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- 足立 誠愛
自動化機能の発展と広告運用の力点変化
昨今の運用型広告では、プラットフォームそれ自体の有する自動化機能が、その対象範囲を広げ、さらに精度を高め続けており、驚くほどのパフォーマンスを発揮しています。
今回はその「運用の自動化」をテーマに、
- 自動化機能は、運用業務の何を自動化するか
- 実際、どれのほどのパフォーマンスを発揮するか
- 自動化機能の発展によって変化する、これからの運用の力の入れどころ
について触れてみたいと思います。
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目次
運用業務の何を自動化するか
まず自動化の話を進める前に、本記事における、運用型広告における自動化の定義について触れておきます。
役割(≒価値)の定義
ここでは、自動化の役割を2つに大別して考えます。
- 既存の作業を代替する
- 人の知性(※)を必要とするタスクを実行する
(1)「既存作業の代替」については、言わずもがな「人に代わって作業をしてくれる」という価値ですが、ここでの意味合いは「人的作業でも対応できるが、できる限り手間なく確実に済ませたい」というような作業です。これにより、工数の削減、処理の確実性の向上といった価値をもたらしてくれます。運用業務になぞらえれば、以下のような例が挙げられます。
- 品質スコアが3以下のキーワードは停止する
- xxxx円以上配信してもCVが発生しないキーワードは停止する
- 関連するキーワードをリストアップし、掛け合わせリストを作成する…など
(2)「知性を必要とするタスク」とは、「考えたり、理解したり、判断することが求められるタスク」とも言い換えることができます。人的作業の限界を突破することで、人では到達できない水準の成果をもたらしてくれます。運用業務になぞらえれば、以下のような例が挙げられます。
- どのキーワードを入札対象とし、どんな広告を表示させ、入札単価はどの程度にすべきか
- どのオーディエンスをターゲットとすべきか(年齢、性別、地域、興味・関心など)
- どの時間帯、曜日に広告を配信すべきか(そもそも、強弱をつけるべきか) …など
具体例は後述しますが、昨今の自動化のトレンドでは、(2)の役割を広げつつあると感じています。
※プラットフォームが人間の思考の概念やプロセスを理解して「知性を獲得した」わけではなく、「運用業務において知性を必要としていた領域までも、自動化機能が対象としている」という意味合いで表現しています。
範囲の定義
次に、自動化の「範囲」を理解するために、運用型広告の業務領域を定義します。ここでは5つに大別してみます(※)。
- クリエイティブ:何を(どんな広告を)届けるのか
- ターゲティング:誰に届けるのか
- 入札・予算:どの程度(入札の強さ、配信量)届けるのか
- 設計:どのようにアカウントを設計するか、どの機能を利用するか
- 分析・レポーティング:得られた結果をどのように評価し、どう伝えるか
※上記以外にも「なぜそれ(運用型広告)をやるのか=目的の設定」、「何をどれだけ目指すのか=目標の設定」、「何を解決するのか=課題の設定」といった上流にあたる工程も、運用者にとって重要な業務ではありますが、自動化の話の上では領域外になるため(少なくとも現在は)、本記事では定義の対象としては取り扱わないこととします。
それでは、これらの「役割」と「範囲」の定義を踏まえて、運用型広告における自動化機能はどのような変遷を辿ってきたのかについて、運用型広告の代表格であるアドワーズから学んでみます。
アドワーズにおける自動化関連機能の変遷
下記の図は、これまでにアドワーズでリリースされた自動化関連機能(※)の内容と、そのおおよその時期をまとめたものです。縦軸には時期を、横軸には先ほど定義した「範囲」と「役割」を置き、その変遷を眺めてみます。
※ この一覧に記載されている以外にも、大小様々な機能がリリースされていますが、本記事向けの機能を独断でピックアップしています。機能の役割や規模感など様々ですので、全体感を掴んでいただく程度に眺めていただければと思います。この内容は「Google AdWords 公式コミュニティ」や「AdWords ヘルプ」などから情報を収集して作成しました。
役割のトレンド
2011年~2012年ごろを境に、それまでは運用者への「作業の補助や拡張、選択肢の提示」といった役割が主であったのに対し、その後は、運用者が「達成したい対象の目標(収益性やCPA)を指示」したり、「自動化機能が稼働するための下準備」をしたりして、そこから先は自動化機能が選択・判断・実行までを委ねる、といった機能が実装されています。
役割が「既存作業の代替」から、「知性を必要とするタスクの実行」までに及んでいるトレンドを見ることができます。
既存作業の代替
- キーワード最適化ツール:キーワードの候補を提示する
- 自動化ルール機能:設定した条件通りにパラメータが操作される
- 拡張CPC:設定した上限クリック単価をベースにして入札単価が自動調整される
知性を必要とするタスクの実行
- 動的検索広告:誘導先LPから、キーワード、広告、誘導先を自動で選定する
- 商品リスト広告:データフィードから、キーワード、広告、誘導先を自動で選定する
