【BtoB/SaaS】Go-To-Market戦略の違いによって広告運用はどう変わる?~PLGとSLG~

【BtoB/SaaS】Go-To-Market戦略の違いによって広告運用はどう変わる?~PLGとSLG~
一言にSaaSと言っても業界やターゲットによって戦略は様々です。
近年SaaSの成長戦略はアップデートされており、それに伴いマーケティング施策も企業の戦略に応じて最適化していくことが求められています。
本記事ではSaaS企業における代表的なGo-To-Market戦略(GTM戦略)であるProduct-Led Growth(PLG)とSales-Led Growth(SLG)を比較しながら、戦略の違いによって獲得を目的とした運用型広告配信がどのように変わるのかお伝えします。
本文内では初めての人でも理解できるように用語の説明などを記載していますが、わかる方は読み飛ばしていただけますと幸いです。

GTM戦略とは?

Go-to-Marketとは、Product-Market-Fitのステージで順調に顧客を獲得できた企業がさらにスケールを目指していくステージのことです。
つまり、GTM戦略とはPMFの後に企業がさらにスケールしていくための戦略と言えます。
具体的には以下の事柄を決めていきます。
  • どの市場をターゲットにして販売するか?
  • これらの市場のターゲットオーディエンスは誰か?
  • 製品をどのように顧客に届けるか?
  • 価格は各ターゲットオーディエンスに対していくらであるべきか
このようにGTM戦略は、企業が市場に製品を投入する際に計画するアクションプランのことを指し、セールスやマーケティングをどのように展開していくかを整理します。
以下の記事(英語)に詳細な解説がなされているため、興味がある方は併せてお読みいただくと良いでしょう。
 
戦術としての運用型広告は戦略とリンクする必要があるため、GTM戦略の違いが運用型広告の配信方針に影響を与えるのは想像に難くないでしょう。
このあと詳しく説明する「PLG」「SLG」はSaaS企業のGTM戦略に代表されるものであり、獲得を目的とした運用型広告戦略の決定に影響を与えます。
以降のパートでは、「PLG」「SLG」それぞれの特徴を説明した上で、「運用型広告にどのような影響を与えるか?」の仮説を共有させていただきます。

PLGとSLGの違い

PLG、SLGそれぞれの特徴は以下のとおりです。

PLG(Product-Led Growth)とは

PLGでは、まずプロダクトを無料で開放し、価値を感じてもらったユーザーを有料版へと誘導するのが定石です。
PLG戦略におけるセールスは無料体験中のユーザーに対してカスタマーサクセス的に動くことで、適切なタイミングで有料化への切替を促します。
あくまで、SLGにおけるセールスのように頻繁に架電やメールを行い商談を作るのではなく、プロダクトに価値を感じてくれたユーザーが自発的に有料版へと切り替えてくれるのをサポートすることが役割です。
そのため、PLG戦略は有料化までの間にほとんど人を介さずに、プロダクトに価値を感じたユーザーが自発的に有料契約をしてくれることを狙った成長戦略と言えます。
つまり、PLGは「Product sells itself :プロダクトがプロダクトを売る」ための戦略です。

SLG(Sales-Led Growth)とは

The Modelに代表されるように、SLGでは下記のような流れでユーザーがプロダクトを使い始めます。
SLGでは複雑性や新規性の高いプロダクトをセールスが個社ごとの課題に応じた提案を行い有料契約を獲得します。
また、提案する相手はエンドユーザーだけではなく、直接製品を使わないマネジメントクラスの決裁者に対しても複数回の提案を行うケースがあります。
つまり、SLG戦略では積極的に人を介してプロダクトの魅力を伝えることで受注を獲得する戦略と言えます。
そのため、PLGに対してSLGは「Sales sells product :セールスがプロダクトを売る」と言われています。
このように、「プロダクトがプロダクトの価値を伝える」PLGと「セールスがプロダクトの価値を伝える」SLGとでは組織体制やKPIの考え方が異なるため、広告配信もGTM戦略に応じて変えていく必要があるのです。

広告運用はどう変わるのか?

