インテントマッチ(部分一致)とは?フレーズ一致・完全一致との違いを解説

インテントマッチ(部分一致)とは?フレーズ一致・完全一致との違いを解説

昨今の運用型広告はAIによる機械学習の精度が上がり、自動入札を活用することが一般的になってきています。

そのため運用者はAIの機械学習が効率よく行われ、かつその学習結果が最大限活用されるようにアカウント設計・運用をおこなうことが重要です。

運用型広告の代表格とも言える検索広告においては、キーワード・マッチタイプ選定が広告の配信成果を大きく左右します。

今回はマッチタイプの中で特に使用されるケースが多い「インテントマッチ(旧:部分一致)」について、基本的な仕様から実際に設定する手順まで、インテントマッチの概要を理解できるように網羅的にまとめました。

なお、本記事はGoogle検索キャンペーンで設定できる「インテントマッチ」を想定して執筆しています。Yahoo!検索広告の「インテントマッチ」も基本的な機能や活用方法は変わらないため、以下の内容は一般的な「インテントマッチ」の説明として解釈いただいて問題ありません。

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インテントマッチとは

「インテントマッチ」は、Google検索キャンペーンで設定できるマッチタイプのひとつです。

インテントマッチを設定すると、完全一致やフレーズ一致ではカバーできない関連性の高い検索語句に広告表示ができるため、自動化が一般化した近年の運用型広告では頻繁に利用されるマッチタイプです。

詳しくは後述しますが、インテントマッチでは、他のマッチタイプでは活用できない独自のシグナルをもとに検索ユーザーの「インテント(意図)」を理解します。

商品・サービスに興味関心を持ちやすいユーザーを捕捉しながら広告配信ができるため、使い方によって高い費用対効果が期待できるのが大きな特長です。

参考:インテント マッチ(旧:部分一致): 定義(Google広告ヘルプ)

完全一致・フレーズ一致との違い

詳しい仕様を理解したい方は以下の媒体公式ヘルプページをご覧いただければと思いますが、簡潔に説明すると、それぞれのマッチタイプには以下のような違いがあります。

参考:キーワードのマッチタイプについて(Google広告公式ヘルプ)

  • 完全一致
    • 登録したキーワードとまったく同じ意味・意図の検索語句が広告の表示対象になる
  • フレーズ一致
    • 登録したキーワードと同じ意味の内容を含む検索語句が広告の表示対象になる
  • インテントマッチ
    • 登録したキーワードと関連性がある検索語句が広告表示の対象になる(登録したキーワードを含まない検索語句も対象)

例えば「パーソナル トレーニング ジム」というキーワードを設定した場合、マッチタイプによって表示される検索語句は以下のように変わります。

またインテントマッチでは、フレーズ一致・完全一致では活用できない独自のシグナルを使用した広告配信が可能です。

具体的には、以下のように使用できるシグナルの違いがあります。

例えばインテントマッチでは「ランディングページの内容」も考慮されるため、キーワードに含まれていないフレーズでも、ランディングページに含まれている要素とマッチすると判断された検索語句には広告が表示されます。また、ユーザーの過去の検索行動も考慮することで、自社の商品・サービスにマッチしたユーザーであるかの判断もできます。

部分一致からインテントマッチに名称変更された背景

「部分一致」「インテントマッチ」に名称変更した理由について、Googleの公式資料では以下のように説明されています。

これまで部分一致については、精度の低さや広告効率が悪化してしまうことへの懸念を指摘する声があったのも事実です。しかし近年、Google AI や言語モデルの進化に伴い、その精度は飛躍的に向上してきました。機能の開発から 20 年以上が経った現在、部分一致という名称は、もはや実態を正確に表すものではなくなっています。

そこで Google Japan では、2024 年 7 月から、生活者や企業のインテント(意図)を捉えるという機能の本質に合わせてマッチタイプの名称を「部分一致」から「インテント マッチ」へと変更することを決めました。

