AI Maxの実質CPA — 「純増率」で効果検証した一例
あるアカウントで、AI Max for Search(以下AI Max)を試しました。その結果と評価の考え方を、ケースの一つとして共有します。
目次
「検索語句マッチング」だけオンにして、AI Maxを試した
今回のケースは、ある比較メディアのアカウントです。
メディアへの流入を増やしながら、掲載事業者への送客を伸ばしたい。そうした狙いから、既存の検索キャンペーン内でAI Maxをテスト配信することにしました。
ただし、このアカウントは掲載事業者との契約の関係で、広告の遷移先を厳密にコントロールする必要がありました。
そのため、アセットの最適化はオフにし、配信対象のクエリを広げる「検索語句マッチング」のみオンにして配信。
まずは各キャンペーンの一部の広告グループでトライアル配信し、その後すべてのグループに展開しています。
その結果、全展開後の約6週間で、AI Max経由のコンバージョンは2,800件。アカウント全体のCVの約1割を占める規模でした。
| 項目 | 実績 |
|---|---|
| AI Max経由の配信金額 | 588,000円 |
| AI Max経由のCV数 | 2,800件 |
| AI MaxのCPA | 210円 |
| アカウント全体のCVに占めるシェア | 約10% |
CVポイントが「掲載事業者への遷移ボタンクリック」という浅いアクションのため、低単価で件数が出やすい事情はあります。それを踏まえても、想定以上の水準でした。
見かけ上のCPAは、入札強化するより安かった
件数が取れることは分かったので、次はCPAの観点で評価します。
AI Maxのような拡張施策は、既存配信のCPAと単純比較しても意味が薄いため、今回は「同じ予算で既存の検索キャンペーンを入札強化した場合のCPA」を比較対象にしました。
入札強化した場合のCPAは、以下の手順で予測値を出しています。
- AI Max配信前の約90日の日別実績(配信金額とCV数)を散布図にする
- 散布図から対数近似曲線を作り、AI Maxと同額の予算を追加した場合の増加CV数の予測値を求める
- 追加予算 ÷ 増加CVの予測値 = 入札強化した場合の予測CPA

シミュレーションの結果、入札強化した場合の予測CPAは232円。AI MaxのCPAは210円なので、AI Maxのほうが22円(約9%)安いという数字になりました。
食い合いを差し引いた「実質CPA」で考える
ただ、この22円の差は、AI Maxが獲得したCVがすべて純増である(=AI Maxがなければ獲得できなかった)という前提で成り立つ数字です。
実際には、既存キャンペーンと食い合っている可能性があります。そこで、獲得したCVのうち純増分が占める割合(以下、純増率)を使って、実質的なCPAを考えます。
AI Maxの実質CPAは以下の式で計算できます。
実質CPA = 210円÷純増率
純増率がどれぐらいなら232円を下回れるのか。式を逆算すると、純増率90.5%(210円÷232円)が分岐点になります。
これは、食い合いを1割未満に抑えて、ようやく入札強化の予測CPAと同等になる水準。単月のブレでも容易に超えてしまいそうな、なかなか厳しい条件です。
| 純増率 | AI Maxの実質CPA | 判断 |
|---|---|---|
| 100% | 210円 | 入札強化より安い(AI Maxに予算を割いたほうが良い) |
| 90.5%(分岐点) | 232円 | 入札強化の予測CPAと同等 |
| 80% | 263円 | 入札強化より高い(入札強化に予算を回したほうが良い) |
検索クエリの多くは、既存キーワードとほぼ重なっていた
問題は、実際の純増率をどう見積もるかです。
AI Maxは独立したキャンペーンではなく、検索キャンペーンの中で動くオプション機能です。既存キーワードと同じキャンペーン内で配信されるため、どこで食い合っているのかが構造的に見えづらい。
本来なら、導入前後でアカウント全体や検索キャンペーンのCV増減を比較して見当をつけたいところです。しかし今回は同時期に予算の増額もあり、前後比較で純増分を切り分けられる状況ではありません。
そこで今回は、検索クエリの重なり具合で割り切って判断することにしました。
幸い、AI Max経由で獲得したCVのうち82%は検索クエリを追跡できたため、クエリをCVの多い順にソートし、既存キャンペーンでも獲得できそうな語句かどうかを1つずつ見ていきました。
その結果分かったのは、CV上位の語句の多くは、まったく新しい検索意図を開拓したものではなく、既存キーワードと検索意図がほぼ重なる語句だった、ということです。
CV上位の語句をタイプ別に分けると、おおよそ4割が掲載事業者の指名、3割が商材カテゴリ+絞り込み条件、残り3割がその他の掛け合わせ語句。
| 検索語句のタイプ | 例 | CV上位語句に占める割合 |
|---|---|---|
| 掲載事業者の指名クエリ | ・事業者名 ・事業者名+商材カテゴリ ・事業者名+「費用」などの付属語 | 約4割程度 |
| 商材カテゴリ+絞り込み条件 | ・商材カテゴリ+条件指定語 | 約3割程度 |
| 商材カテゴリ+その他 | ・商材カテゴリ+「費用」 ・商材カテゴリ+「ランキング」 ・商材カテゴリ+「相場」など | 約3割程度 |
いずれも既存キーワードの語順や付属語違いにあたる語句です。既存キャンペーンでも、十分獲得できていたと考えられます。
純増率を厳密に算出できたわけではありませんが、検索クエリを見る限り、食い合いが1割未満に収まっているとは考えにくい。
実質CPAは入札強化の232円を上回っていそうだ、というのが今回の感触です。
最終的な評価は「可もなく不可もなく」
AI Max経由で一定規模のCVが積み上がり、表面上のCPAは入札強化の予測CPAを下回っていた。
一方で、既存キャンペーンとの食い合いが無視できない割合で起きていそうで、獲得したCVの多くを純増とは言い切れない。
最終的に、このケースではAI Maxの効果を「可もなく不可もなく」と評価しました。あえて配信を止める理由もないため、継続して様子を見る判断をしています。
なお、今回は「検索語句マッチング」のみオンにし、アセットの最適化(テキストのカスタマイズ、最終ページURLの拡張)はオフにしています。
アセットの最適化がオンであれば、キャンペーンに設定済みの広告文やLPに縛られず、AIが検索語句に合わせて広告文や遷移先を出し分けられるようになります。
そのぶん広告を表示できる検索語句の範囲も広がるはずで、クエリの拡張のされ方は今回とは違う結果になっていた可能性があります。
今回の結果はあくまで一つの例であり、AI Maxそのものの評価にはなり得ません。ただ、AI Maxを実際に評価した例はまだ世の中に多くないため、その結果や評価方法の一例として、参考になれば幸いです。