- ナレッジ・ノウハウ
- 肥田 悟志
リスティング広告の運用ベストプラクティス
デジタル広告のなかでも、リスティング広告は多くの広告主が利用する広告メニューであるがゆえに、リスティング広告の改善で頭を悩ませるケースも多く見受けられます。
「これからリスティング広告を始めようと思うけど、まず何から手を付けていったらいいのか」
「広告代理店に運用を任せているけれど、自社のリスティング広告は適切に運用されているのだろうか」
「リスティング広告に関するノウハウは色々あるけれど、成果に結びつきやすい施策を優先的に実装していきたい」
リスティング広告には数多くの機能があるため、十分な広告効果を発揮するには、前提知識や設定、運用などにおける基礎的な知識を押さえることが重要です。
一方で、リスティング広告への理解を深めるうえで、重要な項目を網羅的に紹介するだけではそれぞれの重要性がわかりにくくなるため効果的ではありませんし、わかりやすい解釈だけをまとめるだけでも情報が不十分で偏った理解に陥ってしまう可能性があります。
そこで本記事では、リスティング広告で活用頻度の高い機能を一通り紹介するとともに、それらの使い方に関して広告運用者が10人いれば8人はそうした方がよいと回答するレベルの一般解をまとめてみました。(便宜上「広告運用者が10人いれば8人はそうした方がよいと回答するレベル」を以後「80点の運用レベル」と称します。)
「80点の運用レベル」を本記事のテーマとしたのは、ただ項目の理解をするだけに留めることなく、読者の方が実際の運用現場で活用できるものにしたいと考えたからです。実際の現場で活用するかどうか、活用するとしたらどのように活用するのか、逆にしないのであればどうしてしないのかということが伝わるように、各要素を推奨する理由や裏付けについても説明しています。
なお、リスティング広告を利用できる媒体はGoogleやYahoo!、Microsoft広告などがありますが、各社Googleを参考に機能開発を行っていることや、複数の機能名や各社の差異を正確に記述することはかえって正しい理解を妨げてしまう可能性が考えられるため、機能や用語はGoogleをもとに説明いたします。
リスティング広告をこれから始める方もすでにご利用中の方にも、チェックリストのように活用できる網羅性を重視してまとめています。そのため最初から最後まで読了するというよりは、気になるポイントをつまみ読みしたり、振り返り用として繰り返しご参照いただけると幸いです。
そもそもリスティング広告とはなにか?というところから理解を深めたい方は、以下の記事もあわせてご確認くださいませ。
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リスティング広告の全体像
まず前提として、リスティング広告を80点レベルで運用するためには、そもそもリスティング広告でどのような機能があり、そのなかでどの機能を優先的に押さえておく必要があるのか全体像を理解することが重要です。
リスティング広告は大きく分けて、「キャンペーン」「広告グループ」「キーワード」「広告文」の4つの階層から成り立ちます。そして、それぞれの階層ごとに機能が紐づいています。
上記に記載している機能は、どれもリスティング広告を理解するうえで前提として理解しておくべきものですので、各機能の概要や基本的な使い方が理解できていない方は媒体の公式ヘルプや弊社ブログ記事をご参照いただいてから本記事をご覧いただくことをおすすめします。
リスティング広告の運用ベストプラクティス
ここからは、リスティング広告の運用ベストプラクティスについて、リスティング広告を構成する5つの項目に沿って詳細を説明します。
- アカウント設計の考え方
- 入札戦略と運用調整の考え方
- キーワード設定
- 広告文の設定
- 効果計測の設定
詳細は追って解説しますが、先にリスティング広告の運用ベストプラクティスを概要として提示いたします。
以下の早見表に記載している項目は、まず80点レベルの運用を目指すうえで重要な項目となりますので、自社の検索アカウントで検討しきれていない部分がないかチェックしましょう。
1.アカウント設計の考え方
アカウント内のキャンペーン・広告グループをどのように設計するかは、リスティング広告の設定のなかでも極めて重要な要素です。
アカウント設計ができれば、リスティング広告内のその他項目が自然と決定してしまうといっても過言ではないくらい、アカウント設計は広告運用の成果を左右する重要な要素です。
そういった性質から、アカウント設計を決める際に考えるべき要素は以下のように多岐にわたり、その分だけ広告主の個別事情に左右されます。