出典:検索広告の部分一致を「インテント マッチ」へ改称した理由とは(Think with Google)

従来の検索広告では、指定したキーワードに関連する検索語句に対して広告を表示することで、検索ユーザーが知りたい情報と広告主が提供したい情報をマッチングしてきました。

しかし、検索語句が同じだからといって、その背景にある検索意図が全く同じとは限りません。たとえば、「沖縄」と検索しているユーザーには、沖縄旅行を検討しているユーザーもいれば、沖縄市のHPにアクセスしたいユーザーもいます。

このような検索ユーザーの潜在的な欲求は「インテント(意図)」と呼ばれ、Googleはユーザーのインテントを理解するために、自社のAIアルゴリズムの改修を繰り替えしてきました。

その結果、インテントマッチではGoogleの膨大なテキストデータを学習し、検索語句そのものだけでなく、検索背景、場面、文脈などからユーザーのインテント(意図)を理解し、より興味関心や購買傾向の高いであろう検索語句に対して広告配信することができるようになっています。

そのため、従来の部分的にキーワードに一致する検索語句に広告配信する「部分一致」という名称よりも、検索ユーザーの意図を捉え、合致した広告を配信するというニュアンスのほうが実態に即していると考え、「インテントマッチ」という名称に変更されました。

参考:検索広告の部分一致を「インテント マッチ」へ改称した理由とは

💡部分一致とインテントマッチの機能的な違い
上述の通り、「部分一致」は「インテントマッチ」へと名称変更がされましたが、マッチタイプとしての基本的な機能自体は変わっていません。
管理画面上の機能名が変更になっただけなので、今回の名称変更によって広告の配信結果に大きく影響が出ることはありません。
なので、今回の名称変更によって広告の配信結果に大きく影響が出ることはありません。

インテントマッチのメリット・デメリット

インテントマッチは媒体推奨の設定ではあるものの、性質を理解しないまま盲目的に設定してしまうのは危険です。

インテントマッチの性質を正しく理解した上で、自社のアカウントで導入すべきか検討したうえで設定するようにしましょう。

メリット

インテントマッチを設定するメリットについて、代表的なものを2つご紹介します。

費用対効果の向上が期待できる

上述した通り、インテントマッチでは完全一致やフレーズ一致では活用できない独自のシグナルを考慮することが出来るため、商品・サービスに興味関心を持ちやすいユーザーに優先的に広告配信することが出来ます。

AIによって、人間では検知できないCV確率の高い検索語句に配信を拡張してくれるので、結果として費用対効果の向上につながる可能性があります。

以下の記事は部分一致時代の記事ですが、部分一致のシグナルが本当に配信成果に好影響をおよぼすのか、弊社内で検証した事例をまとめています。

段階的に部分一致の比率を高めていった結果、CTRを向上させながらCPCを低下させることが出来、結果としてCPA低減につながりました。

潜在顧客にリーチを拡大できる

さきほどご説明したように、インテントマッチでは完全一致・フレーズ一致ではリーチできない検索語句に対して広告表示をすることが出来るため、潜在顧客にリーチを広げたい場合には導入する意義があると言えます。

以下はあくまでイメージではありますが、それぞれのマッチタイプの拡張範囲のイメージを図にしたものになります。インテントマッチを設定することで、完全一致・フレーズ一致と比べてより広範な検索ユーザーに広告表示をすることが出来ます。

デメリット

インテントマッチを設定するデメリットについて、代表的なものを2つご紹介します。

意図しない検索語句に広告配信される可能性がある

インテントマッチは広範なユーザーにリーチしつつ、高い費用対効果を期待できるマッチタイプではありますが、機械学習が進んでいない状況下では、CVに繋がりづらいユーザーに広告表示がされてしまうケースもあります。

