【広告運用研究会】P-MAXの挙動変化に対する5つの運用判断 ── 現場の一次情報をオープンに

【広告運用研究会】P-MAXの挙動変化に対する5つの運用判断 ── 現場の一次情報をオープンに

オーリーズでは、各案件のコンサルタントが現場の知見を持ち寄る「広告運用研究会」という取り組みをおこなっています。

今回は「P-MAXでYouTube面に配信が偏り、EVCの比率が増加する」という事象に対して、各案件でどのように判断しているのか、議論した内容を記事にします。

広告運用研究会について

オーリーズでは、各案件のコンサルタントが特定のテーマについて運用事例をディスカッションする「広告運用研究会」という取り組みをおこなっています。

AIの進化で、広告運用の知識やベストプラクティスは以前よりずっと手に入りやすくなりました。一方で、特定の状況下で誰が何を判断し、その結果どうなったかという一次情報は、なかなか表に出てきません。

この記事では、研究会で議論した内容を公開することで、現場の一次情報を比較できる場を作れればと考えています。

今回のテーマは「P-MAXでYouTube面に配信が偏り、EVCの比率が増加する」という事象。5つの案件がそれぞれ異なる対処をした経緯を紹介します。

P-MAXでYouTube面に配信が偏り、EVCが増加

2025年8月前後、複数のアカウントでP-MAXの配信がYouTube面に偏る事象が起きていました。

それに伴い、媒体管理画面上のCV数は増加。しかし、GAなどのラストクリックベースで見ると実態のCVはさほど増えていませんでした。

媒体CVは伸びているのに実態CVは変わっていない。数字の見え方と実態がズレているという状態です。

このズレの正体は、エンゲージビューコンバージョン(EVC)の増加です。YouTube面への配信が増えたことで、クリックではなく動画視聴を起点とするEVCが媒体CVの大半を占めるようになっていました。

そもそもP-MAXのように動画広告を配信しているメニューでは、EVCが機械学習の最適化地点として重視されているため、YouTube面に配信が寄ること自体は異常ではありません。

ただ、AIが「最も達成しやすいEVCの獲得」に寄せすぎると、本来獲得できたはずのクリックスルーCVの機会を逃す可能性がある。問題はそのバランスでした。

エンゲージ ビュー コンバージョンは、スキップ可能なインストリーム広告をユーザーが 10 秒以上(10 秒未満の動画の場合は最後まで)視聴するか、インフィードまたは YouTube ショート広告を 5 秒以上視聴してから、エンゲージ ビュー コンバージョンの計測期間内にコンバージョンに至った場合にカウントされます。

参考:Google広告ヘルプ「エンゲージビューコンバージョンについて」

異なる判断をした5つのケース

「P-MAXでYouTube面の配信比率が上昇し、EVCの割合が増加する」という事象に対して、各現場はそれぞれ異なる判断をしていました。

ケースA|P-MAXを停止し、コントロール可能な代替構成へ移行

項目概要
ビジネス形態BtoC/媒体CV:申し込み
問題意識8月からYouTube配信が95%超に偏り、EVC比率が80%以上に。媒体CVは増えたが、第三者計測では実態CVが悪化していた
打ち手P-MAXを停止し、AI MAX+デマンドジェネレーションに変更
判断の背景EVC計測期間の短縮や動画アセットのオプトアウトも検討したが、アカウント全体に影響し認知施策が打てなくなるため断念。獲得用と動画用でアカウントを分けた

ケースAで問題になったのは、指標の信頼性でした。媒体管理画面のCV数は増えているが、第三者計測ツールのCV数は増えておらず、むしろ悪化傾向。

このまま配信を続けると、機械学習が意図と異なる方向に最適化されていく可能性があり、ラストクリックCVを重視するこの案件では、媒体CVが運用判断の指標として機能しなくなるリスクがありました。

対策として、EVCの計測期間短縮や動画アセットのオプトアウトなどを検討したものの、EVC計測期間の短縮はアカウント全体に影響するため、認知・エンゲージメント目的で実施している他施策にも悪影響が出るリスクが考えられました。

「一部の歪みを是正するために、全体設計を複雑にすべきではない」という判断から、P-MAXを停止し、「AI MAX+デマンドジェネレーション」の構成に変更。運用のコントロール性を高めることを優先しました。

ケースB|成果が出る面を直接切り出し、配信構造ごと変更

項目概要
ビジネス形態BtoC/媒体CV:購入
問題意識EVC偏重でYouTube面が増えたが、ショッピング面のほうが明らかに成果が良い商材だった
打ち手P-MAXを停止 → ショッピング広告+動的リマケに変更
判断の背景EC商材でフィードデータを活用する案件なので、成果が出る面が明確。そこを直接切り出すほうが合理的だった

ケースBでは、媒体CV数は増えているものの、ROASは低下していました。CVRは低下、クリック数とセッション数の乖離率は上昇。YouTube面からの流入ユーザーの質が低い傾向が見られました。

配信チャネル別の実績を確認したところ、ショッピング面への配信費用が多い月はROASが良好、YouTube面の比率が高い月はROASが低下していることが分かりました。

EC商材でもあるため、ショッピング面が相対的に獲得効率が良いことは明確でした。EVCが媒体CVとして高く評価されている一方で、それが実際の購買にどこまで貢献しているかは不透明。

