マネージャーの仕事は「視座の提供」だと気づいた話

マネージャーの仕事は「視座の提供」だと気づいた話

半年前、私がプロジェクトリーダーをしている案件で、広告の設定ミスが発覚しました。

クライアントから指摘を受けたとき、「やってしまった…」「自分の責任だ…」と、焦りに駆られたのを覚えています。

上司の一言で冷静になれた

ミスが発覚した当初、クライアントに迷惑をかけてしまったことを悔やんでいました。

「なんでこんなことを見落としたんだろう…」 「あのとき、もっと慎重に確認していれば…」 「もっと気を引き締めないといけない…」

任されている案件で起こったミスだから、プロジェクトリーダーである自分の失態。責任感をもって仕事をしていたからこそ、自分のことを強く責めていました。

上司にも、「すみません、自分の責任です…」と頭を下げました。指導されるか、励まされるだろうと思っていたのですが、

「個人の問題じゃなくて、組織の問題として考えないとね」

上司の言葉で、ようやく冷静になることができました。

「人を責めるな、仕組みを責めろ」という教え

有名なトヨタの教えに、「人を責めるな、仕組みを責めろ」という言葉があります。個人のミスを責めずに、ミスが起きる仕組みを疑え、という意味です。

聞いたことのある言葉だったし、頭では分かっているつもりでした。

でも、実際に自分がミスの当事者になったとき、現場の人間から真っ先に「これは仕組みの問題だ」と言うのは、なかなか勇気のいることだと気づきました。

現場のプレイヤーにとって、ミスをした直後に仕組みを責めることは、言い訳や責任逃れのように感じてしまうからです。

「もっと上手くやれたはずの自分が、環境のせいにしていいのか?」

責任感が強い人ほど、どうしても自分を憎んでしまう。なかなか仕組みを責められないんです。

個人の努力では「自責のループ」から抜け出せない

学習する組織』という書籍にも、まさにこれと同じ話が出てきます。「自分の仕事に集中する」ことが、かえって視野を狭めてしまう構造について、こう書かれています。

組織内の人たちが自分の職務にだけ焦点を当てていると、すべての職務が相互に作用したときに生み出される結果に対して、責任感をほとんどもたない。

結果が期待はずれだった場合に、その理由を理解するのが非常に困難となる。『誰かがへまをした』と決めてかかることしかできない。


※『学習する組織――システム思考で未来を創造する』より引用

「自分の仕事の領域に責任を持つ」という意識が強いほど、視野は自分の担当範囲に閉じていく。そして問題が起きたとき、「個人の責任」という発想しか出てこなくなる。

それが他人に向けば「犯人探し」になり、自分に向けば「自責」になる。

どちらも「個人のせいにする」という意味で同じ思考パターンで、構造を見る目が育っていない状態と言えます。

そして、この問題は責任感が強ければ強いほど深刻になる。 自分の領域に責任を持とうとする真面目な人ほど、「仕組みのせいにする」ことが言い訳に感じられてしまう。

個人の努力や意識改革では、この自責のループから抜け出せないんです。

「仕組みを憎んでいい」という許可

少なくとも私は、自分一人では自責のループから抜け出せなかった気がします。上司が「仕組みの問題だ」と言ってくれたから、視点を切り替えることができた。

現場のメンバーとマネジメント層では、日々「見ている景色」が違います。

現場のメンバーは「目の前のお客様に満足いただく支援を提供すること」がミッションです。だから、自分が担当している案件でミスが起きたとき、それを「仕組みの問題です」と言うことは、自分のミッションを果たせていないことの言い訳に聞こえてしまう。

一方、マネジメント層は違います。個別の案件の成否から一つ頭を切り離して、「組織全体の仕組みが機能しているか」という視点で物事を見ることができる。

能力の差ではなく、「どこに責任を持っているか」という立場の差が、そのまま視座の差になっているんです。

だからこそ、上司が「仕組みの問題だ」と言ってくれたことは、単なる慰めではありませんでした。それは、「仕組みを責めていい」という許可だったんだと思います。

マネージャーの仕事は「視座の提供」

上司の一言で、私は「自分の責任」という視点から「構造の問題」へと視点を切り替えることができました。

これはマネージャーだからこそできる仕事だと思います。現場のメンバーは、目の前の案件に集中している。だからこそ見えないものがある。

自分が上司から「仕組みの問題だ」という視座を与えられたように、今度は自分が、メンバーに視座を渡す番だと思っています。

この記事を書いた人

株式会社オーリーズ

アドオペレーションズ・ストラテジスト/チーフ

浅井 彰吾

新卒で楽天グループ株式会社へ入社、モバイル事業における基地局設置営業に従事。その後、モビリティ系スタートアップに転職し働く中で、消費者のニーズに応えられる商品・サービスを届けることで事業を成長させることができるマーケターになりたいという想いから転職を決意。手法に囚われずクライアントの課題解決に徹底的に向き合う組織文化に惹かれオーリーズへ入社。

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