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- 北野澤 大
広告制作で他者の著作物を利用するために必要な申請手続き
広告やマーケティングに関する制作物(クリエイティブ)を作成する場合に、とくに注意しなければいけないのが「著作権」です。
知識がないまま広告物を制作したり、写真・イラストなどの素材を無断で使用してしまうと、著作者に大きな迷惑を掛ける他、自社のイメージダウンや賠償請求を受けるといったリスクもあります。
本記事ではマーケティング担当者に向けて、トラブル予防のために知っておきたい著作権の基礎知識をお伝えしたいと思います。
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目次
著作権とは
著作権とは、キャッチコピー、ロゴマーク、イラスト、動画、写真、音楽などあらゆる「著作物」についての権利のことを指し、制作者を「著作者」と呼びます。
著作権はすべての著作物に対して発生し、著作者の許可無く著作物を使うことができない、というのが基本的なルールです。
許諾なくコンテンツを使ってしまうと、著作者から差止要求や損害賠償請求を受ける可能性もあります。ルールを守って正しくプロモーションを行うよう留意する必要があります。
また、あまり知られていませんが、著作権は永久的な権利ではなく、原則「著作者の死後70年まで」を保護期間としています。それをすぎたものは共有財産として、誰でも自由に使うことができます。
著作権と関係する権利
まずは著作権と関連する権利について紹介します。
著作者人格権
著作物を通して表現された著作者の人格(気持ちや名誉)を守る権利が「著作者人格権」です。
著作権は適正な手続きをとることによって他の人に譲渡できますが、「著作者人格権」は著作者が持ち続けるものです。
「著作者人格権」には、公表するかどうかを決める「公表権」、氏名をどう掲載するかを決める「氏名表示権」、勝手に改変されない「同一性保持権」などがあります。
商標権
「商標権」とは、社名や商品名、サービス名についての権利です。
特許庁へ登録することで「商標権」が認められ、第三者から勝手に使われたり、類似のものを無断で使用されないよう権利を保護することができます。
マーケティングで特に耳にする権利のひとつではないでしょうか。商標を適切に商標登録しておくことで独占利用をすることができ、他社との明確な差別化ができます。
肖像権
「肖像権」は、自分の姿を撮影されたり利用されたりすることを自分で決める権利です。
勝手に人の写真を広告やWeb媒体で利用すると、「肖像権」を侵害したことになります。
写真には「著作権」と「肖像権」の両方が絡むので注意が必要です。原則的には「撮影した人に著作権」が発生し、「撮影された人に肖像権」が発生します。
例えば企業の発注でモデル撮影をした場合には、撮影をした企業に「著作権」が発生するので、モデルが写真の利用を許可しても、写真を第三者が勝手に使うことはできません。
また、企業のHP等でよくありがちなトラブルとして、大勢の人が参加するイベントなどの様子を無許可で撮影して使ったことで、「肖像権の侵害」を訴えられたというようなケースもあります。
広告制作で著作権侵害を防ぐための3つのチェックポイント
1.無断で使用・掲載しない
インターネット上で気軽に写真やイラストが見られるようになっていますが、ネット上の画像や写真の広告クリエイティブへの利用については注意が必要です。
Webサイトに掲載されている写真・イラストや、SNS上の画像を無断で使うのは著作権違反になります。
例えば自社について掲載された雑誌や新聞記事を自社サイトやSNS等に掲載しているのもよく目にしますが、無断で掲載するのはNGです。きちんと著作権者に許諾を得るようにしましょう。
2.画像の利用範囲が分からない場合は問い合わせる
フリー素材サイトや購入サイトの場合は、それぞれ利用できる範囲などが異なりますので、利用規約をよく確認して利用しましょう。