ただし、本記事では80点の運用レベルを目指すことをコンセプトにしているため、それぞれの個別事情に対して詳細を説明するのではなく、これら様々な要素の中から「ここだけは押さえてほしい」という内容に絞って説明をいたします。
まず、アカウント設計において絶対に押さえておくべき要素は、アカウントを設計した際に「1キャンペーンあたりのCV数が、機械学習を機能させるために必要な量を満たせるか」と「広告クリエイティブをキャンペーン/広告グループ単位でユニークとできるか」です。
1キャンペーンあたりのCV数が、機械学習を機能させるために必要な量を満たせるか
運用型広告には機械学習が利用されています。
詳しくは「入札戦略と運用調整の考え方」の章にて説明しますが、機械学習の効果を最大限に引き出すためには、入札戦略に適した十分なCV数を確保できるようアカウントを設計する必要があります。
そうなると当然の疑問として「十分なCV数とはどれくらいなのか?」が気になる点ですが、結論としてはGoogleから明示されていないため「断言はできない」が回答になります。
ただしそれでは参考にならないため、CV数に言及しているヘルプページや過去のGoogle資料をもとに、「機械学習を機能させるために必要な量」の判断基準になる情報を紹介いたします。
まず、機械学習のための推奨量に関してGoogle公式の情報は年々アップデートされており、直近ではCV数が0件の状態であっても自動入札を活用することを推奨しています。
スマート自動入札を導入すると、すべてのキャンペーンのデータに基づいて最適化が行われるため、独自のデータがない新しいキャンペーンの場合でも掲載結果が向上します。
掲載結果を正確に評価するには、1 か月以上の長い期間に 30 回以上のコンバージョン(目標広告費用対効果の場合は 50 回以上)を獲得していることが推奨されます。
引用:スマート自動入札について
一方で掲載結果の評価には30回以上のコンバージョンを獲得していることが推奨とも記載があるため、機械学習が安定し、高い広告効果を発揮するには30件以上のCV数が必要とも読み取れます。
また、下記に2019年7月にGoogle社から共有された資料の一部を掲載しています。
2019年と数年前の情報ですが、現在のGoogle広告で言う「コンバージョン数の最大化」で数日に1件、「コンバージョン値の最大化」で過去30日間で15件以上が必須、30件以上が推奨と明記されていました。
数年前の情報のためそのまま鵜呑みにするのは推奨しないものの、どれくらいが「機械学習に必要な量」といえるのか、判断軸には繋がったのではないでしょうか。
CV数に関してはここまでお伝えした通り公式でも正式な基準が明記されていないため、どれくらいの量が最適かは試行錯誤を重ねる必要があります。
ただし、キャンペーン/広告グループを分ける際の多くの目的は、分けることによってユーザーの個別ニーズに応じた最適化を行い、広告効果を向上させることだと思います。
その点から、CV数が十分な量を下回ってしまうと広告効果にかえって悪影響となってしまう可能性があるため、キャンペーン/広告グループを細分化すべきかどうかは慎重に判断する必要があります。
近年では少ないCV数でも成果が改善できるケースが増えていますが、機械学習の性質上データ量は重要な要素です。
上記のCV数の感覚を念頭に、キャンペーン/広告グループ構成を考察すれば安定した成果を得やすいアカウントになります。
なお、広告運用における機械学習の仕組みについて学びを深めたい方は、あわせてこちらの記事をご覧いただくことをおすすめします。
広告クリエイティブをキャンペーン/広告グループ単位でユニークとできるか
キャンペーン/広告グループを分ける理由として、先ほどは機械学習の効率性観点から理由をお伝えしましたが、ユーザーコミュニケーション観点では分けたキャンペーン/広告グループ単位に対して広告クリエイティブはユニークとする必要があります。
もしほかのキャンペーン/広告グループと同じ広告クリエイティブだとすると、ユーザー側からは同一キャンペーン/広告グループから広告を配信されている状態と何も違いがなくなってしまいます。
この状態ではキャンペーン/広告グループを分けるという運用上の工数負荷を増やしているにも関わらず、ユーザーコミュニケーションに影響を与えていないため、広告効果を高めることが難しくなってしまいます。
そのため、分けるからには広告クリエイティブをユニークとし、かつユニークの状態を保ち続ける必要があります。そうなると当然ですが、キャンペーン/広告グループの数だけクリエイティブ改善の工数が多くかかったり、クリエイティブ以外の観点でもキーワードの保守管理の手間が増えたりと、アカウント内でやるべきことは加速度的に増加します。
