50人の壁を迎える私たちが取り組んだ、バリューの再定義

50人の壁を迎える私たちが取り組んだ、バリューの再定義

オーリーズはいま、50人の壁を迎えようとしています。企業によって立ち向かう問題は様々だと思いますが、共通して言えることは、「行動から文化をつくる」ことの必要性が、これまで以上に高まってくることではないでしょうか。

「企業の5段階成長」モデルを提唱したラリー・E・グレイナー(1983)は、DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビューにて、「組織の創立期を乗り越えると、組織の拡大に伴って形式にとらわれないコミュニケーションのみでは管理できなくなる。指揮・命令によりメンバーへ仕事を任せることで成長が促される。」といった主旨の内容を述べています。

私たちもまさに組織の拡大に伴って、創業者がメンバーひとりひとりと話せる時間が少なくなってきており、「どのような行動を推奨するのか」を明文化する必要性が高まっていました。

2022年、私たちは「バリュー・行動指針」を刷新しました。この記事では、どういったきっかけや思考プロセスを経て、どのような狙いでバリューを再定義したのか、その詳細を紹介します。

バリューを見直すことになったきっかけ

弊社では、顧客ロイヤルティを測る指標として「SQ(サービス・クオリティ)」という仕組みを導入しており、このスコアを経営の最重要指標のひとつとしています。

メンバーには売上や受注件数といった目標は与えられておらず、「SQを上げること」のみが現場ミッションとして与えられています。

そんな中、あるメンバーが「SQスコアを向上させるために必要なことって何だろう?」というテーマで、社内でワークショップを開催してくれました。

会はとても盛り上がり、そこでは様々な意見が出ました。

  • 広告運用に限定せず、市場環境などクライアントの置かれている状況を踏まえて、課題ドリブンで支援する
  • あらゆる判断をクライアントの利益から考え、ちゃんと理由を伝える
  • クライアントからの提案・指示・相談が間違っていると思ったときは、根拠とともにNOを伝える(もちろん、クライアントの利益を考え抜いているという前提で)
ワークショップで使われたワークシート

その後も経営陣によってディスカッションが続けられ、クライアントワークのあるべきスタンスが少しずつ言語化されていきました。

しかし、言語化しただけでは現実は変わりません。「ちゃんと現場で推奨行動のフィードバックが回る仕組みをつくらねば!」と考え、本格的にバリュー・行動指針の仕組みづくりを始めました。

※ちなみに、オーリーズは「具体的な仕組みに落とすこと」に対してこだわりを持っています。以下の記事もその一例です。よければ併せてご覧ください。

検討のプロセス

バリュー・行動指針の仕組み化を進めるにあたり、まずは理想的な状態(ゴール)について考えました。

目指したいのは、メンバーが日常的に、「その行動・スタンスすごいイイね!」「こうしたらもっと良くなると思うよ!」といった会話をしたり、正負両方のフィードバックをし合ったりしている、そんな状態です。

これは、組織マネジメントの制度設計の観点から見れば、「フィードバック」に関するテーマと言えるので、フィードバック機能の本丸である現行の評価制度について、あらためて見返すことにしました。

弊社では、BQ制度(Business Quotient)という評価制度を運用しています。これは、いわゆる「能力評価」に類する評価制度です。

BQ
BQ制度の概念図

ここで、「能力評価」のプロセス構造を分解してみます(下図参照)。

あるメンバーが「行動」を起こし、その先に「結果」が生まれます。そして、「結果」という事実の積み重ねを参考にしながら、評価者が「能力」を評価します。

行動→結果→能力。これが能力評価の基本構造です。


能力評価のプロセス

能力評価は素晴らしい仕組みですが、デメリットもあります。例えば、

  • 「結果には繋がらなかったものの、称賛されるべき行動」を評価しづらい
  • 「行動」から「能力」 評価までのリードタイムが長いため、タイムリーなフィードバックがしづらい

などです。

ちなみに、前者の「称賛されるべき行動」とは、例えば、

  • 長期的には結果につながり得る行動
  • 失敗確率の高いチャレンジングな行動
  • カルチャーにフィットした行動

などが考えられます。

こうやって自社の評価制度を見返してみると、このままだと上述した理想状態の実現は難しいかもしれないと感じました。現状の評価力学では、日常的に行動を賞賛し合う機会や動機が生まれづらいからです。

また、この「行動レベルの評価・フィードバックがしづらい」という構造下では、冒頭のワークショップのテーマであった「クライアントワーク」の観点だけでなく、「社内の情報共有」や「メンバーのサポート・助け合い」、「仕事のスタンスやモラル」といった観点においても、推奨行動が促進されづらくなります。

