- ナレッジ・ノウハウ
- 深堀 智広
支援会社に転職して、「言葉と資料へのこだわり」を叩きこまれた話
数年前、事業会社からオーリーズに転職しました。前職では一定の評価も得ていたので、自分の能力に多少の自信を持っていました。
ただ転職後に副社長に初めて資料を見せたとき、返ってきたのはそれまで意識したこともなかったフィードバックばかり。
この環境で求められる基準は、想像以上にシビアでした。
目次
「プロとしての思考の甘さ」を痛感した
転職後、通信系のクライアントの広告支援を担当することになり、副社長と一緒に働くことになりました。副社長は経営者でありながら、支援会社のコンサルタントとして15年以上働いてきた人です。
はじめて自分が作成した資料を副社長に見てもらった時のこと。返ってきたのは、私の「プロとしての思考の甘さ」を見通すような指摘ばかりでした。
「いきなり詳細に入ると、相手は迷子になるよ。まず全体を示してから、詳細にダイブインしていくように話をして」
「その1ページで、相手にどういう状態になってほしいの? これは何のための、誰のためのスライドなの?」
「それは事実? それともあなたの解釈? そこを混ぜて話すと相手はストレスだよ」
「最適化します。精査します。そういう思考停止ワードを使わない。いつまでに、誰が、具体的に何をするの?」
「事実は分かった。そのうえでスタンスを取らないと。ぼくらのWILLは無いの?」
正直、面食らいました。転職前は社内向けの報告が中心だったので、ここまで「言葉の定義」や「伝える目的」を意識する機会はそう多くありませんでした。
誰にでも伝わる言葉で、誤解なく定義する。その当たり前の基準が、私には欠けていた。この環境で求められる水準は、自分が想像していたよりもずっとシビアでした。
フィードバックと向き合い続けた半年間
その後も、毎日フィードバックが続きました。
時間をかけて作った提案の原案も、「読み手の負荷が高い」「顧客の期待を超えていない」と突き返される。正直、何度も投げ出したくなりました。
でも、へこたれてはいられない。次に同じような注意を受けないように、副社長から指摘されることを毎日スプレッドシートに書き出していきました。
チャットでもらったフィードバックはコピペして、口頭で言われたフィードバックも全部文字起こしして書き出す。それを毎日仕事が始まる前に全部読み返す。
また、運用型広告の知識だけでなく、支援会社としての立ち振る舞い、分かりやすい説明の仕方、言葉遣い、クライアントワーク、対人関係スキルに関連する書籍を読み漁りました。
そんな日々を半年ほど続けた頃、ようやく変化を感じ始めました。副社長のサポートなしでも、クライアントとのミーティングを乗り切れるようになったんです。
なぜ、ここまで「言葉」と「資料」にこだわるのか
以前の私は、資料作りや言葉選びは、仕事の中身とは直接関係のない「体裁の話」だと思っていました。
でも、支援会社ではそうではなかった。支援会社にとって、アウトプットの質は、そのまま信用の質につながります。事業会社と支援会社では「信頼の作られ方」が違うからです。
前職の事業会社では、同じ会社の仲間として日々の仕事ぶりを見てもらえる機会がありました。長い時間をかけて信頼を積み上げていけるし、言葉にしなくても伝わる文脈があった。
そうした環境では、コミュニケーションの「形式」よりも「成果」や「姿勢」で評価されることも多いのかもしれません。
しかし、支援会社はクライアントにとってあくまで「外部」の人間。大きな予算をお預かりする立場でありながら、私たちの普段の思考やプロセスを、クライアントが直接見ることはできません。
もちろん、管理画面を見れば、広告運用の「成果」は分かります。
しかし、クライアントと合意形成をするためには、その数字が「なぜ出たのか」、そして「次はどうするのか」など、プロセスや意図を正しく伝え、理解してもらう必要があります。
もし言葉の定義が曖昧だったり、説明の順序がわかりにくかったりすれば、クライアントはどう思うか。「この人は思考が浅い人だ」「仕事を大切にしていない人だ」と思われてしまうかもしれません。
普段の思考プロセスが見えにくい外部の人間だからこそ、私たちが発する言葉や資料の一つひとつが、「この人なら安心して任せられる」という信頼を積み上げるための、重要なバロメーターになるんです。
副社長が厳しく指摘していたのは、単に「綺麗な資料を作れ」ということではありませんでした。
「曖昧な言葉を使わない」「論理を飛躍させない」それは単なるマナーではなく、クライアントに対する「誠実さ」の証明であり、プロとして持つべき姿勢の話だったんだと、今なら分かります。
支援会社で身についた「信頼と成果をつくる心得」
この経験を通じて、その後の支援にも活きるクライアントワーク力を身につけることができたと感じています。具体的には、以下のような「信頼と成果をつくるための心得」です。
「業者」ではなく「パートナー」である
同じ課題に並列の立場で向かって、時には広告運用という領域を超えて課題解決に取り組むパートナーを目指すこと。
トークストレート
質問をするときも、質問に答えるときも、率直に、簡潔に、端的に話すこと。丁寧よりも真摯であること。
スタンスを取る
正解は誰にも分かりません。だからといって「決めるのはクライアントです」と逃げない。
自分たちがクライアントの立場だったらどうするか、どうすべきだと思うか。その意志(WILL)を、当事者のつもりで示すこと。
結論から、全体から、単純に話す
自分の頭にある「全体像」は、相手には見えていない。いきなり各論から入ると、正しい意見も「思いつき」に聞こえてしまう。
だから、まず結論と全体像を示してから詳細に入る。そして、だらだらと複雑に話さず、シンプルに伝えること。
曖昧排除
「最適化する」「強化する」「精査する」。こうした曖昧な言葉は、その場を凌ぐための先送りであり、怠惰の現れ。
いつまでに、誰が、何を、どうするのか。具体化から逃げたくなる瞬間こそ、グッとこらえて粘ること。
副社長からの厳しい指摘は、私にとってビジネスパーソンとしての転機でした。そこから逃げてしまっていたら、今の自分はありません。
この経験を通じて学んだのは、支援会社にとって「言葉」と「資料」は、信頼を勝ち取るための最も重要な武器だということ。
この高いレベルの要求に応え続けることで、必ず成長につながる。そう実感しています。