前述した機械学習の推奨CV量でも触れましたが、上記のようなデメリットと比較してでもユーザーコミュニケーションの観点で分けるべきかどうかを考える必要があります。
例えば、地域名や検索語句を反映させる程度であれば、後述する広告カスタマイザなどの機能でもできるため、分割によって果たしたい内容によっては工夫を凝らすことで実装ができる可能性もあります。
キャンペーン/広告グループを分けることは想像以上に運用に大きな影響があるため、本当に分けてまで達成したいことかは可能な限り慎重に判断することをおすすめします。
最後に、ここまでの話を踏まえ、私たちの運用経験も参考までにお伝えすると、キャンペーンや広告グループは「可能な限りまとめる」ことを前提に、機能や見せ方の工夫でなんとかまとめることができないかを優先して考えます。
可能な限りまとめたいという方針で整理してもどうしても分割しないと目的が達成できない場合に、キャンペーン/広告グループを分けるのが良いでしょう。
✍🏻キャンペーン/広告グループ分割を検討する際に注意すべき点
⑴非推奨な分割例の代表は「キーワードのマッチタイプごとのキャンペーン/広告グループ分割」
分割したほうが良い例は個別事情に左右されるため例を出すのが難しいですが、一方で避けたほうがよいケースは明確にあります。それは、キーワードのマッチタイプごとの分割です。
これは「完全一致=ユーザーのコンバージョン見込みが高い」「部分一致やフレーズ一致=コンバージョン見込みが薄い」、として特定キーワードのマッチタイプ毎にキャンペーン/広告グループを分割し、入札単価に差を設ける方法です。
マッチタイプごとに分ける方法は一見すると効率の良い運用方法にも思えますが、先述したデータの分割による分析精度の低下の恐れや運用管理の手間が増える点、自動入札の活用という上位互換により目的を適切に果たせる点など様々な理由から、マッチタイプごとにキャンペーンを分ける方法は非推奨とされています。
⑵キャンペーン・広告グループを分割した際は、相互に除外キーワードを登録し入札重複を避ける
最後に、設計したキャンペーン・広告グループそれぞれが同様のキーワードに入札を行わないように除外キーワードを登録するよう推奨しています。
相互除外を行うことは施策の効果を正しく認識するためだけではなく、ユーザーニーズに対して適切な広告クリエイティブを訴求することにも繋がるためです。
特に、指名キーワードを除外できていない場合、施策の成果を過剰に評価してしまう可能性があるため、関係のないキャンペーンには必ず除外をするよう設定をしておきましょう。
もちろん昨今の入札精度向上などの背景から「除外キーワードは設定しなくても良い」とする風潮もありますが、相互除外はアカウント設計初期のタイミングで設定すれば完了するものでもあり、アカウント構成を変えない限りは変更の必要性が生じない工数負荷の低いものです。広告配信前から要否が判断できるものを、あえて貴重な広告費を活用して機械学習に判断させる必要性も薄いことから、基本的には相互除外を活用することを推奨しています。
具体的な除外キーワードの設定方法については、「キーワード設定」の除外キーワードの章にて説明します。
2.入札戦略と運用調整の考え方
手動入札、自動入札は目的によって使い分ける
手動入札は、キーワードごとにクリック単価を人間が手動で設定する方式のことで、一方の自動入札は、キーワード単位ではなく入札機会ごとにAIが自動的に最適な入札額を算出する方式です。
下記は自動入札と手動入札の違いをよりわかりやすく理解するために、Googleの入札戦略を参考にまとめたものです。
入札戦略 | 利用目的 | できること | メリット | デメリット |
---|---|---|---|---|
手動入札 | 運用初期や、機械学習を満たせない限定的なターゲットへの配信を行いたい | キーワードや広告グループごとに入札単価を手動で設定・調整 | 細かなコントロールが可能 | 時間と労力がかかる、運用難易度が高い |
目標コンバージョン単価(※) | 目標CPA内でCV数を最大化したい | 目標とするCPA内でCV数を最大化 | 指定したCPAに基づいてコンバージョンを増やせる | 目標CPA内に収めるために、配信量が伸び悩む可能性がある |
目標広告費用対効果(※) | 目標ROAS内での広告収益最大化 | 目標とするROAS内での収益最大化 | 指定したROASに基づいて収益を最大化 | 目標ROAS内に収めるために、配信量が伸び悩む可能性がある |
クリック数の最大化 | ウェブサイトへのトラフィック最大化 | 予算内でのクリック数最大化 | 低CPCでのトラフィック獲得 | CV数が増えない可能性がある |