運用型広告において、GTM戦略ごとに配信方針の違いの仮説を下図の通り考えました。
 
具体的には、以下の通りです。

PLGの広告運用

  • 利用体験を通して製品理解を深めるため、フリートライアルやフリーミアムといったCVポイントへの誘導が重要になる
  • リード獲得経路が基本的にフリートライアルかフリーミアムに限定されるため、「オークションを優位にするための媒体理解やベストプラクティス運用」の重要性が相対的に高くなる(コンテンツなどで差別化できない)
  • 低単価な製品に適しており投下できるCACは多くないため、1社あたりにかけられる平均広告費も多くない
👉
※フリーミアム:プロダクトの一部機能を無期限で無料開放
※フリートライアル:プロダクトの全機能を有期限で無料開放
PLGでは前述した通り、プロダクトの無料開放によるいち早くユーザーに価値を伝えて有料化していくことが定石であるため、運用型広告のCVポイントにおいても全てのファネルのユーザーにフリートライアルやフリーミアムを設置することが定石だと考えられます。
ホワイトペーパー広告やウェビナー集客などの広告施策は「最終的に有料化する歩留まり」まで勘定した場合に1社獲得あたりの平均広告費が高くなる可能性があるため、投下できるCACが少ないPLGでは適さないと考えられます。
上記の理由から、PLGでは広告配信に活用できるCVポイントが限られるため、SLGのようにホワイトペーパーの内容で差別化したり、多様なリード獲得経路を用意してCVRを向上する施策が行いにくいと思われます。(もちろん、訴求やクリエイティブ変更などのLPOはPLGでもCVR改善に有効です)
そのため、PLGの運用型広告でパフォーマンスを高めるためには広告オークションを有利にし入札単価を抑えるための「媒体のベストプラクティス運用」の重要性が相対的に高くなると考えられます。
(CVRを改善するための要素が少ないならCPCで成果を改善しなければならない)

SLGの広告運用

  • 獲得したリードの温度感に合わせてアプローチするため、問い合わせ、資料請求のみならずホワイトペーパーDLなどの幅広いCVポイントを活用できる
  • ユーザーのファネルに応じてコンテンツやCVポイントを変えていくため、コンテンツの内容やリード獲得経路の多様さが重要になる
  • 高単価な製品に適しているため投下できるCACも多く、1社あたりにかけられる平均広告費も多い
一方、SLGでは獲得したリードの温度感に応じてアプローチを変え、長いセールスサイクルを経て導入してもらうことが前提であるため、見込み顧客のファネルごとに「問い合わせ」「資料請求」「見積もりフォーム」「ホワイトペーパーDL」などの様々なリード獲得経路を検討できます。
また、顧客単価が高く、許容できるCACも高い傾向があるため、目的やKPIに応じてホワイトペーパー広告などの受注や商談化の歩留まりが低い施策も実行する余地があります。
そのため、SLGの広告運用では「ファネルごとのリード獲得経路の設計やコンテンツの内容」の重要度が相対的に高くなります。つまりPLG同様に媒体ベスプラを徹底するのは非常に重要であるものの、十分条件ではなく、その後にさらなる改善すべき変数がずらりと並んでいるのです。それゆえ、SLGにおける広告運用のほうがPLGにおける広告運用よりも複雑性が飛躍的に上がる傾向があります。
次に、SLG戦略の広告運用でフリートライアルやフリーミアムのリード獲得経路の設置を検討する際は注意が必要です。
まず、プロダクトの複雑性が高く、セールスが個社ごとの課題に応じた提案をすることでプロダクトの価値を伝えるSLG戦略では、提案に先んじてフリーミアムで機能の一部を無期限開放してもエンドユーザーが直感的に価値を感じにくいというデメリットがあります。
つまり、広告で獲得したリードがフリーミアムでプロダクトを体験しても商談や受注にまでは至りにくい、ということです。
一方、フリートライアルは使い方次第で顧客獲得の可能性を高めるので、運用型広告のCVポイントとして活用することも検討できるでしょう。
具体的には、提案と並行して有期限の無料開放をすることで、提案のみの場合と比べてエンドユーザーの活用イメージが湧きやすく、セールスサイクルの短縮に貢献するかもしれません。
特に複雑性や新規性が高くセールスサイクルが長くなりやすいプロダクトにおいては、運用型広告のCVポイントにフリートライアルの設置を検討してみると良いでしょう。
なお、PLGの概念を体系的に紹介した日本初の書籍であるPLG プロダクト・レッド・グロース「セールスがプロダクトを売る時代」から「プロダクトでプロダクトを売る時代」への監訳を担当したUB Venturesの下記ブログ記事でも、フリートライアルとフリーミアムの活用方法について詳細な解説がなされているため併せてご確認いただければと思います。