画像の利用可能範囲が分からない場合や自信がない場合は、面倒でも問い合わせをすることでトラブルを回避することができます。
3.予算に著作物利用料も含めて算出するか決めておく
詳しくは後述しますが、使用する著作物がフリー素材でない限り、著作物の使用にあたり利用料が発生する場合があります。
目標CPAを算出する場合、コストとして著作物の利用料も含めて算出するかどうかは事前に決めておきましょう。
「音楽」著作物の利用に必要な手続き
実際に弊社で動画・音楽素材に関する著作権について対応した経験をもとに、他者の著作物を利用する際に必要な手続き申請について解説します。おおまかに分けると、一般社団法人日本音楽著作権協会への申請と広告配信媒体への申請の2つを行う必要があります。
💡 他者の音楽著作物を利用する際に必要な手続き申請の流れ
1.一般社団法人日本音楽著作権協会への申請手続き
音楽関連の著作権対応に関しては、基本的に一般社団法人日本音楽著作権協会(以降はJASRAC)が取りまとめています。利用したい内容に応じて、決められた手続きが必要となります。広告での音楽利用に関しては、大きく2つの申請書類を提出する必要があります。
⑴広告目的複製利用申込
広告を目的として、著作物を複製し広告利用することに対することへの申込書。申請することで許諾番号というものが付与されます。
⑵広告展開利用申込書
広告を各種媒体に展開利用することに対する申込書。配信媒体や期間を明記した書類を提出します。申請時に許諾番号が必要となるので、「広告目的複製利用申込」の後に申請する必要があります。
2.広告媒体への申請
媒体によって要否が異なっており、かつ内容によっては要否が変わることもあるため、各媒体に問い合わせをしましょう。
それぞれについて詳しく解説します。
1.JASRACへの申請
広告で音楽著作物を利用される場合は、広告の制作に係る利用と、展開に係る利用のそれぞれについて許諾の申込みが必要となります。
出典:一般社団法人日本音楽著作権協会HP『広告での音楽利用』
⑴広告目的複製利用申し込み
手順①:事前確認
音楽著作物を意図的に組み合わせて複製する場合は、内国作品・外国作品にかかわらず、事前に当該作品の著作者に対し、利用の可否及び利用可能な場合の使用料額等の条件を確認をする必要があります。
確認に関しては、作品データベース「J-WID」で、利用予定作品の権利関係を確認することが出来ます。
手順②:申込書の提出
広告目的複製利用申込書という書面を提出する必要があります。
- 申込者:広告関係事業者(広告主または広告代理店)
- 申込方法:Eメール送付、FAX、郵送、直接の提出
- 申込期限:利用開始の前日まで
- 申込窓口:JASRAC 広告・ゲーム・映画課
※申込書のダウンロードはこちら
出典:一般社団法人日本音楽著作権協会HP『広告での音楽利用』
手順③:許諾番号の通知(JASRACの対応)
許諾番号は、申込書記載の内容(使用料額等)について、JASRACが楽曲の権利者である委託者(著作者または音楽出版者など)から書面で確認を得た後、発行されます。
許諾書の発行に先立ち、申込書に記入したE-mailアドレス宛に「広告目的複製 許諾番号のご案内」が送られてきます。
手順④:許諾書及び請求書の連携
委託者から利用内容についての合意が確認できましたら、通常2週間程度で、「広告目的複製利用許諾書」と「請求書」が送られてきます。
手順⑤:使用料の支払い
原則は請求書発行日から30 日以内にお支払いが必要です。
ただし、JASRACから期日指定がある場合にはその日までに支払いが完了すればよいそうです。
⑵広告展開利用申込書を提出
手順①:申込書の提出
広告展開利用申込書という書面を提出する必要があります。
- 申込者:広告関係事業者(広告主または広告代理店)
- 申込方法:Eメール送付、FAX、郵送、直接の提出
- 申込期限:利用開始の前日まで
- 申込窓口:JASRAC 広告・ゲーム・映画課
※申込書のダウンロードはこちら
※広告展開利用をお申し込みの前に、広告目的複製の許諾を得ている必要があります。
出典:一般社団法人日本音楽著作権協会HP『広告での音楽利用』
