運用型広告のABテスト実践ガイド!検証設計の考え方から設定方法まで網羅的に解説

運用型広告のABテスト実践ガイド!検証設計の考え方から設定方法まで網羅的に解説

ABテストは、2つの異なるバージョンを比較検証することで、より効果的なマーケティング施策を見出すための検証手法です。ABテストを活用すれば、クリック率やコンバージョン率などの客観的データに基づいて判断できるため、施策の失敗リスクを減らし、効率的な広告運用につなげることが出来ます。

本記事では、運用型広告におけるABテストの基礎から実践的な活用方法まで、詳しく解説していきます。

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ABテストとは

ABテストは、WEBマーケティングの分野で施策の効果を検証する手法の一つです。

広告のバナー画像やWEBサイトのCTAボタンなどの要素について、異なるバージョンをいくつか用意して運用し、クリック率やコンバージョン率などの成果指標がどのバージョンで最も高くなるかを比較・検証します。

通常は「パターンA」と「パターンB」の2つのバージョンを比較するので「ABテスト」と呼ばれますが、3つ以上のバージョンで検証することもあります。

WEB広告の領域では、主にバナーやランディングページ(LP)のパフォーマンスを検証するために活用することが多いです。

ABテストを実施するメリット

上述の通り、ABテストを活用すると、マーケティング施策の効果を定量的に評価することが出来ます。

この章では、運用型広告でABテストを行うメリットについて解説します。

1.客観的なデータに基づいて打ち手の判断ができる

複数の広告を配信する場合、どちらがより成果に繋がりやすいか、人間の直観や経験に頼って判断するのは危険です。

制作段階では「Aの広告のほうが成果に繋がりやすそうだな」と感じていても、実際に広告配信をしてみると「Bの広告のほうが成果に繋がりやすい」となるケースは多く見受けられます。

ABテストを実施することで、広告の配信量や期間など、諸々の比較条件をそろえた上でどちらの広告のほうが成果に繋がったのか客観的に確認することが出来ます。

定量的な数字を根拠に広告の良し悪しを判断できるため、人によって解釈が分かれることも少なく、配信実績をもとにして、より成果に繋がりやすい打ち手の考案にもつなげることが出来ます。

2.失敗リスクを減らすことができる

新しい広告キャンペーンや広告を配信する際、効果が未知数のまま全面展開するケースはよく見受けられますが、ABテストを活用することで、どちらのパターンのほうがより効果につながりやすいか検証することが出来ます。

まずはABテストで小規模に試し、成功が見込めるバージョンを選ぶことで、効果の低い施策に予算投下するリスクを減少させることが出来ます。

3.効果的な広告の情報を蓄積でき、広告の精度向上につながる

ABテストを繰り返すことで、どの広告パターンが効果的かが見えてきます。こうした知識を蓄積すれば、より高い成果を上げる広告を効率よく制作できるようになります。

また、たとえば広告バナーの検証によって分かった情報は、ランディングページやWEBサイトの訴求の参考にも出来るため、ユーザーに受け入れられやすい訴求やデザインを発見したい場合はABテストが有効と言えます。

運用型広告におけるABテストの活用場面

運用型広告の領域では、ABテストが様々な場面で活用されています。

たとえば、ターゲティングや入札戦略などのアカウント設定や、広告コピーやバナー画像などのクリエイティブなど、広告設定の良し悪しをはかるための判断材料を得るために実施されることが多いです。

また、広告の管理画面で設定できる要素のテストだけではなく、広告のランディングページ(LP)の最適化「LPO(Landing Page Optimization)」の文脈や、フォーム項目の最適化「EFO(Entry Form Optimization)」の文脈でABテストを実施することも多いです。

いずれの活用場面でも、どういう要素がより成果に繋がりやすいのか、データをもとに判断したい場合に活用されています。

運用型広告におけるABテストの全体像

一般的に、運用型広告でABテストを行う場合、オリジナルパターン(元のバージョン)テストパターン(新しく検証するバージョン)の2種類を用意して二者比較で行うことがほとんどです。

テストの方法には「逐次テスト」「並行テスト」の2種類あり、「逐次テスト」はオリジナルパターンとテストパターンを順番に配信して成果を前後比較します。

一方、「並行テスト」ではオリジナルパターンとテストパターンを同時期に配信して検証します。

逐次テストは広告の配信期間が異なるため、季節性など外部要因による数値の差異が出やすい方法です。

以下のように統計手法を用いて結果の妥当性を判断する方法もありますが、手間がかかることも多いため、一般的に運用型広告では「並行テスト」の形式でABテストが行われることが多いです。

また、基本的なABテストの流れとしては、以下の4ステップをたどることが多いです。後ほど詳細は説明しますが、ABテストは事前の仮説構築と検証設計の良し悪しによって成否が分かれると言っても過言ではありません。