そのため、インテントマッチを設定した際は、広告が表示されている検索語句がCVに繋がっているかを確認し、費用対効果の低い検索語句に広告表示がされている場合は除外キーワード設定を行うようにしましょう。

インプレッションシェアが低下する可能性がある

上述の通り、インテントマッチでは完全一致やフレーズ一致では活用できない独自のシグナルを考慮して広告配信すべきか判断しています。シグナルを考慮した結果、完全一致やフレーズ一致で広告表示していた検索語句が、ユーザーのインテントとそぐわないとして広告表示されなくなる可能性があります。

また、その逆のケースとして、完全一致やフレーズ一致で広告表示していなかった検索語句に対して広告配信が拡張される場合もあります。一般的にインテントマッチでは他のマッチタイプと比べて広告の関連性が低くなりやすい一方で、競合する広告主の数は増えるためインプレッションシェアが低く出やすいマッチタイプである点は注意点として認識しておきましょう。

参考:インプレッション シェアについて(Google広告ヘルプ)

インテントマッチを活用すべきケース

上記でインテントマッチのメリット・デメリットについて述べてきましたが、インテントマッチは具体的にどういうケースで設定すべきマッチタイプなのでしょうか。

結論からお伝えすると、以下で記載するような特別なケースを除き、近年の運用型広告ではインテントマッチを自動入札と併用する形で活用する方法が主流となっています。

<インテントマッチを使用しないほうが良いケース>

  • 費用対効果やブランド保護の観点から、広告表示したい検索語句が限られる
  • 予算が限られており、機械学習の最適化に必要なCVデータを担保することが難しい
  • 目標インプレッションシェアで入札していて、予算が限られている

Googleによれば「毎日発生する何十億件もの検索語句のうち15%は、それまでになかった新しいものです」と言われており、こうした新たな検索語句に対応するには、人間が手動でキーワード追加をし続ける方法では限界があります。

これまでの運用型広告では、キーワード追加の工数であったり、人間の想像力が及ぶ範囲の限界から、どうしてもボリュームの大きいキーワードに入札が集中する傾向が強く、結果的に広告主の目標とする費用対効果を実現することが難しいケースも発生していました。

検索広告でROIが合わないケースが増えてくると、検索広告に出稿する広告主が減少する可能性も考えられることから、Googleはインテントマッチに独自のシグナルデータを学習させて費用対効果を高めることで、ロングテールのキーワードにも入札が促進されることを期待しています。

こうしたユーザー行動の変化と媒体側の思惑を受けて、近年の運用型広告ではインテントマッチ×自動入札が主流の運用方法となりつつありますが、結論すべてのケースで等しくインテントマッチを導入すべき、というものではないため活用にあたっては慎重な検討を行うことをおすすめします。

インテントマッチを設定する際の注意点

ここからは、インテントマッチを設定する際に事前に認識しておくべき注意点について解説します。

意図しない検索語句に広告配信されている場合は除外キーワード設定をする

インテントマッチは独自のシグナルを活用して検索ユーザーの意図を理解し、運用者が想像し得ない検索語句に対して広告配信を拡張することができる一方、費用対効果が合いづらい検索語句に対しても広告配信されるケースがあります。

たとえば、「旅行」というキーワードをインテントマッチで登録した場合、広告は「旅行」を含む検索語句や、意図が近い検索語句に対して広告配信を拡張する可能性があります。(例:「海外 旅行」「温泉 旅行」「航空券 予約」など)

自社が国内旅行のチケットのみ取り扱っている企業だった場合、「海外 旅行」「ニューヨーク 出張」などの検索語句に広告を出稿しても費用対効果が合うことは少ないでしょう。

このように、明らかに費用対効果が合わないであろう検索語句に広告配信されている場合は、管理画面で除外キーワード設定をおこなうことで対象の検索語句を広告配信の対象から外すことが出来ます。

