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  • 富田 貴弘

現場から見た運用型広告 〜 インハウス運用と代理店委託運用の落とし穴と判断基準〜

>現場から見た運用型広告 〜 インハウス運用と代理店委託運用の落とし穴と判断基準〜

1.運用型広告はインハウス運用がいいの?代理店委託運用がいいの?

 

Google AdWords 、Yahoo!プロモーション広告、Facebook広告やLINE Ads Platform、Criteoなどの運用型広告をインハウス(※1)で運用すべきか、広告代理店に運用を委託すべきか。そんなご相談をここ最近よく頂きます。

お伺いすると、インハウス運用に関する情報を書籍や記事などを通じて収集したり、運用代理店にヒアリングを行ったりと、インハウスで運用を進めるべきか代理店に運用を委託するべきか、各々のメリット・デメリットを把握した上で、皆さん詳細に検討されているようですが、どうも実際の運用現場とギャップがあるような気がしています。

そういった背景から、本記事では、私が以前は事業会社のマーケターとして広告運用に関わってきた立場で、月額数百万円から数億円の広告予算にて、インハウスで広告運用を行いつつ、様々な運用代理店と関わった実体験から、「インハウスで広告運用を行うのか、代理店に広告運用を委託するのか?」の選定基準について、私なりの考えをお伝えできればと思います。

(※1)インハウスの定義:インハウスにも様々な形がありますが、本記事では「自社内にて運用型広告の計画策定から入稿、分析業務を含む一連の運用業務を完結できている状態」をイメージしています。

 

 

2.インハウス運用と代理店委託運用のメリット、デメリット

 

さて、これまで皆さんからご相談頂いたお話をまとめると、インハウス運用と代理店委託のメリット・デメリットは以下のようになりました。

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一見してもっともらしいように感じるのですが、どうもこのメリット・デメリットを鵜呑みにすると思わぬ問題が発生してしまうなと私は考えています。

ここからは、上記のメリット・デメリットが「実際はどうだったのか」ということを体験談から述べていきたいと思います。

あくまで筆者の個人的な体験をベースに言及していますが、お付き合いいただければ幸いです。

 

3.そのメリット/デメリットは本当?

1)代理店委託の場合、当事者意識がなく、自社サービスへの細部の理解が得られず、コミュニケーションコストが発生する??

結論から申しますと、私は、代理店だから自社サービスへの細部に対する理解がないと感じたことはありませんでした。代理店の方が自社や業界のことをよく調べ、考え抜いて頂いたおかげで、施策が上手く機能することもありました。

良きパートナーにめぐり逢えたと思います。

一方で、インハウス運用であったとしても、運用担当者がサービスへの理解や当事者意識が乏しく改善速度が遅くなったりする場合もありました。

詰まるところ、インハウス運用であれ、代理店委託であれ、サービスに対する当事者意識がなくなったら施策の改善は止まると考えています。そのためにもまずは、先の事業計画を開示していくなど、積極的に目的と情報共有を行うことがポイントになろうかと思います。

自社メンバーがサービスに対して、どれくらい当事者意識を持てるのかについては、一定コミュニケーションをとっていくことである程度把握できますが、代理店委託の場合は、いかに当事者意識をもってくれるのかは面談の度に意識的にサービスに関する情報開示をするなど試行錯誤をしていました。そしてなによりも、そこの見極めが運用ノウハウや手数料比較などよりよほど難しいと感じていました。

 

2)代理店委託の場合、代理店独自の成功事例やナレッジ/ノウハウ活用できる?

代理店に運用を委託する場合、運用の戦略方針からアカウント設計などの基本的なプロセスにおいては、ノウハウの活用がもちろん可能で、初期導入の際に業務効率がとても良いのは事実だと思います。また、良し悪しはさておき、代理店が支援している同業他社の情報を提供してくれることも事実です。

しかしながら、私が思うに、マーケットにおける大筋の戦い方など、代理店間の提案や施策内容に実はそこまで大差はなかったと思います。

私は多数のサービスの広告運用に関わってきましたが、重要なことは、共通して展開できるノウハウではなく、後述する事業の成長フェーズにおいて、発生した(またはするであろう)個別課題についてどこまで熟知し、スピーディーに対応できるのか。にあると思います。

 

3)代理店手数料がかかるなら自社で運用チームを作った方がいい?