実際の広告配信事例

先の仮説が正しそうなのかを確かめるため、PLG、SLGそれぞれの企業が実際に広告配信に活用しているランディングページの特徴を整理してみました。

PLG戦略を行っている企業の広告ランディングページ

Shopify
WIX
Jira(ATLASSIAN)
PLG戦略で事業成長してきた「Shopify」「WIX」「Jira(ATLASSIAN)」の3社の広告配信では、広告ランディングページ内にフリーミアムまたはフリートライアル以外の申し込みフォームは存在せず、サイト内リンクもほとんどありませんでした。
実際のCV発火設定は確認できないため想像の域を出ませんが、PLG戦略をとる大手3社の広告配信事例においては「PLGにおける運用型広告のリード獲得経路はフリーミアムかフリートライアルが定石で、ホワイトペーパーDLなどは適さない」という仮説を支持する内容になっていると考えられます。
よって、リード獲得経路が単一でCVR改善のための変数が少ないPLGにおいては、「媒体のベストプラクティス運用」によってCPCを改善していくことが運用型広告の成果を改善していく上で重要な観点になるのではないかと思います。

SLG戦略を行っている企業の広告ランディングページ

Marketo Engage(Adobe)
Smart HR
ZAC(株式会社オロ)
SLG戦略をとっている「Marketo Engage(Adobe)」「Smart HR」「ZAC(株式会社オロ)」の3社の広告配信では、以下のように「さまざまなリード獲得経路が設置してある」という共通点がありました。
  • Marketo Engage(Adobe)
    • 問い合わせ
    • 入門ガイドダウンロード
    • その他の資料ダウンロード
    • アーカイブ動画ダウンロード
  • Smart HR
    • 問い合わせ
    • 資料請求
    • 無料トライアル
    • 見積もりフォーム
  • ZAC(株式会社オロ)
    • 無料トライアル
    • 資料請求
    • ホワイトペーパーダウンロード
    • ウェビナー申し込み
これは先述の通り、セールスサイクルの長いSLGでは獲得したリードのファネルに応じてアプローチを変えて商談化を目指すため、さまざまなリード獲得経路を設置することが広告配信においても有効なのだと考えられます。
これも実際のCV発火設定は確認できないため想像の域を出ませんが、おそらくリード獲得経路に準じたリード獲得経路が設定されている可能性が高いと考えられます。
上記から、この3社の広告配信事例も「コンテンツの内容やリード獲得経路の多様さが重要になる」というSLGにおける広告配信の仮説を支持していると言えるのではないでしょうか。

まとめ

これまでSaaS企業のGTM戦略ごとの違いによって運用型広告がどのように変わるか?をみてきました。
実際にはSLGとPLGは二者択一ではなく、企業のフェーズや事業戦略によってカスタマイズされ組み合わせながら検討されるものなので、本記事の内容も全ての企業やプロダクトに当てはまるものではないことをご了承いただけますと幸いです。
そして当然ではありますが、本記事でフォーカスした部分以外にもクリエイティブなど、改善を進めるために抑えておくべきポイントなどはございます。
それらの情報については順次公開をしていきたいと思いますので、よろしければメールマガジンの登録やTwitterのフォローをお願いいたします。
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