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- 川村 菜奈
巧妙化するアドフラウドの実態を徹底解剖!アドフラウドの種類・仕組み・対策をまるっと解説
24年3月に発表された「2023年日本の広告費インターネット広告媒体費詳細分析」によると、日本のインターネット広告費は1996年の推定開始から堅調に伸長し、2023年時点では3兆3,330億円(前年比107.8%)と過去最高を更新しました。
インターネット広告は拡大を続ける一方でアドフラウドによる被害額も増え続け、Spider AFによる「2023年通年アドフラウド調査レポート」によると国内の運用型広告費のうち最大35.8%が被害にあっている可能性があることが判明しています。
これは被害の平均値から推計すると2023年国内のアドフラウド被害額は1,667億円を超えると予想されており、アドフラウドに対する対策の必要性は無視できないほど年々大きくなってきている状況です。
とはいえ、まだまだアドフラウドに対する認識も少なく、どのように対策を検討をしてよいかわからない方も多いかと思います。
そのため、本記事では「そもそもアドフラウドって何?」「アドフラウド対策ってなんで必要なの?」「アドフラウド対策が必要って言われても何をどう進めたらいいの?」という方に向けて、アドフラウドの概要を理解し検討を始めるきっかけになるよう、運用型広告向けの対策に特化してご紹介いたします
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目次 [非表示]
アドフラウドとは?
アドフラウドとはユーザーが実際には広告を見ていない、もしくはクリックしていないにも関わらず、不正な手法によって広告のインプレッションやクリック、コンバージョンを水増しし、広告報酬を搾取する「広告詐欺」のことです。
この詐欺行為は、BotやMFAサイト(※)、偽造サイトに広告を配信させてBotにアクセスさせるなどと、手法や手口は多岐にわたります。
代表的な手法としては「広告をBotが不正にクリックして水増し請求する」「不正にユーザーを集客した詐欺サイトを偽装して広告を出稿させる」などで年々手口は巧妙化しています。
※MFAサイトとは?
Made For Advertisingの略で、広告費を稼ぐ目的のために作られたサイトです。
2023年ごろから急増しており、他社コンテンツの無断転載や生成AIでコンテンツが量産されています。
一画面に複数の広告が掲載され一度の訪問で広告を大量にインプレッションさせることが特徴で、短スパンでページを遷移させ、場合によっては自動更新で広告表示数を増やしている手法も取られています。
<MFAサイトの問題点>
Spider AFによる調査レポートによると下記3つの問題点があげられます。
(1)MFAサイトのトラフィックの増加
X(旧Twitter)ではインプレッションを稼ぐ目的で運用されているアカウントが急増し、他社のコンテンツにリプライなどで相乗りし無断転載の画像や動画の投稿でインプレッションを稼ぐ、いわゆるインプレゾンビが大量発生し問題となっています。
このインプレゾンビはMFAサイトを運用しているケースが多く、拡散されたポストに対するリプライにて興味深いニュースのようなコンテンツをポストしユーザーをサイトに誘導することがわかってきています。
(2)不正コンバージョンの発生や、広告媒体の機械学習自体に影響を与えるケースがある
Botや手動によってMFAサイト経由でのコンバージョンを増加させることで、機械学習が「MFAサイトは非常に広告面として質が高い」と誤認し、広告配信がおこなわれてしまうケースがあります。
MFAサイト経由のコンバージョンのほとんどが不正コンバージョンであることも特徴です。
そのためコンバージョン数の正しい分析ができないだけでなく、広告媒体の機械学習自体に影響を与えるケースがあります。
(3)自ら運用型広告を出稿しMFAサイトに誘導し広告費を稼ぐサイトも存在
運用型広告でユーザーを流入させその金額以上に広告費を儲ける仕組みです。
例えば、50円でユーザーをMFAサイトに流入させて、100円の広告収入が得られればメディア側は50円儲かるため、広告を配信すればするほどMFAサイトが儲かる状態になっています。
また、広告経由で通常のユーザーが大量に流入する仕組みを作ることでGoogleなどの媒体社に低品質なサイトではないと判断させることで広告ランクへの影響も最小限にしていると考えられます。
これらの行為によって発生する主なリスクは「広告費が不必要に消費される(無駄になる)」ことと「正しく広告効果を分析することが難しくなる」という点です。
