【広告運用研究会】新規クリエイティブの配信機会を作るMeta広告のアカウント設計 ── 現場の一次情報をオープンに
オーリーズでは、各案件のコンサルタントが現場の知見を持ち寄る「広告運用研究会」という取り組みをおこなっています。
今回は「Meta広告で成果の良いクリエイティブに配信が集中し、新規クリエイティブの検証が進まない」という問題について、ある案件での取り組みを記事にします。
広告運用研究会について
AIの進化で、広告運用の知識やベストプラクティスは以前よりずっと手に入りやすくなりました。一方で、特定の状況下で誰が何を判断し、その結果どうなったかという一次情報は、なかなか表に出てきません。
この記事では、社内で議論した内容を公開することで、現場の一次情報を共有する場を作れればと考えています。
今回のテーマは「Meta広告における新規クリエイティブの検証環境づくり」です。
成果の良いクリエイティブに配信が集中し、新規クリエイティブの検証が進みづらいという問題に対して、媒体推奨とは異なるアカウント構成で対処した、ある案件の取り組みを紹介します。
既存クリエイティブに配信が集中し、検証が難しい
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 商材 | 男性向けクリニック(来院予約がCV) |
| 媒体 | Meta広告のASC(Advantage+セールスキャンペーン) |
| 構成 | 1キャンペーン1広告セットに複数クリエイティブを入稿 |
| 運用設定 | ASCでは意図しない属性への配信も考えられるため、バリュールールで学習方向を補正した上で配信 |
男性向けクリニックの案件で、Meta広告のASCを配信していました。
当初は1キャンペーン・1広告セットに複数のクリエイティブを入稿する構成で運用。AIに最適なクリエイティブを選ばせる、媒体推奨のベストプラクティスです。
配信は安定しており、成果の良いクリエイティブが見つかっていましたが、新規クリエイティブの検証が回らないという問題を抱えていました。
新規クリエイティブを入稿しても、同じ広告セット内ではすでに学習が進んだクリエイティブに配信が集中し、新規がインプレッションを得づらい。
成果の良いクリエイティブの訴求軸を転用した類似クリエイティブも試しましたが、状況は変わりませんでした。
Metaの配信アルゴリズムは主に広告セット単位で学習と最適化を行います。成果の良いクリエイティブと同じ広告セットにいる限り、新規クリエイティブは既存クリエイティブとの配信競争に負けてしまう。
クリエイティブの中身を変えるだけでは、この問題は解決しない。新規クリエイティブに配信機会を与えるには、成果の良いクリエイティブとは別の広告セットに分けて、独立した学習環境を作る必要があると考えました。
まずは広告セットを分割
そこで試したのが、広告セットを役割で分ける方法です。
- 広告セットA:成果の良いクリエイティブを配信し続ける
- 広告セットB:新規クリエイティブを入稿して検証する
広告セットを分けたことで、新規クリエイティブが既存クリエイティブと配信を奪い合わずに済み、検証自体は機能するようになりました。
ただし、この構成のままでは、Bで成果が出たクリエイティブの扱いに困ります。Aに移しても既存のクリエイティブに配信が偏る。
かといってBに残したままだと、次の新規クリエイティブの検証枠がなくなる。2つの広告セット固定という構成自体に限界がありました。
同じ広告セット内では成果の良いクリエイティブに配信が寄るというMetaのメカニズムが、移動先の広告セットでも同じように働くためです。
広告セットごと残して、検証を回す
そこで切り替えたのが、1キャンペーン内で広告セットを並行配信し、成果の良いクリエイティブを広告セットごと残し続ける構成です。
Bで成果が出たクリエイティブは、Bの中でそのまま配信を継続する。次の新規クリエイティブを検証するときは、Bに追加するのではなく、新たに広告セットCを立てる。
検証は常に最新の広告セットで行うので、既存の学習を壊さず、新規の検証機会も確保できる構成です。
注意点としては、広告セットを増やすとデータが分散し、学習が遅くなるリスクがあります。学習データの量を考慮する必要があるため、予算規模が小さい場合は同じ方法が成り立たない可能性はあります。
また、際限なく増やすと管理が煩雑になるため、広告セット数には上限を設けて運用していました。
一部キャンペーンの検証数値
この構成変更を一部のキャンペーンでテスト的に実施した結果をシェアします。全キャンペーンで一斉に変えるのはリスクが高いため、まず小規模に検証しました。
以下はAD EBiS計測による、対象キャンペーンの検証期間の数値です。
| 設計変更前 | 設計変更後 | |
|---|---|---|
| COST | 約50万円 | 約125万円 |
| CPA | 約4.5万円 | 約3.4万円 |
| CV | 11件 | 37件 |
広告セットを残し続ける構成にしたことで、新規クリエイティブに配信が回るようになり、クリエイティブのPDCAが機能する環境が作れました。
検証できる環境を作った上で、訴求やデザインの改善を地道に繰り返した結果、広告費を増やしながらCVは増加し、CPAも従来より低い単価で抑えることができました。
ただし、一部キャンペーンでのテスト運用のため学習データが十分だったとは言い切れず、この方法を一般化した正解として語るべきではないと思っています。
今後、配信規模が拡大した段階であらためて検証する余地はある。 あくまで現時点での検証結果として受け止めてもらえればと思います。
さいごに
今回の取り組みのポイントをまとめます。
- 新規クリエイティブを入稿しても、既存の成果の良いクリエイティブに配信が集中し、検証機会が得られなかった
- Metaのベストプラクティスは広告セットを少なく保つことだが、意図的に新規クリエイティブごとに広告セットを増やしていく構成で運用
- 注意点として、各広告セットの配信量が学習に十分な水準であることが前提になる
媒体推奨の構成が常に正解とは限りません。少なくともこの案件では、推奨とは異なるアプローチが機能しました。
成果を維持しながら新規クリエイティブの検証機会をどう確保するかは、配信をスケールさせていく局面で多くの運用者が向き合う課題だと思います。
今回の記事がその検討材料になれば嬉しいです。広告運用研究会では、今後もこうした現場のディスカッションを共有していきます。