コンバージョン数の最大化 | CV数の最大化 | 予算内でのCV数最大化 | CV数を増やすための最適な入札単価を自動設定 | コストが予測しづらい |
コンバージョン値の最大化 | コンバージョン価値の最大化 | 予算内でのコンバージョン価値最大化 | コンバージョンの価値を最大化するための最適な入札単価を自動設定 | コストが予測しづらい |
インプレッションシェアの目標 | 検索結果での表示割合の担保 | 目標とするインプレッションシェア内での広告表示 | 指定した検索結果ページの位置に基づいて広告を表示 | 高い入札単価が必要になる可能性がある |
※2024年7月以降、Google広告の検索キャンペーンでは目標コンバージョン単価はコンバージョン数の最大化、目標広告費用対効果はコンバージョン値の最大化に統合されています(検索キャンペーン向けのスマート自動入札戦略の構成に関する変更)
入札戦略の考え方としてまず優先すべきは、広告目的に適した自動入札を採用することです。
その理由は、自動入札のほうが多様なシグナルをもとに入札調整を行うことで、人間が手動で調整するよりも適切な入札を行うことができ、結果的に広告のパフォーマンスを上げやすいためです。
以下はあくまでイメージとなりますが、手動入札と自動入札のターゲティングの違いを表したものが次の図です。
これはキーワードからはユーザーの検討度合いがわからないために起こるためで、例えば「渋谷 賃貸」というキーワードで検索しているユーザーのなかには検討初期の段階で検索している人もいれば、特定物件を探すために検索をしている人もいます。
このようにキーワードとユーザーの検討度合いは必ずしも一致しないので、CVRの高いキーワードであっても手動で入札単価を設定してしまうと入札強化をした際に想定ほどよい結果を得られない可能性があります。
自動入札であれば様々なシグナルを活用してオークション毎に入札単価を決定するので一般的に費用対効果が高くなりやすいです。
スマート自動入札は…(中略)。デバイス、地域、時間帯、リマーケティング リスト、言語、オペレーティング システムなど、オークション時のさまざまなシグナルを考慮し、すべての検索で状況に応じた処理が行われます。
一方で、運用初期でアカウントにCVデータが蓄積されていない場合や期待できるCV量が少ない業界、そもそもターゲットが限定的など何かしら自動入札を使うべきではない場合は、手動入札の活用も考えられます。
ただし、あくまで温度感としては自動入札を活用するほうが広告成果が高まる可能性が高いため、可能な限り自動入札を活用するのが推奨です。手動入札はあくまで自動入札を活用できない場合に、消極的な選択肢として活用することが昨今の運用型広告では主流となっています。
「入札戦略のステータス」を参考に頻繁な自動入札の入札変更を避ける
自動入札は広告運用の成果向上を目指す上で便利な機能ですが、設定後すぐに成果が出るわけではありません。自動入札には、入札戦略のステータスに基づいて最適な入札額を算出するための学習期間が必要です。
学習期間はアカウントの規模や状況によって異なりますが、一般的には数週間から数ヶ月程度かかります。
また学習期間完了後だったとしても、頻繁な入札変更をしてしまうと再学習となってしまうため、機械学習の性質的に頻繁な変更も推奨されておりません。ただし、控えるべきといわれてもどの程度控えるべきかどうか客観的に判断するのが、難しいのもまた事実です。
そこで、そういった入札変更を避けるべきタイミングを把握するための1つの指標として「入札戦略のステータス」があります。
学習が最適に行われているアカウントほど、自動入札の精度が向上し、より効果的な広告運用が可能となります。そのため、わかりやすい確認方法である入札戦略のステータスから、学習に悪影響を与えるような調整を極力少なくなるような運用を心がけていきましょう。
参考:入札戦略のステータスについて
参考:キャンペーンの学習期間の長さと、それに影響を与える要因 – Google 広告 ヘルプ
「予算によるインプレッションシェア損失率」は10%以下を目指す
インプレッションシェア損失率とは、広告が表示できるはずだった全ての回数の中で実際には表示されなかった回数の割合のことです。
インプレッションシェア損失はランクによるものと予算によるものがあり、予算によるインプレッションシェア損失は、予算不足のために本来獲得できたはずの広告表示機会を逃してしまう状況を指します。
予算によるインプレッションシェア損失を起こしてしまうと機会損失を起こしてしまうのみならず、機械学習にも悪影響を与えてしまうため、2重のデメリットが生じてしまいます。
インプレッションシェア損失率を改善するためには、以下の対策方法があります。
- 予算を引き上げる
- 入札単価調整をする