代理店に運用を委託する上で、最も議題にあがるものとして、「手数料がかかる」というところが実際かと思います。その手数料を払うなら自社で運用者を採用し、運用チームを作った方がいいという声をよく聞きますが、インハウスを実施する際のコストは担当者の人件費だけでは到底収まらない。という事実は念頭に置く必要があります。

特にWebサービス業種や、Webサイトからリードの獲得が極めてビジネスインパクトが大きい業種の場合、例えば、社内運用担当者やチームに対する教育制度や評価制度、キャリアパスを構築するなど、少々大袈裟な表現かもしれませんが、新規で一つの部門を作っていくほどの時間投資の覚悟が必要です。実際に、インハウス運用者は自社サービスの運用にのみ終始することによって、「より大きな予算のある事業に関わりたい」「より多くのサービスに関わりたい」などの希望から、運用者が離職し、引継ぎばかりをしているというケースを目にしてきました。

 

4.では自社にあった運用方針の判断基準をどう考えるのか?

では、実際に私が事業会社にいた時にどのような判断基準で代理店・インハウスを選んでいたかをフェーズに分けて述べていきます。

私の場合、大きな判断分岐の軸として、サービスローンチのタイミングと、投資予算の拡張幅によって検討内容をフェーズごとに変えていきました。大まかには下記のようなイメージとなります。

 

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■フェーズ1

・サービス自体が不安定な時期で予算も大きくないフェーズ

・運用型広告における月額予算は300万円以下

・社内の運用体制: WEBディレクターとして通常の業務と並行して、広告運用を兼務

・代理店との付き合い:アカウント開設が代理店経由でなければ展開できないチャネルのみを委託

 

■フェーズ2

・サービスが安定しはじめ、WEBマーケティングを本格的に進めようとするフェーズ

・運用型広告における月額予算は1000万円ほどに拡張

・社内の運用体制: WEBマーケティング専属の部署を検討し、複数人で広告を運用

・代理店との付き合い:クリエイティブの改善・制作速度が社内では追いつかなくなったため、コミュニケーションプランの提案内容に納得性が高く、かつクリエイティブ制作を任せられる代理店に委託(引き続きアカウント開設が代理店に限定されるチャネルが中心)。

 

■フェーズ3

・投資のリターンが見え、更なる拡張を見越して代理店への運用委託を検討しはじめたフェーズ

・運用型広告における月額予算は常時1000万円以上、繁忙期には億単位まで拡大

・社内の運用体制:WEBマーケティング全般の部署の所属が5人以上で運用はすべて代理店に委託。

・代理店との付き合い:規模が違う3社の代理店から運用型広告の全チャネル運用を前提とした提案を受け、実際の運用担当者とも面談を行い、積極的に情報開示を行った結果、今後の予算スケールに合わせた投資戦略について提案があり、かつ運用品質を担保できる代理店に委託。(インハウス運用も候補に上がっていましたが、当時は前任担当者の部署異動や運用型広告の経験者採用が思う様に進まないことにより断念)

 

当たり前のことですが、フェーズによって必要な組織や体制は変わっていきます。

それと同時に、実際に代理店に委託するとなった場合、一言で運用代理店といえども運用品質や支援のスタイル、手数料など差がありますので、代理店に何を求めるか・何を期待しているのかを明確にし、自社のフェーズで求める内容から一番近い代理店を選ぶと良いと考えています

 

5.最後に:成長フェーズに合わせた最良の選択を

最後に、繰り返し強調したい点が、インハウス運用であれ代理店委託運用であれ、何よりも大事なのは私が思うに「運用者が当事者意識をどこまでもてるのか」だと思っています。

本記事は、私の実際の体験をつらつらと述べましたが、「代理店委託だから…」、「インハウス運用だから…」ということではなく、サービスの成長を第一に考えたときに、限りあるリソースを最大限に活用できるような最良の選択をそのフェーズ毎に応じてしていただけたらと思います。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

 

この記事を書いた人

アドオペレーションズ・ストラテジスト

富田 貴弘

エウレカ・ドワンゴなどの事業会社にてWEBマーケターとして、運用型広告を中心としたマーケティングプランニングから広告運用と平行し、代理店のディレクション業務に従事。
カスタマージャーニー、ペルソナ作成やユーザーの行動分析を実施しつつ、検索連動型広告・ディスプレイ広告・Facebook広告の運用改善に取り組む。
その後、当時自身が思い描いていた、「広告主と代理店との理想的な付き合い方」を体現するべく、オーリーズに入社。
事業会社でのマーケター経験を活かした、広告運用に留まらず事業課題解決を成し遂げるバディとして日々業務に向き合う。

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