どんな目的でどういう仮説をもとに何を検証するのか、事前準備の段階でしっかり議論した上で、関係者間で合意を取っておくようにしましょう。

運用型広告でABテストを行う際の検証設計の考え方

ここからは、運用型広告でABテストを実施する際に、押さえておくべき検証設計の考え方についてお伝えしていきます。

どれもABテストの妥当性を高めるうえで基本となる考え方ですので、ABテストを実施する際は以下の4つのポイントを押さえるようにしましょう。

仮説ありきで検証する

ABテストを実施してしっかりと成果を上げるためには、事前の仮説構築が重要です。

たとえば、バナー画像の効果を検証する場合、主な検証要素は①テキスト②デザイン③サイズ④配置⑤配色…etcなど数多くあるため、それらを一度に検証するのは不可能です。

事前の仮説が無いと、これら数多くの要素を逐一テストしていくことになり、バナーの効果を最大化するまでに膨大な労力と時間がかかってしまいます。

そのため事前に「○○が課題と考えられるので今回は□□の要素を検証しよう」のように、ボトルネックとなっている部分に当たりをつけて、検証の優先順位づけを行うことが重要です。

検証要素を絞る

ABテストを行う際は、仮説構築とあわせて、検証する要素を絞ることも重要です。

さきほどのバナー画像の例のように、検証要素が多いものを一度に検証しようとすると、配信結果に対してどの要素の変更が影響を及ぼしたのか特定することが難しくなります。

多変量解析などの手法を用いて一度に3パターン以上のテストを行う場合も無くは無いですが、統計知識の理解が必要なことや手間もかかる手法であるため、ABテストに慣れていない方は「一度に検証する要素は一つに絞ること」を推奨します。

データ量を確保する

ABテストは数値をもとにして変更の良し悪しを評価する性質上、一定以上のデータ量を確保する必要があります。

必ずしも統計的有意性に縛られる必要はありませんが、インプレッションやクリック数など、データ量があまりにも少ない状態だと、どちらのパターンが良いのか検証できず、妥当な判断に繋がりません。

運用型広告を配信している場合は誰でも手軽に活用しやすいのがABテストの特徴ではありますが、データ量が少ない少額予算のアカウントや、イベント集客などの短期間の広告配信などの場合は、定量データをもとに正しく判断することが難しいため、そもそもABテストを行う意義が薄い場合もあります。

配信結果に統計的有意性があるか簡易的に判断したい場合は、以下のような無料の信頼度判定ツールを活用するのがおすすめです。

勝ち負けの基準を明確にしておく

ABテストを行う場合は、事前に「勝ち負けの基準」を明確にしておきましょう。「勝ち負けの基準」とは、どちらのパターンがより成果に繋がるか判断するために参考にする評価指標のことです。

たとえば運用型広告では、クリック率やコンバージョン率を勝ち負けの基準に採用することが多いですが、何の数値で判断するかは目的によって変わってきます。

また、勝ち負けについては単一の指標のみで判断するのではなく、様々な指標を見て複合的に判断することが大事です。

💡たとえば、バナーの検証でテストパターンのほうがクリック率が優位に高かったとしても、コンバージョン率が低くCPAが悪化している場合などは、コンバージョンに繋がらない質の低いユーザーの流入が増えていると考えられるため、クリック率のみで勝ち負けを判断するのは危険です。

以下はあくまで一例ですが、運用型広告で要素のABテストを行う際の、判断基準の例を一覧にしています。

ABテストの検証設計の際の参考にご覧ください。

検証要素メイン指標サブ指標
広告文CTR(クリック率)CVR/CPA/CV…etc
バナーCTR(クリック率)CVR/CPA/CV…etc
LPCVR(コンバージョン率)離脱率/スクロール率/CV…etc
入札戦略などの配信設定CPA(コンバージョン単価)
CV(コンバージョン数)
CPC/CTR/CVR…etc

各広告媒体でABテストを実施する手順

「運用型広告のABテストの全体像」でお伝えした通り、ABテストは仮説構築→テストパターンの作成→テスト設計→検証という流れで進めていくことが多いです。

Google広告やYahoo!広告など、主要な広告媒体ではABテストができる機能を基本仕様として備えていることが多いので、運用型広告を配信している場合はぜひ以下の手順を参考に活用してみてください。

この記事では、多くの広告主が配信している①Google広告②Yahoo!広告③Microsoft広告④Meta広告の4媒体で、ABテストを行う方法についてまとめています。

1.Google広告

Google広告では、テスト用のキャンペーンを複製してABテストを実施できる「テスト(旧:下書きとテスト)」という機能が用意されています。

テスト機能では、配信中の広告キャンペーンを複製し、オリジナルキャンペーンとテストキャンペーン間で予算を均等に分割、指定した期間内でABテストを行うことが出来ます。