まず第一に、アドフラウドによって不必要な広告費の支払いが発生することで、本来広告を見てほしいユーザーに広告が届かず、投下した広告予算が無駄打ちになる可能性が考えられます。
また、広告運用の観点では、不正クリックによって本来ターゲットとしているユーザーの以外の反応が盛り込まれてしまうことで、正しいデータ分析ができないだけではなく、媒体の機械学習にも悪影響を与えることになり、広告配信の効率も悪化する可能性が考えられます。
そのため、大切な広告予算を守るためにも、アドフラウド対策は近年ますます重要になってきています。
アドフラウド対策の重要性
近年アドフラウドに関するニュースは様々なメディアで取り上げられていますが、なぜ今になってアドフラウドが話題になっているのでしょうか。
この章では、2024年現在アドフラウド対策の需要が高まっている背景と、日本国内のアドフラウド対策の実情について解説します。
アドフラウド対策の需要が高まっている背景
結論としては、2022年に登場したChatGPTを皮切りに、生成AIが悪用されインターネット広告を巡る詐欺行為が急速に広がったことが大きな要因です。
また、MFAサイトについては生成AIの登場だけではなく、2023年7月からX(旧Twitter)で開始されたインプレッション数に応じた収益化プログラムがスタートしたことも起因していると考えられています。
そのため、前述した通りインプレゾンビが大量発生しMFAサイトのトラフィックが増えた要因の一つとも言われています。
ひとえにインターネット広告と言っても大きく2タイプ存在しています。
テレビや新聞などと同じように広告主がメディアの特定の枠を購入する「予約型」と、Googleなど媒体側の自動配信システムによって掲載先サイトが決まる「運用型」タイプに分かれますが、特に問題が発生しているのは「運用型広告」です。
2024年3月に発表された「2023年日本の広告費インターネット広告媒体費詳細分析」によると運用型広告は今や国内のインターネット広告の内9割が占めるほど成長していますが、この市場に対して悪意を持った者たちによる生成AIを利用した詐欺行為が2023年頃から急速に拡大しています。
日経ビジネスによると、2020年頃はMFAサイトに広告が表示される割合は3~4%だったものの、2023年以降では20~30%の割合で表示されるなどと急上昇していると言われています。
また、冒頭に「国内の運用型広告費の内最大35.8%が被害にあっている」とお伝えしましたが、Spider AFによる調査レポートによると、アドフラウドの攻撃にあっている広告媒体はDSPやアドネットワーク中心の運用ではなく、GoogleやYahoo!などの大手媒体を中心として被害にあっているとのことです。
日本国内のアドフラウド対策の実情
世界市場と比べ、日本国内のアドフラウド対策の進捗は遅れていると言わざるを得ません。
国内のアドフラウド対策が遅れている最たる要因は「そもそも自社の広告がアドフラウド被害を受けていることに気づいていない人が多い」ことが考えられます。
日経ビジネスの記事でも「日本企業は食い物にされている自覚に乏しく、対策は後手に回っている」とも言われていますが、世界の広告出稿額の内22%がアドフラウドによる被害を受けたと言われてるのに対し、日本のアドフラウド対策は20カ国中最低レベルと言われています。
また、2023年3月の経済産業省が実施した広告主向けアンケートによると、アドフラウド対策システムを利用している国内企業の割合はわずか16%とのことです。
業界別でもアドフラウド率に違いがあるようで、Spider AFによる調査レポートによると、2023年度で最もアドフラウド率が高い上位3業界は下記とのことです。全体平均は4.9%ですが、業界ごとに平均値が異なります。
自身の業界が置かれている状況からも、アドフラウド対策の必要性の判断材料になるかと思いますので参考にしてみてください。
- 1位:エンタメ業界(14.3%)
- 2位:通信業界(7.9%)
- 3位:不動産業界(6.8%)
アドフラウドの種類
ここまででアドフラウド対策の必要性はご理解いただけたかと思いますが、アドフラウドと言っても実際にどのようなものがあるのか運用型広告に特化してご紹介します。
アドフラウドは悪質なBot等のプログラムを仕込んで無効なインプレッションやクリックを発生させる広告詐欺行為ですので、悪意を持ってトラフィックを発生させています。
近年さまざまな手法が登場しそれぞれの手口も巧妙化していますが、その中でも代表的な例を9つご紹介します。
- 隠し広告
ユーザーに見えない形で広告を掲載しインプレッションを稼ぐ方法です。