- キーワードやターゲットを厳選する
- 広告の品質を改善する
これらの対策を講じて、予算によるインプレッションシェア損失10%以下を目指しましょう。
参考:インプレッション シェアについて – Google 広告 ヘルプ
参考:インプレッションシェアを向上させる – Google 広告 ヘルプ
入札単価調整は、入札方法によっては機能しないことを理解する
入札単価調整とは、特定セグメントに対して、手動で入札単価を増減させられる機能のことです。
入札単価調整を使用すると費用対効果の高いセグメントへの入札金額を引き上げ、費用対効果の悪いセグメントへは入札単価を抑えることができます。
入札単価を調整できる単位はセグメントによって異なりますが、-90%〜+900%と幅広いため、CTRを確認しながら調整することが大切です。
一方で自動入札の場合は、入札単価調整の設定はほとんど利用できません。下記一覧にあるように、有効になるのは「クリック数の最大化」のみで、その他で機能するのはデバイスの-100%のみです。
入札単価調整は自動入札を採用していても設定できてしまうため、よくある間違いとして運用調整の1つとして設定してしまうことがあります。
設定することによる直接的な弊害はないですが、改善アクションを行ったと認識することで適切な運用ができていない状況となる恐れがあるため、特に自動入札下において有効な入札単価調整を理解しておきましょう。
オーディエンスリストは「ターゲティング」と「モニタリング」を使い分ける
検索広告向けデータセグメント(旧RLSA)は、リスティング広告でリマーケティングリストを活用して再ターゲティングを行うための機能です。
RLSAでは、過去にサイトを訪問したことのあるユーザーや、類似行動をしたユーザーに対して広告配信を行えるため、CV獲得につながる可能性が比較的高いです。
ただし、この機能は「入札単価調整を適切に理解しよう」で説明した通り、自動入札が一般的となった現在ではRLSAで入札単価を調整できる範囲は少なくなっています。
ではこの機能自体はもはや意味がないのかというとそんなことはなく、現在も各媒体社から活用を推奨されている項目です。ではなぜ入札単価調整に利用できないのに活用を推奨されているのかというと、その理由は「学習効率の向上」と「ターゲットユーザーのモニタリング」の2点からです。
まず「学習効率向上」の観点ですが、RLSAの存在が機械学習の学習データとして機能するためです。
RLSAを利用して「このリストに含まれるユーザーはターゲットである」と指示することが機械学習の学習効率を改善させるため、プライパシーポリシーなど特別な理由で利用が出来ない以外は活用を推奨します。その際のリストは「CVユーザーの類似」など、できるだけCVに近いユーザーリストを設定することが理想です。
もう1点の「モニタリング」観点ですが、RLSAの設定ではオーディエンスを設定する際に「ターゲティング」もしくは「モニタリング」を設定できます。
ここでモニタリングを選択すると、該当リストが配信に直接利用されることはなく、「もしそのリストに対して配信をしていたら」という仮定で配信結果をリストに紐づけてくれます。
これらは新規ユーザー発掘の際のターゲット選定に役立つ情報になるため、設定できるリストはできるだけ全て「モニタリング」に設定しましょう。
参考:「ターゲティング」と「モニタリング」設定について – Google 広告 ヘルプ
ユーザー属性(年齢、地域、性別、配信時間)にあわせた配信は拡張の余地がないかを確認する
自社のビジネスモデルにあわせて、配信対象の年齢や地域、性別、配信時間といった属性を設定する広告主は多いと思います。特に配信対象となる地域や時間帯は制限をかけているケースはよく見られます。
例えば、営業所のない人材系企業は商圏範囲で地域を制限していたり、土日祝日に稼働していないBtoB企業では、土日祝日を除外していたりというかたちで利用するケースが多いです。
一方で、ユーザー特性や媒体データの観点からユーザー属性に即して設定を厳しくしすぎるのも機会損失につながっている可能性があります。
上記の例で言えば、BtoB企業の多くは土日祝が休みですが、顧客となるユーザーの情報収集は時間帯に縛られないため、必ずしも土日祝日の配信が非効率とは言い切れません。
潜在顧客が土日祝日に情報収集を行い、平日にコンバージョンに至るケースも考えられます。そのため、土日祝日の配信についても、広告以外のチャネルでのアクセス状況などを分析し、必要に応じて配信設定を拡張していくことも重要です。
ユーザー属性に合わせた配信を行う際には、以下の点に注意しましょう。
- 過去のコンバージョンデータに基づいてターゲティング設定を行う