- 動的リマーケティング:クリエイティブとターゲティングセグメントを自動生成する
- 目標広告費用対効果:達成したい収益性に対し、それを達成できる入札単価を算出し、入札までを行う
範囲のトレンド
自動化の「範囲」についても広がりを見せています。上図のとおり、アドワーズでは機能を併用すれば「誰に」「何を」「どの程度」のすべてを自動化機能に置き換えることも可能です。
もちろんアカウント全体でみれば、役割の面でも範囲の面でもまだまだ限定的ですし、その自動化機能が十分に機能するための、ルールに沿った下準備が必要です。しかしこのトレンドを見ると、今後ますます「役割」と「範囲」の両面で、自動化機能がその存在を大きくし、利用することが当たり前になっていくイメージが沸いてきます。
では、気になるパフォーマンスはどうでしょう。自動化機能は、運用型広告のプロフェッショナルが行う運用よりも高い成果を返してくれるのでしょうか。まずは、アドワーズを例に「どの程度=入札」における自動化のパフォーマンスを見てみます。
実績から学ぶ「どの程度=入札」の自動化
アドワーズでは、自動入札を利用する目的はいくつか用意されていますが(広告掲載順位やクリック数など)、ここでは「コンバージョン数や収益」を指標にした入札タイプを取り上げます。
「コンバージョン数や収益」 を指標とした入札タイプは、3つ用意されています。
■拡張CPC
クリック単価を設定すると、広告のクリックがコンバージョンにつながる見込みに応じてその額の -100%~+30%の範囲で入札単価が自動調整されます。
■コンバージョン オプティマイザー / 目標コンバージョン単価
目標コンバージョン単価の範囲内でコンバージョン数を最大化できるよう、入札単価が自動調整されます。
■目標広告費用対効果(ROAS)
広告費用対効果の平均値の目標達成を目指しながら、コンバージョンの確率と価値が予測され、コンバージョンの価値を最大化できるように入札単価が自動的に設定されます。
今回は、このうち「コンバージョン オプティマイザー / 目標コンバージョン単価」(以下、CO)について、それを利用した場合と、手動入札した場合の結果を比較し、自動入札のパフォーマンスを見てみます。
ケースA:求人(転職エージェント)系サービス
■キャンペーン・広告グループ構成:
・エリアごとの営業人員配置数に応じて目標が設定されるため、エリア単位で設計
・どのキャンペーンも、広告グループ以下はほぼ同じ設計
■成果地点:サービスへの無料登録
■目標CPA:2万円~2.5万円(一都三県以外 1万円~1.5万円)
■COの目標値:1.5万円
■画面キャプチャの実績期間:10日間
■CO導入から画面キャプチャまでの期間:45日間
このアカウントではCOの導入は慎重に行い、キャンペーンを限定した段階的な導入を行いました。そのため、東京、千葉、埼玉エリアについては手動運用を継続し、神奈川エリアのみCOを導入しました。上記は、CO導入から45日後の実績で、10日間の配信実績になります。ご覧のとおり、COを適用したキャンペーンは、手動入札キャンペーンをはるかに凌ぐ高い成果を出しています。
ケースB: 家具のECサイト
■キャンペーン・広告グループ構成:商品カテゴリごとに設計
■成果地点:商品購入
■目標CPA:1万円~1.5万円
■COの目標値:0.8万円
■画面キャプチャの実績期間:7日間
■CO導入から画面キャプチャまでの期間:30日間
こちらのアカウントも、COの導入は実績を確認してから段階的に展開する方針としました。導入直後の2週間程度はCVとCPAが安定しなかったものの、その後は目標値に近しい値で成果を出し、またしっかりと件数もついてきています。
商品カテゴリごとにキャンペーンを設計しているため、キャンペーン単位で顧客単価や利益率は異なりますが、全体の平均顧客単価と期間あたりのリピート率を算出したうえで、目標CPAを一律1万円~1.5万円と設定し、KPIを簡素化して運用していました。そのうえで、COを導入した結果、件数を維持しながらCPAを低下させることができました。
その後、上記2つのアカウントはどちらも、全体の70~80%のキャンペーンにCOを導入することになり、入札業務について広い範囲で自動化している状況です。
※こういった画面キャプチャをつけて実績を示す系の情報は、その結果に至るまでのプロセスや、外的要因などの要素に言及されていないことが多いため、根拠としては乏しいという声も聞こえてきそうですが、そのあたりを差し引いても、「入札業務を完全に委ねている状態」でこれだけのパフォーマンスを返してくれるのですから、その実用性を感じていただけるかと思います。
実績から学ぶ「誰に=ターゲティング」の自動化
続いて「誰に=ターゲティング」の自動化について、Facebook広告(以下、FB広告)を通じて学びます。
FB広告では「Facebookピクセル」を通じて、誘導先に訪れた(または、コンバージョンなどの何かしらのアクションを行った)ユーザーの情報を解析し、「類似オーディエンス」という、その解析対象としたユーザーと近しい質のユーザーセグメントを自動生成する機能があります。この類似オーディエンスを獲得することが、FB広告の運用では重要なステップの一つとなります。
この自動生成された類似オーディエンスをターゲットにセットしさえすれば、ターゲティングに関するそれ以外の設定にあれこれと頭を悩ますことはありません。