実際に1pixel×1pixelなどの目に見えないサイズの広告を掲載するなど手法は様々です。 - なりすましドメイン
広告がクリックされた際に本来遷移するはずのWEBサイトになりすまして不正なページに誘導する方法です。
ドメインが似ているサイトに広告が掲載されるため、不正クリックのみ集まりCVが得られないだけではなく、なりすましサイト上に広告配信していると企業の信頼度が低下する恐れがあります。 - 自動リロード
広告表示をユーザーの意図とは関係なく、サイトの広告表示を何度も自動更新することでインプレッションを稼ぐ方法です。
通常はユーザーがサイトを再読込した際に広告が表示されますが、不正な手口でサイト再読み込みさせたり、ユーザーがページをスクロールするたびに広告を更新する手口も増えてきています。同一IP・ブラウザから一定期間に多くの重複クリックが発生していることが判別するきっかけになります。 - ファーム
システム化されたBotやオペレーターが大量のスマートフォンを使用して人海戦術的に広告のインプレッションやクリック、コンバージョンを繰り返しおこなう手法です。
特にアプリで多いとされています。 - 不正な広告挿入
サイトに掲載されている広告を無断で差し替え・挿入する広告詐欺です。
ウエブ広告が知らない間に差し替えられており、これによりターゲットではないユーザーに広告が配信されてしまいます。本来の広告の上に重ねて不正な広告を表示したり、広告枠以外の領域に表示したりと様々な手口が存在します。 - ブラウザの自動操作
Botなどのプログラムにより操作したブラウザがインプレッションや不正クリックを発生させる手法です。
インプレッションの大量発生や不正クリックを一定期間発生されるなど挙動は多岐にわたります。場合によってはフリーソフトダウンロード時に端末がマルウェアに感染することもあり、知らないうちにブラウザの自動操作詐欺に加担していることもあります。 - データセンタートラフィック
データセンターなどの広告を閲覧する環境ではない場所、利用していないIPアドレスから不正に広告へアクセスする手法です。
ただし、データセンターからのトラフィックが全て不正とは限らないため判別には注意が必要です。 - クリックフローディング
架空のクリックによって成果を水増しする手法です。
実際にはクリックされていないものの、クリックが発生したと偽装する詐欺行為でクリックスパムとも言われています。 - インストールハイジャック
マルウェアを使った広告詐欺で、アプリのインストール時にユーザーの端末を感染させ、不正なクリックログを送信させています。
そのため、実際には対象の広告以外をきっかけにアプリをインストールしたものの、「広告をクリックしてインストールした」ことにして成果を搾取する仕組みです。
アドフラウドの発生による広告側のデメリット
広告運用の観点では、アドフラウドが増加すると無駄なコストの発生だけではなく広告の成果悪化の要因にも繋がりかねません。
そのため、運用担当者目線でみたアドフラウドによるデメリットをご紹介します。
1.無駄な広告費、クリックの発生によるCPA悪化
運用型広告ではクリック課金方式、インプレッション課金方式どちらかの手法によって広告費が発生していますが、アドフラウドによって無駄なクリックやインプレッションが増えることで配信費用も増加します。
しかし、コンバージョンには繋がらないためアドフラウドが大量発生している場合は無駄に配信費が増加するだけでなく、無駄クリックによってCVRも低下し、結果としてCPA悪化の要因に繋がる可能性があります。
2.機械学習やデータ分析への悪影響
アドフラウドによる被害がノイズとなり、広告アカウントの機械学習やデータ分析へ悪影響を及ぼします。
自動入札では広告配信結果を用いて媒体にて機械学習がおこなわれますが、無駄なクリックやインプレッションが多く含まれていると正しい情報を元にした機械学習の妨げになり、本来狙いたいユーザーへの配信がされにくい状況になります。
また、データ分析の根拠となる数字も実態に基づいていない数値となるため、正確な状況判断が取りづらく本当に必要な打ち手を考えづらくなります。
特にアドフラウドの発生が多いとされている業界では広告成果の要因にアドフラウドによる影響が関係している可能性も考えられます。
そのため、可能であれば2023年前後でのクリック数とインプレッション数などの指標の変化をみることも一つの手です。そのうえで、元々アカウントや商材の特有、市場の変化では考えにくい変化が見られる場合はアドフラウドによる影響を受けている可能性が考えられますのでアドフラウド対策も視野に検討してみてください。
アドフラウド対策ツールについて
アドフラウド対策といっても実際にどのようにして防ぐことができるのでしょうか?