テストキャンペーンのほうで配信成果が良かった場合には、テストキャンペーンの内容をそのままオリジナルキャンペーンに適用することも可能です。(詳しい機能の仕様や、管理画面での設定方法は添付のGoogle広告ヘルプページをご覧ください)

参考:[テスト] ページ(旧称: 下書きとテスト)について(Google広告ヘルプ)

また、検索キャンペーンとディスプレイキャンペーンでは、入札戦略やマッチタイプ、オーディエンスなどをABテストできる「カスタムテスト」という機能も利用できます。

カスタムテストの活用方法については、以下の記事をご覧ください。

2.Yahoo!広告

Google広告と同様に、Yahoo!広告でもABテスト機能が標準実装されています。

広告管理ツールの右上にある「ツール」をクリックして表示された中にある「A/Bテスト」を選択し、「A/Bテストを作成」ボタンを押すと、テスト作成画面が表示されます。

基本的な機能の仕様はGoogle広告と大きく変わりないですが、詳しい機能の活用方法や設定手順を知りたい方はYahoo!広告のヘルプページをご覧ください。

3.Microsoft広告

Microsoft広告でも、ABテスト機能が用意されています。

管理画面でABテストを行いたい「キャンペーン」を選択して右下の「実験」ボタンを押して出た画面で「実験」を選択すると、「テストを作成する」画面が表示され、キャンペーンの複製と変更ができるようになります。

💡※Microsoft広告の「実験」機能は検索キャンペーンのみ提供されており、ショッピングキャンペーンでは使用できないため注意しましょう。

Microsoft広告でABテスト機能を活用する手順については以下の記事でまとめていますので、あわせてご覧ください。

参考:テストを使って可能性を発見する(Microsoft広告ヘルプ)

4.Meta広告

Meta広告の管理画面(広告マネージャー)にもABテスト機能があります。

Meta広告でABテストの設定を行う場合は、広告マネージャーのすべてのツール>テスト>A/Bテストから設定する方法と、テストツールから設定する方法の2通りがあります。

いずれの方法で設定した場合でも、オリジナルパターンとテストパターンでオーディエンスを均等に分割し、同じユーザーが同じパターンの広告を閲覧することが無いように広告表示を調整してくれるため、オリジナルパターンとテストパターンのどちらがパフォーマンスが高いのか判断したい場合に活用を推奨しています。

詳しい機能の仕様や設定方法についてはMeta広告のヘルプページをご覧ください。

参考:A/Bテストについて(Meta広告ヘルプ)

広告の管理画面で設定ができない場合は、専用のABテストツールを利用する

上記でご紹介した主要な広告媒体以外で広告配信を行う際は、管理画面にABテスト機能が実装されていないこともあるため注意が必要です。

また、たとえばLPやフォームのABテストを行う場合は、VWOなど第三者が提供している専用のABテストツールを利用する場合もあります。

以前はGoogleオプティマイズという無料のテストツールが利用出来たのですが、2023年9月30日以降、ツールの提供が終了されてしまったため、現状は有料のツールを導入してABテストを行う方法が一般的です。

無料で利用できるABテストツールも全く無いわけではないのですが、無料版では取得できるデータ量に制限がかけられていたりするなど、ABテストの結果を正しく判断することが難しい場合もあります。そのため、予算を捻出できるのであれば有料のテストツールを導入したほうが良いです。(契約するプランにもよりますが、通常は月数千円~数万円で利用できるツールが多いです)

まとめ

  • ABテストは、客観的なデータに基づいて施策効果を検証し、より良い結果を生み出すための有効な手段
  • ABテストを行う際は、事前に仮説を立て、検証する要素を絞り込み、十分なデータ量を確保することが重要
  • 主要な広告媒体ではABテスト機能が標準実装されているが、ABテスト機能が実装されていない媒体などは専用ツールを利用してABテストを行う場合もある

専用ツールを使えず、自社だけで仮説設定から分析までを行うことが難しいと考えられる場合は、広告代理店の担当者に相談するのも有効です。

ABテストの目的設定、仮説検証を誤ると貴重な費用・工数が無駄になってしまうケースも多いため、広告の配信予算が大きく、自社にABテストのノウハウが少ない場合などは、専門家に相談しましょう。

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この記事を書いた人

株式会社オーリーズ

アドオペレーションズ・ストラテジスト

頼富 穰

新卒でパーソルキャリア株式会社に入社。社内ベンチャーとして立ち上がった顧問紹介サービスのコンサルタントに従事。 IT・メディア関連企業の経営層に対して顧問活用の提案を行う中で、データリテラシーを高め、経営・事業・組織を根幹から変えていくことの重要性を認識。 枠に縛られず顧客の事業成長に伴走する姿勢、アジャイルに物事を推進していくオーリーズのスタイルに共感し入社を決意。

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