インテントマッチを設定した後は、定期的に検索語句レポートを確認して、意図しない検索語句に広告配信されている場合などは除外キーワード設定をおこなうようにしましょう。

状況に応じてキーワードの手動追加も検討する

インテントマッチも万能の機能では無いため、運用者が手動でキーワード追加をして配信対象をコントロールすることが必要なケースもあります。

詳しくは別記事の「[インテントマッチ(部分一致)×スマート自動入札が推奨とされる環境下で、どういう時にキーワードを追加するべきか?]」で説明していますが、①インテントマッチで反応しない検索語句に広告掲載したい場合や、②ユーザーの検索語句と広告の関連性を高めたい場合などは、運用者自身でキーワード追加をすべきか検討したほうが良い場合もあります。

以下は目安となりますが、インテントマッチを導入している場合に手動でキーワード追加すべきか検討する際の判断基準を示しています。

出典:インテントマッチ(部分一致)環境下における「キーワード手動追加」との向き合い方

「追加すべきか検討」と曖昧な表現としているのは、キーワードを手動追加するメリットが大きいか考える材料にしていただきたいためで、上記の2つの理由が当てはまった際も絶対に追加しなければならないというものではありません。

キーワード追加の目的や、期待できる効果を勘案しながら手動でキーワード追加すべきなのか判断するようにしましょう。

いきなり導入するのが不安な場合はカスタムテスト機能を使う

収益割合の大きいキーワードなどは、いきなりマッチタイプに拡張するのが不安なケースもあると思います。

Google広告では「カスタムテスト」というABテスト機能があり、オリジナルキャンペーンとテスト用キャンペーンで予算を分割してどちらがより成果につながりやすいか検証することが出来ます。

以下の記事は名称が部分一致時代の検証ですが、指名検索キャンペーンにおいて、カスタムテスト機能を使ってマッチタイプの拡張をおこなった結果をまとめています。

いきなりマッチタイプを拡張するのが不安な場合は、まずはカスタムテスト機能で効果を検証してから本格導入すべきか判断するのがおすすめです。

インテントマッチの設定方法

実際の管理画面を用いてインテントマッチの設定方法を紹介します。以下はGoogle検索キャンペーンでの設定方法ですが、Yahoo!検索広告も概ね同じ設定手順となっているためこの記事では割愛します。

1.キーワードを追加したいキャンペーン、広告グループを選択してキーワード設定画面に遷移した後に、画面左上の「+」を選択します。

2.キーワードの追加画面で任意のキーワードを入力し、「保存」を選択することでキーワードの追加が完了します

💡記号をつけずにそのままキーワード登録をするとデフォルトでインテントマッチとして設定される仕様になっています。
完全一致・フレーズ一致で登録したい場合はそれぞれ[]、””でキーワードを囲みましょう。

まとめ:インテントマッチの性質を正しく理解して、費用対効果の向上に繋げよう

以上、インテントマッチの概要についてご説明しました。

インテントマッチは他のマッチタイプでは活用できない独自のシグナルを考慮して、興味関心や購買傾向の高い検索語句に広告配信を拡張することが出来る一方、意図しない検索語句に配信が拡張され、運用者の意図と合致しない挙動をするケースも考えられれます。

本記事を通してインテントマッチの性質について正しい理解が進み、自社で活用すべきかイメージを深める一助となれば幸いです。

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この記事を書いた人

株式会社オーリーズ

アドオペレーションズ・ストラテジスト/チーフ

深堀 智広

新卒で株式会社ジェーシービーに入社し、海外旅行者のJCBカード利用促進に寄与する施策の立案、およびそのWEBマーケティング業務に従事。 WEBマーケティングに関する専門性の高いスキルを身に着け、顧客の課題解決ができる人材へ成長したいという想いから転職を決意。 数ある広告代理店の中でも「マーケティング戦略の立案から実行までを一貫して担うことで、はじめて価値を発揮できる」という考えに共感し、オーリーズへ入社。

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