手順②:許諾番号の通知(JASRACの対応)
申込書に記入したE-mailアドレス宛に「広告展開利用 許諾番号のご案内」が送られてきます。
許諾番号は、広告展開利用の報告に際して必要になります。
※広告展開利用の報告に関しては、別記事にて詳細展開させて頂きます。
2.広告媒体への申請
JASRACなどの著作権管理者への申請とは別に、出稿予定の広告媒体社への申請が必要となるケースもあります。
以下は、本事例の対応時に確認した媒体ごとの対応要否です。
- Google(Youtube):必須ではないが、申請が望ましい
- Google社に問い合わせを行ったところ『断定はできないものの今後の広告審査に引っかかって配信が停止する可能性はあるため、事前に申請しておくことが望ましい』との回答でした
- 対応方法:フォームにて申請を行う
- 審査には1~2週間かかる
- 審査中、審査を理由に広告配信が停止することはない
- 配信期間が2週間以上あり今後手動審査で落ちる可能性もあるため、フォーム申請して許可をとっておくことが望ましい
- 以下著作物ライセンスの関係を示すものを添付
- JASRACの使用許可を示すもの
- 本件では、JASRACへの提出書類と許諾に関するJASRACからのメールキャプチャを提出
- JASRACの使用許可を示すもの
- 参照:Google広告ポリシーヘルプ『著作権』
- 審査には1~2週間かかる
- 対応方法:フォームにて申請を行う
- Google社に問い合わせを行ったところ『断定はできないものの今後の広告審査に引っかかって配信が停止する可能性はあるため、事前に申請しておくことが望ましい』との回答でした
- Yahoo:申請不要
- Meta(Facebook):申請不要
- LINE:申請不要
※動画広告/音楽関連の著作権の場合
3.広告配信後の事後対応
配信後には報告書の提出と使用料の支払いが必要です。
報告書の提出
広告の配信が終了したら、すみやかに報告書を作成し、JASRACへと提出する必要があります。
下記の報告書フォーマットに従って、報告書を作成します。こちらはインターネット配信用のフォーマットとなっており、TVやラジオなど媒体ごとに異なります。
また、媒体ごとに提出期限も異なるため、ご留意ください。
インターネットでの配信におきましては、3か月以内に一度報告の必要があり、半年等の長期間での施策の場合は、3か月で一度報告~使用料の支払いの必要があります。
使用料の支払い
報告書の内容に不備等がなければ、通常2週間程度で「請求書」と「請求明細書」が送られてきます。
期日までの支払いを済ませれば、著作権対応のすべてが完了となります。
※支払期日は、特例を除き、請求書発行日から30 日以内とのこと。
【補足】使用料の計算について
インターネットCM配信報告書兼請求明細書の「配信回数」にサイトごとの配信回数を入力することにより、使用料が算出されるようになっていますが、計算ロジックについてもご案内します。
インターネットCM配信の使用料は、配信回数1,000回当たりの単価(50円)に、CM配信回数(千回単位)を乗じて算定します。
配信するサイトや配信1回当たりの音楽の再生時間にかかわらず単価は一律となっています。
また、使用料を算出した結果、金額が5,000円に満たない場合は最低使用料として一律5,000円(税抜き)となります。
その他の細かい減額条件等は以下リンクを参照ください。
まとめ
「著作権」の正しい知識を持った上で広告制作をしなければ、著作権侵害を犯してしまう法的リスクが生じます。
- 著作権侵害を防ぐために、基本は自社で制作・購入などしたオリジナルのコンテンツを利用して広告内容を考えていくようにしましょう。
- 第三者の著作物を使いたい場合は、利用規約に従って内容を確認し、必要に応じて権利者の許諾を得ることをお忘れなく。
著作権について正しく理解して振る舞うことは、自社の名誉や著作物を守ることにもつながります。
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