議論した内容を公開することで、現場の一次情報を比較できる場を作れればと考えています。

今回のテーマは「ラストクリックでは見えづらい、デマンドジェネレーションの貢献をどう測るか」です。デマジェンを運用しながらも、異なる評価軸で判断をした2社の事例を紹介します。

デマジェンの貢献評価は難しい

デマジェンはYouTube、Discover、Gmailなどに広告を配信できるキャンペーンタイプです。

Google広告では2021年にP-MAXが登場し、広告配信をAIが自動で最適化する機能が広く使われるようになりました。デマジェンは2023年に登場したキャンペーンで、P-MAXと配信面は一部重なりますが、配信面やターゲティングを運用者側でコントロールできる点が強みです。

一方、デマジェンは配信面の性質上、認知や検討期間中の再接触の役割を担いやすく、最終的なCVは検索広告やオーガニック経由になることも多いです。そのため、ひとつの指標だけでは貢献が見えにくいという側面があります。

こうした評価の難しさに対して運用現場ではどう判断したのか。2つのケースを紹介します。

異なる評価方法を選んだ2つのケース

ケースAではアトリビューションモデルを変えてデマジェンの貢献を可視化し、ケースBではリード獲得の先にある商談単価まで追うことで、評価の解釈が変わっています。

アプローチは異なりますが、どちらも単一の指標では見えなかった貢献が、評価軸を広げることで確認できた点は共通しています。

ケースA|ラストクリックCPAと初回接触CPAの2軸評価

項目内容
ビジネス形態BtoC通信サービス/媒体CV:申し込み
問題意識・ラストクリックベースではデマジェンにCVがほとんどつかない
打ち手・ラストクリックCPAと初回接触CPAの2軸評価
・ファーストパーティCookieベースで流入経路を可視化
判断の背景・デマジェンが初回接触を担い別経路でCVするユーザーの存在を確認
・初回接触CPAで評価すると他媒体と差が縮まる

ご支援していた通信サービスのクライアントでは、検索広告の拡大に限界を感じ、検索ではリーチできない層にアプローチするためデマジェンを配信しました。しかし、ラストクリックベースではデマジェンにCVがほとんどつきません。

そこで、ファーストパーティCookieを使って流入経路を照合し、ユーザー単位でカスタマージャーニーを追跡しました。

以下は、あるCVユーザーの接触履歴です。

接触順時期チャネル内容
1(初回接触)11/29デマジェン広告クリック → LP閲覧・離脱
2〜311/30デマジェン翌日に再接触(計2回)
4〜51/21デマジェン約2か月後に再接触(計2回)
6〜102/19デマジェンCV当日に集中接触(計5回)
11(CV)2/19オーガニック検索ブランド指名検索 → 申し込み完了

初回接触から申し込みまで約3か月。広告接触11回のうち、10回がデマジェンでした。ラストクリックだけ見れば、このCVは「ブランド指名検索」の成果です。同様のパターンがCookieベースの照合で多数確認されました。

ラストクリックでは貢献が見えないデマジェンが、実際には認知の起点を担っている。

この結果を踏まえ、「ラストクリックCPA」に加えて「初回接触CPA」の2軸で評価する方針に切り替えました。初回接触CPAとは、CVに至ったユーザーが最初に接触した広告にコストを帰属させる考え方です。

さらに、他媒体と横並びで比較した結果が以下です。

指標デマジェンMetaTikTok
媒体CPA約19,000円約7,000円約4,000円
申込CPA(ラストクリック)約41,000円約25,000円約50,000円
申込CPA(初回接触)約30,000円約22,000円約47,000円

媒体CPAではデマジェンがMetaの約3倍ですが、初回接触CPAで見ると約1.4倍差まで縮まる。ラストクリックCPAではTikTokが最も高く、評価の物差しによって媒体間の序列が変わることが分かります。

なお、Googleの「コンバージョン(同等プラットフォームと同様)」指標で見ると、デマジェンの媒体CPAは約6,000円でMetaとほぼ同水準です。計測ロジックを揃えれば、媒体CPAの段階でも大きな差はありません。