- コンバージョンが発生する可能性が低い場合は除外する
- 獲得状況を定期的に分析し、必要に応じてターゲティング設定を調整する
これらの点を踏まえることで、ユーザー属性を押さえながらも、獲得機会を最大化できます。
3.キーワード設定
キーワードとマッチタイプの選び方
キーワードとマッチタイプの設定は広告掲載を最終決定する重要な要素です。
そのため、どういったキーワードへ広告掲載を狙うか、どこまでの拡張を期待するかによって適した設定が変わってきます。
詳細は別記事にて追って解説しようと思いますが、キーワード選定の手順は下記で進めることをおすすめします。
- ターゲットとなるユーザーを整理する
- ユーザーが検索する語句をメインキーワードにする
- 掛け合わせのキーワードを選定する
- 日予算や許容CPAをもとにマッチタイプを設定する
どこまでキーワードを追加すべきか
Google広告のマッチタイプは高度化しており、部分一致でも高い精度でユーザーの検索意図を推測できるようになってきました。
しかし、機械の判断に依存してしまうと効果的なキーワードが見逃される可能性もあります。そのため、効果の見込めるキーワードが発見できた場合は、キーワードを追加登録することでさらなる効果が期待できる場合もあります。
そのようなケースで、どこまでキーワードを追加するかは「キーワードとマッチタイプの選び方」で記載した内容だけではなく、「ユーザーの検索語句と広告文の一致性」と「工数対効果」の観点から考えることも必要です。
まず「ユーザーの検索語句と広告文の一致性」については、ユーザーが調べている語句と広告文の内容を揃えることで、ユーザーの検索意図に合った広告を表示できます。
そうしてユーザーの検索意図と合致した広告文を用意することで、広告への関心が高まり、クリック率やコンバージョン率の向上が期待できます。(検索語句と広告文を合致させる方法は後述する広告クリエイティブの章で説明していますので、ご確認くださいませ。)
次に「工数対効果」の観点ですが、キーワード追加はユーザーの検索語句と広告文を一致させる目的で行うことが多いですが、徹底しすぎると工数対効果が薄れる可能性があります。
また、昨今の運用型広告ではインテントマッチ(部分一致)が主流となってきており、必ずしも運用者が手動でキーワード追加を行うことが正解とは言えない状況になってきています。
詳しくは以下の記事で解説していますが、キーワード追加を行う意義があるのは①インテントマッチ(部分一致)で反応しない検索語句に広告表示したい場合や②上述のユーザーの検索語句と広告文の一致性を高める目的で行うケースがほとんどですので、手動であらゆるキーワードを追加するのは工数対効果が薄れる場合もあるのでおすすめできません。
参考:広告カスタマイザについて – Google 広告 ヘルプ
参考:広告文のキーワードの挿入機能について – Google 広告 ヘルプ
除外キーワードのマッチタイプの差を理解する
除外キーワードにもキーワード追加時と同様に完全一致、フレーズ一致、インテントマッチ(部分一致)の3つのマッチタイプがあります。
ただしインテントマッチ(部分一致)については、キーワード追加時と除外時では拡張範囲が異なるため注意が必要です。
除外時の部分一致は類似拡張がされないので、類義語や表記揺れなどはそれぞれを除外キーワードとして追加しなければなりません。
除外キーワードは、類似パターンやその他のパターンと一致しません。
たとえば、部分一致の除外キーワードの「花束」を除外した場合、ユーザーが「赤い花束」を検索しても広告は掲載されませんが、「赤い花」を検索すると広告は掲載対象となります。
参考:除外キーワードについて – Google 広告 ヘルプ
除外キーワードが想定通りに行われているかを確認するには、意図を持ってアカウントを確認しないと気づきにくいものです。
また、除外キーワード自体はCPA改善には寄与するものの直接的に広告主のビジネスにつながるものではないため、可能な限り少ない工数で対応したい項目です。
そのため、マッチタイプを正しく理解し、必要最低限の除外キーワード設定で除外を果たしていくのが理想的です。具体的な設定方法は下記に詳しくまとまっているため、除外キーワードの設定に悩まれている方はぜひご確認ください。
4.広告クリエイティブについて
広告カスタマイザや挿入機能を利用して、ユーザーの検索ワードや地域に応じた広告文を作成する
リスティング広告では、「ユーザーの検索語句」と「広告文の見出し」が合致していることが重要ですが、一方で検索語句の数だけ広告文を作成することは現実的に難しいです。
そういった課題に対処するための機能としてユーザーの検索語句や地域に応じた広告文を自動的に作成する機能があります。それが「キーワード挿入機能」と「広告カスタマイザ機能」です。