そこで、「P-MAXの自動最適化に任せるのではなく、配信面のコントロール性を持たせた方が費用対効果は改善するはず」と考え、P-MAXを停止し、ショッピング広告と動的リマーケティングの構成に変更。「成果が出る面を直接切り出す」アプローチを取りました。

ケースC|AIに与えるシグナルを調整し、クリック起点の学習構造をつくる

項目概要
ビジネス形態BtoB/媒体CV:資料請求
問題意識EVCには動画視聴後に別経路で発生したCVも含まれるため、製品単位で成果を管理している構造では広告の売上貢献が評価しづらい
打ち手EVC計測期間短縮+入札変更+オフラインCV導入
判断の背景製品売上への貢献が不透明なEVC比率への依存を減らし、クリックを起点とした成果に学習が向かう構造にシフト

ケースCで問題になったのは、因果関係の不透明さでした。この案件では販促対象の製品ごとに予算を割り当てており、キャンペーンも製品別に分けて管理する必要がありました。広告の成果評価も製品単位で実施しています。

ここで問題になったのは、EVCが増えたときに、そのCVが本当にその製品の広告に起因するのかが見えづらいこと。

EVCは動画視聴後に別経路で発生したCVも含みます。たとえば製品Aの動画を見たユーザーが、動画とは無関係の経路でCVしたとしても、製品Aの広告成果として計上される可能性がある。

EVCの比率が高まるほど、製品単位の成果評価が曖昧になるという問題です。

そこでケースCでは、「いかにEVCの比率を抑えるか」をテーマに設定し、AIの学習構造そのものに介入する判断をしました。

  • EVCの計測期間を3日間 → 1日間に短縮し、評価対象を絞る
  • EVCに偏りやすい傾向が見られたことから入札戦略を「tCPA → maxCV」に変更
  • GCLIDベースのオフラインCVを導入し、クリックCV重視の学習構造へ移行

因果関係が不透明なEVCへの依存を減らし、クリックを起点とした成果に学習が向かう構造を作ることを狙いました。

ケースD|プレースメント除外で配信バランスを調整

項目概要
ビジネス形態BtoC/媒体CV:会員登録
問題意識YouTube面への配信金額が10倍近くまで拡大。コストコントロールも効きづらい状態になっていた
打ち手プレースメント除外で配信バランスを調整
判断の背景まず着手できる手段としてまずプレースメント除外で対処

ケースDでは、P-MAXのキャンペーン構成や入札戦略には手を加えず、プレースメント除外によって配信先の質を絞り込むというアプローチで対処しました。

P-MAXは配信面や入札の自動最適化が前提のキャンペーンで、運用者が直接介入できるレバーは多くありません。その中でプレースメント除外は、キャンペーン構造を変えることなくYouTube面の配信バランスを調整できる、数少ない手段のひとつです。

具体的には、インプレッションが発生している外国語サイトやYouTubeチャンネルを特定し、除外設定を行いました。

結果、YouTube面の配信割合を抑制でき、配信状況は安定。入札戦略やキャンペーン構成を維持したまま、配信バランスを取り戻せました。

ケースE|検索広告との役割分担を再定義

項目概要
ビジネス形態BtoC/媒体CV:お問い合わせ
問題意識9〜10月にYouTube配信率が急増しCPA上昇。ただしP-MAXでCV数自体は取れていた
打ち手P-MAXは止めず、検索広告との役割分担を再定義
判断の背景CPA抑制よりCV数を伸ばしたい方針があった。P-MAXの検索面が減った分をリスティングで補完して全体を安定させた

ケースEではP-MAX単体のCPAは上昇しましたが、意図的にP-MAXを抑制しない判断をしています。

  • P-MAX単体のCPAは上昇したものの、アカウント全体のCPAは許容範囲内に収まっていた
  • P-MAX経由のお問合せから成約に至る件数が増加傾向にあり、ラストクリックだけでは見えない間接貢献を含めて評価すると、事業成果に貢献していると判断できた
  • CPA抑制よりもCV数の最大化を優先する方針があった

という事情をふまえ、P-MAXに手を加えて現在の成約増加トレンドが崩れるリスクの方が、YouTube面の偏りを静観するリスクよりも大きいと判断しました。

P-MAXの検索面への配信が減少した分を検索広告で補完し「攻めはP-MAX、守りは検索広告」という形で全体成果を安定させる構成に役割分担を再定義。

P-MAX単体の挙動を制御しようとするのではなく、アカウント全体のポートフォリオとしてバランスを取る判断を行いました。

さいごに

5つのケースを並べてみると、同じ現象に直面しても、案件の前提が違えば判断は変わるということがよく分かります。

正解はひとつではないし、そもそも「何をもって正解とするか」の基準が案件ごとに違う。研究会で話していて改めて感じたことでした。

今回の内容が、同じような場面に直面したときの参考になれば嬉しいです。広告運用研究会では、今後もこうした現場のディスカッションを共有していきます。

Written by

広告運用研究会
オーリーズのコンサルタントが、案件を超えて広告運用の知見を持ち寄る社内研究会。特定テーマについて議論し、その内容を一次情報として公開しています。