※「コンバージョン(同等プラットフォームと同様)」は、Demand Genキャンペーンを他のGoogle広告から分離し、ラスト接触に全クレジットを付与したうえで、ビュースルーコンバージョン(VTC)も含めて計測する指標です。他媒体のデフォルト計測ロジックに近い条件でのパフォーマンス比較を可能にします。

出典:Google広告ヘルプ「「(同等プラットフォームと同様の)コンバージョン」列について」

ラストクリックCPAだけで見ていれば、デマジェンの貢献は見えなかった。ジャーニーを可視化し、評価指標を追加したことで「デマジェンが認知の起点として機能している」「初回接触CPAで見れば他媒体と大きな差がない」ことの両方が確認できた事例です。

ケースB|リード単価ではなく商談単価で評価

項目内容
ビジネス形態BtoB製造業/媒体CV:資料請求
問題意識・リード単価がリタゲの約3倍
・リード単価だけで判断するとROIが合わない
打ち手・商談転換率、商談単価での評価軸を加味
・スマホYouTube面への配信をキャンペーン分割でコントロール
判断の背景・リード単価3倍の差が商談単価では約1.2倍に圧縮
・動画の情報量がサービス理解を促し、リードの質が高まるという仮説

あるBtoB製造業のクライアントでは、検索広告中心のリード獲得が頭打ちになり、デマジェンを配信開始。

配信結果としては、リード単価はリタゲの約13,000円に対し、デマジェンは約39,000円。約3倍です。

しかし、ここで撤退はしませんでした。この案件ではリード獲得がゴールではなく、その先の商談化が広告の目的です。そこで、リード単価だけではなく、その後行程の「商談単価」まで追って評価したところ、リタゲとの差が大幅に縮まりました。

指標リタゲデマジェン
リード単価約13,000円約39,000円
商談転換率約2.5%約6%
商談単価約52万円約63万円

リード単価は約3倍でも、商談単価の差は約1.2倍。商談転換率がリタゲの約2.4倍(約2.5%→約6%)あるため、リード獲得にかかるコストが高くても、商談単価の差は縮まっています。

この商談転換率の高さの要因は、動画の情報量にあると考えています。バナーと比べて動画は伝えられる情報が多く、動画を視聴したユーザーはサービス内容をある程度理解しやすい。動画による事前の情報提供が、確度の高いリードが集まりやすくなる要因と捉えています。

また、運用面では、スマホのYouTube面に配信すると転換率が落ちる傾向がありました。デマジェンにはデバイス単位の入札調整がないため、キャンペーンを分割してスマホ面への配信を抑えました。

さらに、動画の冒頭1〜5秒でターゲットの課題やベネフィットを訴求してスキップを防ぐ構成にしたほか、YouTube Studioでサムネイルを個別に設定してフィード上の視認性を高めました。こうした調整の積み重ねも、転換率の維持に寄与していると考えています。

リード単価だけで見ていれば撤退ラインですが、商談単価まで追ったことで継続の根拠が見えた事例です。

2社の判断から見えること

2社に共通しているのは、デマジェンの役割を先に決め、役割に沿った評価軸を選んでいる点です。

案件デマジェンの役割採用した評価軸
ケースA(BtoC通信サービス)リーチ拡大初回接触CPA
ケースB(BtoB製造業)新規リード獲得商談単価

ひとつの指標だけでは、デマジェンが担う役割は正しく評価できません。デマジェンのCPAが合わないと感じたとき、確認すべきは「デマジェンが担っている役割に合った指標で評価できているか」です。

メニューが合わないのではなく、デマジェンが担っている役割に対して評価が追いついていないケースは少なくありません。

さいごに

2つのケースを並べてみると、ラストクリックCPAだけではデマジェンの貢献は見えにくく、役割に合った評価軸を選ぶことで判断が変わることがよく分かります。

今回の内容が、デマジェンの評価方法を見直すきっかけになれば嬉しいです。広告運用研究会では、今後もこうした現場のディスカッションを共有していきます。

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広告運用研究会
オーリーズのコンサルタントが、案件を超えて広告運用の知見を持ち寄る社内研究会。特定テーマについて議論し、その内容を一次情報として公開しています。