【広告運用研究会】除外キーワードは、追加されるが見直されない ── 現場の一次情報をオープンに
オーリーズでは、各案件のコンサルタントが現場の知見を持ち寄る「広告運用研究会」という取り組みをおこなっています。
今回は「検索広告の除外キーワードの見直し」について、各案件でどのように対処しているのか、議論した内容を記事にします。
目次
広告運用研究会について
オーリーズでは、各案件のコンサルタントが特定のテーマについて運用事例をディスカッションする「広告運用研究会」という取り組みをおこなっています。
AIの進化で、広告運用の知識やベストプラクティスは以前よりずっと手に入りやすくなりました。一方で、特定の状況下で誰が何を判断し、その結果どうなったかという一次情報は、なかなか表に出てきません。
この記事では、研究会で議論した内容を公開することで、現場の一次情報を比較できる場を作れればと考えています。
今回のテーマは「検索広告の除外キーワードの見直し」です。運用を続けるなかで除外設定が膨らみ、知らず知らずのうちに機会損失を生んでいたケースについて、2つの事例をもとに議論しました。
除外キーワードが増える背景
除外キーワードの過剰な蓄積は、特定の誰かのミスではなく、運用の構造として起こりやすい問題です。背景にあるのは、除外は追加しやすい一方で、一度追加された除外は見直されにくいという非対称性です。
パフォーマンスが悪化したとき、実績データから効率の悪いクエリを特定して除外すれば、短期的に数値は改善する。根拠も明確で、説明もしやすいので、除外キーワードは実行しやすい打ち手です。
ただし、ここで見落とされがちなのは、当時「効率が悪い」と判断されたクエリが、今この瞬間も同じとは限らないということです。
機械学習の精度は年々向上しており、かつてCPAが合わなかったクエリでも、現在なら効率よくCVを獲得できる可能性がある。
また、除外判断のもとになった実績データ自体が、十分な配信量に基づかない短期間のサンプルだったかもしれないし、季節性や外部要因でたまたま数値が振れていただけかもしれない。
さらに、拡張CVやDDAの普及により、当時は「CVに繋がりづらい」と判断していたクエリが実はCV獲得に貢献していた、と可視化できるようになったケースもあります。
にもかかわらず、除外を外せば一時的にCPAが悪化するリスクがあり、積極的に手をつける動機が生まれにくい。そもそも、除外キーワードを定期的に棚卸しするオペレーションが明確に設計されている現場は、それほど多くないように思います。
運用者が変われば、前任の除外は「何か理由があるのだろう」とそのまま引き継がれ、その上に新しい除外が積まれる。除外リストは一方向に膨らみ続け、さらに精査が困難になる。
今回ご紹介する2つの事例は、いずれもこうした積み重ねの結果として起きたものです。
ケースA|1,000件超の除外KWが、年間3,100件のCVを奪っていた
| 項目 | 概要 |
|---|---|
| ビジネス形態 | BtoC/媒体CV:申し込み |
| 問題意識 | 1,000件超の除外が設定されていた。根拠が不明確なものが大半で、ターゲットユーザーが検索しうるクエリが多数含まれていた |
| 打ち手 | 「絶対に顧客になり得ない」もの以外の除外を解除し、コンバージョン計測の正確性を確認した上で自動入札で配信 |
| 判断の背景 | 除外を積み上げた経緯が不明確で、取り除くことで失うものより得られるものの方が大きいと判断 |
あるBtoC案件では、支援開始時にアカウントを確認したところ、1,000件を超える除外キーワードが設定されていました。過去の短期的な成果悪化を理由に、効率が悪いと判断したクエリを次々と除外してきた結果です。
中身を精査して気になったのは、除外されているキーワードの顔ぶれでした。たとえば、サービスの代替的な呼び方や、関連カテゴリの検索語句なども混ざっており、ターゲットユーザーが実際に検索し得るクエリが、部分一致除外によって広くブロックされている状態でした。
これらの除外設定を外すうえでは、一時的にCPAが上昇する可能性もありました。ただ、除外を積み上げてきた経緯に明確な根拠が見当たらない以上、「残すことで失っている機会」の方が大きいと判断。