キーワード挿入機能は、ユーザーの検索語句に反応したキーワードを自動で広告文に挿入する機能で、広告カスタマイザはユーザーの検索語句や地域、時間などに合わせて見出しや広告文を自動で変化させる機能です。
キーワード挿入機能と異なり、キーワードそのものを表示するのではなく、指定した文字列を表示できます。時間や地域に合わせて広告を自動で調整できるため、タイムセールや地域限定のセールの展開にも活用できます。
これらの機能を活用しユーザーの検索キーワードに合わせた広告文を作成することで、広告の視認性が上がり、クリック率やコンバージョン率の向上が見込めます。どちらから始めていいのかわからない場合は、まずシンプルな機能であるキーワード挿入機能から始めるのが良いでしょう。
参考:広告カスタマイザについて – Google 広告 ヘルプ
参考:広告文のキーワードの挿入機能について – Google 広告 ヘルプ
「広告の有効性」で推奨される要素を満たし、「平均的」以上の有効性を目指す
広告の有効性は「未完了」「低い」「平均的」「高い」「非常に高い」の5段階で評価されます。リスティング広告を80点レベルで運用するためには、「平均的」以上を目指しましょう。
広告の有効性を改善するには見出しや広告文の追加が必要です。バリエーションが豊富になることにより、より多くのユーザーに広告を表示できる可能性が高くなります。さらに検索キーワードに関連の高い広告が表示できることで、クリック率が改善し、広告ランクや品質スコアの向上も期待できます。
広告の有効性は、運用中のアカウントの管理画面内にある「広告」ページで確認できます。評価が「低い」の場合はそもそも初期設定されていない可能性もあるため、まずは初期設定を完了しましょう。
各広告の編集画面には広告の有効性のアドバイスが表示されており、チェックマークがついていない項目が改善すべき項目です。以下のチェック項目を満たすように、運用中の広告を改善しましょう。
- 見出しの数を13個以上にする
- キーワード挿入機能でキーワードを追加する
- キーワード以外の独自の訴求を入れる
- 説明文を4個登録する
広告表示オプションはできるかぎり全て設定する
リスティング広告で成果を最大化するには、広告文だけでなく、広告表示オプションを活用することも重要です。
広告表示オプションを設定することで広告の専有面積の増加や情報の多角化に繋がり、ユーザーの注目を集めることができるので、結果的にクリック率やコンバージョン率、広告ランクの向上が見込めます。
掲載することによるデメリットも基本的にないため、ビジネスモデルに即している広告表示オプションはもれなく設定しておくことを推奨します。
下記が広告表示オプションの一覧ですが、「主な対象」が「全て」となっている広告表示オプションは漏れなく設定できている状態が理想的です。
広告表示オプション(アセット) | 機能 | 詳細 | 主な対象ビジネス |
---|---|---|---|
住所アセット | 広告に住所を表示 | 地図へのリンクや営業時間なども表示できる | エリアが限定されたビジネス |
サイトリンクアセット | 広告の下に同じドメインのリンクを表示 | 複数の商品・サービスを取り扱う場合に効果的 常に最新の情報を表示できる | 全て |
コールアウトアセット | 広告に短い追加情報を表示 | USPやキャンペーン情報などを訴求できる 広告の訴求内容を常に最新の状態に保てる | 全て |
構造化スニペットアセット | 商品やサービスの詳細情報を表示 | サービスや設備、コースなどの詳細情報を表示できる | 商品・サービス販売 |
電話番号アセット | 広告に電話番号を表示 | 電話番号をタップで電話発信できる | 電話での問い合わせを重視するビジネス |
価格アセット | 広告に商品・サービスの価格を表示 | 価格訴求に効果的 | 価格が固定のビジネス |
プロモーションアセット | 広告に割引クーポンやセール情報などを表示 | 期間限定の割引情報などを訴求できる | キャンペーンを実施するビジネス |
画像アセット | 広告に画像を表示 | 視覚的に訴求し、クリック率向上に貢献 | 全て |
リードフォームアセット | 広告内にフォームを表示し、ユーザー情報を取得 | 電話やメールでの問い合わせよりもスムーズに情報収集できる | BtoBビジネス |
アプリアセット | アプリのリンクを表示 | アプリのダウンロードを促進できる | アプリ運営サービス |
一方、広告表示オプションには自動生成アセットという機能があり、これらは場合によっては運用者が意図しない表示のされ方になる可能性もあるため、実際に配信面での表示をこまめに確認するなどして意図した配信になっているかチェックするようにしましょう。