対策として最も有効な施策はアドフラウド対策ツールを導入することです。
Google広告など主要な広告媒体でも不正クリックを除外する仕組みは設けられていますが、前述の通りアドフラウドの種類は年々多種多様になっており、専門ツールを活用しないと、アドフラウドを防ぎきることが難しい状況になってきています。
特にアドフラウドが多く発生している業界の場合は、アドフラウド対策ツールの導入を検討することをおすすめします。
アドフラウド対策ツールの仕組み
基本的には下記の図のように、WEBサイトに流入してきた不正ユーザーを検知し除外リストに蓄積します。
そのリストを各媒体ごとに除外オーディエンス設定をおこなうことで、不正ユーザーの再訪問を防止しています。
ツールを提供している各社によって除外可能範囲や機能、不正ユーザーの検出精度も異なりますので、詳細が知りたい方はツール提供会社に問い合わせすることをおすすめします。
アドフラウドツールの導入方法
実装までの工程も各社で異なりますが、代表的な作業は下記の通りです。
所要時間もアカウント数や状況にもよりますが1~2週間前後で実装完了になるケースが多いです。
実装時には広告管理画面での操作が必要になることがほとんどのため、広告運用を代理店に依頼している場合は連携が必要になりますのでご注意ください。
- LPへ計測タグの設置
- 対象アカウント毎に除外オーディエンスリストの紐づけ
- (ツールによって)パラメータを付与
代表的なアドフラウド対策ツール
アドフラウド対策ツールを取り扱っている企業は年々増え続けていますが、代表的な企業は下記の2社だと考えています。
実際のそれぞれの特徴があるため概要をまとめます。
Spider AF
- 会社概要
- 株式会社Spider Labsが提供する、Spifer AF for webという不正広告対策サービス
- 日本に本社を構え世界展開をしている
- 日本市場ではベンチャー~大企業まで幅広く導入している
- システムの特徴
- 対応媒体が多く、計測準備の手間とコストが少ない
- 国内導入率が高い
- 最低3万円~と比較的費用が安い(除外したい内容や対象の媒体数によっては年間数百万円かかるケースもあります)
- ブランドセーフティ機能がある
CHEQ
出典:CHEQ公式サイト
- 会社概要
- CHEQ社(日本法人はCHEQ Japan)が提供するセキュリティソリューション
- イスラエルに本社を構え、イスラエルの諜報機関8200部隊の出身者を中心に設立されたサイバーセキュリティ企業
- 世界1万5,000社以上にセキュリティソリューションを提供
- 日本市場では中堅~大企業での導入が多い
- システムの特徴
- 2,000項目以上のサイバーセキュリティチェックによって不正トラフィックを即時検出可能
- 検出精度が高い
- 不正トラフィックの種別分類や除外機能が豊富
- 世界中で検出された不正トラフィックの情報を元にアドフラウドを除外
- 費用が高い(同じ規模のサイトでSpider AFの倍以上かかることがある)
CHEQやSpider AFでは、無料診断でアドフラウドの被害状況を確認することができます。
アドフラウド対策ツールは各社で検出精度や費用が大きく異なるため、導入を検討される場合は比較を行った上で、自社に適したサービスを選択することをおすすめします。
アドフラウド対策ツールの導入事例
アドフラウドツールの概要をご理解いただいた上で、「では実際にアドフラウド対策ツールを導入するとどれぐらい効果が期待できるのか?」と気になっている方もいるかと思います。
ここでは、実際に弊社が過去にご支援していたクライアントにてアドフラウド対策ツールを導入した事例をご紹介します。
同社では、上述の生成AIを利用した詐欺行為が増加してきた2023年頃より、約1年間の間アドフラウド対策ツールを利用していました。
ツール提供会社のレポートによれば、同社が導入したアドフラウド対策ツールによって、不正クリックとみなされ除外されたクリックは同期間の広告配信費用の約10%強、金額で言うと数千万円ほどと大きな金額を占めていることが分かりました。
仮にこれらのクリックを除外出来ていなかった場合は、そのぶんCPAが高騰する可能性が高く、同社ではアドフラウド対策ツールの利用料を含めても導入の効果があったと結論付けています。
アドフラウド対策ツールを導入する際は、①ツールの利用料②不正クリックから保護できたと考えられる想定金額③広告配信で得られた収益を考慮してROIが合うかどうか検討するようにしましょう。
まとめ
生成AIの発達の負の側面として、アドフラウド被害は増加傾向にあります。貴重な広告費を悪質なユーザーから守るためにも、アドフラウド対策を行うことが重要です。
前述のとおり、Google広告など主要な広告媒体社にも不正クリックをはじく仕組みは設けられていますが、媒体社が用意している仕組みで完全にアドフラウドを防ぐことは難しいため、広告配信している媒体が多い、金額が大きい場合などは専用のツールを導入する意義が大きいと思います。
上記でご紹介した2社(CHEQとSpider AF)に関しては無料診断でアドフラウドの被害状況を調査してもらうことも出来るため、アドフラウド対策ツールの必要性は感じているものの、費用対効果がどれぐらい合うのか測りかねている方は一度無料診断に申し込んでみると良いでしょう。
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