「明らかに顧客になり得ない」と考えられるキーワード以外の除外を解除し、コンバージョン計測が正しいことを確認した上で、自動入札で配信する。
この方針で除外を解除した結果、約85,000のクエリに配信が広がり、そのうち2,100クエリでコンバージョンが発生しました。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 新たに配信されたクエリ数 | 約85,000 |
| うちCV発生クエリ数 | 2,100 |
| 年間CV増加数 | 約3,100件(全体の約10%相当) |
年間3,100件のCV増。 除外リストの中に、取りこぼしていた成果がそのまま眠っていたということになります。
ケースB|膨大なKW登録によりアカウント全体が複雑化
| 項目 | 概要 |
|---|---|
| ビジネス形態 | BtoC/媒体CV:お問い合わせ |
| 問題意識 | 除外リストだけで24,000件以上。配信キーワードも過剰で、アカウント全体が複雑化していた |
| 打ち手 | Phase 1:矛盾する除外の解除・キーワード集約 Phase 2:除外リストの紐付けを丸ごと解除し、必要なものだけ残す |
| 判断の背景 | 規模が大きく一括解除はリスクがあるため、成果改善を確認しながら段階的に進めた |
別のBtoC案件でも、支援開始時にアカウントを確認したところ、24,000件を超える除外キーワード、配信キーワードは6,000件以上。メンテナンスが行き届かないほどアカウント全体が複雑化していました。
長年の運用のなかで、短期的な成果悪化への対策など、都度の合理的な判断が積み上がった結果です。
膨大な配信設定と除外設定がそれぞれ独立して積み重なった結果、配信しようとしているキーワードを、自らの除外設定で潰しているという矛盾が各所に生まれていました。
この規模になると一括解除はリスクが大きいため、段階的に進めました。
▼Phase 1
明らかにコンバージョン見込みの高いキーワードや、配信設定と矛盾している除外を解除。約3,800件を解除し、配信キーワードも可能な限り集約。
▼Phase 2
Phase 1で成果改善を確認した後、除外リストの紐付けを丸ごと解除し、必要なものだけを残すかたちへ変更。
結果、除外見直しを実施したいずれのタイミングでもCPA低下・CV増加を確認しています。
| フェーズ | Cost | 対前月比 |
|---|---|---|
| Phase 1 実施前 | 約 ¥5,500,000 | — |
| Phase 1 実施後 | 約 ¥5,400,000 | CPA▲17%、CV+18% |
| Phase 2 実施前 | 約 ¥5,800,000 | — |
| Phase 2 実施後 | 約 ¥6,000,000 | CPA▲14%、CV+21% |
サービスの中核となるキーワードですらコンバージョンが発生していなかったことを考えると、長年の積み重ねで除外が本来の意図から大きく乖離していた可能性が高いと言えます。
除外の見直しと、あえて残す判断
2つの事例に共通していたのは、「なぜこのキーワードが除外されているのか」を、誰も説明できなくなっていたことです。
私たちが除外キーワードを見直す際に使った判断基準はシンプルでした。「除外し続けるべき理由を説明できるか」。説明できないものは、見直しの対象にしました。
実際に棚卸しを進めるなかで気づいたのは、アカウント単位の除外設定が見落とされやすいということです。キャンペーン側でいくら最適化を重ねても、アカウント単位の除外が足を引っ張っていては意味がありません。
除外は追加されやすく、見直されにくい。この非対称性を前提にするなら、リストの中身を定期的に精査すること自体を、運用の一部として組み込んでおく必要があると考えています。
おわりに
1,000件の除外が年間3,100件のCVを奪っていた、24,000件の除外リストにサービスの中核キーワードが埋もれていた。いずれも特殊なケースではなく、構造的に起こり得る問題です。
今回の内容が、アカウントの除外設定を見直すきっかけになれば嬉しいです。広告運用研究会では、今後もこうした現場のディスカッションを共有していきます。