5.その他の設定項目
タグが埋まっているか
リスティング広告におけるタグとは、広告の効果を測定したり、ツールを活用したりするためにWebサイトに埋め込むソースコードのことです。配信するWebサイトに最適なタグを埋めることで、Webサイトの訪問者の動きに関する情報が収集されます。
Webサイトの各ページそれぞれの役割に値するタグを埋めることがベストですが、リソースが少ない場合でも全てのページへのタグ設置と、CVページへのCVタグ設置は必ずしましょう。
タグ設置の詳細な方法は以下の記事をご覧ください。
なお、タグを設置する方法は
①直接サイトのHTMLコードに埋設する
②Googleタグマネージャー(GTM)経由で埋設する
の2通りがありますが、前者は誤って別のHTMLタグを編集してしまうリスクや、管理が複雑になる場合もあるため、基本的にはGTM経由でタグ設置をするのがおすすめです。
CVユーザーを除外しているか
ビジネスモデルにもよりますが、一度CVしたユーザーは広告以外の方法でも接触が可能なため、広告配信の対象から除外するケースも多いです。広告不要なユーザーに広告を非表示にすることで、コンバージョンしていないユーザーに広告費用を使用し、より広告効果を高めることができます。
一方、ECなどリピーターを増やす目的で広告配信をしている場合などは、必ずしもCVユーザーを除外すべきではないケースも考えられますので慎重に判断しましょう。
最適化スコアは80%以上を保つ
最適化スコアとは、Google広告アカウントの設定がどれくらい最適化されているかを示す指標です。最適化スコアは0〜100%で表示され、100%であれば最大限広告の効果を発揮できることを意味しています。
最適化スコアが80%以上となっていることが望ましく、スコアが低い=改善見込みのあるアクションが残されている可能性があります。もちろん運用方針に基づいて意図的に改善案を実施していなかったり、そもそも効果があまりなかったりする場合もあるため、あくまでも80%は目安として考えてください。
Googleによる最適化案の提案は、アカウントの問題にいち早く気付けることが大きなメリットで、 適用も手軽です。しかし、最適化案を全て適用しても必ず成果改善につながるわけではないため、提案された最適化案を全て適用するのではなく、内容を精査して選択することが大切です。
参考:最適化スコアについて – Google 広告 ヘルプ
参考:最適化案について – Google 広告 ヘルプ
参考:最適化案の種類 – Google 広告 ヘルプ
まとめ
リスティング広告を80点レベルで運用するには、Google広告の基礎的な知識を十分に理解した上で適切な設定を行う必要があります。
自社アカウントに最適化余地が大きいと感じている広告担当者の方は、ぜひこの記事でご紹介している運用ベストプラクティスを試してみてください。
なお、運用ベストプラクティスを実行したうえでさらなるリスティング広告の最適化を進めていきたい場合は、自社の業種や予算、ターゲットなどの様々な変数を考慮して地道に個別改善をおこなっていく必要があります。
そのような80点以上の運用レベルを目指すうえで、自社だけでは満足するパフォーマンスが期待できそうにない、社内リソースが不足しており工数対効果が合わない場合など、運用型広告に関するお悩みごとがありましたら弊社にご相談ください。
与件が固まっていないカジュアルなご相談でも構いませんので、ご興味のある方は記事下のお問い合わせボタンよりご連絡くださいませ。
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クライアントの「ビジネス目標達成」に伴走する
マーケティングエージェンシーです。
「代理店の担当者が自社の業界・戦略に対する理解が不足しており、芯を食った提案が出てこない」
「新規の広告出稿に関する提案が中心で、最終的なビジネスゴールに紐づく本質的な提案がもらえない」
「広告アカウントが開示されないため、情報が不透明で自社にノウハウやナレッジが蓄積しない」
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オーリーズの広告運用支援では、①運用者の担当社数の上限を4社までに制限②担当者のKPIは出稿金額ではなくNPS(推奨意向)③アカウントは広告主が保有することを推奨する仕組みにより、目先のコンバージョン増加にとどまらず、深い事業理解を基にしたマーケティング戦略の立案や実行支援が可能です。
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