ここでも、類似オーディエンスを利用した際のパフォーマンスについて、下記に一例を挙げます。
ケース: ファッション系ECサイト
■対象サービス:ファッション系ECサイト
■成果地点:商品購入
■目標CPA:4千円
■画面キャプチャの実績期間:7日間
上段赤枠が、類似オーディエンスを活用したセグメント、下段青枠が、FB広告の各種設定を活用し、顧客データベースから確認(または想定)できる属性情報(年齢、性別、趣味趣向など)をもとに人的に作成したセグメントの結果になります。最右列がCPAです。
今までも、各種DSPやGDN・YDNなどを通じて「類似」と言われるセグメントを利用する機会はありましたが、ここまではっきりと「類似オーディエンスは頼りになる」と感じることは、そう多くはなかったように思います。
※もちろん、人的に作成したセグメントについては、設定内容によって大きく成果が変わる可能性もありますが、うまい下手はともかく、上述の通り人によるできる限りの考察を行ったうえでの結果です。その他の数多くのアカウントでも、FB広告の類似オーディエンスは高い成果を出しており、精度の高さを実感しています。
求められる役割 「設計力」「クリエイティブ」「先導力」
このように自動化の役割と範囲が広がり、人的作業をはるかに凌ぐパフォーマンスを返してくるような時代に、運用者には何が求められるのでしょうか。実際に私が身をもって感じている、今まさに目の前に起きている役割変化について挙げてみます。
設計力
昨今の自動化トレンドの上では、アカウントを設計するにあたり、ひとつの思考転換が必要です。それは、これまで「いかにしてコントロールをするか」という観点を中心にして設計していたのに対し、「いかに学習をさせるか」という観点が重要になる、という変化です。
「Criteo Senior Sales 河野正寛氏が語る~Criteoの運用の本質は”入札”ではない、エンジンへの”インプット”だ~」でも言及されているとおり、いかに広告プロダクトの基本仕様を理解した上で、設計・設定できるかが求められます。
配信ボリュームを調整したいから計測タグを外したり、予算設定や入札単価、目標値などを恣意的に変更したり、一部の商品レコードをデータフィードから除外するなど、データ学習の重要性を理解しないまま都合よく対応してしまうと、自動化機能が十分な力を発揮できません。
設計にはルールがあり、広告プロダクトの自動化機能がフル回転する環境を用意することが求められます。
※この「設計力」については、この Ad JOURNAL を通じて改めて掘り下げていこうと思います。
クリエイティブ
上述のアドワーズやFB広告における自動化の例は、「どの程度=入札」「誰に=ターゲティング」を対象として取り上げましたが、まだ「何を=クリエイティブ」、つまり「届けるメッセージとその表現を考える」という創造的活動は、現時点では、人の役割無くしてはほとんど成立しません。
ゆえに、運用者が担うべき付加価値がクリエイティブ改善に比重が高まるのは自然な流れといえます。
先導力
上記2点とは異質なものにはなりますが、日々とても重要だと感じていることです。
「自動化」とは、言い換えれば「コントロールしないこと」とも言い換えることができます。これまでコントロールできていたことが、コントロールできなくなるということ。因果関係を説明できていたことが、難しくなるということ。これらには不安が伴います。また、自動化機能が十分な成果を出せなかったとき、不信感が生まれます。
運用者には、自動化機能の導入に伴うリスクや得られた結果に対し、関係者に対して説明責任を果たしながら、導入から成果獲得までを導いていく「先導者」としての役割が求められます。
不安や不信という霧を晴らしていきながら、自動化機能の利用を明日の常識へと変えていくのは、テクノロジーそのものであることはもちろん、広告プロダクトの理解と知識を持った私たち運用者でもあるのです。
運用の力点変化
自動化による運用者の役割変化を抽象化すると、運用の力の入れどころは、以下のように変化しているイメージです。
私にとって、この環境変化はとても刺激的です。「AI」や「ロボット」といったキーワードに代表される昨今の技術革新が、いかにして人の働き方を変えるのか、という大きなテーマについて、その変化を身をもって体験できているような気がするからです。
「運用者の価値は何か」、ひいては「あなたの価値は何か」について問われているようで、それに向き合うことのできるこの環境は、これからの未来を生き抜く力を与えてくれるはずです。
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オーリーズは、「代理店はマーケティング戦略の立案から実行までを一貫して担うことで、はじめて価値を発揮できる」と考えています。
そのため、オーリーズでは非分業の支援体制をとっており、運用者1人あたりの担当社数を4社までに制限することで、 運用者が作業のみに追われるのではなく、よりマーケティング戦略の立案を行える仕組みを取っています。
また、広告運用という手段に縛られずにクライアントの目的を実現するため、クリエイティブ制作ブティックのQeticやインハウス支援に強いアタラ、 BtoB向けインサイドセールス支援を得意とするセールスリクエストなど、豊富なグループアセットも抱えています。
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