これらの考察を経て、今回の取り組みで答えるべき問いは、「推奨されるべき行動に対し、短期スパンでフィードバックが回る仕組みをいかに構築するか?」と定義されました。

この問いに答えるため、「推奨されるべき行動」について考えます。

前提として、弊社には既に「5つのバリュー・行動指針」が存在していました。このバリューは、2018年にミッション・ビジョンを改定した際に併せてつくられたものです。

2021年時点のオーリーズのバリュー(行動指針)

これらのバリューは、私たちのミッション・ビジョンの実現を支える魅力的なものだったのですが、今回の「推奨されるべき行動に対し、短期スパンでフィードバックを回す」という目的に照らすと、見直しが必要だと考えました。

理由は、推奨行動を短期スパンで賞賛したり評価したりするには内容がやや抽象的であるという点です。加えて、上述したワークショップで集まったアイディアを参考に、新たに設定する推奨行動を、

  • 顧客向き合い(クライアントワーク)
  • 組織への貢献
  • あり方(スタンスやモラル)

3つの概念で構成したいと考えていましたが、旧バリューにはこれらの要素が十分に含まれていませんでした。

これらの理由から、バリューを再定義することにしました。

新しいバリュー

このような経緯を経て、以下の3つのバリューが定義されました。

01 目的ドリブン
自身の役割や領域に閉じていては、フィーチャーチームで大きな価値を生み出すことはできない。相手の目的・背景・期待を正しく認識し、その上で期待の一歩先の付加価値を提供しようする姿勢・信念を持とう。

02 アセット志向
機能横断的で自己組織化されたチームを組成する我々は、仲間や組織の成長無しに会社を成長させることはできない。顧客に対する価値発揮だけでなく、仲間や組織に貢献するアセット構築の価値発揮も心がけよう。

03 尊敬、信頼、成長
オーリーズメンバーであり続ける前提条件は三つ。相手に敬意を持って接すること。誠実さを以て周りから信頼されること。成長のために努力をいとわないこと。

アイディア出しの方法は、上述したワークショップに加えて、少人数でのブレインストーミングの場を設けたり、経営陣だけでディスカッションしたり、他社のバリューや書籍を参考にしたり、外部のコンサルタントの方に相談にのっていただいたり…と、たくさんの視点を取り入れ、時間をかけて練り込みました。(※本記事ではそのプロセスについては割愛し、また別の機会でご紹介できればと思います。)

オーリーズの新しいバリュー

バリューに紐づく新しい施策

以上が、「推奨されるべき行動」のお話です。

最後に、「短期スパンでフィードバックが回る仕組みの構築」についてです。定めただけでは現実の行動を変えることはできませんので、仕組みを実装します。

いくつかアイディアがあるのですが、ここでは代表例をひとつ挙げると、マンスリーMSV(ネージャーが介したい推しバリュー)という施策を新たにローンチしました。

マンスリーMSVとは、バリューに即したメンバーの行動を称賛し、全社に紹介するという施策です。毎月チームあたり1~2名を選出し、毎月開催されている全社総会(通称:All’s DAY)でそれらが発表されます。

2月の全社総会にて初回のマンスリーMSVが発表されますので、その時の様子も追って記事でご紹介したいと思います。

「組織文化」という概念を構築したエドガーシャインは、著書『企業文化 改訂版: ダイバーシティと文化の仕組み』にて、理念浸透メカニズムを「一次浸透メカニズム」と「二次浸透メカニズム」にまとめられると述べています。

「一次浸透メカニズム」とは、リーダー自らの行動による浸透方法のことを指し、「二次浸透メカニズム」とは、組織構造など一次浸透メカニズムを補強するものを指しています。さらに、シャインは同書において以下のように述べています。

なかでも、リーダー自らの行動は、最も重要なメカニズムとなる。文化の創造とその定着という点では、「言行一致している」ことが、特別な意味を持つ。新参者は、話されることよりも行動の方により多くの注意を払うからだ。特に重要なのは、リーダーはどのようなことに注目し、評価し、怒り、報酬を与えるかである。

 

エドガー・H・シャイン、企業文化 改訂版: ダイバーシティと文化の仕組み

マンスリーMSVでは、マネージャーおよび経営陣(=シャインが言うところのリーダー)が「どんな行動を称賛するか」を毎月意思決定し、選定した理由とともに全社総会で、全員に語ることになります。

基準であるバリューが明文化されているので、「言行一致している」のはもちろんのこと、月次という短期スパンで行われますので、強固なフィードバックが回ると想定しています。

さいごに

今回は、オーリーズの新しいバリュー・行動指針の検討プロセスについて紹介しました。現場起点や仕組み化へのこだわりなど、一連のプロセスの中にオーリーズらしさや特徴が現れていたかと思います。

本記事を読んでご興味があればお気軽にご連絡ください!

 


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